「特に懐かしくもなんともない顔ぶれのはずなんんだがな。ミズキにサツキにコウジ、シンヤにアヤ、どうも懐かしい気分になるのはなんでだろうな。まっ、いーか。それに……」
アキラの目の前には勇一と智恵がいる。おしもおされもせぬ“最強”の2人。
「あいつらの顔は全然懐かしくない。むしろ、前より身近に感じるな」
アキラは勇一に対し軽く視線を送った。それだけで十分だった。
(しつこく俺を追ってきたか。だが、同じ現実を繰り返すだけだ)
『現実』。対内的にも、対外的にも、実績として残されたもの。
(公式戦の勝率は8割だったか9割だったか。別に10割でもいいけどな)
まともに負けたところを見たことがない。森勇一とはそんな男であった。
(俺への勝率はもっと酷いか? なんだっていいか。そんなことは、な)
勇一と晃、そのはっきりとした構図に火を投じるがために彼はいた。
「『今』だよな。色々あるが、今は『今』のことだけ考えていればいい」
心の火に薪をくべ。しかし、そこに冷や水をかぶせんとする女が一人。
「ああ、あいつきたんだ。へー……きたんだ。そう……きたんだ……」
東智恵。翼川二強の一人であり、西川瑞樹よりも“怖い”と言われる決闘者。後輩を〆、同僚を騙し、己の目的のためには手段を選ばず立ち回るその姿が、羨望と恐怖の対象となっていることはそう不思議なことではない。今大会、彼女は大会に出場する道を選ばなかった。能ある鷹は爪を隠す? 彼女の行動は打算に基づいている。敗北がほとんど許されないあの大会においては、「森勇一」という“最強”が“最強”であることが重要だった。優勝者が一人なら、森勇一がそれになればいい。彼女は無為に負けるつもりもなかった。彼女の行動は計算されていた。幕間でグレファーに挑み勝利することで、千鳥やベルク、そしてディムズディルをも引きずり出すことに成功する。論理的学習能力の高い勇一に“覚え”させる狙い。強豪集うこの大決闘、個人戦による拡散を避け、一点収束をはかる。東智恵、即ち【黒賢者】は、最も合理的で、最も勝利に近い道を選択、その為にあらゆる要素を鮮やかに利用してのける……さて、そんな彼女にとって、「アキラ」という三文字はどう見える?
「好都合かも」 ぼそっとそう呟いた智恵。その眼には、冷たいなにかが宿っていた。
「チエ……?」 皐月は、背筋が凍る思いだった。智恵の、裏の部分が垣間見えたからだ。
「笑っちゃうよね。アキラったら、あいつらとつるんでたんだってさ。ほぉんと、笑えるわ……」
しかし智恵の眼は笑っていない。飼い犬が彼氏の手を噛もうとするのを、睨みつけるかのように。
「次は私の番、折角だからアキラに出てきてほしいかな。てゆーか、出てこないなら引きずり出すけど」
「アヤ、次は私が出るけど、構わないよね?」 「あ、はい……」 「よろしい。間違えないでね」
聞いてるようで聞いてない。それはむしろ、遠い昔に既に出された結論の、念押しであった。
(怖い。あの時、ミラーマッチで私を完膚なきまでに打ちのめしたあの時の先輩よりも怖い……)
東智恵は足早に前に出て、陣を構える。彼女のデッキ【黒賢者】が今か今かと出番をまつ――
「で、なにやってんだ? だいたいわかるけどよ。勝敗は? 次は誰だ? それとももう終わりか?」
一方、アキラはわりとリラックスしていた。混戦模様だが、混戦になるのはわりと慣れている。
「あ、うん。団体戦の形式は……今までで2勝2敗。勝った方が……。それで出る人は……」
「決まってない? 次でラストならディムズディルなんじゃないのか。ん? あいつ、いないのか?」
実は既に気が付いていたが、どっかに隠れ、無意味に派手な登場をするのでは、と勘ぐっていた。
「よくわからないけど、ダイナマイトが降ってきたとか。そういえば左腕が痛いとか言ってたような」
「そりゃ半分以上自業自得だろ。まっ、いーか。それより次の試合、俺が出たら駄目なのか?」
「え?」 「おまえはあっちだろ。どっちかっていうとよ」 「アキラって確か……」 「確かもクソもよー」
「昔の話だ。それに俺はあいつらと、いや、あいつと闘ってみたい。ふんぞり返ってるのがいるだろ?」
アキラが指を指すと、そこには1人の女が立っていた。言わずと知れた翼川二強、東智恵その人だ。
「東智恵ってあれだろ。森勇一や西川瑞樹とともに本命だったが、出てこなかったやつだろ。
たしか……」
「あの人が五戦目。強敵……だよね。たぶん。アキラは、あの人との間に……」
エリーの発言はいつもやわらかく核心をなぞる。アキラは、どうこたえるのか。
「なんだろうな。好意なのか敵意なのか、やっぱ好意だったのかな……」
「アキラ……」 エリーは顔を読むのが上手いが、故に言葉を出しかねる。
「ヨシ、イッテコイ」 「ベルク、なぜおまえがしゃしゃりでてくる!」
不貞寝継続中だったベルク登場。あまりに唐突なる太鼓判。
「勝率ダ」 「なんでおまえというやつはいつもいつもそうなのだ」
ざっくばらんなベルクに千鳥が怒るが、反対意見は出てこない。
「私もアキラが出ればいいと思う」 「どうでもいいんじゃねぇの?」
「フォッフォ。きまりかのお」 「ム……しかたない。だが負けたら許さん」
「どーも、そんじゃいってくるぜ。ああでも、言い訳考えないとな」
「『てめぇらも高校生じゃないの使ってたろ』って言えばたぶんOKだ」
(高校生じゃないの……ショウとかその辺か? まっ、どうでもいいか)
瑣末なことなど「どうでもいい」。アキラは、身体の力を抜いて前に出た。
「なんだかんだでこっちは俺が出ることになったんだが、いいか?」
「アキラ!?」 「あいつ、裏切ったんかいな!」 「しかもあっち側に!」
驚く面々だが、勇一と智恵はほとんど表情を変えることがなかった。
「わかっていたことだ。だが、ここででてくるとはな。予定が狂ったか」
この時智恵は一度振り向いた。そして、勇一に対しても『念押し』をした。
(私がトリなのを、忘れた? 予定も何も、私それ自体が巨大な「予定」)
(忘れちゃいないさ。だが、アイツはどうも、前より『は』強くなっている)
(大丈夫。ぜぇんぶはらってあげるから。勇一は前に進めばいいの)
「なぁ、いいか?」 「いいわよ。むしろ歓迎。倒しやすい相手なんだから、ね」
智恵の冷たい表情は無気味であったが、合意成立。アキラは気を引き締めた。
「そんじゃ、いっちょ背負わせてもらうぜ。この勝負の、ラストをな……」
「
グレグレグレ(ちょっと待ったぁ)〜〜〜!!」
「うわっ!? なんだなんだ。どっからの声だぁ?」
「
