結局の所、元村信也は餓えていた、ということになるのかもしれない。ヴァヴェリ戦での勝利は、彼を、逆に餓えさせる道へと繋がっていた。己の中に潜み続け、時にチクチク心臓をついてきた、より戦いたいという欲求。彼はその欲求に忠実となっていた。なっていたが故に今、裏コナミの雄、ローマ=エスティバーニと対峙している。もしここで彼が普通の高校一年生ならば、新上=ハイデッガー=辰則の時点で小便をちびって逃げ出していただろう。いや、裏ソリティアが無残にも壊滅した時点で参戦しなかっただろう。後ろに控えた彩の様に決して闘おうとはしなかったであろう。だが、信也は闘っていた。闘いにのめりこんでいた。彩は、そんな信也のことを不安そうな眼差しで見守っている。何時もの信也が、どこか遠くへ飛ばされてしまうのではないか、そんな不安。しかし、膨れ上がる彩の不安とは裏腹に、信也のコンセントレーションはかってないほどまでに高まっていった。打倒ローマ=エスティバーニ。彼は今、デュエルという名の美酒に酔っていた。

 「ガチャ」という音。それは、ローマが左腕に2枚目の決闘盤を装着した音。
(新上=ハイデッガー辰則の決闘盤を左腕に装着した。一人二役ってわけか)
 常時左利き用の決闘盤を使用する、ローマ故の無謀。ローマ故の無茶。
「確かに、左右の重量バランスがいいかもな。しかし、よくやるよ……」
 ローマは、二丁決闘盤の構えで決闘再開の体勢に入る。だが。
「ちょっと待ちやがれ! このままオメオメと続けさせると思うか?」
 このタイミングで割ってはいる野次馬。彼らは、ローマを取り囲む。
「辺りを見回してみろ! お前の仲間はもういない! とっくの昔に消えてるぜ!」
 いつの間にやらの出来事。先程まで存在感を発揮していた、彼らは皆消えていた。
「もうてめぇは1人ぼっちだ。だったら、何を遠慮する必要があるってんだぁ! あぁっ!」
「さぁて、おっぱじめようじゃないか。リアルデュエルなら、まずは俺だろうぜ」
 1人の男が進み出る。屈強なる体格。とてもカードゲーマーとは思えない。体育会系の決闘者。
「秋野万次郎。カードゲームでは県大会レベル―香川県第3位―止まりですが、ボクシングでは日本ランキング7位までいった強豪。得意とする左の高速ジャブは、出所が見えないと専らの評判です」
 彼だけではない。ソリティアの会の、武闘派決闘者達がローマの周りを取り囲まんとしていた。
「タコ殴りにしてやる」 今か今かと機を伺うカードゲーマー達。最初に打って出たのは、秋野だった。
「いくぜおらぁ!」 ローマを狙う高速の左ジャブ。しかし、その左がローマに届く事はなかった。

 ヒュッ!

「ぐっ!? これは……カードか! いったい、いったい誰がこんなことを! お、お前は!?」
 男の腕に刺さる1枚のカード。それは、凝固した血液の付着した、1枚の《ギガンテス》。
「かって、戦略も戦術もなく数の力だけで全てが決着する退屈な時代があった。個々の人間の、誠意も欲望も反映されぬ機械的な時代。それゆえに知恵も経験も蓄積されず、人間はただ堕落していく一方だった。そして、その忌まわしい精神が今僕の眼の前にも見える。だが、その忌まわしき闘争を脱する為の装置こそが、己の力だけで困難に立ち向かう、『決闘』というシステムではなかったか……」
 その男は、群集を掻き分け当然の様に、場の中央に躍り出る。
「ディムズディル。余計な真似を」 「一応、会社の同僚だからな。ローマ」
「同僚!?」 その言葉の持つ意味に戦々恐々とするギャラリー達。
「裏コナミ『実戦』担当、グレイ・ブラックマン(灰色の髪を持つ黒い男)」
「裏コナミ『構築』担当、ローマ=エスティバーニ。人呼んで……」
「て、てめぇも裏コナミか! 割り込んできやがって、どういうつもりだ!」
 光の速さで抗議する秋野。しかし、当の本人は至って超然としている。
「事情は知らない。だが、決闘者なら決闘でケリをつけた方が幾分マシだ」
 ディムズディルは男達に近づくと、相手の腕から己のカードを引き抜いた。
「て、てめぇ! てめぇから死に……」 しかし、その言葉は遮られた。
「その通りだ! 邪魔はいらない。これは、僕達とローマとの決闘だ!」
「元村!?」 「らしいな。さぁ、僕らは邪魔だそうだから、さっさと引こうか」
 身を翻し元の場所に戻るディムズディル。渋々と、引き下がる決闘者達。
「面白いことになってるな」 ディムズディルは、すれ違う際信也に言った。
「意外だ。アンタの書いた筋書きじゃないかと、ずっと疑ってたんですけど」 
「哀しいかな。シナリオ通りに動く人間じゃないさ。僕も、ローマもな」
「あの時、遠まわしに上がってこいって言ってましたね。上がってやるさ」
「この戦い、もう外野の方から何かすることはない。楽しく、見物させてもらう」

「いい演説だったな。友達を助けるなんていいとこ見せるじゃないか」
 評価とも揶揄ともつかぬ調子で喋るのは新堂翔だった。だが……。
「方便だ。馬鹿は死ぬ。だが、聞けばわかる程度の馬鹿なら生きててもいいだろ?」
「どういう意味だ?」 「あのまま乱闘に、暴動になればあの連中は終わっていた」
「なるほど。あっちを助けたということか」 「いや、助けたというのも正確じゃない」
「なに?」 「久しぶりにアイツの決闘が見たい。その結果がどうなろうとも、な」
「……」 新堂翔はこの時知る。やはりこの男も、裏コナミであったのだということを。
(さて、面白いことになった。千鳥を見て一目散に逃げたあの馬鹿は勿論、他の連中も、僕らが到着した瞬間その気配を察して撤退したということか。どうせ、好き勝手動いているんだろうが……)

「さぁ、始めるか」 ローマが言葉少なげに続行を促す。首を縦に振る、信也と新上。
「ええ。さっきの状況を引き継いだ、人数上は1VS2の変則タッグデュエル……」

ローマ(ライトアーム):ハンド6/モンスター1(セット)/スペル2(セット/セット)
新上達也:ハンド0/モンスター1(野菜トークン)/スペル1(《ビニールハウス》)
ローマ(新上=ハイデッガー=辰則):ハンド1/モンスター1(《キメラテック・フォートレス・ドラゴン》))/スペル1(《DNA改造手術》)
元村信也:ハンド2/モンスター0/スペル2(セット/セット)

(ここまでの決闘、ローマは明らかにその本領を発揮していない。だけど、発揮していないのは……)
「ツインデュエルディスク、中々いい具合だ」 右に己の、左に辰則の、決闘盤を装着したローマ。
「レフトアームに装着した、新上=ハイデッガー=辰則の決闘盤から決闘を続行する。異存はないな」
(始まる。打倒ローマを目指す、僕にとっての、真の戦いが始まる。あの男の動きは、何一つ見逃せない)
「メインフェイズ2、手札からモンスターを1体セット、ターンエンド。さぁ、そろそろお前の力を見せてみろ」

