【フリーデュエル】
東智恵VSグレファー=ダイハード

「ねえユウイチ。なんでチエがデュエルしてるの?」
「ミズキか。なんのことはない。単なる成り行きだ。だが、この騒ぎから考えてもあの野人は手強いんだろうな。チエは元々【メタゲーマー】系。初見の相手にどれだけ対応できるか。つっても『俺は』全然心配してないんだけどな。何せアイツは『びんわんまねぇじゃあ』なんだからよ」
 そうこうしている内にターンランプがグレファーの元に点灯する。先攻はグレファー。
「グレグレグレグレ……ファー!!」
(うわ、うるさ! もしかしていきなり急戦狙いの布陣?)
 だが、グレファーの第一ターンはあまりに簡潔だった。
「グレ(ドロー!)! グレ(セット2枚)! ファー(ターンエンド)!」
「あ……そう。じゃあ、私の番、ドローするけど……」
 モンスターを伏せない第1ターン。これは一見すれば隙だらけということになるが、当然そんなことはない。グレファーは何かを狙っている。それも攻撃を誘って いると見るのが妥当。おそらくはそれ様のデッキチューンを施しているのだろう、と、ここまで考えた智恵は、それでも自分から動くことを考える。
「《熟練の黒魔術師》を召喚。プレイヤーにダイレクトアタック」
 智恵は敢えて攻撃に臨む。相手が何か仕掛けてくるならそれもよい。その上で次の手を繰り出す。そして相手の上を行く。強気を前面に押し出した構えだ。だがグレファーは、攻撃が届くまでのその間、微動だにしなかった。動かざる事山の如し、とでもいうべきなのか。

東智恵:8000LP
グレファー:6100LP

 智恵はそれを怪訝な顔で眺めながらも、このターンはカードを一枚伏せてターンエンドする。
「ターンエンド……」
 ターンランプがグレファーの元に再点灯。しかし、このターンのグレファーもまた淡白だった。
「グレ(ドロー)! グレ(セット2枚)! ファー(ターンエンド)!」
(また2枚伏せエンド!? 待ちの一手を貫くつもり? だったら……)
 『何もしない』グレファーに若干の戸惑いを見せる智恵。その動きを脇にいた千鳥がつぶさに観察する。
「マジシャンデッキは高速召喚と高速対応がウリのデッキ。その、相手の力を逆用しつつ戦う冷酷無比な闘い様はまさしく賢者。だが、肝心の相手が何もしないならどうすべきか……精々見せてもらおう」
(相手が動かない。それも【ドロー・ゴー】なんかと違って今のところ邪魔をしようという気配すらない。なんか嫌な感じ。でも、相手が動かないなら此方にもやりようは、ある)
「ドロー。私は……魔法カード発動。《大嵐》!」
 動かないなら動かしてしまえばいい。この《大嵐》によって智恵の伏せカードもまた墓地に送られることとなるが、そのカードは《炸裂装甲》。このデュエルではもはや役に立たないと見てのアクションだ。智恵は、『グレファーから戦闘ダメージを受けることはない』という前提に身をゆだねた上での勝負に出る。
「ほう。このタイミングで《大嵐》か。確かにあれをつかえば魔力カウンターを《熟練の黒魔術師》に載せつつ、同時にグレファーを動かせる。カウンターされるもよし。何らかのチェーンをされるもよし。その覚悟を決めた上での陽動戦術。中々大胆だな。だが……」
「グレ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
「来る!?」
「グレ(《八汰烏の骸》)! グレ!(《強欲な瓶》)! グレ(《八汰烏の骸》)! ファー(《積み上げる幸福》)! グレグレファー(カードを五枚引くぜーっ)!」
「嘘。カードを引く……だけ?」
「これぞぉ! 『 決闘十字軍 ( デュエル・クルセイダーズ ) 』の誇る決闘権化が一人……

変態連鎖(メタモル・チェーン) 』グレファー=ダイハードよ。」

 千鳥の顔は無意味に誇らしげだった。  

第11話:変態連鎖(メタモル・チェーン)