グレグレ〜グレグレ〜グーレグーレグレグレグ〜レ〜」
突然飛び出してきたのはこの男。グレファー=ダイハードであった。
「
グレ(東智恵)! グレ(おまえに一言) グレファー(ものもーうす!)」
「あん?」 「
グレ(前回)! グレ(俺は)! グレファー(負けてない!)」
「いや負けただろ。あれは。なぁベルク」 「知るかんなもん。とっくに忘れた」
「
グレ(変な邪魔が入って)! グレ(あの勝負は)! グレファー(ドロー)!」
「言われてるぜ。おい馬鹿。おまえだ」 「そんなこととっくの昔に忘れたのではなかったか?」
「ああ、主におまえが馬鹿すぎて今思い出した」 「どいつもこいつも死んだ方がいいらしいな」
瀬戸川千鳥が盤を構える。暴力の匂いだが、誰も止めようとはしない。馬鹿は放置の原則。
「待ってろ。ベルクを殺したら次はおまえを東京湾に沈めてやる」 「ケッ、てめぇが死ね」
千鳥とベルクが乱闘に入るが、やはり誰も止めない。馬鹿は放置の鉄則。
「
グッレ・グレファー(グッレ事故るぜ)! グッレ・グレファー(グッレ事故るぜ)!」
「そういえばいたね」 「いたな」 「じゃのぉ」 遠い目で見守る3人。放置安定。
「ディムズディル大丈夫かなぁ」 「殺しても死なないだろあいつは」 「じゃのう」
「
グレファー(1マッチの無事故より)! グレファー(1ドローの伝説)!」
「あれ、どうすんじゃ?」 「俺にふるなって。いいんじゃねぇの。適当で」
「
グレ(エリー)! グレェ(エリーも)! グレファー(俺派だろ)!」
「アキラー! 頑張ってー! 負けないでねー! 買ったら奢るよ!」
「
グレ(もぉぉぉぉお)! グレ(せめてカメラに)! グレファー(入れぇ)!」
グレファー、エリーに突撃。100メートル11秒台の足でエリーに迫る。
「瀬戸川流決闘術奥儀『舞羽芽盤』!」 「
グレグレェ(グェェェ)!」
しかし千鳥の放った決闘盤が誤爆。悶絶するグレファー。
「おーい。俺はどうすりゃいいんだ?」 アキラ、その場に立ちっぱなし。
「あーあれだ。適当にやってくれ。つーかよーディムズディルいないとグダグダだな俺ら」
「適当っつってもな。おいグレファー」 「
グレ(なんだ)!」
「4分14秒の壁は、お前には無理だ」 「
グレ(水槽用意)!」
「火に油ってか桶に水注いでどうすんだよ……ってかてめぇらいい加減喧嘩やめやがれ!」
「ひと月前に貸した10ドルを返してもらおうかこの盗人」 「細かいこと言ってんじゃねぇ!」
「アキラー! 頑張ってー」 「フォッフォッフォッフォッフォ。フォーッフォッフォッフォッフォ」
チッ
「
グレ(なにぃ?)」 「ん?」 「あぁん?」 「ほら見ろ先方怒ってるじゃねぇか」 「チエ……」
「あ……」 信也は見た。たった一回の舌打ちが、緩んだ空気を一瞬にして引き締めるその瞬間を。
「いつまでまたせるつもり?」 智恵の言葉は世界を凍らせる勢いであった。そこに甘さは存在しない。
「しょうがないだろ」 しかし、そこに臆せず立ちはだかる男が一人、アキラであった。
「グレファーのやつが言って聞かないんだ。この分じゃ、テコでもうごいそうにないぜ」
「じゃあ、両方纏めて闘えばいいじゃない。私も、そこの野人にはとどめ刺し損ねてるから」
「チエ! 本気なの!?」 「ウォーミングアップには丁度いい。試合勘ってやつ?」
智恵の提案。余程の自信がなければできないであろう提案は、無論やつには好都合。
「
グレ(俺からやるぜ)! グレ(俺で最後だ)! グレファー(やってやるぜぇぇぇ)!」
グレファーのやる気は十分だった。しかしストラは、それを呆れたような様子で見守っている。
「随分な自信。いかに前回実質勝ってたっていってもな。おまえもなんか言って……あん?」
「見ないの? アキラ」 「ああ。見たってしょうがない。もう、嫌というほど見てきたからな」
アキラはフィールドに背を向け、を向いてデッキの調整を始めていた。それが、彼の闘い。
「アキラは、あの人と闘いたいの?」 エリーの質問は核心を突く。それが、彼女の妙。
「どうだろうな。俺は昔、アイツと一緒にいたかった。それ以上は、何も考えていなかった」
試合が始まるが、エリーとアキラだけは試合を見ていなかった。彼等は、押し黙った。
「決闘スタート」 「
グレ(決闘)!」
「やぁローマさん。こんなところにいたのですか。何をしてるんですか?」
位置エネルギーの高い場所。話しかける側の男は、その分物腰を低くした。
「その声色、中條というわけか。なぁにたわいない。文字通りの、高みの見物だ」
「どれどれ……なるほど催してますね。しかもアレは東智恵。いいカードだ」
「東智恵、か。その様子だと、詳しく知っているようだな。少なくとも俺よりは」
「ええ。私が彼女に翼川高校の参加を打診しましたから。中々に、盛り上がっています」
「随分と下らん面子を呼んだな、と言いたいところだが、あのガキはそれなりに美味かった」
「あの東智恵は中々のものですよ。あの時も、色々嗅ぎまわられてしまいました」
「おまえの評価は昔からあてにならない。裏コナミの中でも、一番の大穴狙い」
「その分、貴方の評価はあてにしていますよ。貴方は、その大穴を当ててくる」
「はっ、くっだらねぇ。おまえもディムズディルも、くだらなすぎるんだよ。やることが」
「貴方は1人だ。しかし、1人では決闘できません。それは貴方とて同じはず」
「方法論が腐ってるんだよおまえらは。生まれれば殺されるなら、殺せば生まれるさ」
「ご立派。裏コナミの鏡ですよ。貴方は」 中條は、やや呆れたように首をふった。
「
グレ(智恵の《早すぎた埋葬》)! グレ(チェーン開始)!」
「先にグレファーが仕掛けた。攻撃される前に倒す気だ」
「
グレ(《仕込みマシンガン》)! グレ(《チェーン・ブラスト》)!」
「不味いわ。ダメージレース。このままじゃ先に智恵のライフが……」
「
グレ(《連鎖爆撃》×2)! グレ(智恵はグレファーの)……」
「黙れ。豚」 「
グレ(なにぃ)!?」
「終わった」 アキラは、そう呟いた。
「《ブラック・マジシャン》をコストに《レインボー・ライフ》。全てを吸収」
「
グレ(や、やめろ)!!」 背筋を凍らせる、恐怖。智恵の、冷徹な視線――
「蘇生した《E・HERO プリズマー》の効果発動。デッキから《超魔導剣士−ブラック・パラディン》の融合素材《ブラックマジシャン》を墓地に送り、そのカード名を得る。そして、このカードを生贄に……」
通常魔法の発動をトリガーに、地獄の業火を見舞う死刑執行人。その名も!
