【元村信也VSヴァヴェリ=ヴェドゥイン】
試合形式:サイドボード・エキスパンション
試合概要:サイドボード30枚を要する3ラウンドマッチ
特別禁止:なし。
得点計算:勝利時得点平均


「サイドボード30枚、か。シンヤ君にとってはそんなに悪くない課題ね。カードプールに対する制限よりもよっぽどいいわ。これなら得意とする【グッドスタッフ】を問題なく組める」
 西川皐月は一先ず胸をなでおろしていた。可愛い後輩が何も出来ずに敗退していく光景ほど、見ていてつらいものはない。その最悪の状況が回避されたことを皐月は喜んでいる。だが、その直ぐ横に座っていた勇一は、もう少し別の角度からこの特殊ルールを捉えていた。
「確かにシンヤにとっては悪くない。だが、ヴァヴェリにとっては悪くないどころじゃないぞ」
「え?」
「ヴァヴェリ=ヴェドウィン。シングル戦でもその強さは健在だが、奴が最もその真価を発揮するのがマッチ戦なんだ。最近5年間におけるヴァヴリのマッチ戦勝率は……92.4%。」
「90%以上!? まさか!」
「俺もまさかと思いたいよ。或いは、相手が雑魚ばかりだったとかな。だが、生憎、やっこさんは相当に場数を踏んでいるらしいぜ。それで、だ。この記録からわかることが少なくとも1つはあるな。ヴァヴェリ=ヴェドウィン、奴はサイドボーディングに優れている。当然だな。元来『デッキウォッチャー』は対応型の決闘を得意とする職能決闘集団。ならばディフェンシブ・サイドボーディングにこそその本領が現れるといっても決して過言じゃない。しかも30枚ともなればそれこそ奴の独壇場ってわけだ。無論名うてのデッキビルダーなら、例えばDブロックの中林誠司のような決闘者なら30枚という数を生かして優れたデッキを2種類汲み上げ、サイドボーディングによって連動させることも可能だろう。所謂オフェンシブ・サイドボーディングってやつだな。だが信也には、【グッドスタッフ】しか一線級のデッキがない。こいつはヘビィだぜ」
「私と練習決闘してた時【ガジェット】とかなんかそこら辺を試してたけど、練習の成果は『そこまで酷くはないけれど決して強くもない』ってところかしら。そこらの2流決闘者相手ならともかく、ヴァヴェリ=ヴァドウィンに通用するレベルじゃなかったわ。とてもじゃないけど、【グッドスタッフ】と並び立たせるには無理があるわね。それに、あの子がまともなオフェンシブ・サイドボーディングを成功させるとはチョット思いにくい。ねぇユウイチ。シンヤ君はさっき貴方が言ったデータのことを……」
「ああ、知ってるぜ。俺が昨日教えた。物分りのいいあいつのことだ。そろそろ自分の不利に気がついている頃だろう。このルール、元村信也にとっては『可もなく不可もない』程度だが、一方のヴァヴェリ=ヴェドウィンにとっては『得意中の得意』とでも評すべき、か。元々ヴァヴェリの方が格上なんだ。厳しい戦いになりそうだな」 

 勇一達によって不安そうに見守られる試合場では、その格下決闘者が頭を振り絞って考えている。
(さあどうするか。普通に考えれば、普段使っているサイドボードを質・量共に拡張するのが手っ取り早い。所謂全方位対応型のサイドボード。けどそれじゃあ、間違いなく食い物にされる。あの爺さんと真正面からサイドボーディング勝負を挑むなんて愚の骨頂はなるだけ避けたいところだな。けど、他にどうすればいい? 30枚。もう1個デッキが作れるくらいの大盤振る舞いだ。けど、宝の持ち腐れとはこのことか。正直、何も思い浮かばない……)
 信也が頭を捻るその一方で、ヴァヴェリ=ヴェドゥインのキャリアは閃光を放っていた。
(既に元村信也のデータは、一回戦の醜態をも含めた分が―現地で集めきった分が―揃っとる。それによると、まずデッキ構築能力は最低レベル。使えるデッキは【グッドスタッフ】のみ。完全な【グッドスタッフ】オンリープレイヤー……ふぅむ。ここまで見る限りでは『敵に非ず』としか言いようがないの。じゃが、油断は禁物。あの厄介な『毒薬』、ダルジュロス=エルメストラが気にかけている事をも考慮すれば、あらゆる不測の事態を想像すべし、じゃ。わしはそこいらの3流メタデュエリストとは違う。常に今を考慮する。故にわしは『電獣』であり、これからもそうであり続けるのじゃ……ゆくぞ!)
 ヴァヴェリ=ヴェドウィンの思考速度は速かった。日頃から、サイドボーディングに重点を置いたデッキ構築に慣れているが故の思考時間短縮。ヴァヴェリが動く。必勝に向けて動く。
「ヴァヴェリ=ヴェドウィンが動いた! デッキ構築に入るぞ!」
 遂にヴァヴェリがカードの選択に入った。その動きは実にゆったりとしている。だが、その一方で確かに感じられる尋常ではないオーラ。齢60を超えた老人とはとても思えぬほど凄まじい妖気。このオーラを感じ取った森勇一が活目する。否、活目を強いられる。そのデッキ構築は、他のデュエルクルセイダーズのメンバーにも決して引けを取らない、まさしく異能と呼ぶにふさわしいデッキ構築だった。徐々にヴァヴェリの本領が発揮される。