ソリティアの会:15200LP
裏コナミ:6900LP


「僕の力?」 「洗濯板の方はもう十分見た。次は、お前だろ?」
 ローマの挑発。そう、信也もまた、トップギアというにはもう一つ遅かった。
「……」 挑発に答えカードを引かんとする信也。しかし、彼は一端止まった。
「僕のターンだ。だけど……ローマ、1つ聞いていいか?」 「なんだ?」
「お前達は、なんでこんなことをするんだ?」 「知るかよ、そんなこと」
「なんだって?」 「今、お前『達』って言っただろ。達は余計だ」
(余計? もしや、裏コナミという枠があるだけで、こいつらは別に……)
「あいつらはただ、誘ったら来ただけだ。何を考えてるかなど知らん」
(やれやれ。おそらく、嘘はいっていないな) 「もっとも、“少し”は知っているがな」
「ジンは番人代わりだ。借金を消してやるっていったら飛んで来た。ゴライアスは俺に宴を知らせた。ベルメッセは、たまたま俺の目の前で自殺未遂をやったところだったからな。眠ってる間に縛り上げ、トランクの中に押し込んでそのままつれてきた」
「なぜ?」 「『俺が面白そうだったから』。ドルジェダクは知らん。気がついたらそこにいた」
「(やっぱり、嘘は言ってないんだろうな。)じゃあ質問を変える。なぜお前は今ここにいる」
「くだらない質問だな。俺が答えるまでもない」 「真面目に答えろ。お前以外に誰が答える」
「そこにいるだろうが。お前だよ」 「僕が!?」 「お前は、なんでここにいるんだ?」
 付き返された問い。戸惑いつつも信也は、多少の沈思黙考の後、おもむろに口を開いた。
「僕は…………カードゲーマーで、デュエリストだからだ」 「それが答えだ。それで十分」
 ローマは簡潔だった。ゆえに恐ろしい。闘いを決するゆえに決闘。では、誰が決するのか。
「ああ、そうかもな」 「決闘者なんてどいつもこいつも究極的にはそんなものさ。例えば……」
「例えば、だ。アンタはあの時一瞬帰ろうというそぶりを見せたっけな」
「本当に帰るかどうかは別としてな」 「そして僕は、それを認めたうえで引き止めた」
「聞く前からわかってたんだろ。同類さ。闘いたいから闘う。同類だ。実力差はともかくな」
「一個でいい。一個だけアンタの発言を覆す。アンタの、最後の一言を。ドロー!」

(この男は強い。だけど、だからこそ倒しがいがあるってものだ)
 ローマーエスティバーニ、本能的に倒すべき敵だと悟った相手。
(相手の捨て札はちゃんと把握している。後は向こうの、狙いを読む)
 彼は、SCSすら、裏コナミすら乗り超える為の戦いを始めていた。
「ローマ=エスティバーニ。僕は、お前を倒す。この戦いで、超えてみせる」
「威勢がいいな。だが、伏せカードが2枚も在る以上お前のカエルは蘇らない」
「問題はないさ。800のライフを支払い《洗脳−ブレイン・コントロール》を発動!」

「コントロール奪取! 同士討ち狙いや!」 居たのかコウジ……
「でかい獲物がいるんだ。利用しない手はない、というわけか」

ソリティアの会:16000LP
裏コナミ:6900LP


「《キメラテック・フォートレス・ドラゴン》のコントロールを奪う! バトルフェイズだ!」
(その程度は読んでいた。どうせなら右腕に攻撃して来い。その瞬間、俺の罠に嵌る)
(この程度は読まれているはず。だけど、それが美味しかったりするんだよな。意外とさ!)
 信也とローマの、熾烈な読み合いが始まる。信也は既に、異端決闘者の眼になっていた。
「《キメラテック・フォートレス・ドラゴン》でローマの、右腕の、守備モンスターに攻撃をかける!」
「いいだろう。だが! この《ディープ・ダイバー・マークU》は戦闘破壊によって真価を発揮する!」

《ディープ・ダイバー・マークU》
効果モンスター
星3/水属性/水族/攻 100/守 100
このモンスターが戦闘で破壊されたバトルフェイズ終了時、攻撃力か守備力、いずれかが0である、レベル4以下のモンスターを墓地から特殊召喚する。

「そーかよ。なら、僕はこれでバトルフェイズを終了させる!」
《ディープ・ダイバー・マークU》の効果発動! 蘇れ! 《ファントム・オブ・カオス》!」
(やはりそうきたか、《ファントム・オブ・カオス》。《フュージョン・ガード》で融合モンスターが墓地に落ちた時からこの程度の絵図は当然予想していた。だけど、これで終わりじゃないだろ!)
「ここだ! リバースカードオープン! 速攻魔法《地獄の暴走召喚》を発動!」

「あれって、シンヤがやばいんじゃないの!?」
 聖が叫ぶ。ゲームを動かす、極悪コンボ到来の予感。
「《ファントム・オブ・カオス》を3体。大技がくるぞ!」

「俺が選ぶのは勿論この《ファントム・オブ・カオス》だ。デッキにはまだ2枚眠っている」
(気をつけろよシンヤ。 大方アイツの手札は、でかいコンボ用に揃っているはずだ) 
 勇一達からも、傍目から見ても今のローマが危険であることは明らかであった。
(《ファントム・オブ・カオス》を媒介にした《地獄の暴走召喚》、か。だけどさ……)
 地獄が予想される状況。だが、信也はにっこり微笑む。彼には、見えていた。
「アンタなら、そうやって戦火を広げてくると思っていた! リバースカード・オープン!」
 信也は、試合前からローマの動きをつぶさに伺っていた。その成果が今見える。
「《リビングデッドの呼び声》を発動! 墓地に送った《カードガンナー》を先に特殊召喚!」

「《カードガンナー》だと!?」 ローマの意表をつく蘇生劇。ここから流れが一気に変わる。
「僕の方も《地獄の暴走召喚》の効果を解決。僕はこの、《カードガンナー》を選択する」
 信也は《カード・ガンナー》をデッキから更に2体特殊召喚。一気に数を増やしにかかる。
「うまいぞシンヤ! 最初からこの流れを読んでたってわけか! やるじゃないか!」
 《カードガンナー》=追加ドローの構図。だが、信也の手はこれで終わらなかった。
「見損なうなよ、ローマ。僕はアンタの首を取りに来てんだ。更に《激流葬》を発動!」
(《カードガンナー》の復活をトリガーに即《激流葬》! こいつ、この流れを……)
 文字通り流れが変わる。信也は笑った。彼は、カードを引いた。引くだけ引いた。
「《カード・ガンナー》の効果によりデッキから3枚ドロー。臨時収入どうもです」
 悪びれぬ様子でローマを手玉に取る信也。ローマ、相手のコンボに動きが固まる。

「す、すごい! ローマのコンボを破った! シンヤ、昔より遥かに強くなってる……」
 信也の手札が5枚へと増加。【ワーストスタッフ】を経て、信也は確実に成長していた。
(強いな。コイツを敵にまわさなくてよかった。コイツは、ホントに強い。並じゃない!)
 新上も驚くその強さ。信也は伺っていたのだ。この、相手の力を逆手に取るこの瞬間を。
「手札からモンスター・カードを1体セット。ええ、僕の番はもう終わりです。あれ、どうしました? 顔色が優れないんじゃないですか。大方ミラーフォースか和睦の使者辺りを用意していたんでしょうが、使うタイミングがなかった、といったところでしょう。悪巧みなんかするもんじゃないですよ。お陰でこっちは友情コンボが成立したんですから。願ったり叶ったりってのは、こういう状況を指していうんでしょうね」

ローマ(ライトアーム):ハンド6/モンスター0)/スペル1(セット)
新上達也:ハンド0/モンスター0/スペル1(《ビニールハウス》)
ローマ(新上=ハイデッガー=辰則):ハンド1/モンスター0)/スペル1(《DNA改造手術》)
元村信也:ハンド4/モンスター1/スペル0

