―予選リーグ4日目―

 その時元村信也は、昨日ディムズディルが去った後山田晃が言っていたことを思い出していた。
「普段は船に乗ろうともしない癖に成り行きで乗りかかった船には漏れなく必死。何考えて生きてんだ?」
「何考えて生きてんだ……か。ホント何考えてんだろうな。別に頑張らなくたっていいんだ。僕が頑張らずとも、ミズキさんやサツキさんがいい成績残してくれる筈なんだ。僕がこの大会で……【グッドスタッフ】しか使えないようなド三流お断りのこの大会で今更無理する必要なんてない。そうさ…無理する必要なんてないんだ。」
「いいじゃないか。そんなやつが1人や2人いた方が面白いかもしれないだろ?」
「僕もどうせなら君のような決闘者に1人2人勝ちあがってもらいたいな」

「面白い、か。ビデオで見たけど、やっぱ強かったなアイツ。それとダルジュロス=エルメストラ。あの人もまた実力を隠している気がする。まあ、この大会中にそれが発揮され得るのかどうかはわかんないけど。兎に角あの人達は強い。趣味の悪そうなネーミングとは裏腹に強い。僕は……」
「小僧……お前は全てを失い敗北する」
「失うものなんか何もないですよお爺さん。そう、僕には何もないんだ。何もないなら、何かしたっていい筈だ。けど、けど何をどうすればいいんだ? 僕に今更出来ることなんかが、果たしてあるのか?」
 信也は悩み続ける。内から込み上げて来た謎の衝動故に思い悩む。だがその思い悩む時間も、もうあまり残されてはいない。時間は刻一刻と過ぎ去ってゆく。Hブロック・西川皐月の試合は既に終盤だった。 

―Hブロック―

【Hブロック二回戦】
西川皐月(翼川高校)―北沢弥生(北海道)

西川皐月:2800LP
北川弥生:3500LP

「まったくしつこいったらありゃしない。そろそろ飽きてきたわ……」
「そりゃどうも。だけど、飽きてきたのは私も同じよ!」
「だったら! いい加減消えなさい! 《ライトニング・ボルテックス》!」
「甘いわ! リバース! 《闇の取引》発動!」
「クッ、ウザイ。本当にウザイ。アンタの手札は2枚だけど、その内1枚は、さっき《闇の仮面》で回収した《死のデッキ破壊ウイルス》。運ゲー狙いってわけ?」
「それはどうかしら!更にチェーン、《砂漠の大竜巻》で先に《平和の使者》を破壊。そして、《砂塵の大竜巻》の追加効果によって、私はカードを1枚セットする! これで私の手札はただ1枚!」
「しまっ…」
「《闇の取引》の効果解決! 《ライトニング・ボルテックス》の効果をランダムハンデスに変更する。私はラスト・カード《暗黒界の武神ゴルド》を墓地に捨て【暗黒界】の固有効果発動。《暗黒界の武神ゴルド》を場に特殊召喚。当然、フィールド上のモンスター2体を破壊する。これで決まりね」
「くぅ……」

【試合結果】
西川皐月(翼川)―北沢弥生(岡山)
得失点差±2800

 その試合を辛くも製したのは西川瑞貴の双子の妹・西川皐月。彼女は多少渋い顔をしていた。
「ふぅ。思ったよりてこずっちゃったか。こりゃコウジのこと笑えないわ」
「全クダナ。酷イデュエルダ。見レタモンジャナイ」
 突如、背中に悪寒を感じる皐月。そこには、奴がいた。
(この男、Iブロックのベルク=ディオマース?そうだ、間違いない。シンヤ君の情報に一致する)
「日本ノ決闘者ノ実力ハコンナモノカ。コレナラ幼児ヲ出シタ方ガマダマシダナ」
「随分と言ってくれるじゃない。口だけは達者ね。でももう少し日本語勉強したら?聞きにくいんだけど」
「マア、見テロ。格ノ違イヲ教エテヤル。ハッハッハッハッハッハッハ……」
(見てろ、か。いいわ。折角の機会。どの程度なのか、見極めてみせる)
 既に2勝をあげた西川皐月は、遂に未知のライバルに対し本格的に目を向けだした。或いはこう言い換えることも出来よう。今この瞬間、西川皐月はこの大会における決闘の螺旋に入り込んだのだと。 