黒魔導の執行官
「
グ、グレ(ま、まさか)……」
「《トゥーンのもくじ》を発動」
「
グレェ(やべぇ)!」
東智恵:9200LP
グレファー:5000LP
「《トゥーンのもくじ》を発動」
「
グレッ(痛ぇ)!」
東智恵:9200LP
グレファー:4000LP
「
グ、グレ……」
「あんたさぁ……」
「
グレ(なんでしょうか智恵様)!」
「邪魔。《トゥーンのもくじ》発動」
「
グレ(助けて)〜〜〜〜〜〜〜!」
東智恵:9200LP
グレファー:3000LP
「馬鹿がのこのこと。《大嵐》」
「
グレグレグレ(ウガガガガ)!」
東智恵:9200LP
グレファー:2000LP
凄惨な光景。あたかも、サンドバックで黒ひげ危機一髪をやるかのように
「場違いなやつにでてこられるのが私は一番嫌いなの? わかる?」
「
グレ(許してください)! グレ(もうしませんから)!」
(アイツの掌握能力はとびっきりだ。2度も3度も同じ手筋が通用するか)
1度目の時点で智恵はグレファーを見切っている。彼女は、支配していた。
「日本の文化とかわかる? こういう時は地面に頭をこすりつけるものよ」
グレファーは地に頭をめり込ませるようにして詫びた。詫びに、詫びた。
「
グレ(ホント調子のってました)! グレ(マジすいません)!」
「よくできました。やればできるじゃない。お姉さんおどろいっちゃったぁ」
「
グレ(そりゃあもう)! グレ(姐さんさんのためならなんだって)!」
「じゃあ《黒魔導の執行官》でダイレクトアタック。目障りだから消えてね」
「
グ、グレグレグレ〜〜〜〜〜(そんなご無体な〜〜〜〜〜)!」
死刑執行
○東智恵―グレファー=ダイハード●
「本当に瞬殺だったわ。ねぇストラ、タイムは?」
「3分2秒。4分14秒の壁は厚かったなぁ……」
ストラは溜息をついた。堪能する暇すら、そこにはない。
「つ、つよい。流石や。やっぱり姐さんは強すぎる!!」
太鼓持ちが太鼓を叩くのも当然。その太鼓は圧倒的だった。
「消えろ。端役はお呼びじゃない」 「
グ、グレ(こ、怖い)!」
智恵はデッキをケースに戻し、もう一個のデッキを取りだした。
「邪魔者は消えた。次の邪魔者を消す。あがってきなよ、アキラ」
アキラもまた調整を終え立ち上がった。戦闘準備、完了――
「勝負の前に聞きたいことがある。いや、確認しておきたいことがある」
コイントスのため近寄った2人。アキラは、ここぞとばかりに問いかけた。
「なに? 冥土の土産にはまだ早いとおもうけど。何が聞きたい?」
「なんで大会にでてこなかった?」 「そんなこと? 譲るためよ」
「譲る為?」 「私はもう十分出たから。みんな出れるといいじゃない」
智恵は常にレギュラーだった。彼女の敗北など数えるほどしかない。
「違うだろ。そうじゃないだろ」 だがアキラは否定した。即座に、否定。
「ユウイチだろ。この大会は個人戦でバラバラだ。だからおまえは降りた」
「自分の試合よりユウイチをサポートって? それ、いいかも。かわいくて」
「茶化すなよ。おまえは知っていたんだろ。“王座を脅かすもの”の存在を」
瞬間、智恵の顔つきが変わる。冷酷さに加え、厳しさを増す表情。
「ミズキを含めた他の連中は体のいいコマってわけだ。いつぞやの万屋の時のように、おまえは自分の目的に都合のいいように周りを動かし、高め、そして動かしていく。そして今回は……」
「まさか、アンタが勇一に勝つかもしれないからそれを警戒したって? ばっかじゃないの。もしかして自信過剰? 後ろの連中がついたから、調子にでも乗ってるの?」
「逸らすなよ。本当に警戒したのは、ディムズディル達だろ」
「おい、あいつら何を話してるんだ?」 「さぁ? なんでしょ」
智恵と晃の押し問答。智恵には、やや不意打ちであった。
「だったら、だったら何?」 「おまえは正しい。だけど間違ってる」
「はぁ?」 「この世で頭を使ってるのは、ユウイチやチエだけじゃない」
「あんたが、そうだとでも?」 「俺は馬鹿だよ。俺にできることは一つだ」
「できること?」 「壊すことだ。俺にはそれしかできない」 「何を?」
アキラは一瞬躊躇した。そのセリフを言った瞬間、完全な離別は訪れる。
「目障りなんだよ。俺とアイツの勝負に、ちょろちょろとハエがうろつくのは」
しかしアキラは言った。いざ言ってみると、思いのほかスラスラと言えたもの。
「よく言えました。安心して。あんたには、ちゃあんとオチをつけてあげるから」
「オチ」 「こんなところにノコノコ出てきてばっさり負ければ、諦めつくでしょ」
「かもな」 「目障りなのはあんたよ。負けたら私の前から消えるって約束して」
「いいぜ。だが、俺が勝ったら、おまえのプライドをもらう。あのカードをな」
アキラは智恵に強烈な返し手を入れた。お互いに、賭け合えというのだ。
「自信がないのか?」 「いいよ。あんたの存在を、私の中から消してあげる」
【団体戦第5戦】
チエVSアキラ
第47話:賢者と愚者
(ユウイチに不毛な対抗意識を燃やすならともかく、真っ向から私に反逆の目を向けてくるなんてちょっと見直したよアキラ。私の内心に触れたね。じゃあ、本気で潰そっか)
「私の先攻、ドロー。モンスターセット。これで十分。ターンエンド」
(受けて立つ構えだな。こっちの手を晒させて、カウンター?)
「別に、晒さなくてもいいよ」 「……」 「あれ? 図星なの?」
重い空気が立ち込める。しかし、それとは別に明るい声も。
「アキラー! がんばってー!」
「声援つきなんていい身分じゃん」
「アイツはずっとそうだろ。ドロー」
(いつもならここで全部伏せてくる)
「望みどおり、晒さない。ターンエンド」
「流行ってるの? それ、前の人もやってたね」
「手札を伏せるのに飽きたんだ。それだけ……」
フルセットの次はノーセット。極から極へ。
「今更ね。それも、ブラフの一環ってわけ?」
智恵は落ち着いている。嫌なぐらいに、冷静そのもの
「変わってない。奇をてらうばかり。変わってない。だから……」
「だから俺はいつまでたってもアイツには勝てない、か?」
アキラは、落ち着いているのか、威圧されているのか。
「ぴんぽーん。だけどぶっぶー。あんたは、誰にも勝てない」
智恵は一瞬だけ、エリーやストラのいる側に目線を送った。
「怖い、かも」 距離がありつつも、エリーは、確かに感じ取った。
二周目 |
東智恵(先攻):ハンド5/モンスター1(セット)/スペル0 |
アキラ(後攻):ハンド6/モンスター0/スペル0 |
「1枚引く。アキラ、あんたの思い上がりを正してあげる。感謝してよ……」
「俺が思い上がりなら、おまえらは……」 「違うのよ! アンタとは!」
智恵が今日初めて声を荒げた。それは言うまでもなく、開戦の狼煙。
(仕掛けてくる。だが、どこから? 何を? どうやって? どうする?)