「えげつないマネをしやがる。あのガキ、いやシンヤのやつぁ」
 ストラの言うように、シンヤの、冴えた決闘は脅威の一言。
「さぁ、どうします? 次は貴方のターンだ。これで終わりなら……」
「ライトアーム、ドロー……俺のコンボが、これで終わりだと思うな!」 
 ローマの反撃。彼は、サイド・コンボを発動しにかかる。
「《死者転生》を発動。手札から《人造人間−サイコ・ショッカー》を墓地に送り、《ファントム・オブ・カオス》を墓地より回収する。そして、通常召喚の権利を行使。復活しろ! 《ファントム・オブ・カオス》!」

ソリティアの会:15200LP
裏コナミ:6900LP


「み、みろ! また《ファントム・オブ・カオス》が召喚された! まさか!」
 先の《フュージョン・ガード》は、この時の為の布石。ローマ、反撃開始。
「特殊効果を発動! 墓地の、《レインボー・ネオス》を……」
「ローマがまた何か仕掛けてくる!? シンヤ、これを通しちゃ……」
 窮地。だが信也の決闘に、それはなんら障害とならなかった。
《ファントム・オブ・カオス》の効果発動失敗……チェーン終了……

「すいません。手札から《D.D.クロウ》……《レインボー・ネオス》にはお引取り頂きました」
(攻撃力4500に3つの効果。あの男なら存分に有効活用できるのだろう。しかし、臭いものには予め蓋をしておく。どんなプランがあろうとも、スタートで躓いていてはどうにもならない、てことさ)
「す、すごい。シンヤ……こんなにも強くなってるなんて……」
 信也の、圧倒的な強さに誰よりも驚いたのは彩だった。途轍もなく、強い。
(ヴァヴェリ=ヴェドウィン戦の勝利が、シンヤを更なる高みに押し上げた?)
「これで、《ファントム・オブ・カオス》は縦向きのまま。どうします? ローマさん」
 この状況、例え壁を新たに出せたとしても、大ダメージは免れない。免れようがない。
「どうするかだって? こうするだけだ。手札からカードを4枚伏せてターンエンド!」
(思い切るな。これでセットは5枚。だけど、その程度で僕は止められない!)

「ローマだったか。焦りが見えるな。闘い方が大味だ」
「ああ。無駄が多いな」 勇一と翔。珍しく意見が一致する。
「おい、お前が見せようとしたのは、本当にこいつなのか?」
「さぁな」 ディムズディルは、いつになくぶっきらぼうだった。

(さぁて、折角ローマを2回も止めたんだ。復活する前に叩けるだけ叩いておきたい所だが……)
「俺の……たぁん、どろぉ……ぐぅ」 次は新上のターンだった。だが、見るからに足取りが悪い。
 場はがら空きな為追撃のチャンス。だが、引いたのは《ビニールハウス》。追撃は、不可能だった。
(新上さんはまだ動けそうにないか。無理もない。栽培仙人との死闘でエネルギーを使いすぎた)
 そう、あの死闘は新上達也の側にも相当なダメージを与えていた。悔しがり、信也にわびる新上。
(悪いなシンヤ。あと少し回復への時間をくれ。そうすれば、きっと二毛作を開始してみせるさ!)
(貴方は栽培仙人を止めた。ローマを止めるのは僕の仕事です。このターンは、僕に任せてください)
(りょーかいだ。俺は次のターンに向けて力を溜めさせてもらうぜ。負けるなよ、シンヤ)
(負けませんよ。僕はずっとローマを観察してきた。そして今、僕はローマ殺しを完成させる)
「はっ、はぁ……永続魔法《ビニールハウス》を起動。手札1枚をコストに野菜トークン2体を栽培。そして、今度は《ビニールハウス》第2の効果を発動。デッキからカードを1枚ドロー……」

《ビニールハウス》
永続魔法
●カードを1枚捨てる:自分フィールド上に野菜トークン(植物族・地・星1・攻/守0)を2体特殊召喚する。(このトークンは植物族モンスターの生け贄召喚のため以外の生け贄にはできない)
●2度以上起動したこのカードを墓地に送る:カードを1枚引く

 来るべき取引の時に向け、栽培実績のある《ビニールハウス》を売却。資金調達を図る新上。
「カードを1枚セット。ターンエンド。ローマ、この……ターンは、シンヤに耕して……もらえ」
 新上は結局一回休み。次はローマの左腕、即ち利き腕からカードが引かれる。
「レフトアーム、ドロー。モンスターを1体セット。このままターンエンドだ」
 淡々とした展開。だが、誰もが、“動かす者”のターンに期待する。
「淡々としているな。だが、そろそろ動く。そして動かすのは……」

(ここだ! このターンが勝負! ローマを潰すには、ここで仕掛けるしかない!)
「僕のターン、ドロー……スタンバイフェイズ、《黄泉ガエル》を特殊召喚する!」
 信也のセットモンスターは《魂を狩る死霊》。これで既に、モンスターが場に2体。
(場にはやりくりターボのギミックがセット。アレが仕掛けたところを、チェーン……)
 一方、冷静に状況を検分するローマ。しかし、この時、ローマは何かを直感。そして!
「リバースカード・オープン!」 《ゴブリンのやりくり上手》が、同時に3枚発動される。
「更にチェーン、《非常食》! 効果解決!」 ローマ、動く。不可解にも、動く。

ソリティアの会:15200LP
裏コナミ:9900LP


「このタイミングで? まだ引っ張れそうなものなのに……」
 瑞貴の言うように、無意味とも思える前倒しの発動。しかし!
「そこで闘っている人間にしか見えないものもある。ローマは、何かを見た」
 好手か悪手か。いずれにしろローマは発動した。一方、信也も動き出す。
(【やりくりターボ】のギミックを内蔵。これで手札は10枚、ライフも約1万か)
 序盤の攻防に隠れ、《手札断殺》により、彼は手札を揃えていたのだった。
(流石だよローマ=エスティバーニ。だけどな……その程度じゃ……)
「どうしたシンヤ。俺を倒すんじゃなかったのか? ゴールは遠いな……」
 ドスの効いたローマの言葉。しかし信也は怯まない。怯もうとさえしない。
「ええ。倒しますよ。この程度じゃ、僕を倒すには足りない! 行くぞローマ!」
(若さ故の勢い。まったくひるまない、か) 信也は、決闘の流れを掌握しにかかる。
「《黄泉ガエル》と《魂を狩る死霊》を生贄に捧げ……現れろ!」





光と闇の竜(ライト・アンド・ダークネス・ドラゴン)





「《光と闇の竜》!? シンヤ、そんなものまで入れてたの!?」
 あらゆる呪文・能力を否定する悪徳の竜。ローマ封殺の切り札。
(ライダーか。俺が感じた悪寒は、こいつのものだったというわけか?)
「バトル! 《光と闇の竜》で攻撃力『0』の、《ファントム・オブ・カオス》を攻撃!」
「くっ、ライトアームから《聖なるバリア−ミラーフォース−》を発動する!」
「ビンゴ! 500ポイント分攻撃力を下げ、その発動は無効にする!」
「いつ見てもイライラさせる。《光と闇の竜》の特殊効果かッ……!」

ソリティアの会:15200LP
裏コナミ:7600LP


ダメージポイント2300……ダメージ・ゲイン相殺率70%オーバー……」
「ライダーもどきが!」 突然の来襲に歯噛みするローマ。だが、ライダーは依然として吼える。
「ターンエンドだ。さぁローマ。手札を強化したんだろ! だったら、なにかやってみろよ!」
(シンヤ、凄い。私と一緒に翼川に入った頃とは、比べ物にならないほど強く。強くなってる)
「ターンエンド」