―フリーデュエルスペース―

 フリーデュエルスペースの片隅で、信也は1人思い悩む。思い悩み続ける。
「『決闘十字軍』No4『電獣』ヴァヴェリ=ヴェドウィン。ディムズディル=グレイマンは確かにそう言った。No4、実力的に4番目という意味なのか?それとも4番目に入団したということなのか? 何れにしろ相当の実力者なのは間違いない。あの人と戦えば、あの人に勝てれば……ハハ。馬鹿馬鹿しい仮定だな。そもそも勝てるのかよ、あの怪物に。僕が今持ってる武器といえば、今まで僕の決闘を一手に担ってきたこの【グッドスタッフ】と、サツキさんとコウジさんから二流だの微妙だの散々貶された即興の【ガジェット】。或いは昨日までに必死こいて暗記した其の他諸々のデッキレシピのコピー。一方のヴァヴェリ=ヴェドウィンは、あらゆるデッキを対戦相手の闘い方に合わせて組むことができる筈。デッキウォッチャーを名乗る以上どんな対戦相手を前にしても冷静さを失わず、常に勝率の高いデッキを組みあげる知識・経験を有しているはず……って駄目だ。考えれば考えるほど勝てる気がしないじゃないか。ん? あれは?」
「しーんーやー。ここにいたんだ。探したんだよ?」
「アヤ。探してたって、昨日までいなかった奴に言われたくないな。ショックは消えたのか?」
「しょっく? 何それ美味しいの?」
「ああそうかよ。で? 俺に何のようなんだ?」
 其処に現れたのは福西彩だった。彼女はケロッとした顔をしている。ヴァヴェリ戦後とは偉い違いだ。もっともそれは虚勢である事が信也にははっきりと見て取れた。彩にはどこかわかりやすい部分がある。だがそんな信也の思惑など彩は一切気にしない。彼女はまくし立てるように信也に対しエールを送る。
「決まってるでしょ。今日はシンヤに頑張ってもらわないと。あの爺さんをコテンパンに、ね。」
(現金だな。要は僕が今日勝たないとあの爺さんがそのまま三連勝。僕はおろかアンタの決勝トーナメント進出の可能性も消えるってわけだ。随分と打算的な応援をありがとう、とか言ったら殴られるのか?)
 信也と彩が如何にも幼馴染らしく打算を頭に巡らせながら黒い会話を続ける一方、Iブロックには決闘の雨が降り注いでいた。俗に言う『20XX年:ベルク大虐殺』の始まりである。

 

第22話:天上天下適者生存(デュエル・サバイバル)


―Iブロック―

【Iブロック二回戦】
ベルク=ディオマース(ドイツ)―仙崎隆(宮城)

「み、見ろ! ベルク=ディオマースが地面に紙シートを引きやがった! 一体何をする気なんだ!?」
「見せてやるぜ!これが俺のデッキ構築だ! ハーッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!!」

「せ、戦略図だ! 戦略図を描いてるぜ!こ の短時間の間に!」
「あれほど緻密なプランを建てるとは、あいつ只者じゃねぇ!」
「だが肝心のデッキ構築はどうするんだ!! もう時間がねぇぞ!」
 ベルク=ディオマースの手によって【決闘札図(デュエルダイアグラム)】が恐るべき勢いで書き上げられていく。その緻密さ・正確さはベルク=ディオマースが単なる力押しのデュエリストでないことを窺わせる。
 だが、ベルク=ディオマース流デッキ構築の真髄はここからであった。彼は突如数千枚はあるであろう目ぼしいカード群を前述の紙シートで包み込み、天に向かって放り投げたのだ。なんという暴挙!