 

 

「あれは!?み、見ろサツキ!あの爺さん、数百枚のカードを自分の周りに集めた後、あの場所から一歩も動いていない!見る見るうちに、カードがヴァヴェリの手の中に吸い込まれていくぞ!」
「凄い。あんなデッキ構築今まで見たことがないわ。これがオセアニア流のデッキ構築なの!?」 

「エリー! あの動きは一体なんなんだ?あれがオーストラリアの流儀ってやつなのか?」
 アキラもまたヴァヴェリの異常を即座に察知。横にいたエリーに問いかけるが、その回答はアキラの想像を遥かに超える代物だった。エリーは語る。淀みなく語る。
「かってヴァヴェリ小父様は武者修行の為に世界中を回った。西欧、東欧、北米、南米、アフリカ……当然、その中には東洋も含まれていた。放浪の末辿り着い た未知の世界・チベット……小父様はそこで偶然にも決闘修行を行っていたディムと再会。そのディムの友人として紹介されたのが、裏コナミ七人委員会『スペ シャル・センター・セブン』の『宗教担当』を努める偉大な決闘宗教家……通称『チベット密教最後の狂人』ドルジェダク=ヤマンタカ。小父様は彼の、密教を 基礎とした決闘思想に大きな影響を受け、遂には山奥であのデッキ構築術を完成させた。それがあの、己の周囲を一種の『決闘曼荼羅』として扱う、小父様特有 の……」

 

札魂吸引 ( カードバキューム )

 

【決闘曼荼羅】
歴史の裏からコナミを支配する、地上最強の決闘集団『裏コナミ』。未だ謎の多いこの役員会だが、その活動内容の一つとして挙げられているのが所謂『布教決闘』であった。そしてこの活動に関して近年、東洋における活躍が著しいのが、裏コナミの『宗教担当』を謳われた怪人物。人呼んで『チベット密教最後の狂人』ドルジェダク=ヤマンタカその人である。彼は人類初の試みとして、『曼荼羅』の中に決闘の本質を収めきることに成功。これによって高度な布教決闘を行ったと言われている。そもそも『曼荼羅』とは、サンスクリット語の『maNDala』の音を漢字で表わした図を指すのであり、その意味するところは『本質をもつもの』に他ならない。つまり、古来から『曼荼羅』には本質を収める力があり、そしてその有用性は、この21世紀になって尚チベットで『曼荼羅』が生産されている事を考えれば一目瞭然である。ならば決闘という膨大な思想を収める為に、ドルジェダクが『曼荼羅』という形式を選んだのはまさしく『当然の帰結』と言うべきだろう。このことは、サンスクリット語の『maNDala』の英語訳が、『metaDuel』であることからも明らかである。

 

【札魂吸引(カードバキューム)】
『曼荼羅』と『決闘』の相関関係については上述した通りであるが、この『曼荼羅』を基礎としたデッキ構築の可能性に眼を付けたのが、当時武者修行中であった『吸収決闘者(ドレイン・デュエリスト)』ヴァヴェリ=ヴェドゥインであった。彼は、それまでの道中で獲得した『近代合理主義に基づく決闘』に矛盾しない形での、『決闘曼荼羅』の吸収合併に乗り出し、その情熱を一心に注ぎ込んだと言われている。本来が東洋人でない為その習得は難儀を極めたが、ディムズディルの仲介によって得られたドルジェダクの指南もあり、遂にヴァヴェリは(本家に比べると幾らか不完全ながらも)『決闘曼荼羅』を習得。其れをもって、新たなデッキ構築術を完成させたのであった。まさしく人の執念が開拓した、新たなデッキ構築のあけぼのと言えるだろう。かって東洋の神秘を伝える役目を果たした『シルクロード』ならぬ、『デュエルロード』開通の瞬間である。

「あらゆるカードを包括すると同時にあらゆるカードを切り捨てる。そして最後には有用なカードだけが、まるで意思を持ったかのように小父様の元に集まっている。その間小父様は椅子を中心に必要最小限しか動いていない。あれは、ヴァヴェリ小父様のキャリアがあるからこそできる技。超人的な反射に頼ったベルクの【天上天下適者生存(デュエルサバイバル)】とは対極に当る奥義……」
「チベット決闘……か」
 一端話終えたエリーを、今度はディムズディルが引き継ぐ―
「【札魂吸収(デッキドレイン)】に【札魂吸引(カードバキューム)】。これらは皆ヴァヴェリ爺さんの決闘特性『吸収』を具体化したスキル。前にも言ったような気がするが、あの爺さんは若い頃から四海を渡り歩き、あらゆるデッキレシピを直にその目に焼き付け続けた、言わば貪欲さの塊のような決闘者だ。老いて尚盛んとはあの爺さんみたいな人間のことを言うんだろうな。幾ら年を食っても一向に衰える気配がないどころか、対戦相手のデュエルエナジーを吸い尽くすことで更なる飛躍を望んでいる。大した爺さんだよ。さぁて、ダルジュロス推薦の元村信也は何をしているのか。ん? なんだ。まだ動いていないじゃないか。いや……既にメインデッキは完成、か?」 