東智恵:8000LP
グレファー:4200LP

 ライフ面こそ智恵がリードしていた。モンスターでの連続攻撃。そういう面から見れば智恵の圧勝ムード。だが現実にはそうそう簡単に行かないことがハッキリしている。その根拠はカードアドバンテージ。智恵が手札3枚でモンスター一体と伏せカード1枚なのに対し、グレファーは……なんと8枚。その陣容はまさに壮観。筋骨隆々、並々ではないことがうかがえる。

グレ(ドロー)! グレ(伏せ5枚セット)! ファー(ターンエンド)!
「アイツ、自分のターンでやってることそのものは【ドロー・ゴー】と同じだが、智恵の行動を今まで一切邪魔していない。となるとコントローラータイプじゃないな。どう見てもそんな感じじゃあない。むしろ、決定的なタイミングを見計らった上で一気に反撃を決める。自分が吹っ飛ぶその前に……。あの勝負どころを嗅ぎ分ける嗅覚。野性動物的、ということなのか」
 勇一によるこの解釈を、その直ぐ横で聞いていた千鳥はその洞察力に一目を置く。
「流石だな森勇一。そうだ。グレファーは見た目こそ『女の尻を追っかけまわすしか脳のない図体だけの木偶の坊』。穿った見方をすれば知恵遅れにすら見える。だが、そのデュエルセンスは間違いなく一級。奴の、チェーンタイミングをはかる野生的な嗅覚は稀有とすら言っていい。その辺を見誤ると喰われるぞ」
「あいつはその野生動物を狩るハンター様さ。アイツに撃ち殺された奴は数知れずってな」

「ドロー……。なぁるほどね。貴方のデッキは【チェーン・バーン】。それも守りを厚くしないタイプ。さっきのターンでは、私があと1ターンで勝負を決めることはそうそう出来そうにないと読みきった上で、ライフを犠牲にする代わりの代価としてカードアドバンテージを稼ぎにきた。なかなかね。でも、この私に何度も同じ手が通用するとは思わないこと。いいわね」
グレグレファー(よくなーい)!
「さあ、いくわよぉ。手札から魔法カード発動《天使の施し》。カードを3枚引いて2枚捨てる。更に《速すぎた埋葬》。今墓地に送った《ブラック・マジシャン》を特殊召喚。更に! 魔力カウンターが3つ載った《熟練の黒魔術師》を生贄に捧げ、デッキから《ブラックマジシャン》を特殊召喚する!」
 あっという間の召喚劇。この高速召喚こそ、【ブラックマジシャン】の、『ウィザード・チエ』の真骨頂。
「遂に出たか。『ウィザード・チエ』の十八番。それも二2体とはやってくれるじゃないか。さあ、どうするかとくと見てくれよう。私を失望させるなよ」

「《黒・魔・導》!」
 だが、そのプレイングは千鳥を悪い意味で驚かせる。智恵が渾身の力を込めて放った魔法カード。それは伏せカード一掃スペルである《黒・魔・導》であった。あまりに大味な、戦術。
「馬鹿な! それでは先程の《大嵐》の二の舞。単調過ぎるぞ東智恵!」
(これで――いい!)
グレ(《破壊輪》)!
 そうこうしている内にチェーン合戦が勃発。まずは単発の《破壊輪》だ。《ブラックマジシャン》が破壊される。制限カードに指定されるほどの、その破壊力は絶大であった。二人のライフが一気に削られる。当の発動者に至っては射程圏という有様だ。だが、このプレイングにある疑問を寄せる決闘者が少なくとも約3名。森勇一と西川瑞貴、そして、当事者である東智恵――。

東智恵:4700LP
グレファー:1700LP

「ここで《破壊輪》!? 確かにアレならタイミングを選ばず《ブラックマジシャン》を一体問答無用で破壊できる。だがそんなことをすればアイツのライフも射程圏……いや待てよ。本当にそうか?」
「この変な違和感。何か頭に響いてくる。これは……何?」
(ここで躊躇なく《破壊輪》――。ならやっぱりアイツの手は――)
 勇一と瑞貴、そして智恵が頭をフル回転させる間、グレファーは更なる連鎖を積み上げる。
グレ(《チェーンヒーリング》)! グレ(《チェーンブラスト》)!