HA−HAHAHAHAHAHAHAHAHA!

舞え!散れ!跳べ!飛べ!吹き荒べ!

さあこの俺の前で生き残って見せろ!!

「ば、馬鹿な! アイツ、アレだけの量のカードをぶんなげやがった!!」
「あんなことをして一体何のつもりなんだ!? 全く意味わからねぇ!!!」
「ハーハッハッー! ジャパニーズ! 本場のデッキ構築を見せてやるぜ!!」 

【天上天下適者生存(デュエルサバイバル)】

 それは瞬きする間の出来事だった。その場にいた誰もが絶句する、殺戮劇の始まりである。天に向かって放り投げられた数千枚のカードが、地球の重力に従い大地に安息の地を求めるその瞬間!ベルク=ディオマースが夥しい数のカードの中に突っ込んで行く!会場中に響き渡る地鳴り!千切れ飛ぶカード!その凄惨な光景に観客達はただただ息を呑む。この世の物とは到底思えぬようなデッキ構築に息を呑む!この世には、神も仏もいないのか。

「す、凄ぇ。ドイツ代表ベルク=ディオマース! あの動きは只者じゃねぇ! だが、あんなことをして一体何の意味が……なっ!? み、見ろ!アイツの右腕を! 何時の間にか40枚デッキが組みあがってやがる!? そんな馬鹿な!? 一体何をしやがった!」
「スピードだ! いや、パワーもだ! 1000枚以上のカードの中に突っ込み、有用なカードだけを選り分ける! 人間業じゃねないぜ!」
「確かに凄ぇ。だが他のカードはボロボロだ! アイツには、血も涙もねぇってのか!!」
 だがベルクは会場の悲鳴を一顧だにしない。彼にとって正しい選抜基準とは、『力』に他ならない!
「ハン! 戦場では役立たずから一斉に淘汰される。使えない奴には死ィあるのみだァ!!」
 ベルクが叫ぶ。異様なまでの殺気を放ち、高らかに叫ぶ。その光景を、瀬戸川千鳥はやや渋い顔で眺めていた。地上から数十メートル隔たった場所、壁に張り付きながら眺めていた。
「【天上天下唯我独尊(デュエル・サバイバル)】か。ふん、露骨にやる気を出しよって。奴があのようなざまだから、我等全員が金の亡者などと人括りにされるのだ。金、金、金、そんなに金が惜しいか!」

【天上天下適者生存(デュエル・サバイバル)】
ベルク=ディオマースの高い身体能力と超人的な情報処理能力があって初めて可能なデュエルスキル、それが【天上天下適者生存(デュエル・サバイバル)】である。だがこのテクニックの成立には紆余曲折があった。
 彼は当初自らの知識・経験則を客観化した【決闘札図(デュエル・ダイアグラム)】の作成を自らのデッキ構築の基本に据えていた。だが、この一見すると完璧な【決闘札図(デュエル・ダイアグラム)】には、たった一つだけ致命的とも思える弱点があった。それは時間。そもそも戦場においてはより早く、より迅速なデッキ構築が求められるのは周知の通りであるが、ベルクの行った【決闘札図(デュエル・ダイアグラム)】の作成はそれだけで相当程度時間を消費してしまう。つまりプランの正確さと引き換えに大きな代償を払うことになりかねないのだ。
 だがベルク程の決闘者がそれを易々と許すだろううか? 否。彼はこの欠点を克服しつつも、利点を100%生かす為のデッキ構築法を戦地にて編み出した。なんと彼は 1000枚超のカードを一度に放り投げた後恐るべき勢いでダッシュ、それらのカード群の中から超高速でデッキに投入するカードだけを探し当てるという奇想天外なデッキ構築を行って見せたのだ。だが…そんなことが果たして可能なのだろうか。
 業者が夥しい量の砂利の中から砂金だけを取り出すような、或いは、高−z超新星探索チームがセロトロロ・アメリカ連合天文台本部の、エアコンが効いたコンピュータールームにて、スクリーン越しに遥か彼方の銀河に点在する超新星を探し出すような、そのような真似を、あの一瞬の間に完了する事が果たして可能なのだろうか。
 …可能なのである。何故なら、彼は既に【決闘札図(デュエル・ダイアグラム)】によってデッキ構築の抽象化を完了している。其れ故彼は持ち前の類稀な反射神経を生かしつつ必要なカードだけを掴み、其の他のカードを吹き飛ばす事が出来たのだ。優れた抽象は具体への道筋を最適化する―。確かにこの方法は多少荒っぽいのかもしれない。だがその裏には、戦地で培った『合理性』が間違いなく存在していたのである。【天上天下適者生存(デュエル・サバイバル)】とは、論理と暴力の止揚によって生まれた偉大なる決闘財産だったのだ!

