【デッキウォッチャー】
 第三の男『デッキウォッチャー』。その歴史は『過札の世代』と言われた遊戯王第3世代にまで遡る。当時デュエルとは『デッキビルダー』が作ったデッキを『デッキウォーリアー』(※後の「決闘者」)が運用することによって勝利を掴み取る……ただそれだけのものだと考えられていた。しかし遊戯王第3世代において、カードプールが異常な増加傾向を示したことにより状況は一変。カードプールを、ひいてはその夥しい数のカード群によって作られたデッキそのものを観測する人間の需要が、滑らかな曲線を描きながら右肩上がりに増加した。これが現代でいう所の『デッキウォッチャー』誕生における直接の契機だと言われている。
 だが現代においてはまた少し事情が異なっている。ネットによって情報流通が円滑になったことにより『デッキウォッチャー』の需要が激減。一時は『デッキウォッチャー』という言葉が「過去の遺物」とまで呼ばれたことすらあった。いや現在進行形で「そう」なのかもしれない。天下の遊戯王wikiに『デッキウォッチャー』の項目が存在しないのも或いはその辺りの事情が関係しているのかもしれない。
 だが『デッキウォッチャー』達は死んでいなかった。彼らは決闘の行方を左右する『メタゲーム』を観測することにより、新たな存在意義を見出したのだ。これが現代の『デッキウォッチャー』…或いは『メタデッキウォッチャー』と言われる、影の実力者達の概要である。彼らこそこの大会における『地雷』の最右翼だった―

―大会二日目―

 会場内の『デュエルバーガー』で信也とダルジュロスが軽食を取っている。長方形のバーガーだ。表面には《青眼の白龍》の絵。見るからに怪しい食い物。この怪しい食い物をほおばりながら、信也とダルジュロスあれこれ喋っている。話題の焦点はこの大会の「予選」について―
「1つ例を出そう。ケーススタディだ。まずは……そうだな。【種族一種類以上二種類以下】という課題が出たとする。その場合……もっとも怖い種族はなんだ?」
「怖い種族……そうだな……例えば……機械族?」
「ま、そんなところだろうな。リミッター解除やキメラを擁する化け物種族。その決定力は他とは一線を画している。そうだな。もう少しわかりやすくいこうか。まずはこの事例をさらに簡略化して、このルールにおいては100人が100人【機械族】を最初に思い浮かべる程機械族が優れている……と仮定しよう。さらには、他の種族を一切入れず機械族オンリーの構成を採るのがもっとも素のデッキパワーが高い…とも仮定しよう。お前、この場合どうする?」
「どうするって……それは……」
「お前、素直に機械族を組むか?」
「え……?それは……その……」
「単細胞じゃなければ…簡単には組めないよなぁ。何一つ弱点のない壊れきったデッキならともかく、『〜族』のように幾ら素のデッキパワーが強くとも、やろうと思えば何処までもメタりようがあるデッキに飛びつくのは…何処か不安がある。もし対策されてらどうしよう……ってな」
「でも、強いデッキはやっぱり強いですよ。」
「《システムダウン》3枚積みが相手でもか?」
「う……。ありですか。それ」
「俺はさっき言ったよな。このケーススタディにおいては、機械族の使用をほぼ全ての決闘者が第一に考えるくらい機械族のデッキパワーが高いってよ。だがそれは、《システムダウン》のメイン投入さえ頭に浮かぶ事を意味している」
「組みにくい、ですね。けど、それでも強いことには変わりないと思います」
「そうだな。組むやつは組むだろう。じゃあ……お前はどうする?」
「え?」
「2種族まで使えるが、機械族オンリーが最もデッキパワーが高いとわかりきった状況。そんな図式の上で、お前はどんなデッキを組み、闘う?」
「機械族オンリーとその対抗馬となるアンチ機械族デッキがメタの中心。なら最も勝率が高いのは……」
 信也はその場の問いに答えようと、普段あまり使わない思考を働かせる。だが……