 ヴァヴェリ=ヴェドウィンが脅威のデッキ構築を繰り広げる中、信也は信也でひっそりとデッキを作っていた。だが、その顔つきは何処か暗い。
(とりあえず何時も使っている【グッドスタッフ】が完成した。でも、これだけじゃどうにもならない。次はサイドボード……デッキチェンジに比する程のアグレッシブサイドボーディングを狙う? 駄目だ。そりゃユウさんやミズキさんなら『ビートダウンとカウンターの併用』といった高度なデッキチェンジによってヴァヴェリに対する一種の駆け引きを迫れるかもしれない。30枚にはそのぐらいの可能性がある。でもそんなこと僕には無理だ。そりゃ30枚もあれば大して比率を考えずとも変更できる。だがそれ以前の問題として、僕には差し込むべきサブデッキそのものがない。僕の【ガジェット】や、或いはそこら辺のビートダウンデッキが二流なのは既にスパーデュエルで確認済み。それにこの手法にはディフェンス面が脆くなるという弱点もある。よっぽどデッキ構築力に自信がなければ普通は成功しない策。相手があの爺さんなら尚更だ。ヴァヴェリは、僕のデッキ構築力が低いという変えようがない事実を知っている。僕のデッキバリエーションがほぼ皆無であることを知っている。じゃあどうすべきだ? 或いはサイドボード以前にメインデッキを高速タイプに偏らせるべきか? 相手は終盤になれば成る程強くなるタイプの決闘者。ならばいっそのこと攻撃力を強化して……いや……けど…アヤの時の様に最初の数ターンを捌ききられたら?それに元が対応性重視の【グッドスタッフ】の攻撃力では、幾ら強化したところで天井の高さが知れてるんじゃないか? そもそも僕にそんな構築ができるのか?だって僕は……駄目だ。突破口が見えない。思考が一向に安定しない。土台悪あがきしたって今更強くなんかなれやしないんだ。強く……まてよ)

 その時信也の脳裏に気の狂った思いつきが流れ込む。ふと気がつくと、信也の思考は一段飛ばしで狂気への階段を駆け上がっていた。信也は、この時決断を迫られる。
(強くなれないなら……いっそのこと……。向こうは此方が背伸びした所を悠々と待ち構えている筈。ならば此方は一端伏せてからチャンスを狙う。でも……相手は『電獣』ヴァヴェリ=ヴェドウィン。数ターン見ただけで此方のデッキの習熟度まで見切ってくる異常な眼力の持ち主。生半可な覚悟ではどつぼに嵌るだけだ。だったら……だったら徹底的にやってやる。毒を喰らわば皿までだ。僕のデッキは……これだ!)

「デッキ構築タイムを終了します。両者前へ!」

(さぁ……『電獣』の決闘を若い者への土産としてくれようかの。無論土産の行き先は……冥土じゃ)
(正直、自信なんてものは何処にもない。勝利への道は極めて遠い。けど、俺はやる。闘ってみせる)

 デッキ構築時間が終了。二人の決闘者がまず最初に40枚のメインデッキを持って向かい合う。対戦相手を見据える決闘者、作動する決闘盤、投入されるデッキ、それら全ての準備が完了し、遂に決闘が始まるのだ。『どちらがより強い決闘者か』ただそれだけを決定する為に用意されたこの桧舞台で、元村信也とヴァヴェリ=ヴェドゥイン―国籍・年齢・人格・経験……あらゆる点において悉く違うこの2人―が決闘に臨む。そこには一体如何なる展開が待ち受けているのか。それは天のみぞ知る――

 

第24話:新世紀鳳凰伝説(レジェンド・オブ・フェニックス)


(先攻は僕、か。幸先はいいな。あくまで幸先は……だが)
 審判の眼前でコイントスを行った結果、先攻は信也だった。
「フォッフォッフォ。後攻か。よいぞよいぞ。さぁ、決闘開始じゃ」
 眼の前ではヴァヴェリがあの妙な笑い声を浮かべている。異様なるヴァヴェリ。
(妖怪みたいな爺さんだな。こうして向かい合ってみると、一層妖怪じみた印象……)
 ヴァヴェリの圧力が信也を覆うが、ここで怯む訳にはいかなかった。元村信也は、意を決してカードを引いた。先攻によるドロー。それは、決闘の開幕を意味していた。
「僕の先攻、ドロー……」
 先攻。普段の信也ならば―無論初期手札にも依るが―、ここは《マシュマロン》のような裏守備ブロッカーで一端様子を見るか、或いは《サイバー・ドラゴン》や《冥府の使者ゴーズ》等の布石としてセットを控えたまま流すか、何れにしろ相手の出方を伺う形の『先攻第1ターン』を選択することが多かった。いち早く相手の手を伺い、事後的に対応する如何にも【グッドスタッフ】な闘い方。だが、今日の信也は違った。『先攻第1ターン』から信也は波紋を呼ぶ。それは、信也の浅い決闘者経験の中でも初めてと言っていい経験だった。
「手札から《暗黒界の取引》を発動。お互いにカードを1枚ドローし、手札を1枚捨てる。僕が捨てるのは《暗黒界の狩人 ブラウ》だ。特殊効果発動! カードを1枚、ドローする。更に! 手札から《暗黒界の騎士ズール》を通常召喚! カードを1枚伏せてターンエンド」