「お、俺はこんな怪物とこれから決闘するってのか!? い、嫌だ。田舎に帰りてぇべ……」
 この、あまりにも凄まじいベルク=ディオマースのデッキ構築を前にして、怯えをかくす事ができない仙崎隆。そのデッキ構築は、今まで彼が平和な東北で仲 間達と一緒に行っていたそれとはあまりに次元が違う。彼は今、自分如きが決して来てはいけない場所に来てしまったことを感じていた。東京は恐ろしい場所。 そして世界はそれに輪をかけて恐ろしい場所。彼は、愛すべき東北の大地が恋しくなった。あの愛すべき、のどかな仲間達の元に帰りたかった。もう勝敗などど うでもいい。こんな化け物に勝てる筈がない。せめて無事に帰りたい。それが今この瞬間における、彼のささやかな願いであった。だが、最早全てが遅すぎた。 ベルク=ディオマースの『地均し』に、容赦などあろう筈がなかった。黙祷――

―第5ターン―

肉体(デッキ)を引き裂き、

臓物(カード)を抉り出してやるぜ!

俺の通った後には決闘盤(デュエルディスク)一つ残さねぇ!!


喰らえぇ! ジャパニーズデュエリストォ!!


無境界大虐殺 ( ボーダーレス・ジェノサイド )


跡形もなく消し飛べ!!

《無境界大虐殺(ボーダーレス・ジェノサイド)》
通常魔法
ライフを半分支払う。自分の各モンスターは、ターン終了時まで自分がコントロールする他の種族一体につき500ポイント攻撃力をアップする。





キラートマト 攻撃力3400!!


E・HEROワイルドマン 攻撃力3500!


ハイパーハンマーヘッド 攻撃力3500!!

究極昆虫(アルティメット・インセクト) LV3 攻撃力3400!!


ヴァンパイア・ロード 攻撃力4000!!!


殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せェェェェェ!!


HA−HAHAHAHAHAHAHAHA!!

 


「お、おっかさーーーーーーーーーーーーーーん!!!!」

【試合結果】
ベルク=ディオマース(ドイツ)―仙崎隆(宮城)
得失点差±5300

 対戦相手の、《炸裂装甲》をリバースするだけの気力すら、根こそぎ奪い取る圧倒的な破壊力。これぞベルクの真骨頂。彼の通った後にはぺんぺん草すら生えないと専らの噂。
「ハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハー!! 弱ぇ!弱過ぎるぜ!ハッハーッ!」
 この決闘を観戦していた西川皐月は、その余りの強さに一種の呆れすら感じる。こいつは、なんだ。
(『論理』と『暴力』を併せ持った決闘。これが、これが幾多の決闘戦場を生き抜いてきた『決闘傭兵』ベルク=ディオマースの決闘だっていうの? 信也君、あのチームはやっぱり手強い。気をつけて) 