「甘ぇよ」
「甘い!? もう!?」
「勝率なんて言ってる時点で終わってんだよ」
「どういうことですか」
「お前、やっぱデッキ構築に関しては三流だな。さっきまでの『キレ』が消えてるぜ。目の前の慣れない問題に気をとられ、持ち前の洞察力がどっかいっちまってる。いいか。よく聞け。如何に嵌った時の爽快感があろうと、この大会では目の前の1人相手に勝てなければそれで終わりだ。仮にお前が《システムダウン》三枚に加え《封印の黄金櫃》すら搭載したアンチ機械族デッキを組んだとしよう。それが仮に、同じルールにおいてそこそこ多くの決闘者相手に突き刺さり、その結果『圧勝』を荒稼ぎできるほど優れたアンチ機械族デッキだとしよう。だが、今俺たちが目指しているのはアドヴァンテージの高いデッキ構築じゃない。眼前の『その』一人相手に勝てるデッキなんだ」
「う……確かに。多人数が相手なら、例えば10人が相手なら、そのうち8人に勝てるデッキ構築が奨励される。残りの二人相手に惨敗してもある程度割り切れる。勝率……80%。でも相手が1人なら……1発勝負なら……どんなに練られたデッキを使おうと負ければ0。勝率……0%」
「【機械族】オンリーで組むのが強い。しかし、その機械族を徹底的にメタったデッキは更に強い。だがそんなデッキは「其の他大勢」に弱い。でもって「その他大勢」は機械族に圧殺される……『じゃんけん』みたいなもんだ。さあ……どれが強いんだ?」
「どれが……って。ジャンケンの手に優劣はないでしょ」
「完璧なバランスなら確かにそうだ。もっとも普段の俺達は、これらの内の微妙な戦力バランスや人気からくる偏りを察知してどのデッキがくるかを選ぶ。或いはそんなこと気にせず「独創」に走るやつもいるな。或いは全部にバランスよく勝とうと考えるやつもいる。或いは……そこら辺を全部考慮した上で微細な変化に拘る奴も結構いる。こういう『差』が顕著になることで単なる『じゃんけん』とは違う領域が出来上がる。それらが積み重なってメタゲームという常識が生まれる。だがこの大会に常識はない。無論、先例もな」
「……」
「究極的な話、目の前にいる相手がグーを出すかチョキを出すかパーを出すかを「当て」なくてはならない。常識や先例がない以上、「どれが一番この場で『美味しい』か」を自分の頭だけで考えるしかない。だが、一戦必勝の場合、どんなに理屈をこねようと外れたら0点だ。逆に言えばどんなに狂った理論構成でもその一発だけ当れば100点だ。笑えるだろ? さあもう一回質問だ。こういうとき、人間はどういう選択枝に飛びつく?」
 信也はこの新たな『問い』に思考をめぐらし…ある選択肢に行き着く。それは『じゃんけん』では決して有り得ない、カードゲームならではの選択肢。『微調整』が効くカードゲームならではの選択肢
「半分グー、半分チョキを出したくなりますね。最悪の事態を避け、後はプレイングでどうにかする」
「そうだ。機械族とあと一つのサブ種族を入れて最悪の事態―『全滅』―を防ぎたくなる」
「けどそんなことをすると、対応力が上がる代わりに正面からのパワー勝負になった時の分が悪い」
「そうだ。その結果、機械族+その他一種族+システムダウン+封印の黄金櫃、といった混じりっ気満々なデッキが出来上がるってわけだ。だが、誰もやったことがない以上これが正解とは限らないぜ。単細胞の方が強いかもしれない」
「話がまたややこしくなりましたね。客観的な正解がない以上、このままじゃ堂々巡りだ」
「新たな環境によるタイマン一発勝負。それがこの予選リーグだ。そこには常識や先例といった基準が一切存在しない。従って普段の数倍メタゲームを読みづらいってわけだな。加えて『タイマン』ってのが最悪だ。どんなに理屈をこねようが、相手が切羽詰ってあみだくじでも使おうもんなら泣けてくる。或いは、相手が切羽詰ってあみだくじを使うことすら覚悟した上で、デッキを構築をすべきなのかもしれねぇな」
「あらゆる事情を踏まえた上で、相手のペースに合わせるか、或いは自分のペースを貫くか、はたまた妥協案を採るか……ってことですよね。頭が痛くなるな。でも、見ようによっては悪くないですよ。
「あん?」
「相手だって条件は一緒……」

「『キャリア』が違うな。」

「キャリア……でもダルさんも未知の決闘だって……」
「未知の戦いだろうがなんだろうが『適性』は出るぜ」
「『適性』……!?」
「混沌としたメタゲームを読みきった上でデッキを選択、さらには試合中に至るまで対戦相手のデッキをつぶさに観察、『誤差』に対するリアルタイムの微調整、その結果最善の一手を導き出す連中……」
「それってまさか……」
「『デッキウォッチャー』。昨日のお前が面白いぐらい動揺してたアレだ」