「リバース。《墓守の偵察者》。新たな偵察者を場に揃える。生贄……」
Magical Marionette
(双剣の操り人形? 智恵の操り人形か。あの糸が、気に入らないな)
「さっ、ショータイムを始めよっか。この子は、随分な演技派よ?」
「所詮は人形だろ」 「人形は糸で踊るの。貴方と同じように」
「敵も味方も、操り人形?」 「違うって? なら糸を払ってみれば?」
(俺がモンスターも使ってくると読んだか。その読みは正しい、が)
「アキラ……アンタは近づいちゃいけない領域に近づいたね。天、罰」
操り人形が糸に揺られて暴れだす。まるで、生き物のように――
「貴方はどちらが勝つと思っているんですか? ローマさん」 「どうでもいい」
「そりゃそうでしょうけど、私は聞きたいのですよ、ローマさん」 「めんどうくさい」
「東智恵は中々強かな猛者です。私が今回知った日本人では森勇一や新堂翔にも劣らない猛者と存じ上げます。他方アキラは、あのディムズディルが見出したという情報が……」
ローマは中條を遮った。「喋りすぎだ」と言わんばかり。ローマは、一言だけ言った。
「ガキはガキ。どこまでいってもな。ただ、上にクソがつくかつかないかだ」
「はてさて……」 「黙ってみてろ。カス共が。いずれにせよカス共が……」
智恵:8000LP
アキラ:4800LP
一方、フィールド上では怒涛のラッシュがアキラのライフを奪っていた。
「さっきから睨んでくるけど、私に威嚇は通用しないってそろそろわかった?」
威嚇は通用しない。それは、智恵の威嚇。アキラの威を封じる、その声色。
「1枚伏せてターンエンド」 操り人形が、人形を繰る智恵が、笑っていた。
「別に威嚇したわけでもハッタリをかましたわけでもないぜ。ただ……」
(これが智恵の攻撃。強力で、裏があって、油断のならない攻撃、か)
アキラは見るのではなく感じた。智恵の攻撃を肌で感じ、受け止める。
「この程度なら軽いな。まだやられてないなんて、踏み込みが足りない証拠だ!」
アキラは線を引きにかかる。敢えて攻撃を受けてでもデッドラインを見定める。
「虚勢、頑張るね。今死ぬか後で死ぬかの違い。それだけでしか、ない」
(この戦いはギリギリのライン上での勝負になる。二束三文のライフなど!)
「ドロー。(俺はアイツの操り人形? だったら、踊らされる前に自分で踊る)」
(間違いない。仕掛けてくる。付け焼刃の戦術、どれほどかじっくり見てあげる)
「手札から《六武衆の結束》を2枚発動。手札から《六武衆−ヤイチ》を通常召喚」
「はっ、日本武士道かよ」 「ベルク、そう舐めたものではない」 「知るかよ。んなことはな」
「召喚の成功により《六武衆の結束》に武士道カウンターを1つづつのせる。手札から《六武衆の師範》を特殊召喚。更に武士道カウンターをのせ、そのまま生贄に捧げる。デッキから4枚ドロォ!」
「モンスターを展開系でくるなんてね。モンスター同士の差し合いで、勝てると思ってる?」
「思ってないさ」 「思ってない?」 「《六武衆−ヤイチ》の効果発動。セットカードを破壊する」
アキラは智恵の用心深さを知っている。アキラが壊したのは、智恵の仕掛けたブービートラップ。
「《次元幽閉》はぶっ壊す! どいつもこいつも殴ってやる。行くぜ! 師範で偵察者を攻撃!」
智恵:7100LP
アキラ:4800LP
強烈な波動が偵察者を消し飛ばす。しかし智恵は動じるどころか薄笑いを浮かべていた。
「なによアキラ。それで私を攻めたつもり?」 (まるでものともしていない。当然かぁ……)
アキラは少しだけ笑みを浮かべた。智恵は相変わらず強い。未練を感じそうになるくらいに。
(【六武衆】、考えられる限りでもっともつまらない手をうってきた。倍返し、してあげる)
「智恵のペースだな」 「そやな大将。これは智恵のペースや」 「アイツは、ここからが怖い」
アキラは計2回魔法を使った。マリオネットにのる2つのカウンター。その力は、利用される。
「アキラは“それ”を覚悟して、それでもスピードを優先した。アキラに迷いはない。だけど!」
エリーの不安。それは、今さっき感じ取った、東智恵という決闘者の性質に起因する。
「1枚セット。ターンエンド」 「アキラ、気をつけて。あの人は、怖い人。迷いがあれば勝てない」
三周目 |
東智恵(先攻):ハンド4/モンスター1(《魔法の操り人形》《墓守の偵察者》)/スペル0 |
アキラ(後攻):ハンド6/モンスター2(《六武衆−ヤイチ》《六武衆の師範》)/スペル1 |
「ドロー。手札から《封印の黄金櫃》を発動。デッキから《邪帝ガイウス》を除外する」
(これでカウンターは3つ。こちらの戦力を駆逐するには十分な数ではあるが……)
《魔法の操り人形》の攻撃力は2600にまでアップ。徐々に、制圧力を増していく。
「カウンターを2個取り除いてマリオネットの効果発動。《六武衆−ヤイチ》を破壊する」
(やはりそうきたか。師範の効果を封じつつ、2200の打点で師範を殴り殺す、か)
「さぁて……」 (バトルフェイズ? くるか!) 「せっかち。まだまだ……」
《鏡映しの操り人形》
魔力カウンターを任意の個数取り除いて発動する。取り除いた個数に応じて以下の効果を発動する。
●1個:相手フィールド上に表側表示で存在するモンスターを1体選択する。選択した相手モンスターと同じレベル・種族・属性・攻撃力・守備力を持つ「マリオネット・トークン」を1体特殊召喚する。
●2個:相手の墓地に存在するモンスターを1体選択する。選択した相手モンスターと同じレベル・種族・属性・攻撃力・守備力を持つ「マリオネット・トークン」を1体特殊召喚する。
●4個:相手のデッキ内を確認し、通常召喚可能なモンスターを1体除外する。除外したモンスターと同じレベル・種族・属性・攻撃力・守備力を持つ「マリオネット・トークン」を1体特殊召喚する。 |
「これは……」 「甘いよねアキラは。私は、そんなに甘くない」
「師範をコピーした、新たなマリオネットを特殊召喚する。そして!」
智恵の場には2体の操り人形。智恵は、容赦なくその首を捩じりきる。
「胸糞悪い趣味だな! 東智恵ぇ!」 アキラが叫ぶ。智恵がゆく。
「2体のマリオネットを生贄に、私は最強の黒魔術師を召喚する……」
混沌の黒魔術師
「ちっ!」 黒魔術師の降臨。智恵の言うとおり、所詮全ては彼女の操り人形に過ぎないのか。
「いけ!」 黒魔術師は愛用の杖を地面に突き刺すと、恐るべき勢いで突進。師範の懐に潜り込む。
「アンタなんか最初から私の敵じゃない! 喰らえ! 」 「おお!」 「なにぃ!」 「あ、あれはぁ!?」
混沌雷神拳!