―暗黒界―
ELEMENTAL ENERGYで初登場した、「暗黒界」を関するモンスター群,或いはそのサポートカードを含めた総称。「暗黒界」のモンスターは全て「闇」属性の「悪魔」族で統一され、「手札」に関する能力を多数取り揃えているが、その中でも有名なのは「相手のカードの効果で手札を墓地に捨てさせられた場合」に発動する強力な特殊効果である。相手の妨害を逆用するその戦いぶりはまさしく「暗黒」の名を冠するにふさわしい。【暗黒界】は、手札破壊対策及び奇襲性に優れたモンスター展開が可能な、まさしく攻防一体のデッキ類型なのである。

「【暗黒界】……だと? なんでアイツが【暗黒界】を使ってるんだ。おいサツキ! あれはお前が……」
 勇一が目を見張る。当然だった。彼は、信也が【グッドスタッフ】以外のデッキを使うのを始めて見た。
「別に、教えてなんかいないわ。確かに昨日【暗黒界】でシンヤ君と練習決闘を何回か行った。でもそれだけよ。あの子が今まで【暗黒界】を使ったところなんか一度も見たことがない…っていうか、昨日その『動き』を見せたとき素で感心してたぐらいよ。あの子が実戦で使うなんて夢にも……」
「オイオイ。アイツ一体何考えてんだ? 大体……」 

「フォッフォッフォ。【暗黒界】とはの。じゃが、凡愚じゃな。手札の確認、出すタイミング、目の動き、大方『デッキウォッチャー』の裏を欠かんとした急ごしらえの【暗黒界】じゃろうて。甘いのぉ」
 意表をついた暗黒界。だが、ヴァヴェリは動じなかった。冷静に、極めて冷静に信也の実力を見定める。下から上まであらゆる決闘者を見てきたヴァヴェリには、実力者特有の佇まいが頭に刷り込まれていた。それによると、信也は0点。トーシロだ。
(余裕だな。第1ターンにして見抜かれたか? この人、やっぱり尋常な決闘者じゃないな)
 信也が額から、一滴の汗を流す。彼は、既に追い込まれていた。ヴァヴェリのターンが始まる。
「わしのターン、ドロー。わしはモンスターを1体セット。もういいぞ。ターンエンドじゃ」
 ヴァヴェリの後攻第1ターンは実にあっさりとしたものだった。この動きは彩戦とほぼ同じ。序盤は様子を見ながら相手を観察。時機を見て一気に相手の手の内を吸収し尽くす、例のデュエルスタイル。それも今回はマッチ戦。当のヴァヴェリにしてみれば、慌てる必要などどこにもないのだろう。老人特有の泰然自若とした態度がそこにある。信也は、重い手付きでカードを引いた。
「ドロー。バトルフェイズ。僕は《暗黒界の騎士 ズール》で裏向きのモンスターに攻撃を仕掛ける!」
 信也のファーストアタックがヴァヴェリに炸裂するが、ヴァヴェリは眉一つ動かそうとしない。
「フォッフォッフォッフォ。甘いのぉ。実に甘い。初手のモンスターは6枚から選べる。ならばこそ、より慎重な闘い方が求められる、が0点じゃ。《ピラミッド・タートル》の効果発動!」
(リクルーター、《ピラミッド・タートル》か。この局面、代わりに出てくるカードは………)
「現れい! 《ヴァンパイア・ロード》を特殊召喚、よいな?」
 是非もなかった。ヴァヴェリは破壊されたリクルーターの能力により上級モンスター《ヴァンパイア・ロード》を生贄無しで特殊召還。所謂【アンデット族】タイプの常套手。
(《ヴァンパイア・ロード》。アレの特殊能力は2つある。さぁ、どうくる)
 《ヴァンパイア・ロード》に注意を向ける信也。彼は、なす術なく攻撃を終了した。
「僕はこのまま、何もせずターンエンド……です」 