ローマ(ライトアーム):ハンド10/モンスター0/スペル0
新上達也:ハンド0/モンスター2(野菜トークン/野菜トークン)/スペル1(セット)
ローマ(新上=ハイデッガー=辰則):ハンド1/モンスター1(セット)/スペル1(《DNA改造手術》)
元村信也:ハンド3/モンスター1(《光と闇の竜》)/スペル0

「しっかしアイツもえげつないやっちゃ。だいたい、なんで今アイツがライダーもっとったんや……」
 信也が、今までにライダーを使ったという話も聞かなければキープしていたという話も聞いていない。が。
「俺がゴミ屑(SFA)と遊んでいる間に仕込んだか。ゴライアスと遊んでいた時は、使っていなかったな」
「御名答。ガジェットがもういらなくなったので、ソリティアの会の人に、ライダーと交換してもらいました」
 一瞬、皆が皆「それって損してね?」と耳を疑ったが、相場に疎い、信也にそんな常識は通用しない。
「ほぅ。目の前の、俺を倒す為だけに掻き集めたのか。この、俺だけを倒す為に」
「他にも、何か仕込んでいるかもしれませんね。ローマ、僕は卑怯者なのかな?」
 ローマは、「ニィ」と笑って答えた。信也の戦いぶりに、満足を抱きつつあったのか。
「SCSの実戦担当曰く、『カードゲームは不条理』。なら、不意打ちも当然アリだよなぁ」
 ローマは、「くい」っと首を振り、横で見ていた、ディムズディルに向かって話を投げつけた。
「手札を隠す時点で潔さからは程遠い。加えてリバースカード。公明正大への反逆。西部劇に例えれば、銃だけで闘うと見せておきながら、服の裏に自分だけ隠れて鉄板をつけ生き残るような真似が、カードゲームではむしろ大衆から賞賛される。不意打ちなど日常茶飯事。そもそもが、自分では殴りあわず、モンスターという名の代理人に闘わせる非人道的なシステム。のみならず、代理人同士の一騎打ちすら保証されない。落とし穴を掘り、地雷を設置、相手の無力化を第一に考える。いかに無抵抗の相手を嬲り者にするかしか考えていない決闘者達。或いは、己のエゴイスティックな欲望を満たすが為に、デュエルにかこつけてデッキの御披露目会を開始する決闘者達」
「アイツ、決闘者の禁句を堂々と言いやがった」(※仲林)
「真に正々堂々を、誇りある闘いを謳いたいなら全員が同じデッキを使えばいい。武器の性能に頼り、メタゲームと称して常に人を出し抜くことしか考えていない卑劣漢の集まり。誰もが、誰もが自動的に勝てるシステムを模索する。そして、そのような真似がまかり通るどころか賞賛の対象とすらなりうるのが、カードゲームというメカニズム。カードゲームという近代思想」
「そうだ。僕らは、そんな領域で戦っている」 「生まれた時から、薄汚れている」
「しかしそれでも……」 「むしろ、だからこそ」 「「カードゲームは『決闘』だ」」
「そう。『決闘』だ」
「事実、僕らは今、現実にこの距離で向き合っている」 「“常時背水の陣”。それが唯一最大のモラル」
「カードゲームの決闘性はどこで担保されるのか。カードゲーマーのデュエルとは、相異なる2人の決闘者が、互いの制空圏が触れ合う距離で向かい合い、闘うことを宣言する、そのプロセスを本質とする。向かい合う。ただそれだけでいい。それだけで十分すぎるほどに決闘。決闘に逃げ道無し。宣言したのだ。相手の前に立ったその時、宣言したのだ。闘うと! 向かい合って決闘を宣言したからこそ、不条理が許容される。それどころかむしろ、不条理こそが条理となる。闘いたい、楽しみたい、魅せたい、騙したい、蹂躙したい、相手を知りたい、戦いに酔いたい、逃げたい、縁を切りたい、帰って寝たい、もうこれっきり2度とカードゲームをやりたくない……動機はともあれ、お互いに、闘う為に、制空圏が触れ合う距離で向かい合ったのだ。ゆえに、カードゲームは決闘だ。そして……」
「そして僕達は、そんな闘いを望んでいる」 「さぁ、俺のターンだ。ドロー……」

《Gold Sarcophagus》 発動」 ローマ、捨て駒を展開。今は、兎にも角にも手を打つ場面。
「《光と闇の竜》の効果を発動! 攻撃力を500下げその発動を無効に! 無駄な足掻きだ」
「俺は手札からカードを4枚伏せる。モンスターを裏守備表示で召喚。ターンエンドだ」
「《光と闇の竜》でローマのコンボを塞き止めるた。うちの下っ端ながら、随分と腕を上げた」
「強い。大会初日俺の【サイバー・ダーク】とやりあった時とは違う。アイツ、化けやがったか」
「ねぇねぇ。ねぇさぁ、シンヤってここまで強かったの? 圧倒的じゃない」
「ヒジリ、アイツはもうルーキーやないで。この強さは、本物や!」
「よーするに! この私でも、今や苦戦するかもしれないってことね」

「やるなシンヤ。お前となら、いい野菜を作れる! ドロー!」
 皆が信也に注目するその時、あの男もまた帰還する。
「あ、あれはぁーっ! あの男が、戦線に復帰したぁーっ!」
「あがってきたか。このまま大地に眠っていればいいものを」
 ローマの停滞は彼の復帰を促す、言わずと知れた新上達也!

「み、みろ! 新上の身体が、光って唸る! あ、あれはまさかっ!」
「神宮寺に村坂、そして栽培仙人、尊い犠牲は無駄にはしない!」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっっ!」

 くわっ!

「光合成体質(ハイパーモード)か!」
 神々しい光。謎の発光現象が、ローマを追い詰める。
「俺は場の野菜トークン2つを出荷して、最上級植物を通常栽培!」

《千年大樹(サウザンド・ジョーモン)》
効果モンスター
星8/地属性/植物族/攻2600/守3500
自分の手札・デッキ・墓地から「ジョーモン・ディフェンダー」を2体特殊召喚する。この効果は1ターンに1度しか使用することができない。ダメージステップ終了時にこのカードの表示形式を守備表示にする事ができる。

「《光の闇と竜》がいる以上、迂闊に栽培効果を使うわけにはいかない。だが!」、
 ローマのモンスターを屠るには十分すぎる作物。当然バトルフェイズ! 
「右腕の、ローマの守備モンスターを攻撃!」 新上の、渾身の一撃。
「くっ、俺が伏せておいたのは《グレイブ・スクワーマー》。効果を発動!」
「《光と闇の竜》の効果を発動! 《グレイブ・スクワーマー》の効果は無効だ!」
「カードを1枚伏せてターンエンド。ローマ、お前の命運はここで尽きる!」

「す、すげぇ! あの2人の息はぴったり! 最強にして最高だぁ!」
「デカイ! このタッグはデカイ! まるで十年来のコンビの様だ!」
「今年最高のベストタッグ! この勢いは天にまで昇るぅ!」
 そう、彼らのタッグはここにきて完璧なまでの精度を誇っていた。
「すごいですね、あの2人。あれ? 福西さん、どうしました?」
 もっとも、渋い顔をする者もいる。忘れ去られた、福西彩だ。
(私、私は今なにをやってるんだろう。私って……いらない子?)