―フリーデュエルスペース―

 信也は彩と練習決闘に励んでいた。だが信也の調子はあまり思わしくない。先程も《ディメンション・マジック》の可能性を見落とした信也が、彩の《黒・ 魔・導》でそれはもう酷い目に合ったところ。信也は尚も悩んでいた。そんな信也の脳裏に浮かんだのは昨日晃が別れ際に行った言葉。

「俺達は所詮一つのデッキしか使えない『三流』決闘者。つーか俺のデッキなんか【オ フェンシブ・ドロー・ゴー】だぜ?生まれた時から絶滅危惧種に決まってら。だったら、誰も行かない方向に進化し続けるしかないだろ?例えその先で鬼が出よ うが蛇が出ようが覚悟の上ってな。俺はそう心に決めて今までやってきた。それしかなかったんだ。この先どんな馬鹿に至るかは俺自身にもよくわからない。だが行く道は半ば決まってる。後はその道をどう切り開いていくか、それしかない。俺にはまだ残された伸び代がある。その言葉を信じて最後までやりぬくしかないんだ。それが、それが俺の決闘だ」

(あの人は既に覚悟を決めていた。デッキと心中する覚悟を決めていた。それがあの人の決闘だから、か。それに比べて僕は、僕は一体何に賭ければいい? 僕が 【グッドスタッフ】を使っているのは決意や信念とか、そんなんじゃない。ただそこにあったから。ハハ、我ながら薄い動機だな。それでも、今まで僕はこの 【グッドスタッフ】と共に闘ってきた。それ以外の持ち合わせはないも同然だった。【ベストスタッフ】、か。だけど、僕は……あーくそっ! なんなんだこのも やもやした感じは)
 試合の時間が着々と迫るが、答えなど出る筈もない。そうこうしている内にJブロックの幕が上がろうとしていた。俗に言う『20XX年:ピラミス大王朝』の幕開けである。 

―Jブロック―

【Jブロック二回戦】
ピラミス[世(エジプト)―緑川俊(三重)


「み、見ろ! 『黄緑色の青緑』三重代表・緑川俊のデッキ構築が凄ぇ!」
「あの機械的な動き、まるで関節にコンピューターを仕込んでいるようだ!」
「フッ、この『崩壊する知能障壁』とまで謳われた我が頭脳と、その頭脳にあわせてセッティングされた我が『肉』『骨』『血』『毛細血管』……etc.この私を見るがいい。そしてこの私を褒め称え……何ぃ!?」

「み、見ろ! ちょっと眼を離した隙に、ピラミス[世のフィールドが凄ぇことになってるぞ!」
「ば、馬鹿な!? そんな馬鹿なことが……あ、あれは一体何なんだ!?」
「ピラミッドだ! エジプト代表ピラミス[世! 夥しい量のカードで巨大なピラミッドを作り、その中でくつろいでやがる! なんて、なんて快適そうなんだ! あれでは汗水流して真面目にデッキを作っている緑川の野郎がただの間抜けに見えてくるぜ! あんなデッキ構築方法見たことねぇ!」
「そうか! あれならデッキ構築による疲労を最小限に抑えられる! あの野郎、なんていう策士!」

「朕のデッキ構築は太古の昔から万物全てを司る『ピラミッドパワー』を一点に集める事から始まる。下郎よ、この朕のピラミッドが完成した時点で、下郎の敗北は既に宿命付けられておったのだ! 消え去れい!」
「く、くそう!お前は、お前は一体何者だ!」
「冥土の土産に朕の名を教えてやろう。朕は『決闘十字軍デュエルスフィンクス』の王たる決闘者……

エジプト決闘の金字塔』ピラミス[世よ。控えろ下郎!」

 