第8話:DECK−WATCHER



―食堂―

 勇一と智恵と瑞貴が食堂で会話している。ほんわかしているようで微妙に緊張という微妙によくわからない空間。その中心にいるのが何を隠そう森勇一だ。両手に花とはこのことである。
「シンヤが負けてコウジが勝ってヒジリが負けた。幸先はあまりよくないな」
 勇一が部の状況について語る。確かにあまりよろしくない。この三人の中で唯一勝ったコウジですら、トップデッキで《洗脳―ブレインコントロール》を引いてこなかったら今頃どうなっていたことやら。
「ミズキたんの大圧勝には触れないんだ」
 瑞貴が茶々を入れる。自分に「たん」をつける性根がアメリカで学んだ物だとすれば、彼女の勝利を褒め称える前に病院を紹介すべきだろう。無言の勇一に対し瑞貴は尚も悪乗りを続ける。
「あらショック。すごい『なぁばす』になっちゃうかも。私はもう他人なのね〜」
「信頼の現われと言って欲しいな。この不振振りを考えるとチエじゃなくてよかったとさえ思ってるさ」
 いきなりの爆弾投下。この男は神すらも恐れないと言うのか。
「!?」 「何々何々今の発言!ちょっとそれどーいう意味?」
「部の為とほざいて偽装監禁を仕掛けるような奴を信じろと?」
「うえ。ユーイチだってノリノリだったじゃん!?」
「まあな。金があれば偽装監禁だろうが結婚詐欺だろうがお手の物。やっぱ世の中金だ」
「ゆうじょうぱわぁはどこいった」
「いーや金だ。俺はもう、金の力以外信用しないことに決めたんだ。俺は今後どんな身分になろうとも金で脈をつくり、脈で金を作る。それが俺の『じゃすてぃす』だ」
 世知辛い人生観である。だが、辛くしたのは智恵なのでこれは自業自得と言うべきであろうか。何時ぞやの『ドキドキ!愛と失神とスタンガン……スーパー倉庫カップ20XX〜黒幕は誰だ〜』は勇一の心を何処か間違った次元に引き上げてしまったようだ。なんだかよく眼を凝らしてみると、悪魔の羽みたいなものが見える。
「今日は俺とサツキとアヤか。さあー気合入れてくぞ!」
「アキラ君が……」
「アイツのことはもー知らん。勝手にやってろってな」

―デュエルバーガー―

「見切られ……ますか。その……デッキウォッチャー相手だと」
「その様子だと随分と気になっていたようだな。そうだな…お前の【グッドスタッフ】はかなり高い水準に達している。軽くおだてるなら超一級品とさえ言っていい。お前のその…『読み』も『度胸』も【グッドスタッフ】を使うにあたって何ら申し分ない。もし次の課題が【グッドスタッフ】で問題なければ、例え『デッキウォッチャー』が相手でもそれなりにいい勝負ができるだろう」
「そりゃ……どうも」
 バーガーを頬張りながらダルジュロスの話に聞き入る信也。その顔はあまり芳しくない。
「だが『いい勝負』止まりだな」
 一瞬バーガーをほおばる信也の手が止まる。信也は食い物を口から放し今度は自分から話しかけた。
「どういう……意味ですか?」
「言葉通りさ。超一級の『デッキウォッチャー』はその脳髄にありとあらゆる情報を溜め込んでいる。情報収集がデッキウォッチャーの基本だからな。もしもお前の次の対戦相手が『デッキウォッチャー』だとしたら…そいつは間違いなくお前のデッキに関する情報を逐一集め、更に試合中すらお前を観察し続けるだろう。そして最終的には潰しにかかる。何故ならこの予選は二人の決闘者だけがボックスに入り、その場で初めてデッキ構築に着手する。だとすれば……わかるだろ?」
「対人メタも可ということですね。でも僕の【グッドスタッフ】は……」
「確かに【グッドスタッフ】は弱点の少ないデッキ。だが、さっきも言ったが奴らは『お前の【グッドスタッフ】』を潰しにかかる。普段は環境全体のメタを測り、あらゆるデッキを把握し見切る『デッキウォッチャー』がたった一人のデッキだけを観察し続ける。どうだ。そろそろ怖くなってきただろ?」
「……」
「しかもお前は得意デッキをたった一つしか持っていない。お前は純度100%の【グッドスタッフ】使いだが…それがお前の首を絞める。なんたって、対戦相手が使ってくるデッキのヴァリエーションそのものが少なければ少ないほど、それに正比例して『堂々巡り』の負担が軽減されるんだからな。要警戒が「一つ」しかなければコレほど楽な事はない。つまりこの大会においてお前と戦うデッキウォッチャーは、一人の人間の一個のデッキだけを観察すればいいことになるって寸法だ。例えるなら、カモが葱背負って、オマケに鍋を担いでよってくるようなもんだろうな。ヴァヴェリ爺さんにとってみれば……」

(え? ヴァヴェリ――?)