「先攻1ターン目から《暗黒界の騎士 ズール》を攻撃表示で召喚。ツッコミどころが山程あるんだけど……言っていい?」
 皐月は既に頭を抱えていた。どうやら【暗黒界】の使い手として一言二言、三言四言あるらしい。
「いいぜ。折角だから全部あますところなくつっこんでくれ。俺も正直頭が痛い」
 勇一も大方の事情を察していたが、皐月の意見をおとなしく聞く。彼も頭が痛かった。
「まずは《暗黒界の騎士 ズール》。確かに本来的な【暗黒界】は下級のパワーアタッカーに乏しい部分がないでもない。でもそれじゃ本末転倒もいいところ。弱点を補って特性がスポイルされたら元も子もないわ」
「下級アタッカーが欲しいならせめて《死霊騎士デスカリバーナイト》辺りを検討すべきだな。確かに【暗黒界】特有のサポートこそ受けられないが、アレを入れるよりはよっぽどいい仕事をする。つーか、サツキ。アイツなんで《暗黒界の狂王 ブロン》を入れてないんだ?あっちなら能力つきで随分お得だろ?」
「同じ『暗黒界』、同じ『あ』で始まる以上、その存在に気がつかなかった筈はないと思う。てかそう思いたい。となると、残りの可能性は1つしかないわ。《暗黒界の騎士ズール》と《暗黒界の狂王 ブロン》をフル投入。所謂『6枚体制』ってやつね。ああ、頭が頭痛でガンガン痛いわ」
「最悪じゃねぇか。【暗黒界】は猪武者じゃないんだぜ。そんなもんどうやってまわすんだよ。カード資産がない時の代用品じゃねーんだ。アイツ初戦の敗北から何一つ進歩してない、ぜ」
「デッキ構築も相当アレだけど、プレイングも何処か不安なのよね。ほら、第1ターンから暗黒界モンスターを何の躊躇いもなく表側表示で出したでしょ? あれも……」
「ああ。少なくとも良くはないな。多く言えば悪い」
「今回みたく、初見のデッキ同士での決闘の場合、デッキが【暗黒界】だとばれるまでには必ず何らかのタイムラグがある。普通に考えればデッキが【暗黒界】だとばれた瞬間、相手はハンデスカードを手札に温存するのが当然なわけから、【暗黒界】の使い手としては、このタイムラグを出来る限り活用したい所なの。事実1〜2ターン目に相手が【暗黒界】を使用しているとは露知らず、不用意にハンデスを行って痛い目にあった決闘者は星の数。つまり自分から【暗黒界】を使っていることをばらさなければ、相手が勝手に自滅する可能性もあるってこと。それに元来【暗黒界】は相手との間合いを計りながら、一瞬の隙を付いて特殊召還からの中央突破を得意とするデッキ。焦ってあんな小競り合いをする必要なんかないのよ。そりゃ1800アタッカー6枚体制なら突っ込む以外にろくな戦術がないのかもしれないけれど、さ。現にその所為であっさりと《ヴァンパイア・ロード》を特殊召還されてしまった。個々の攻撃力に頼らない【暗黒界】にとって、あの手のモンスターは思いの外厄介よ」
「だな。信也の奴景気よく地雷踏むにも程があるぜ」 

「わしのターン、ドロー。わしは裏向き守備表示でモンスターを一体通常召喚じゃ。さぁて、《ヴァンパイア・ロード》で《暗黒界の騎士 ズール》を攻撃しようか。どうする? 伏せカードを使うかね?」
「そのままだ……通す」
 信也の伏せカードは《炸裂装甲》。だが《ヴァンパイアロード》には通用しない為、ここは通すしかない。先攻1ターン目からモンスターを大量展開した信也だったが、何時の間にか後手後手に回る決闘を強いられている。信也の汗の量は、少しづつ増えていった。

元村信也:7800LP
ヴァヴェリ=ヴェドウィン:8000LP

「フォッフォッフォッフォッフォッ。ならば《ヴァンパイア・ロード》第2の特殊能力“デッキデストラクション”を発動させてもらおうか。うぅむ……そうじゃな。とりあえず、じゃ。今のやり取りでお主のモンスターを1枚見せてもらったのじゃから……よし決めたわい。罠カードを1枚デッキから墓地に送ってもらおうか」
「わかりました。なら僕は……デッキから《暗黒よりの軍勢》を墓地に送る。これでいいですよね」
「そうかそうか。よいぞよいぞ。わしはカードを1枚伏せてターンエンドじゃ。」
 ライフポイントこそまだ200差だが、徐々に追い詰められていく信也。彼は、気を取り直してカードを引いた。信也の反撃が始まる。或いは、足掻きとも言うべき反撃が。
「僕のターン、ドロー………行くぞ! 《暗黒界の取引》を発動。お互いに1枚ドロー……僕が捨てるのは《暗黒界の武神 ゴルド》!特殊効果発動!フィールドに《暗黒界の武神ゴルド》を特殊召喚する。バトルフェイズだ! 《暗黒界の武神 ゴルド》で《ヴァンパイア・ロード》に攻撃!」