「レフトハンドからドロー……(ライダーの攻撃力は1300、後一歩)」
 ローマの眼前には《光と闇の竜》。これを沈めないことには始まらない
(《サイバー・ドラゴン》でも引ければ話が早いのだろうが、こいつで殺る!)
「手札から《D.D.アサイラント》を通常召喚する。バトルフェイズだ!」
「《D.D.アサイラント》。攻撃力1700。爺さんもいい物を使っていたな!」
「《D.D.アサイラント》で《光と闇の竜》を攻撃。消えろ、ライダー!」

ソリティアの会:14800LP
裏コナミ:7600LP


「ようやく目障りが消えたか……」 ライダー退場。十二分に暴れた上での、退場。
(既に、布石は打たれている) しかし、信也の猛攻は続く。新たな紡ぎ手によって。
「ライダーの、最後の効果を発動。僕の場のカードを全て破壊。墓地から特殊召喚」

神獣王バルバロス

「手はとうの昔にうってあった。攻撃力3000のバルバロス。倒しに行く気やな。信也は」
「それだけじゃないわ! あの、栽培仙人の、2代目の場を見て! 栽培されてるわ!」
 そう、新上の場にもまた、《ボタニカル・ライオ》が2体、見事に栽培されていた。
「俺のことを忘れるな。バルバロスの特殊召喚に呼応して、《連鎖栽培》を発動」

《連鎖栽培》
通常罠
墓地からモンスターが特殊召喚された時発動可能。自分の墓地から、攻撃力2000以下の植物族モンスターを2体まで選択し、守備表示で特殊召喚する。

「序盤からターボをかけた上に《手札断殺》の連発。墓地は十分肥えてるぜ」
「つ、つぇえ。なんてタッグなんだ。『質』と『量』。完璧なコンビネーション」
「シンヤ。ここが勝負どころだ。一気に、一気にローマを攻め立てるぜ!」
 信也に早期決着を促す新上。これに対し、信也は妖しく頷いた。 
(ええ、そうしましょう。僕の、僕の勝利は……すぐそこだっ!)
「だが、ライダーが消えたことで、リバース効果が発動可能となる」
 ローマがリバースしたのは《魔装機関車 デコイチ》。転ばぬ先の1ドロー。
(こちらの手を警戒、ドローに賭けてきた。それだけ、向こうは苦しい筈)
「ターンエンドだ」 ローマのターンが終了。彼は、この瞬間を待っていた。

「僕のターン、ドロー……このタッグは強かった、な。クク……」
(アレ? 信也の様子が……なに……この禍々しい雰囲気は……)
 彩が感じ取ったそれは錯覚に非ず。信也は、最後の仕上げに入る。
「僕は勝つ。この闘いに勝利する。そして……ディムズディル!」
 信也はディムズディルを指差す。彼は、その本性を現し吼えた。
「あなたのところまで一気に駆け上がる。そして、そのまま超える!」
 彼は、眼に入る強敵全てを倒す、それだけを望んでいたのだった。
「僕へ挑戦状を叩きつけるのは自由だが、ローマを……」
「倒せるさ。そう、ここからが本当の“ショータイム”だ」
「スタンバイフェイズ、墓地の、《黄泉ガエル》の自己復活効果を発動する」
「《D.D.クロウ》をレフトアームから発動! 微温いショーもあったものだな」
「まだだ。僕のショーはここからさ」 そういうと信也は、新上の方を見た。

(新上さん。今まで本当に……御苦労様でした)

「1500ライフを払い手札から《自律行動ユニット》を発動!」
「《自律行動ユニット》。そりゃぁ、ライフは腐るほどあるがいったい何を……」
 信也の策。ローマが一撃必殺を狙うと見て、浮いたライフをも存分に使う策。
「僕はぁ……ローマのレフトハンドから《サイバー・ドラゴン》を復活させるぅ!」
「な!? シンヤ! おまえまさか!」 新上が思わず叫ぶ。悪夢再来。まさしく再来。
「《DNA改造手術》の効果は未だ持続している。“悪魔の技術”を手にするのはこの僕だ!」
(シンヤまさか……嘘でしょ。そんな酷い真似……) しかし信也は、悪魔にすら手を伸ばす。
(ずっとこの機を伺っていた。僕の勝利が見える。新上さんの植物をも巻き込み、アレを……)

異種遺伝子交配連鎖要塞龍(キメラテック・フォートレス・ドラゴン)

(《キメラティック・フォートレス・ドラゴン》の力を、この手に掴む)
「やらせるかぁっ! 右腕から《インスタント・リバース》を発動!」

《インスタント・リバース》
速攻魔法
フィールド上に表側表示で存在する魔法・罠カードを1枚セット状態に戻す。次のターンのエンドフェイズ、カードを1枚引く。

「やるな。だが、《サイバー・ドラゴン》をこのまま残すリスクを犯すほど、僕も間抜けじゃないさ!」
「言いも言ったな。俺の首、切り落とせるものなら切り落としてみろよ。元村信也。落とせるならな」
「落としてやるさ! 《サイバー・ドラゴン》を生贄に《マリシャス・エッジ》を召喚! さぁ、バトルだ!」
(バルバロスで3000点。マリシャス・エッジで2600点。あわせてぴょこぴょこ5600っっっ!)
ダメージポイント5600。活動限界……活動限界……緊急モードに移行します

ソリティアの会:13300LP
裏コナミ:2000LP


「土俵際でライフが残ったな。だけどアンタはもうおしまいだ。もう粘りきれはしない」
 信也は今満ち満ちていた。しかし、この時、信也だけが気がつけなかった。
(ローマは沈黙している。勝った。この勝負は、僕がもらう) 信也は、気がつかない。
(シンヤは俺の作物を犠牲にしてまで勝ちにいった。恐ろしいやつ。しかし……)
 新上以下、他の全ての者がこの時得体の知れぬ何かを直感する。
(今、ローマを取り巻く空気が違う。いや、ずっと前から、既に違った?)
(信也は、確実に、勝利に向かっている。なのに……それなのに……)
 元村信也の幼馴染、福西彩(15)はこの時、言い知れぬ悪寒を感じる。
(シンヤと、周りとの間の温度差? なに? なんで私は、震えているの?)
(いけるぞ。僕は勝つ。勝って、どこまでも駆け上がる。駆け上がってみせる)
「僕は、カードを1枚伏せる」 (シンヤ……駄目よ。この決闘は、駄目……)
 《我が身を盾に》を伏せ万全の体制で臨む信也。しかし、何かがおかしい。
「これで、僕の番は終了……」 (駄目だって。だめ。ダメ。怖い。駄目……)
 信也がエンドフェイズに移行したその時、目の前の決闘狂人は嗤った。
「面白いよなぁ! 向かってくる、はねっかえりを潰すのは!」 「え?」



シンヤ、早く逃げてぇぇぇ!