【試合結果】
○ピラミス[世(エジプト)―緑川俊(三重)●
得失点差±2400


「なんや……アイツ……何がしたいんや……」←コウジ 

―フリーデュエルスペース―

「どうすれば……どうすればいいんだ?」
「よう、シンヤ。調子はどうだ?」
「ダルさん! それに……」
 信也の顔が渋みを増す。今最も会いたくない人間がそこにいた。
「小僧。どうやらお前の出番じゃぞ。マジシャンズ・アヤではチト物足りんかったわい」
 ヴァヴェリを前に彩が押し黙っている。やはりトラウマか。ここは信也が喋るしかなさそうだ。
「ヴァヴェリ=ヴェドウィン、随分とご機嫌じゃないですか」
 最も、言語が微妙な為、中継ぎをするのは相変わらずストラの仕事だったのだが。
「どうだシンヤ。この耄碌爺ィに引導を渡す準備は出来たか?」
「『耄碌爺ィ』は問題なく聞こえとるぞダルジュロス。お主も物好きじゃのぉ」
「ディムズディルには負けるさ。俺はただ、な。それでどうなんだシンヤ。このクソ爺ィをとっちめる方法は思いついたか?勝算とかはあるのか?」
「そうですね。この人の前では決して語りたくない程度の神算・鬼謀なら2〜3個用意してあります」
 信也はそう言いつつ目の前のカードをさりげなく回収しようとする。だがヴァヴェリはそれを見逃さない。手に持った杖でそのカード郡を指し示す。その顔には笑みが浮かんでいる。
「フォッフォッフォッフォッフォ……【ガジェット】に【悪魔族】に、そいつは何じゃ? 楽しそうな予習じゃの」
「暇だったので。随分とせわしいですね。もっと自信に満ち溢れた人だと思ってましたが、誤解……」
 信也の、挑発とも思える台詞を、ストラがその内容を一寸違えることなく通訳する。こういう時に限ってこの男の通訳は正確無比だった。本当に暇人だ。
「そうかそうか。わしはてっきり、お主が【グッドスタッフ】以外のデッキを覚えようと躍起になっているとばかりおもっとったわい。すまんのぉ。流石にそのような幼児並の真似はするまいか」
「別に幼児でも構わないと思いますよ。耄碌爺さんの止め刺すには赤子でも十分過ぎる、そう思いませんか?要は勝てさえすればそれで足りるわけです」
「勝てればの。だが、自分のデッキすら信じられぬ者に勝機があるとはとても思えんのじゃが。のぉ小僧」
 この丁々発止のやり取りを逐一通訳しながらじっと眺めるストラ。その表情は楽しげだ。最早通訳に味をつける必要などどこにもない。ただ楽しい、と。やはり暇人だ。
(『電獣』ヴァヴェリ=ヴェドウィン、か。ガキが相手でもこの爺さんは容赦ないな。最早通訳無しでもプレッシャーの1つや2つ掛け合えるような空気が形成 されている、か。だが、それにしてもシンヤの奴、この爺さん相手に一歩も引かないとは中々いいハートを持っているじゃないか。面白くなるかもな)
「試合を楽しみにしておるぞ『杖使い』。フォッフォッフォッフォッフォッフォッフォッフォッ!」
「ええ。僕も楽しみにしておきます。僕の、勝利の瞬間を」
 二人の決闘者が信也の元から去っていく。と、同時に此方方面に向かってくる決闘者の一団。彼らは既に終了した試合の事を話題にしながら歩いていた。それ を横から聞き取った信也の戦慄が更に深まる。決闘十字軍を前にした彼の苦悩は衰えを知る事がなかった。彼は今かってないほど崖っぷちに居た。

しっかし凄かったよなベルク=ディマースにピラミス[世。1000枚のカードをぶん投げるのも凄かったが、1000枚のカードでピラミッドを作るのも負けず劣らず凄かったぜ。やっぱ世界レベルは違うな。



【こんな決闘小説は紙面の無駄だ!】
3つ目の図に関しては、もはや僕にすら何の図だか1%もわからない。やっぱ世界レベルは違うぜ!


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