「ちょっと待ってください。ダルさんが今、頭に思い浮かべてる決闘者の名前って……」
「なんじゃダルジュロス。急に呼び出すとはお前さんらしいといえばらしいが……」
 不意に後ろから英語が聞こえてくる。振り向く信也。それを見て軽くニヤけるダルジュロス。
「お前が『デッキウォッチャー』にえらく興味を持ったようだからな。せっかくだから呼び出しておいたぜ。紹介しておこう。その爺さんの名はヴァヴェリ=ヴェドウィン。異常なまでのデッキ観察眼を備えた『デッキウォッチャー』…更には、世にも胡散臭いカードゲーム集団『決闘十字軍(デュエルクルセイダーズ)』に所属する決闘権化の一人でもある。その怪物じみた戦いぶりから…
電獣』ヴァヴェリ=ヴェドウィン とまで称された爺さんさ」

「この……人が……」
「あとついでにもう一つ言えば……」
 其処まで言う必要はなかった。信也は既に事情を飲み込みきっている。
「僕の……次の対戦相手です」
 信也の眼の色が…変わっていた。

 ―Gブロック―

【Gブロック一回戦】
西川皐月(翼川)―東山睦月(北海道)

 既に試合は終盤。西川皐月のターン。
「リバース! 《ジャイアントウィルス》!」
「うわっ……!」
「《ジャイアントウィルス》で《森の番人グリーン・バブーン》に攻撃!」
(やっぱり自爆特攻――)

西川皐月:2800LP
東山皐月:2000LP

「《ジャイアントウィルス》をデッキから2体展――」
「やってくれるじゃない。それで最上級を出そうってわけ?」
 丁々発止の攻防だが、ここで主導権を握りつつあったのは、翼川高校三年にして西川瑞樹の双子の妹、西川皐月だった。翼川の中でも安定した実力に定評のある決闘者だ。
「いーえ。生贄最上級なんて重たいもんこのルールで入れるわけ無いじゃない。そりゃあ私だって『天界蹂躙拳』の1つや2つ決めたいけど……【初期手札三枚】でそんなもん入れる度胸無いって。」
「じゃあ、まさか!?」
「そのまさかよ。私は墓地に落ちた《死霊騎士デスカリバーナイト》《ニュート》《ジャイアントウィルス》の三体を除外して……《ダークネクロフィア》を召喚!」
「またそれ!? 2回目!? 随分と芸の無いことしてくれるじゃないの。《ジャイアントウィルス》を墓地に落とす為に自爆特攻……って、今度はバブーンに!?」
「大当たり。《ダークネクロフィア》で《森の番人グリーン・バブーン》に攻撃!」

西川皐月:2400LP
東山睦月:1600LP

「エンドフェイズ。墓地の《ダークネクロフィア》を《森の番人グリーン・バブーン》に憑依装着……」
「ウザッ!」
「だったら《地砕き》でも《サイクロン》でもなんでも使って、さっさと消せばいいじゃない。もうこっちの手札は0。煮るなり焼くなりお好きにどうぞ!」
「チッ! (そうしたくても手札がない。少ない手札でモンスター切れしないよう、色々なモンを入れすぎた。大体、《サイクロン》はもう落ちてるっての。ああもう……」
 今にも頭を抱えんばかりの東山だが、実の所皐月は皐月で頭が痛かった。どろっどろの、所謂泥試合。
(それにしても『外れ』な課題を引いたものね。【初期手札三枚】なんて、「コンボが成立しにくいからオールラウンダーを目指せ」って言ってようなものじゃない。或いは「不死身系やら展開系やら増殖系やら憑依系やらを使いだおした泥試合ヨロシク」ってとこかしら。ホンット疲れる試合。もうあの人にトップデッキが舞い込んできませんよーに……ん? あれは……)
 ルールに相手。散々苦戦しつつ、なんとかかんとか優位な状況を生み出した西川皐月。だが、そんな皐月の眼に一瞬別の決闘者の顔が映る。それはこの試合前、一度だけ見た顔。その視線は鋭い――
(あれは……同じブロックの……もう試合を終えて……偵察?)
 皐月はこの時大して注意を払わなかった。あくまで今は決闘中。眼前の相手に勝つことが第1。モンスター1体による特攻だけに終わった東山の、その悔しそうな顔を確認した皐月は、泥試合に終止符を打つ。
「《森の番人グリーン・バブーン》で《怒れる類人猿》に攻撃! (まずは一勝)」