元村信也:7800LP
ヴァヴェリ=ヴェドウィン7700LP

 暗黒界のエース・アタッカー《暗黒界の武神ゴルド》の活躍によって、戦闘でしか死なない厄介な美形アンデッド《ヴァンパイア・ロード》が墓地に送られる。この試合初めて戦闘ダメージを与えることに成功したからか、信也の顔が少し綻ぶ。彼は、一回深呼吸を行ってからターンエンドを宣言した。
「僕は、このままの状態でターンエンド」
 安堵する信也。だが、ヴァヴェリの表情は厳しい。まるで「それでは不満だ」と言わんばかりの表情。
(なんだ? この嫌な空気は。これは、ヴァヴェリ=ヴェドウィンの空気か!?)
 信也がそれに気がつくのに、そこまでの時間はかからなかった。ヴァヴェリが、猛る。
「なんじゃ。せっかくの上級【暗黒界】、それで終わりか? 詰まらんのぉ」
(詰まらん……か。そういうなよ爺さん。これでもこっちは精一杯――)
 ヴァヴェリは既に信也の【暗黒界】がどの程度であるかを完全に見切っていた。落ち着かぬ態度、弱弱しい眼光、噛み合わぬカード展開、やや苦しそうな表情。この程度の相手にこれ以上時間を費やす必要など何処にもない。一通りの判断を終えたヴァヴェリによる、烈火の如き第3ターンが始まる。
「わしのターン、ドロー!! 終わらせるぞ……小僧!!」
「なっ!?」
「《強奪》! 《ゴルド》のコントロールを獲得し我がしもべとなす。甘いのぉ。本当に甘い。更にわしは、先のターンでフィールド上に伏せたモンスターカードをリバース……《ネフティスの導き手》じゃ!」
(裏守備セットに《ネフティスの導き手》!? この動きは……来る――!!)
「若造に、見せてやろうかのっ! 決闘の、頂をぉっ! 《ネフティスの導き手》の能力を発動!《ネフティスの導き手》と《暗黒界の武神 ゴルド》を生贄に捧げ……」
 ヴァヴェリの決闘盤が紅き閃光で包まれる。まるで火山からマグマが噴出するかのような召喚エフェクト。信也は既に察していた。このエフェクトの正体がなんなのかを知っていた!
「出でよ!末世の不死鳥!このたわけ者を焼き尽くすのじゃ! カモン!」


  太古の昔、かってその黄金の翼は、雲一つ無い晴れ渡る空に美しい展開図を描き出していた。その雄雄しい姿は、当時空に対する干渉力を持たなかった人間達に よって『神』として崇められるには十分な威容だった。
 当時の人間界では、その爪を磨り潰して煎じて呑めば、不老不死になれると言う噂が実しやかに囁かれ た。当時の『王』は、その噂を確かめるべく千を越える決闘者をネフティス山に送り込んだ。千人の決闘者は隊列を組み、策を練り、罠をはり、遂に『鳳凰神』 の全身に刃を突き立て、絶命させることに成功した。だがそれは『鳳凰神』の逆鱗、いや逆翼そのものに触れる事を意味していた。その無限の生命によって『復 活』を果たした『鳳凰神』は、その怒りをもって『王』を城ごと吹き飛ばし、人間界を三日三晩焼き尽くしたと言われている。
 これ以後、人間界では毎年『鳳凰 神』に美女を生贄として献上、その機嫌を伺うのが慣わしとなっていた。不死身の『肉体』を持つ鳳凰神は名実ともに世界の覇者であった。『鳳凰神』は自らの 眷属をその『羽根』によって増産し、世界の中心に君臨した。だが…そんな『鳳凰神』にも最期の時が訪れる。突如飛来した謎の巨大隕石の激突が地球の大気そのものを変えてしまった。現代で言う『熱エネルギー』によって無限の生命を得ていた『鳳凰神』も、気候変動による寒冷化現象の前には無力だったのである。
 だが、それは決して『鳳凰神』の意思そののが滅んだことを意味しない。火口の中に息を潜めた『鳳凰神』の魂は未だ不滅。『鳳凰神』は知っていた。己が魂を 宿すべき場所…それがかって自らに戦いを挑んだ、あの勇敢な『決闘者』の末裔達が持つ決闘盤の上であることを知っていた。決闘者の『熱』が、『鳳凰神』を 火口の淵より呼び覚ます!『伝説』を歴史から呼び覚ます!

 

Sacred Phoenix of Nephthys

 

フォーッフォッッフォッフォッフォッフォ!

フォーッフォッフォッフォッフォッフォ!

フォーッフォッフォッフォッフォッフォッフォッフォッフォッフォッフォッフォッフォッフォッフォッフォッフォ…

 

飛べぇぇぇぇ! 不滅の鳳凰神よぉぉぉぉお!

 

(くぅ……なんて威圧感だよ。あんたホントに老人か!)
 鳳凰の翼に魂ごと巻き込まれそうになりながらも、信也は相手のデッキを分析する。
(アンデットモンスターの展開といい、この不死鳥の召還といい……【ネフアンデット】か!!)
「フォッフォッフォッ……まだじゃ!《生者の書―禁断の呪術―》発動!お主の墓地から《暗黒界の騎士 ズール》を除外!墓地から、《ヴァンパイア・ロード》を特殊召喚じゃ!」
(たった1ターンでここまで!?これが【ネフアンデット】の展開力か!)
「ゆけい我が同胞達よ!バトルフェイズ!ダイレクトアタックじゃ!!」

 

新世紀鳳凰伝説 (レジェンド・オブ・フェニックス)

 

第一章『火神降臨』!

 

グオオオオオオオオオオッ!