智恵:7100LP
アキラ:4100LP
あらゆる魔術を極めし黒魔術師の、渾身の右アッパー(片膝)が炸裂。師範は吹き飛び、頭から地面に激突する。いかに波動球の開祖とはいえ、これを喰らって立ち上がることなどできようはずがない。
「つ、つよい。先輩の実力は、やっぱり私なんかとは比べ物にならない……」
智恵の強さに怯えすら覚える彩。そしてこの時、後ろからは新たな声が。
「混沌雷神拳。流石は賢者を謳われる東智恵といったところですね」
「あ、あなたは……津田早苗ぇ!」 「流石は私が尊敬する決闘者です」
「【魔法使い族】は本来、手から炎を出したり岩を凍りづけにしたりといった法術とは無縁の存在だったと聞きます。そう、あのハリーポッタジックな魔法使い像は後世の生みだした虚像。本来の魔法使いは、むしろ己の拳にこそ本質を持つ。それ即ち【魔拳法使い】。苛烈なる、影の闘法を極めんとする修行態度がいつしか大衆の恐怖を生み、あらぬ想像をかきたてていった。流石は東智恵、といったところでしょうか」
「こ、これは……」 崩れ落ちた、師範の身体が文字通り分解されていく。恐怖の瞬間。
「よおく知ってるでしょ? 黒魔術師に敗れた者は墓地に行くことすらできない。消えるのみ」
智恵の決闘に抜け目の3文字は存在しない。エリー達も、その徹底性には感服するのみ。
「師範を墓地に置くと再利用される。あの人はそれを断ち切りにいった。あれが、東智恵」
「六武衆」と名のつくカードの中でも屈指の性能を誇る師範。念入りに潰すのは最早当然。
「さ、バトルフェイズをしゅうりょ……」 「速攻魔法《手札断殺》を発動ォ!」 「ふーん……」
アキラは《六武衆−ザンジ》と《六武衆−イロウ》を墓地に送り、ツードローを達成する。
「私も2枚切って2枚ドロー」 「操り人形がいなくなって清々したよ」 「あっそ」
(こちらのリバースを恐れずつっこんできた。勘か読みかは知らないが、完璧だ)
「メインフェイズ2、黒魔術師の効果でサルベージした、《封印の黄金櫃》をもう一度発動」
智恵はデッキから《闇次元の解放》を取りだすと、除外。彼女の狙いは、蟻地獄――
「黒魔術師、破壊できるならどうぞご勝手に。その後どうなるか、わかってるならね」
アフターケアも万全。《混沌の黒魔術師》は、今まさにフィールドの支配者であった。
「人形とは随分と待遇が違うな」 「あたりまえじゃない。人形は人形。それ以上はない」
(目先のライフアドよりも《混沌の黒魔術師》の召喚を優先。支配者でも気取るつもりか?)
「これが智恵の決闘だ。まるで蟻地獄のように、闘えば闘うほど深みにはまっていく」
「賢者の決闘ってわけや。えげつないで。最小限の労力で、最大限の戦果をたたき出す」
「そうだ。アイツは基本的にえげつないが、同年代に対してはそれこそ容赦なく叩きにかかる」
「手札から1枚、スペルカードを場に伏せる。ターンエンド」 それは、盤石のエンドだった。
「むぅぅ。あの角度、あの速度、どれをとっても申し分のないアッパー。ここまでをどう見る? ベルク」
「……」 「何を寝ているのだ。起きろベルク!」 「うるさいんだよ。知るかボケ」 「貴様ぁ……」
「千鳥とベルクが殴り合いを始めたぞ。誰かとめい」 「俺はパス」 「私も」
「瀬戸川流決闘術奥儀!」 「やらせるかよ! さっさとおちろ!」
「千鳥が奥儀を出したぞ」 「パス2」 「私もパス2」
「なにやってんだかあいつらは……」
「よそ見してる暇あるんだ。案外余裕じゃん」
「余裕は、ないさ。あるように見えるなら、おまえに余裕がないんじゃないか?」
「今の、結構いい挑発かもね。あんたに力が伴ってれば、の話だけど」
「俺のターン、ドロー。手札からモンスターとスペルをセット。ターンエンド」
アキラに切り返しの手段はなかった。じりじりと追いつめられるアキラ。
(確かに、確かに智恵は強い。わかっていたことだ。この、不快感は)
「あの威勢はどこにいったの? 借りてきた猫? 増えるのは、生傷ばかり?」
「で、おまえはなんで一日単位で生傷を増やすんだ? 俺への嫌がらせか?」
瀬戸川刃は呆れていた。自分でも無茶をやる方だが、この男は無茶過ぎる、と。
「金は払ってるからいいだろ」 「そういう問題じゃない。応急処置にも限度がある」
「無能な」 その男、ディムズディル。
(いっぺん殺すか?) その男、瀬戸川刃。
「動ければいいさ。後は根気でなんとかする」
「だが左腕はまずいレベルだ。決闘盤が負担になるな」
「僕のは軽い。無理をさせなければなんとかなる」
「だが逆に、大地を踏む脚はほとんど無事か。流石だな」
「いや。大地を、岩を割っていなしたせいで、まだ少しは痛い」
「それはさておき……」 「なんだ?」
「俺は容疑者じゃないんだな。つまらん」
「君に殺される理由がない。君が無能なわけならあるが」
「丁度、殺す理由ができたんだが今すぐ殺していいか?」
「楽しそうだな」 「そう見えるか?」 「違うとでも?」 「いーや、楽しいさ」
「つまらなそうな時のおまえは危険だからな」 「君に言われたくはない」
「そうそう。アキラは向こうに送りこんどいてやった。精々追加料金を弾めよ」
「ベルクじゃあるまいに。金が欲しいなら大会に出ればよかったじゃないか」
「呼ばなかったのはどこのどいつだ?」 「そういえばそうだったな」
「地獄の沙汰も金次第、ではないが金は重要だ」 「だから二枚舌、か」
「正直、ローマが来るとは思わなかった」 「君が呼んだんじゃないのか」
「どうせゴライアスだろ。あるいは自分で嗅ぎつけたか。おまえが呼んだか」
「ベルメッセはローマが呼んだのか?」 「たぶんな。だが、アレの動きは読めん」
「“裏コナミの狂獣”を読めるやつなどいない。裏コナミ史上最も……だからな」
「俺は“専守防衛”でいかせてもらうが、他の連中がどう動くかはわからんぞ」
「面倒ではある。しかし、まるっきり予測していないわけではなかった」
それを聞いた瀬戸川刃は、ふっと笑って聞いた。「その根拠は?」と。
「一つは、あいつらが暇人だからだ。そしてもう一つは……だからだ」
「なるほどな。しかしなぜ?」 「あいつの有能っぷりは知っているだろ?」
「巡り巡って結局はおまえの所為だな。その怪我もほとんど自業自得だ」
「なぁに。死ぬほど面白ければそれでいい。アイツも、今頃は楽しんでるかな」
(傷口が少しマシになったか? 闘争本能で治癒能力を高める、か。つくづく『実戦』担当)
瀬戸川刃は、天井を突き抜け空を見据え、あの時の『彼』のことを思い出した。
「どうだろうな。今頃死んでいるかもしれない。そういう戦い方しかできない男だ」
四周目 |
東智恵(先攻):ハンド1/モンスター1(《混沌の黒魔術師》)/スペル1(セット)※《封印の黄金櫃》×2発動中 |
アキラ(後攻):ハンド5/モンスター1(セット)/スペル1(セット) |