《ウィジャ盤》起動。《死のメッセージ「E》を展開……
「な……《ウィジャ盤》……なんで……なんでそんなカードが……」
 《死のメッセージ−『E』》。ディムズディルは、ぼそっとこう言った。
「ローマ=エスティバーニの、【脱構築型決闘】が始まったな……」


第43話:脱構築型デッキ構築の申し子



 ――――

「ローマ、もうすぐ試合が始まる。金になるんだろ? この試合は」
「お前のような貧乏人にはな、グレイ・ブラックマン(中途半端な愚か者)」
 その当時、ディムズディルとローマは、付かず離れず(?)の関係にあった。
「そのデッキ、今日使うやつか。昨日のは壮絶だったが、今日のは……」
 ローマは、デッキを裏返し、ディムズディルの方へ振り返る。
「寡黙な美少年が、随分とお喋りになったものだな。見る影もない」
 揶揄するような調子のローマだが、何時ものことだった。
「喋れた方が金になるんだろ。誰かさんの教えだだったような」
「貧乏人にはお似合いな生き方だ。糞を食らって食費を浮かせ」

「で、今日は勝ったのか? 貧乏人」
「大した勝利じゃない。相手が弱かった」
「これで14連勝か。随分と勝ち運に恵まれたな」
「2戦分はな。そろそろ“お前”への借りも返そうか」
 ディムズディルの借金、それはローマへの対戦成績。
「酷い戦跡だ。ま、半年前に比べれば今は幾分マシだがな」
「今月は、まだ僕の方が1勝分勝ち越していたような気がするが」
「互角程度じゃ永遠に借金は消えない。そろそろ諦めたらどうだ?」
「人がルールをよく知らない時期に、よくぞああまでカモったものだ」
「隙あらば急所を狙ってきた男相手に、何をやっても卑怯とは思わなんな」

「何をやっても、か。だが、よく実戦でアレがまわるな。未だに理解できない現象だ」
「合理主義という亡霊に呪われているらしい。勿論、俺も嫌いだ。逆相思相愛」
「【グッドスタッフ】で闘ると事故る、だったか。お前だけだよ。そんな人間は」
「俺には、お前の行動原理と行動結果の方が理解しがたいがな。死にたがり」
「お前に言われたくはない。お前の決闘を傍から見れば、どうも自殺行為なんだとさ」
「勝つことしか考えてないぜ。俺には、俺のプロセスがある。愚図共にはそれが見えていない」
 ディムズディルは軽く頷いた。確かに、ローマの決闘は読みにくい。だが、読む余地も確かにある。常人離れしているが故に正常な論理では読めないが、そこには確かに、“なにか”がある。
(ああ、わかるさ。闘ってるとたまに直感する。気がつくと、死神の鎌を突きつけられている。お前との決闘は、その振り下ろされた鎌を如何にして捌くか……いや、それ以前に鎌の存在に気がつけるか……)
「俺の視界には四六時中もやがかかっているが、もやの流れを見ていれば、見えないものが見えてくる」

 決闘者としての、ローマ=エスティバーニはアメリカの貧民街で生まれた。彼は、欧米的合理主義の生み出したバグだった。ローマがこの世に生を受けてまもなく、彼の住んでいた家に火の手が上がる。両親の身体は驚くほど呆気なく燃えていた。ローマもまた死神から手招きされていた。だが、ここで奇妙な現象が起こる。彼には、今わの際に人が見る、幻影としての死神の他に、別の“なにか”が見えていた。彼は飛び出した。だが、それは消防隊員が用意した「ふろしき」に向かってではなかった。彼は、視界の悪さから眼もろくに見えない状況から、明後日の方角に、およそ助かりようがない方向に飛び出し、窓を突き破った。理屈では間違っているのかもしれない。だが、彼はその方角に、机上の論理を超えた“繋がり”を見ていた。

 奇跡的な出来事だった。彼は窓を飛び出した瞬間カーテンに引っかかり、それが風にあおられローマ自身も流される、するとそこには木の枝がぶらさがっており、幼いローマはそれにつかまる。すると火事の余波で枝が折れ曲がり、当のローマは風にあおられながら振り落とされるが、そこには野次馬達が居た。彼は、カーテンや枝を経由したことによる減速と、野次馬のクッションで生き残った。まともに考えれば、煙をかき分け消防隊員を見つけて飛び降りるのが合理的なやり方だったのだろうが、彼はそうせずに、かつ、助かった。尚、余談ではあるが、“ふろしき”の生地には欠陥あり、別の火事で飛び降りた子供が1人、死亡している。ローマは、生き残った。

 彼は幸運だったのだろうか。いや、そうではない。結果として、彼は破滅した。身寄りのない彼は貧民街に、決して短くない時間身を落とすこととなった。彼は決して、ただ単に幸運だったのではない。むしろ、彼をして命を繋いだ要因は一種の才覚。そう、才覚。彼は己の才覚を持って強引に生き残ったのだ。80%90%を超える華々しい確率の裏に切り捨てられた、0.00000000001%を拾う才覚によって、強引に、この世に生をとどめたのだ。それがローマ=エスティバーニの発端だった。

 彼には“見え”ていた。常人ならば確率が低い・有り得ないなどといって現実に狙うことすらしないであろうその瞬間を見る才能が彼には備わっていた。人の人生は哀しいぐらいあっさりと変動する。普段宝くじなど買わない合理主義者が、酒の勢いで勝った宝くじで億の金を掴み取ることすらこの世ではありうる。彼は、己の動きを敢えて不自然に調整することで、普通から異常への飛躍を日常とした。彼は服の色すら、敢えて最善から一歩ずらす。彼は、自然から追放される代わりに不自然から愛されたのだ。彼の組むデッキはどれも異常である。だが、彼だけはそれを扱える。彼は、貧困に喘ぎながらも、その才覚に気がついた。これは、最早受動的な幸運なのではなく、一種の才覚。それを自覚した時、彼、ローマーエスティバーニは決闘者として覚醒したのである。

 彼は、【グッドスタッフ】で10回に9回事故る代わりに、数多の周縁を、この世の常識から逸脱した“求められぬもの”達を、自由自在に操る“異端の魂”を持っていたのだ。今も、ローマ=エスティバーニの眼には不純物が見えている。だが、近代化に伴い彼らがが非合理的だと切り捨てていったその不純物こそが、ローマ=エスティバー二を高めていく。ローマは、近代合理主義への復讐者なのだ。

 常人はこう考える。現実に機能する確率の、高いものを上から獲り、低いものを下から順々に切り捨てていけば成功の確率が上がるのだ、と。だが、ローマは違う。機能的な確率90%の集合体を捨て、確率1%の端切れを敢えて繋ぎ合わせる道を、彼は選ぶ。それが、彼を最も活かす道なのだから……。

 ――――


「この局面、遅すぎる。なんのつもりだ!」
 あまりの予想外に困惑する信也。だが!
「こういうつもりだ! 2枚目の《ウィジャ盤》発動!」
《ウィジャ盤》起動。《死のメッセージ「E》を展開……
「くぁーっはっはっはっはっはっ! これでツーペア!」
(常識外れの『ダブル・ウィジャ』。なんだ、何を狙う!?)
《Call of the Haunted》発動。蘇生対象……
(くっ! 何が来る! いったい、何を蘇らせて、どうしようと!)
「地獄の底から蘇れ! 《ファントム・オブ・カオス》!」
「1度やられたカードを! 新たに栽培するとでもいうのか!」
「役名は“フルハウス”だ。It's a Show Time!!」

ローマ(ライトアーム):ハンド4/モンスター1(《ファントム・オブ・カオス》)/スペル5(《ウィジャ盤》/《死のメッセージ「E」》/《ウィジャ盤》/《死のメッセージ「E」》/《リビングデッドの呼び声》)
新上達也:ハンド0/モンスター3(《千年大樹》/《ボタニカル・ライオ》/《ボタニカル・ライオ》)/スペル0
ローマ(新上=ハイデッガー=辰則):ハンド0/モンスター0)/スペル1(セット)
元村信也:ハンド0/モンスター2(《神獣王バルバロス》/《マリシャス・エッジ》)/スペル1(セット)

「ドロー……《ファントム・オブ・カオス》の効果発動!」
《人造人間−サイコ・ショッカー》をゲームから除外
(サイコ・ショッカー? ここで!? どうして!)
 ローマ、舞う。彼は、手札から1枚のカードを取り出した。
「2枚の《ウィジャ盤》と、《リビングデッドの呼び声》を墓地に送る!」
「永続罠3枚を生贄!?」 「まさか、アレを出すつもりなのか!?」
「天を貫く極炎の舞……骨まで燃え尽きとっとろ消えろ!」
 ローマが、1枚のカードを攻撃表示でセット。その時だった。

 ドォォォーン!