 

「クッ! リバースカードオープン! 《炸裂装甲》! 鳳凰神を破壊する!」
「じゃがロードのダイレクトアタックまでは止められまい! 喰らえぇ!」
(喰らうさ……喰らうしかない……)

元村信也:5800LP
ヴァヴェリ=ヴェドウィン:7700LP


「さて、攻撃が通ったので再び《ヴァンパイア・ロード》の効果を発動。今度はモンスターをデッキから墓地に送ってもらおうかのぉ」
「わかった……………《暗黒界の狂王 ブロン》をデッキから墓地に送る」
「さて、このターンはこの辺にしておこうかの。じゃが、鳳凰神は何度でも蘇る。鳳凰神に敗北は無いぞ、小僧。己の不明を嘆きつつ焼き尽くされるが良い。フォッフォッフォ……」
「くっ……」 

「手札をチラチラチ確認してるところといい、使ってるカードといい、プレイングといい、なんだか初心者の決闘を見ているみたい。ねぇアキラ。本当にあの人が、西川瑞貴に勝った人なの?」
「その筈なんだがな。やっぱ【暗黒界】は不得手らしい。つーか、なんでアイツはあんなの使ってんだ?今更領域外のもん使ったって結果は見えてるってのに。やっぱ焦っちまったのかな……」
「ふーん。でも、フェニックスにリアクティブ・アーマーを撃つのはよくわかんない。フェニックスとヴァンパイア、共に再生能力を持っているモンスターだけど、一時破壊の際のリスクが大きいのは復活時にヘヴィ・ストームを発動するフェニックスの方。あれにリアクティブ・アーマーを撃った所為で次のターン、あの人は魔法・罠を伏せることが出来なくなった。だったらここは、多少ダメージを多く受けてでもデッキ破壊能力を持つヴァンパイアの方を一端墓地送りにするか、或いは伏せたまま4400分全部喰らうか。私なら多分後者かな。少なくともフェニックスにリアクティブアーマーを撃つのはおかしいと思う。墓地対策をしてるならともかく……」
 胸に膨らんだ疑問を隠そうともしないエリーの傍ら、押し黙ったままのディムズディルは考える。
(昨日彼と会った時は、虚実定かならずといった面白い器を感じさせたものだ、が、錯覚か?いや、僕の第一印象を信じるなら、これは、後半に強いと『言われている』ヴァヴェリ=ヴェドウィン対策なのか?アキラは、彼が【暗黒界】を使っているところを見た事がないと言っていた。それをこの初戦に持ってくる、か。ヴァヴェリ=ヴェドウィンの名に気圧され自滅に向かったか或いは……)
「それに……さ。なんていうか左右のバランスが悪い。まるで、決闘盤を持ちたての初心者みたい」
「ん? そんなんわかるのか?」
「うん。遠くからだからそれしか見えないんだけど、なんか変」
「初心者なあ。アイツデッキ構築はともかくプレイに関してはそんなことはない筈なんだが……」
(勘のいいエリーの違和感、か。一考に価するな。元村信也からただよってくる2つの異なった印象。『手練』と『初心者』。決闘中の顔を見てみたいものだが……、やはり遠くからではわかりにくいな。だがもしもあの【暗黒界】が徹底的な投棄なら、そこにあるのは……) 

―同Lブロック第二試合―

「《黒・魔・導》!」
「やらせるか!チェーンして《スケープゴート》だ!」
「なら私は……1000ライフ払って《拡散する波動》を発動します!」
(チッ、手が早すぎるだろ!)
「《ブラック・マジシャン》で全ての羊を攻撃します!」
(なんて動きだよ。これが『マジシャンズ・アヤ』の実力か!)
「これで終わりです。《マジカル・アン・ドゥ・ドローワット》発動!」

【試合結果】
○福西彩(翼川)―田中聡(香川)●
得失点差±7000

(勝った。思ったとおり、大したことのない相手だった。でもそうなると、この人相手にあのお爺さんが負けるとは万が一にも思えない、かな。そうだ……シンヤは……シンヤの方はどうなってる?)
 其処では、福西彩が電光石火の早攻めで田中聡を下していた。これで通算成績は1勝1敗。だが、ヴァヴェリ=ヴェドウィンとの直接対決の機会が最早ない以 上、ヴァヴェリが何処かで一つ星を落とさない限り彼女の決勝トーナメント進出はありえない。彼女は案じていた。幼馴染の信也のことを案じていた。と、そこ へ2人の先輩が近づいてくる。武藤浩司と東智恵だ。皐月と勇一が席を同じくした事により生まれた珍しい組み合わせ。

「ようやったな。初勝利おめでとさんや」
「あんなの相手ならパーフェクトゲームも狙え……」
「とにかく一勝が欲しかったんです。えへへ……」
 謙虚なように見えて実際は「安定策を取っただけで、パーフェクトゲームを狙う力量がなかったわけではない」というアピール。相変わらずこの2人の、智恵と彩のやりとりは黒い。何が「えへへ」だ。
「あとは信也か。つってもあっちは3ラウンドやから長いで」
「ま、【グッドスタッフ】が構築可能なんだからどうにかすんじゃない? コウジにも勝ったしね♪」
「……」
 黒い。この腐れ外道と同学年でなくて本当に良かったと浩司は感じていた。『常時電波受信系』、それが浩司の智恵に対する評価だったが、無論口に出したこ とはない。もしもこの評価が聞かれた暁には、粛清されるだろう。恐るべき勢いで粛清されるだろう。そんなリスクは最初から冒さないに限る。一方、信也を案 じる彩の表情は、どこか暗かった。
「でも……信也は……」
「じゃ! 見にいこっか! し〜あいかんせんみつのあじ〜♪」
 彩が何かを言いかけたが、智恵の悪趣味な歌の前にかき消される。常時電波受信系に連れられ、3人は信也の試合場へと歩みを進める。だがその時、元村信也は地獄の一丁目を歩いていた。 