「はぁ……はぁ……チッ」 「もう終わりなの?」 「喋りすぎだぜ、チエ!」 「ああ、そお」
次は智恵のターン。いや、全てが智恵の掌中なら、全てのターンが智恵のもの。
「ドロー。バトルフェイズ。《混沌の黒魔術師》でセットモンスターを攻撃する。消えろ」
ロッドを高速回転させ、十分な遠心力をつけての一撃。アキラの壁など、まさに一蹴。
「魔法使い族のルーツにはもう1つ説があります。曰く、『魔棒使いから魔法使い』へ。元々は棒術集団だった暗黒の武闘軍団がいつしか『魔法使い』として昇華された。後世の魔法使いたちがみな一様に長い棒を持つのは、その時の名残だというのです。これもまた傾聴に値する学説。そして、流石は東智恵」
「モンスターセット。ターンエンド。カウントダウンは、迫ってるよ」 「うるせぇんだよ」
じわりじわりとアキラに迫る智恵の猛威。守りにおいてすら、支配力を増していく。
(冷たいな。ディムズディルやエリーとやった時とは違う。決闘が、盛り上がる展開になっていけばくほど、どんどん背筋が凍っていくようなこの感覚。飽きた愛玩鳥類を、籠の外から針でつつくかのような)
「はぁ、はぁ……ドロー……《六武衆−カモン》を召喚。バトルだ。セットモンスターを破壊する」
しかしアキラに退却の二文字は存在しない。ただただ、攻める。生き延びるために、攻める。
「甘い。《執念深き老魔術師》をリバース。カモンを道連れに、破壊する。ざあんねん」
しかし、智恵はどこまで周到だった。気がつけばアキラの場はガラ空き。死の匂いが漂う。
「チッ、カードを2枚伏せる。ターンエンドだ。(籠の中の鳥、それが俺だってのか?)」
五周目 |
東智恵(先攻):ハンド2/モンスター1(《混沌の黒魔術師》)/スペル1※《封印の黄金櫃》×2発動中 |
アキラ(後攻):ハンド3/モンスター0/スペル3(セット) |
「ドロー。《封印の黄金櫃》の効果を解決。《邪帝ガイウス》と《闇次元の解放》を手札に加える」
「まずいわ。混沌のダイレクトアタックで2800。これを食らったらもうほとんど残らない」
「自分を除外して1000火力に化けるガイウスのこともある。流石に、どうにかしろよ」
「リバースカードはある。だが、一度潰したところで《闇次元の解放》。最早詰んだか」
「止めれるものなら止めてみろ!」 「うぉお!」 「で、でたぁ!」 「あれは幻の……」
混沌冥王拳!
智恵:7100LP
アキラ:1300LP
「冥王星が惑星から外されたことはご存知ですよね。では逆に、なぜ冥王星はかって惑星として数えられていたのか。それは、当時の専門家たちがみな一様に黒魔術学派だったこととの間に切っても切れない関係を有しています。当時の黒魔術学派にとって冥王星は魔力の源。ゆえに、準惑星などという劣ったカテゴリーに冥王星を押し込むことなど到底できなかったというのがその真相。それほどまでに、冥王星は黒魔術にとって重要なのです。流石は、東智恵と言うべきでしょう」
渾身の右アッパー(直立)が無防備となったアキラのどてっぱらをえぐる。
「土俵際まできたね。今の心境はどう? 首に手がかかってるのよ」
「まだだ。まだライフは残っている。残っている限り俺は諦めたりしない」
「ふーん。じゃあメインフェイズ2に移行。私は手札からカードを……え?」
瞬間、智恵によぎる稲妻。智恵はその時、「何か」を感じ取っていた。
(アキラ? アキラの眼は死んでない。それどころか……だからななに?)
アキラの眼。それは智恵に無言の圧力を与える。それほどの視線。
「はっ……はっ……」 少しづつ、少しづつ。智恵の威を押し返すアキラ。
「アキラ」 「なんだ?」 「勝てると思ってるの? 私に」 「……」
「今まで何回負けてきたと思ってる?」 「忘れた」 「図に乗るな」
智恵の口調が一瞬熱を帯びる。それは、苛立ちからの、熱――
「どうだっていいだろ。そんなことはよ。問題は、今何ができるかだ」
「私と勇一の領域の前で、あんたに見せられる芸なんかない!」
「芸、か」 「あんたは、鳥籠の中でピーピー鳴いてればよかった!」
「かもな。俺はあんたに、あんたたちに憧れてたよ。だがなぁ!」
築かれる城の、決まりきった高さ、見上げる程度の、高さ。
「俺は、それと同じくらい、あんたたちが気に入らなかった」
「気に入らない? それは嫉妬よ」 「かもな、だがそれ以上に!」
アキラの中の、熱い魂が顔を出す。闘いぬいてきた男の、顔。
「それ以上に、あんたたちに勝てない自分が気に入らない!」
「どういう意味よ!」 「後ろの連中とやりあってはっきりわかった」
「何が!」 「おまえらは高みにいない。精々目の上のたんこぶだ」
「な……!?」 「だからこそ倒したくなる。事実、俺は今すごく楽しい」
「楽しい?」 「おまえらに負けたら悔しいだろうな。だから、楽しい」
言葉の真意は智恵を苛立たせた。「別格ではない」。やつはそう言った。
「やれるものならやってみなさい。あんたが、あんたに何ができる!」
「チエ、おまえは強かった。そして今も強い。だが、だが手は届く」
天上人とそれ以外。その構図は絶対。智恵には、それが絶対。
「籠の中の鳥は、外には届かない。逃げられもしない。それが!」
「……」 信也は黙って見守っていた。この勝負が始まってから、一言も喋っていない。
「どうしたの?」 「いえ、別に……」 瑞樹が聞いても黙ったまま、動かない信也。
「適当に思ったことを喋ればいいんじゃない? 私が、適当に聞いてるから」
さっきのお返しとばかりに、瑞樹はそう信也に促した。聞いてみたい、というのもある。
「わかりました」 瑞樹に促された信也は、今思っている中で最も強い思いを口に出した。
「確かに、智恵さんは強い。常に高みから、まるで見下ろすような支配力を誇っている……」
瑞樹は黙って聞いていた。彼女もまた、似たような思いを抱いていたのかもしれない。
「だけど……」 信也は、喉から声を絞り出すように言った。彼らは、身をもって知っていた。
「チエさん。気がついてください。貴方の今いる場所は、少し大きな、鳥籠の前じゃない」
「そうね、あの場所は、あの場所は……」 瑞樹も口を開いた。彼らの意見は、一致していた。
「猛獣ひしめく、檻の中だ。貴方にも逃げ場はない。そしてあの人は、
檻ごと吹き飛ばすつもりだ!」
Gandora
the Dragon of Destruction
「《諸刃の活人剣術》で生贄を確保して、《破壊竜ガンドラ》を召喚!?」
(寺門吟はこれに倒された。だけど、今のアイツは【六武衆】。ゼータもディアボリックも、カエルすらいないこの状況下では、精々苦し紛れに《最終戦争》を打ち込むのが関の山のはず……)
(学習能力が高いからこそ『もうやらないだろ』『やれないだろ』という計算もまた働く。だが!)