「な、なんだぁ!? いきなり……建物がぶっとんだぁ!?」
 吹き飛ぶ建物。いつ誰が仕込んだのか、凄まじい爆発。
「爆発で跡形もなく……あ、あれを見ろ! あれは……」
 そこには、紅き閃光が空を舞っていた。その名は……

Uria,


Lord of Searing Flames


 突如として爆発した建物をバックに、ウリアのビジョンが現れる。そのオーラは圧倒的だった。爆発の際のショックに加え、その禍々しいオーラに当てられた20人の決闘者がバタバタと倒れ付していく。その身体には、うっすらと火傷の跡。人間の持つ想像力が、肉体の制御を超えきった一瞬である。
効果発動。“Trap Destruction”。プレイヤーDの、右端の伏せカードを破壊
「いったい何が起こるっていうんだ? いや、何も起こりはしない。起こってたまる……」
「起こすんだよ! ここからなぁっ! 永続魔法《デーモンの宣告》を設置。効果発動!」

ソリティアの会:13300LP
裏コナミ:1500LP


「俺が宣言するデッキトップのカードは……」
 ローマは、目を瞑った。彼は全神経をその一瞬に集中した。
(外れたら終わる。いいよなぁ。この一瞬、この一瞬がなぁ)
(当るわけがない。当るわけが……当ってたまる……)
 信也は、怯えていた。その一方で、ディムズディルは確信していた。
「1ターン目なら当らなかっただろうな。だが、この局面ならアイツは当てる」
「《トーチ・ゴーレム》を宣言。大当たりだ。《トーチ・ゴーレム》を手札に加える」

「アイツ、あてずっぽうで当てやがった!?」 「なんて強運……あ、アレは!?」
 信也は気がついた。この局面で《デーモンの宣告》が発動される、その真の意味に。
(《ウィジャ盤》を失ったにも関らず、《死のメッセージ「E」》が場に残っている!?)
 本来なら一蓮托生のウィジャ・コンボ。だが、そこには確かに死のメッセージ。
(サイコショッカーに擬態した《ファントム・オブ・カオス》の能力!?)
(永続罠の破壊効果が無効となり、結果として永続魔法が残った)

「不味い。奴は……奴は本気で……本気でアレをやる気なのか……」
 永続魔法3枚。その意味するところは1つ。第2の幻魔が降臨の時を迎える。
「2枚の《死のメッセージ「E」》と、《デーモンの宣告》を墓地に送る……」
 彼は1枚のカードを攻撃表示で置く。その時、新たな悲劇が起こる。
「今度は電線がショートしたぁ! みんな気をつけ……ぐぁぁっ!」
 炎の次は電撃。電気ショックの余波により、更に被害決闘者が増大。
「あ、あれは……あ、悪夢だ。こ、こんな……ことが……あるわけが……」
 雨雲の中から禍々しき姿を見せる、雷鳴の申し子。その名は……

Hamon,


Lord of Striking Thunder


「ウリアに続いてハモン……はっ! 《トーチ・ゴーレム》が僕の場に攻撃表示!?」
 既に、《トーチ・ゴーレム》の特殊召喚は完了していた。トークン2体の、特殊召喚と共に!
(トークンが2体、あと1体いればあの条件が揃う……いや違う。《ファントム・オブ・カオス》!)
「P・O・Cの能力。種族まではコピーしない。そう、悪魔族としてカウントされる。依然として!」
 炎上する建物の上を舞うウリアと、ショートする電線の上を飛ぶハモンが決闘者達を次々に堕としていく中、ローマは邪悪な微笑を浮かべながら、最凶にして最後の幻魔を召喚する!
「2体のトークンと……《ファントム・オブ・カオス》を墓地に送るぅ!」
 ローマの叫びに、空が、まるで呼応したかのように黒く染まる。
「な、なんだぁ!? 空が真っ黒な霧に包まれたぁ!?」
「お、終わりだ! ノストラダムスが、一周回って迎えに来たァ!」
 魔界の鉄拳番長今何処! 世界最強の置物! その名は……

Raviel,


Lord of Phantasms


 最後の幻魔が降臨。黒い霧の中から、瘴気と共にラビエルが姿を現す。決闘者達が、倒れていく。
「おいおい、冗談だって誰か言えよな。ソリティアの会は今日、100人単位で動いてた筈なんだ。なのに、立ってる方が少ないっていったいどういう冗談だ? 俺、名誉会長やめよっかな……」
 仲林が冗談めかして語るが、この状況は、最早冗談では済まされない。
「さぁ、お待ちかね。壮観だろう? こいつらが、雁首そろえたこの瞬間は!」

神炎皇ウリア
コナミナンバー:SOI-JP001
TYPE:一撃離脱型強襲用MS(モンスター)
WEAPON:出力調整型火炎放射器“Hyper Blaze”/遠距離狙撃用火炎弾“Trap Destruction”
幻魔皇ラビエル
コナミナンバー:SOI-JP003
TYPE:一点突破型強襲用MS(モンスター)
WEAPON:漢の拳“天界蹂躙拳”
降雷皇ハモン
コナミナンバー:SOI-JP002
TYPE:拠点爆撃型強襲用MS(モンスター)
WEAPON:哀しみの挽歌“失楽の霹靂”/愛ゆえの苦悶“地獄の贖罪”

「まさか……《ファントム・オブ・カオス》と《地獄の暴走召喚》を経由した幻影融合コンボは囮。僕がそれを防ぎにくることまでが一連のコンボ内容だとしたら……いや、そんなはずは……そんなはずが……」
 愕然とする元村信也。ディムズディルは、静かに語りだす。ローマを代弁するかのように。
「ローマ=エスティバーニの本質を単なるコンボデッカーだと考えたのなら哀れと言う他ない。アイツにとってデュエルとは、2つの陣営がぶつかった瞬間に生じる、捩れのようなものを昇華する、その為のプロセス。《フュージョン・ガード》を用いたA級コンボデッキ【ファントム・オブ・カオス】と、地獄の暴走召喚からの三幻魔コピー融合を目的とする超A級のコンボデッキ【ファントム・アーミタイル】のハイブリッドデッキを組み上げ、更にその中へウィジャ盤を利用した超S級のコンボデッキを仕込む。あのデッキを生かせるのは……あのデッキがその力を真に解放できる、確率0.0000000000000000000000000000001%の一瞬を見極めデュエルをプロデュースできるのは……世界広しといえどもローマ=エスティバーニを置いて他にはいない」

 カッ!

「なによアレ……ただの……映像じゃない……なのに……なのに……」
 福西彩は腰を抜かしていた。既に、失禁寸前である。
「非ィ科学的です。しかし、SCSがやるのなら、それは最早現実!」
 津田早苗が呻く。だが、本当の恐怖は、ここから始まる。
「元村信也……新上達也……そしてここにいる全ての決闘者に告ぐ」
 三幻魔が睨みをきかす中、ローマは、非情なる宣告を口にした。
「食われて消えろ。融合モンスターゾーンから……カードを1枚……」
「まさか……あの伝説のモンスターを……」「素で召喚するつもりか!」
 ローマはその手にライターを持ち、三幻魔を次々に燃やしていく。

三幻魔を……この世から除外するゥゥゥウ!