【試合結果】
○西川皐月(翼川)―東山睦月(北海道)●
得失点差±1400

 ―デュエルバーガー―

「なんじゃダルジュロス。この小僧は」
 ヴァヴェリがダルジュロスに英語で話しかける。信也にはそれが聞き取れない。
「お前の対戦相手の1人だよ。プレイングセンスにかけて『は』超一級品だ」
「ふむ。わしはどうやら小僧っ子のお守りを2度もやらねばならぬというわけか。まあ、それもいいじゃろ。老いぼれには若いエネルギーも必要じゃ。仮にもお主が認めたのならそれなりのものはあろう」
 即座にダルジュロスが信也に通訳する。英語がやや苦手だと言う割にはソツがない。
「『餓鬼はさっさと家に帰り、ままのおっぱいでも吸ってろ』だってよ。信也」
 ダルジュロスが片言の英語と流暢な日本語でめまぐるしく喋る。通訳の出来はともかくとして、その姿は中々にエネルギッシュだ。彼は信也に提案する。
「おい、せっかくだから通訳してやる。なんか言っとく事はあるか?」
 信也は軽く考えてこう呟いた。その内容は中々に意外。
「アヤは、『マジシャンズ・アヤ』は強いですよ。僕の出番は必要ないかもしれません」
(成る程。知己か。それにしても、敢えてそれを言うとはな。遠まわしに戦闘モード。なら――)
「『オイ『電獣』。お前なんか電信柱の下に埋まってる方がお似合いだ。お前如き奴隷のアヤにも勝てないぜ。ま、とっとと泣きをいれるなら許してやらんこともないがな。さあ! 許して欲しくば俺の靴を舐めろ。もしも漏電させたら切腹だ』だとよ。中々強気な小僧だろ? 今日び珍しい程の命知らずだ。」
「フォッフォッフォッフォッフォッフォッ。いいじゃないか。強気の方がつぶしがいがある。そうじゃの。こう伝えてもらおうか。『《ブラックマジシャン》は杖を失い地に落ちる。そしてその次は小僧。おぬしは全てを失い敗北する』。フォッフォッフォッフォッフォッ」
「『ブラマジなんてケツを拭く紙にも使えない。あの娼婦予備軍を葬ったら次はお前の番だ。お前は全てを失い敗北する』だとよ。中々実りのある会話になったな。俺も通訳した甲斐があったというものだ」

 特徴的な笑いを発する老人と、それを怪訝な顔で見守る信也がくっきりとしたコントラストを描き出す。

「さて、ダルジュロス。もういいのか」
「ああ。戻ってくれて構わないぜ。邪魔したな。後で奢るよ」
「そうか。さてダルジュロスよ。少し聞きたいのじゃが『傭兵(マーセナリー)』と『拳法家(カンフー)』は一体何処に行ったんじゃ?時間的に試合の準備とも思えんしの。彼奴らに多少の用があるのじゃが。」
「俺も知らんな。一度会議室に戻ってみろ。多分どちらかはいる」
「まったく乱暴な発言じゃの。まあいい。ではいってくるぞ。フォーッフォッフォッフォッフォッフォッフォッフォッフォッフォッフォッフォッフォッフォッフォッフォ!」
(『電獣』ヴァヴェリ=ヴェドドウィン。『デッキビルダー』にして『デッキウォッチャー』。僕の【グッドスタッフ】さえ見切るかもしれない男。そんな男とこの特殊ルール下においてどう戦う? そうだ、アヤは――)
 笑いながら去っていくヴァヴェリを見ながら、信也はある種の戦慄を覚えていた。

あれが、倒すべき敵――




【こんな決闘小説は紙面の無駄だ!】
嫌がらせの様な、むしろ嫌がらせに等しいミスリード。エリー=デッキウォッチャーと早とちりした人は恥ずかしさで仏門に入ればいいよ。/「機械族のじゃんけん」を書いた直後に《キメラテック・フォートレス・ドラゴン》がリリースされ、無駄に笑った覚えがあります。いくらなんでも間が悪すぎるでしょうに。これだから風任せな小説はいけません。


↑気軽。ただこちらからすれば初対面扱いになりがちということにだけ注意。


↑過疎。特になんもないんでなんだかんだで遊べるといいな程度の代物です

                TOPNEXT














































































































































































































































































































inserted by FC2 system