いくらなんでもここでガンドラはない。しかしこの場においては、憶測こそが敵となる。
「なにができるのか。見たかったんだろう? 見せてやるさ。リバースカードオープン!」
「ここは猛獣ひしめく檻の中。そして、あの人は檻ごと智恵さんを吹き飛ばそうとしている」
「はっ! はっはっは。くそったれだ! クソ賢者とちんたら殴り合いなんかやってられるかよ」
「六武衆が4体も!? 《究極・背水の陣》をここで!? この無謀、ま、まさか……」
「ふつうはやらないでしょうね」 「そうねシンヤ君。ふつうはそんなことやらない」
「僕ならやりませんね」 「私もやらない。あんなこと、怖くてできない」 「「ふつうは」」
「だけど、鋼の檻を壊して飛び立とうというのなら、ふつうでは足りない。正気じゃ駄目だ」
「贔屓目に見ても、アキラにはディムズディルやローマほどの『才』も『力』もない。だから」
「ギリギリまで己の身を傷つけ、敵をギリギリまで引きつけ、死中に活をはかる……」
弱者だからこそ、強者には飛び込めない領域に飛びこめる。己を捨てて、己を拾う。
「俺に言わせればな。残りライフ100なんてのは、背水の陣の内に入らない。いっくぜぇ!」
背水のDestroy Giga Rays!!
智恵:7100LP
アキラ:50LP
「なんだ、なんだあれは!? あんな闘い方があるっていうのか?」
「まさか、あれは伝説の……」 「知っているんですか津田さん!」
「日本武士道に伝わる奥儀、まさか現代で見ることができるとは」
やや冗長になることは覚悟の上で解説せねばなるまい。時は1945年。そう、敗戦国日本誕生の時である。黒塗り教科書政策によって異国に都合の悪い様々な諺が消去され、別の諺に差し替えられたというのは知識人の間ではもはや常識。そして、その一つが何を隠そう『背水のDestroy
Giga Rays』であった。今でいうところの『背水の陣』は、大和魂を理解しない愚かなアメリカ人の創作である。この諺の成立は幕末にまで遡る。当時の幕府軍は既に進退が極っていた。前には敵。後ろには湖。前門の虎、後門のリヴァイアサン。最早これまでと思われたそのとき、幕府軍の将校はなんと後ろの湖に飛び込むことを一軍に指示。すわ自殺か? と思われたがこれはあくまで勝利のための作戦だった。こんなこともあろうかと素潜りで肺活量を鍛えていた一軍は当時の日本記録に迫る勢いで命を賭して潜り続け、遂には湖を泳ぎきって相手の後ろに回ることに成功、薩長軍に一矢を報いることに成功したという。そしてこの時、薩長軍の軍師を務めていたある日本人が驚嘆のあまりこう叫んだことが史書には伝えられている。
「Oh−! これぞまさしく『背水のDestroy Giga Rays』ネー!」
《混沌の黒魔術師》《闇次元の解放》を含めた智恵のカード3枚とアキラの1枚が消し飛び、六武衆が4人、殉死を遂げる。肉を切らせて骨を断ち、魂砕かせ霊穿つ。ガンドラの攻撃力は300×8で2400。
(機を見て使うはずのリバースまでが。それにアイツ、自分の防御用罠まで消し飛ばすなんて!)
生きてこのターンを迎えれた以上は御役御免。恐ろしいまでの、潔い戦いぶりだった。
「無人の荒野には利用も支配もない。さぁいくぜ! 《破壊竜ガンドラ》でダイレクトアタックだ!」
智恵:4700LP
アキラ:50LP
(確かに計算外。だけどこの程度、どうとでもなる。してみせる!)
「ここだ! 速攻魔法
《死亡遊戯》を発動ォ! ガンドラを生贄に捧げる!」
《死亡遊戯》
速攻魔法
自分フィールド上のレベル5以上のモンスター1体を生け贄に捧げる。 セット可能な通常罠が出るまで自分のデッキをめくり、 その通常罠を魔法・罠ゾーンにセットする。その後、めくったカードを加えてデッキをシャッフルする。
|
「めくりあてたカードは《諸刃の活人剣術》。魔法・罠ゾーンにセットする。そして!」
(まだなにかあるっていうの? ここで発動されるカード……あ、あれは!?」
「ここだ! 手札から《デーモンとの駆け引き》を発動。くれてやる! でろ!」
Berserk Dead Dragon
「そんな手を!?」 「一発ぶちこんでろ!」 「くぅっ!」
暴れる龍は止まらない。ただ、蹂躙するのみ。
「手札からカードを1枚セットする。ターンエンドだ」
「なんってやつや。正気の沙汰やないで……」
「だが、やつはそれをやる。【自殺許可証】、か」
智恵:1200LP
アキラ:50LP
「おまえの『檻』におさまる限りは、あがいても、壊そうとしても、いいように操られるだけだ。だったら、おまえの『檻』なんかハナから相手にしない。よりでかいスケールでぶっ壊す……ぶぅっこわす!」
支配者とて自由ではない。空間的制約、時間的制約、あらゆる制約が『檻』となって人を包む。そして、『決闘場(デュエルフィールド)』などはまさしく『檻』そのもの。智恵がこの闘いに赴いた時点で、アキラには『檻』が見えていた。決闘とは潔さを見せる場所。潔い決闘者に逃げ道などは必要ない。決闘者に逃げ場なし。それは翼川の影の王者とて、支配者とて、傍観と支配と操作を司る賢者とて例外ではない。
「……」 その間、智恵は押し黙っていた。あり得ない劣勢。あり得ない窮状。
「ショックやろうな。あんなちゃぶ台返し……」 「アキラは、強くなっている」
全身全霊を賭けたの卓袱台返し。ライフ50。しかし、それでもアキラは押している。
(智恵が押されている? 馬鹿な。いかにアイツが強くなっても、あの智恵だぞ)
勇一は驚いていた。智恵の強さは誰よりも知っている。だからこそ、驚くのだ。
「フフ……フフフフ……アキラ……」 「なんや!? 姐さんの様子が……」
しかし、智恵もまた強豪。その「力」で数多の敵を退けた強豪。そう、「力」。
「空気が重いね、ダル。やっぱりこの試合、見ていて胸が痛くなってくる」
「かもな。だが、もうすぐ決着がつく。あの娘はきっと、最後の勝負に出てくるぜ」
真っ平らな荒野。ならばもう何も隠す必要はない。智恵が、智恵が出る。
六周目 |
東智恵(先攻):ハンド2/モンスター0/スペル0 |
アキラ(後攻):ハンド0/モンスター0/スペル2(セット) |
「舐めるなぁ! ドロー!」
(智恵が、吠えた?)