―Lブロック第一試合―

「僕のターン、ドロー……………」
「フォ? どうした? 手が止まっとるぞ小僧」
「僕はこのターン、何もせずターンエンド……します」
 突然のターン放棄宣言。その意味を察し笑うヴァヴェリ。
(フォッフォッフォッフォッフォッ。突然ドロー・ゴーに宗旨変えとは粋なことをしてくれる。大方暗黒界が手札で腐ったのじゃろうて。やはり付け焼刃……じゃな。こうなれば速く諦めさせるのがお主の国で言う所の人情と言うものじゃろうて。さぁ、仕上げに入ろうかのぉ)
「わしのターンじゃ、ドロー。フッ……いいものを引いたのう。ホレ」
 その時信也の顔つきが変わる。ヴァヴェリがわざと晒したカードは《手札抹殺》。【暗黒界】がカモとするカードの典型例である。信也はその嫌らしさを即座に察知していた。信也の顔が苦渋に歪んでいる。
(嫌な爺さんだな。お遊びついてに、こちらの反応を見るってか?確かに、俺の手札は無茶苦茶さ……)
「フォッフォッフォッ。余程手札に【暗黒界】が溜まっていると見える。さあて、仕上げといこうか。いかに相手が凡愚であろうと、自滅しようとも、わしの辞書に手抜きの文字は無い。いくぞ小僧!」
(思ったとおり、凄ぇ爺さんだな。生まれ変わってもあんたとだけはつきあいたくないよ)
「スタンバイフェイズに《ネフティスの鳳凰神》を復活。鳳凰神とロードの2体でダイレクトアタックじゃ!」
 復活した《ネフティスの鳳凰神》が《大嵐》を発動させるまでもなく、信也の場には1枚もカードが置かれていない。否、置く事ができなかったと言った方が正確か。ヴァヴェリの正確無比な指揮の元、不死鳥と吸血鬼の連撃が容赦なく信也の胸に突き刺さる。

ゆけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえ!!

 

新世紀鳳凰伝説(レジェンド・オブ・フェニックス)

 

第ニ章『アリアの微笑み』!

 

ズガガガガガガガァァァン!

 

元村信也:1400LP
ヴァヴェリ=ヴェドウィン:7700LP


「《ヴァンパイア・ロード》の効果を発動! 打者一巡! 魔法カードを墓地に送れい!」
「僕は、デッキから《暗黒界の雷》を墓地に送ります」
「わしはこれでターンエンドじゃ。フォーッフォッフォッフォッフォッフォ……」
 やりたい放題のヴァヴェリとやられたい放題の信也。二人の明暗はデッキ構築の時点よりも更にはっきりしていた。もうこのデュエルは99%詰みといってい いだろう。リーグ戦或いはマッチ戦の性質からサレンダーが認められていない以上、最後まで続行する義務を持った信也が最後のカードを引く。そして……
「僕のターン、ドロー……」
 その顔は苦渋に歪んでいた。洞察力の高いヴァヴェリならずとも、誰もが一見して元村信也の“絶望”を感じ取れるその表情。傍からは、歪んだ顔と滴る汗が全てを表現しているように思われた。
「カードを2枚伏せて……ターン……エ……ンド……です」

 

ならば遠慮なく潰させてもらうぞ小僧!

飛べぇぇぇぇえ! 鳳凰神よぉぉぉぉお!

 

新世紀鳳凰伝説(レジェンド・オブ・フェニックス)

 

第三章『ゴス=ぺリアの乱』!

 

ズドドドドドドドォォォン!

 

元村信也:0LP
ヴァヴェリ=ヴェドウィン:7700LP
 

【ラウンド1】
●元村信也(翼川高校)―ヴァヴェリ=ヴェドゥイン(オーストラリア)○
得失点差±7700


「随分と派手な散りざまじゃったのぉ。無様を通り越して感動すら覚える……いい散りざまじゃったぞ」
 ヴァヴェリの圧勝に終わったラウンド1。余裕のヴァヴェリが信也を同一平面から見下ろしている。その姿はまるで、天に君臨する皇帝が地に這いつくばる無力な民を見下ろすかのごとく、だった。
「伏せカードは《闇の取引》か《激流葬》か……或いは使う気力すら失せよったか。終わりじゃの。小僧」
「いや……まだ一戦目だ。気力なら、腐るほどあるさ」
「フォ?」

 信也は、ほとんど聞き取れない程小さな声でそう言い残すと、ゆっくりとデッキ構築台の方に戻り、用意してあった30枚ものサイドボードを取り出す。その 後自分のメインデッキからカードを3:1の割合で分け、『1』の方を30枚のサイドボードの上にそのまま無造作に置いた。その手際は確かに良かったが、そ の一方で無造作過ぎた。その乱暴な作業を目の当たりにした1人、ディムズディル=グレイマンは軽く一言こう言った。

面白いやつがいるものだ



【こんな決闘小説は紙面の無駄だ!】
新世紀鳳凰伝説開幕。アリアを巡ってゴス=ぺリアが乱を起こしたのは最早常識。


↑気軽。ただこちらからすれば初対面扱いになりがちということにだけ注意。


↑過疎。特になんもないんでなんだかんだで遊べるといいな程度の代物です。


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