 ローマの宣言と共に、3体の幻魔が1つに収束していく。そのエネルギーは絶大!
「ブラックホールだぁ! 真夏の真昼に、ブラックホールが出現したぁ!」
「もう駄目だぁっ! 神様! 決闘なんかしてごめんなさい。本当にごめんなさい!」
「もうカードゲームしませんから! 許し下さい! 生まれてきてすいません!」
 泣き叫び天に向かって懇願する決闘者達。それは、あまりに異様な光景だった。
「決闘者が命乞いなんかしちゃいけない。そうだ、誰も命乞いなんかしなかった」
 ローマは、ローマだった。彼は、彼だった。彼は、悪びれずこう言い放った。
「そう、誰もが誇り高く散っていった。そうだよな。お前も、そう思うよな……」



魔界最凶! 絶点突破!


混沌幻魔! 亜唖彌戴琉!



(なんて禍々しい。これがローマ=エスティバーニのデュエル。だけどまだ……)
「まだ勝負はついていない! 来るなら、来い! 勝負だ。僕と勝負しろ」
 それでも尚心を折らぬ信也。まだライフはある。耐え切れる……筈だと。
「認識が甘い。伊達や酔狂で、僕はアイツを『親友』とは呼ばないさ」
「どういう意味だ。ディムズディル……」 誰がいったか、極限の問いが彼に集中する。
「簡単だよ。ローマのデュエルはここからが見物だと言っている。まさかこれで終わりだとでも思っていたのか? だとしたら君達はローマ=エスティバーニという男を捉え間違っている。彼の、脱構築への欲求はこの程度では満たされない。誰もが合理的でないと叫ばずにはいられない、超論理を通しきってこそのローマ。それでこその裏コナミ。それでこそのSCS。本当のローマは、ここからだ」

左腕からリバーストラップオープン! 《DNA改造手術》を発動ォォォォォォォオ!

「この期に及んで《DNA改造手術》!? 新上=ハイデッガー=辰則の忘れ形見……」
「魔法使い族を宣言! そしてぇ! 1000ポイントのライフを支払い通常魔法を発動する」
「最後の1枚。1000ライフ……魔法使い族……嘘だ……嘘に決まってる」
 混沌幻魔のレベルは12。発動条件はこれで揃う。揃ってしまう。
「手札から《拡散する波導》を発動ォォオ! これが完成形のぉ!」

ローマ=エスティバーニ我流【真・全土滅殺】!

 信也は、膝を付いた。彼は、何かに屈し、膝を付く以外に術を持たなかった。
「なんでこんな。無茶苦茶だ。こんなプロセスで、勝ちに向かうわけがない」
「その無茶苦茶なプロセスの結晶が、今お前が見ているこの現実だ。飲み込め」
「こんな闘いで、勝利に向かっていたというのか!」 「勝利してこそのデッキだ」

「なんだ。何が起こったというのだ。なぜこんなことになっている。なぜだ!」
「最早メタゲームという次元ではない。ローマ=エスティバーニの、ローマ=エスティバーニによる、ローマ=エスティバーニの為の、理想に空想を掛け合わせたかのような、壊滅的なデュエルが先にある。メタゲームに己を合わせるのではない。己にメタゲームを合わせるのだ。それも無理矢理に! なにがなんでも! なにがあろうと! どんな代償を支払おうと! それがローマだ」
「フォッ!? 馬鹿な。そんなデュエルがあるものかか……」
 ヴァヴェリも驚愕。まともな人間の考えることでは、ましてや、やることではない。
「ローマは恐らく、襲撃前ソリティアの会を事前調査した。そして、その上で新上達也に眼を付け、そこに光明を見出す。ローマは、彼の祖父である新上=ハイデッガー=辰則が混迷を深める農業界に警鐘を鳴らしていることを、“劇薬”として利用する、という思想に辿り着く。ローマは栽培仙人をそそのかし、肉親対決を実現させた。だがこれは、栽培仙人の力で勝利を収めようなどという、浅はかな狙いではなかった。ローマの狙いは、栽培仙人登場による決闘空間そのもの変動―即ちメタゲームの自力変遷。そして、変動した宇宙でローマは、未曾有の怪物を未曾有のプロセスで作り上げた。そう、促成栽培をメタった遺伝子組換農業が、悪魔と魔導師、二大勢力統合の礎となったのだ」

ローマの引力が、栽培仙人という名の惑星を引き寄せたまさにその時!
2人の栽培師が向かい合い、そこにシンヤとローマが交差したまさにその時!
宇宙(メタ)十字黙示録(グランドクロス)は完成したのだ! そして今、旧世界が滅亡するッッッッ!


「なんという、なんという、なんという奴なのじゃ。正気か!」
 誰も読まないことを読み、誰もやらないことをやる。それが、ローマ=エスティバーニ。
「新上=ハイデッガー=辰則は、味方として呼んだのではない。やつが勝とうと負けようと最初から俺にはどうでもよかった。俺が必要としたのは、やつがここにくることで発生する、磁場の歪み!」
「あ……あ……」 信也は、もう何もすることができなかった。敗北は、すぐそこだった。
「ローマ、いい決闘だったな」 人々が逃げ惑う中、ディムズディルだけは笑っていた。
「当たり前だ。昨日夢に見たからな。夢は実現するモンだろう? グレイ・ブラックマン」
 倉庫が燃え、電線がショートし、空が黒い霧で覆われて尚、彼らは晴れやかだった!
「脱構築の時間だ。壊れた論理(おもちゃ)を抱いて死ね」 決闘狂人達は、嗤っていた。
『One』Grinder Golem 『Two』 Evil Hero Malicious Edge 『Three』……
「う、うわぁぁぁぁぁぁっ!」 信也は叫ぶ。己が初めて抱いた、恐怖ゆえに叫ばずにいられない。
「やめてぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」 彩も泣き叫ぶ。最悪の結果を前に、泣き叫ばずにはいられない。
All object completed」「この絵が見たかった。これが、本当のォォォォォォォオ!」



全土滅殺!!


天 征 波!!!








                            原案
                      ローマ=エスティバーニ

                           脚本/演出
                      ローマ=エスティバーニ

                           企画構成
                      ローマ=エスティバーニ

                        キャラクターデザイン
                      ローマ=エスティバーニ

                        ロゴ・デザイン
                      ローマ=エスティバーニ

                       プロジェクトマネジメント
                      ローマ=エスティバーニ

                          ディレクター
                      ローマ=エスティバーニ

                          広報宣伝
                      ローマ=エスティバーニ

                        スペシャルサンクス
                      新上=ハイデッガー=辰則
                      ディムズディル=グレイマン
                      ゴライアス=トリックスター
                      ベルメッセ=クロークス
                      ドルジェダク=ヤマンタカ

                           主題歌
                 『裏コナミ千日戦争/ローマ=エスティバーニ』
                        エンディングテーマ
            『この世に鬱(カードゲーム)がある限り/ベルメッセ=クロークス』

                     死闘!One Lover Boost・完!
                  ローマ先生の次回作にご期待ください。




【こんな決闘小説は紙面の無駄だ!】
「素で出せるわけねぇよ」とネタにしていたアーミタイルを1ターンで出す日がくるとは夢にも思わなかった。
因みに、1ターンで出すのは私なりのリアリティ。どんなリアリティかは、話すと無駄に長くなるので省略。



↑気軽。ただこちらからすれば初対面扱いになりがちということにだけ注意。


↑過疎。特になんもないんでなんだかんだで遊べるといいな程度の代物です。



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