(私を舐めるな! アンタ如きが、私を舐めることは絶対に許さない! 絶対に!)
「手札から
《幻想魔官―狂術に身を委ねた哀れな男》を召喚! 攻撃力は……」
《幻想魔官―狂術に身を委ねた哀れな男》
効果モンスター
星12/幻神獣族/神属性/攻?/守?
神属性のモンスターは通常召喚の際に生け贄を必要としない。神属性のモンスターを操るコントローラーは神属性のカードが場にいる限りいかなる召喚もできない。墓地にある通常魔法カードと魔法使い族モンスターの合計枚数×400がこのカードの攻撃力・守備力になる。このモンスターはモンスターの効果・魔法・罠の対象にならない。自分のターンのスタンバイフェイズごとに自分のデッキから通常魔法か魔法使い族モンスターを一枚選び、墓地に送ってもよい。
|
「で、でた。この局面で、このクラスのモンスターを出してくるなんて。なんて哀れな輝きなんだ」
「《墓守の偵察者》2枚、《魔法の操り人形》、《封印の黄金櫃》、《執念深き老魔術師》、そして、あんたが使った《手札断殺》によって墓地に送られた《見習い魔術師》。合計6枚。攻撃力は2400」
「この土壇場で引き当てたのか。流石だ智恵。これで勝負はわからん!」
「私はあんたとは違う。いい加減思い知るべきよ。力の差を」
敵意を剥き出しにして迫る智恵。対照的に、それまで吠えていたアキラは地に足を吸いつける。
「力の差?」 「決定的な差を見せてあげる」 「まだそんなことを言っているのか」 「なっ!?」
「そんなものは幻想にすぎない。ろくにあるわけでもないのに、スゲーあるかのように見せかているだけだ。その努力と強さには憧れたよ。だが今に至っては、それはズレた願望でしかない。今必要なのは、どっちが強いかどうかじゃあない。どっちが勝つかだ。どっちが勝ち残るかだ。下馬評にもはや意味はない」
「言ってろ! 手札から《収縮》を発動! 《バーサーク・デッド・ドラゴン》の攻撃力を半分に下げる!」
攻撃力で上回った哀れな男は竜を狩ろうと歩みを進める。だがしかし、哀れな『狂術』にとどく術はない。
「哀れだな。おまえはそのカードと同じだ。自分が地に堕ちていることに気が付いていない。見てみろよ」
哀れな男は哀れに押しつぶされるのが世の理なのか。レベル12の重力空間が、哀れな男を押し潰す。
「《グラヴィティ・バインド−超重力の網−》を発動。レベル12の、哀れな男はその力故に押しつぶされる」
「超重力!?」 「対『強者』用の『檻』ってわけだ。自分が囲われていることに気付かなかったのか?」
「くぅ……でも! でもどうやって攻めるつもり! ターンエンド」
アキラの場に、ガンドラは最早ない。確かに、このまま時間を経過すれば《バーサーク・デッド・ドラゴン》の攻撃力は下がり続け、智恵にも逆転の目が生まれるだろう。しかし、アキラは笑った。
「賢者もやきがまわったな。俺は弱者だ。俺のデッキの主要パーツがなんだったか思い出せよ」
「アキラのデッキ……しまっ……」 智恵は、気がついた。だが最早、後の祭りであった。
「《諸刃の活人剣術》発動。墓地から《六武衆−カモン》と《六武衆−ヤイチ》を特殊召喚。効果発動」
【六武衆】。1人1人では弱小だが、寄せ集めることで相乗効果を発揮する。智恵を討つ為の力を。
「場に別の「六武衆」がいることで、こいつらは真の力を発揮できる……カモン。俺の超重力を解除しろ」
「決まったな」 「うん、決まった」 ストラとエリーの短い会話。それは、全てを物語っていた。
「手札から《アームズ・ホール》を発動。《巨大化》をサーチ、《バーサーク・デッド・ドラゴン》に装着」
《バーサーク・デッド・ドラゴン》の元々の容姿が、体重が、攻撃力が約2倍となる。6500の重圧!
「《バーサーク・デッド・ドラゴン》で……
《幻想魔官―狂術に身を委ねた哀れな男》を攻撃だぁっ!」
(ディムズディルはいないんだったか。だったらぁ! この広い大地のどっかで聞いてろ!)
(嘘。私の、私の哀れな男が……『哀れな男』は、絶対的な強者ではなかったというの――)」
一端空に舞い上がった狂死龍が、マッハを超える速度で急降下、哀れな男を踏みつぶす。
「いぃっっっけぇえええっっっ!」 苦戦に次ぐ苦戦。負け続けた男の、魂の一撃だった。
Berserk Dead Foot Stamp!
「聞こえたか?」 「無論だ」 「大地を震撼させる一撃。これだけで、全てが伝わってくる」
絶対に聞こえない距離。しかしディムズディル達は聞いていた。大地が、震撼する音を。
「言ったろ。ガキはガキだと。さ、帰るぜ」 「ふぅ……なるほどなるほど。これは失敬」
ローマ達は立ち上がった。それは、一つの闘いがが終わったことを意味していた。
智恵:0LP
アキラ:50LP
【団体戦第5戦】
●東智恵VSアキラ○
【総合結果】
○新堂翔&桜庭遥VS瀬戸川千鳥&ベルク=ディオマース●
●西川皐月VSエリザベート○
●西川瑞樹&斎藤聖VSディムズディル=グレイマン&ヴァヴェリ=ヴェドウィン○
○森勇一VSダルジュロス=エルメストラ●
●東智恵VSアキラ○
「あぁきらぁ! このままですむと……」 「サヨナラだ。チエ」
簡潔なセリフ、しかしそこに込められた思いはいかほどだったか。
(強かった。惚れていた。だけど、俺はそのままではいられなかった)
アキラは勇一の側に眼を向けた。否、ずっと前から向けていた。
「2枚もらってくぜ。返してほしかったら、次の試合で俺に勝てってな」
「ああ、その喧嘩は俺が勝ってやる。喜べよ。おまえは俺の敵だ」
眼中になかった筈の男は、倒さなくてはならない男に変わっていた。
「大会の優勝などに興味はない。俺は、おまえを倒す。それだけだ」
「人気者はつらいな。だが、受けてやる。明後日の勝負は……」
勇一と晃。その激突は不可避のものであった。火花が、炎に変わる。
「俺のプライドに賭けて、俺が勝つ」 「俺の意地に賭けて、俺が勝つ」
勝負だ!
【こんな決闘小説は紙面の無駄だ!】
@最初はMTGの【ネオクレイジー・スーサイド・ブラック】みたいなデッキを捏造しようと思ったけれど、既に誰かが似たようなこと考えていたのでやめました。このデッキの正式名称は【自殺許可証―人身御供―】辺りがいいんじゃないかと思います。
Aankさんが死ぬほど笑ったことで有名。哀れな……哀れな……哀れな哀れな!
Bカードデザインアシスタント:銀弾さん
↑気軽。ただこちらからすれば初対面扱いになりがちということにだけ注意。
↑過疎。特になんもないんでなんだかんだで遊べるといいな程度の代物です。