東智恵:4200LP
グレファー:2200LP

「ここまででチェーン4。ならば残りの2枚は恐らく!」
 千鳥の予想は当る。そのカードとはこの2つ。
グレファー(《連鎖球菌》)!!!!

《連鎖球菌》 
速攻魔法
自分フィールド上に、このカードの発動時に積まれているチェーン数までの「細菌トークン」(植物族・地・星1・攻/守0)を守備表示で特殊召喚する。

グレファー(《連鎖爆撃》)!!!!

東智恵:1800LP
グレファー:2200LP

 5枚のカードが恐るべき勢いでチェーンを積み上げ、一気に智恵が追い詰められる。ライフ面では逆転。カードアドバンテージでは、《チェーンブラスト》を手札に戻した為にグレファーが智恵に3枚分の差をつけ、モンスターに関しては5体分の壁が一瞬にして出現した。単純に計算すれば、2体のブラックマジシャンの攻撃を最低2ターンの間凌ぎきる『脆弱かつ鉄壁の壁』。まさしく『変態連鎖(メタモル・チェーン)』の名に偽りなしである。このチェーンスキルには、流石の勇一も舌を巻くかに思われた。

「強いな。これが外国人決闘者の実力か。一瞬にしてライフ差をひっくり返し、あまつさえ防御用のトークンまで用意するとはやってくれるぜ。だがな! うちの智恵はそう甘くねーんだよ。その程度で絵図で!」
 そう、グレファーが鉄鎖を自在に操る連鎖決闘者ならば、一方の智恵は数多の呪文を繰り出す賢者決闘者。その彼女が何の用意もなく相手の絵図に二度も乗る? 否。彼女はそんな甘い決闘者ではない。彼女の手には、既に『二の手』が用意されていた。
「残ったもう一体の《ブラックマジシャン》に《ビッグバン・シュート》を装着!」
グレ(貫通能力付与系装備魔法)!
 そう、《ビッグバン・シュート》。本来は《拡散する波動》等とのコンボ用としてデッキに放り込んでいた最終虐殺兵器である。だが、相手のライフが2500を切った今ならコンボなどなくとも十分に致死ダメージを叩き込める。何故なら相手フィールド上にいるのは、数は多くとも烏合の衆。
 この極大爆裂呪文の前にはところてんのようなものでしかない。反射的に身構えるグレファーと、デュエルディスクを中段に構える智恵の姿が眩しい。グレファーの伏せカードが消えた以上、ここで仕掛ければ勝利は確実かと思われた。だが智恵は、安易に『バトルフェイズ』とは言わなかった。

グレ(なんだ)!?
 しかし智恵は、即座にバトルフェイズへ移行しなかった。何故なら、智恵には『ある違和感』が見えていたからだ。その姿を勇一と瑞貴は頼もしそうに眺めている。彼等は既に『ある違和感』の正体を突き止めていたのだ。智恵は、おもむろに1枚の伏せカードを表にした。そのカードとは……
「そ・の・ま・え・に罠カード発動。《マインドクラッシュ》!」
(な!? このタイミングでカード指定による手札破壊を行うだと!? 事前のピーピングも行わず? まさかあの娘。グレファーの思惑を読みきったとでもいうのか)
 だが、千鳥の懸念など露知らぬグレファーはこのアクションを嘲笑う。
グレグレグレー(無駄だーっ)!
 傍から見れば確かに暴挙。だが、智恵に迷いはなかった。
「グレグレ五月蝿いね。でも無駄よ。指定カードは《クリボー》! さあ、手札を見せてね(はあと)」
グレ(馬鹿な)!?
 グレファーの手が止まる。そう、グレファーの手札には驚くべき事に《クリボー》があったのだ。そしてこの時千鳥は、東智恵が『どの程度』の決闘者かを完全に把握する。首尾は上々。
「読んでいたのか。読んでいた上で敢えて自分から仕掛けたというわけか」
 この千鳥の驚愕を、何処か誇らしげな勇一が引き継ぐ。彼曰くこういうことだった。
「智恵の直観力は半端じゃない。おそらくはアイツが五枚伏せた時点で流石に無茶すぎると感じたんだろうな。そしてそれは《破壊輪》を見た瞬間確信に変わった。幾らなんでも自殺願望があるとしか思えない。だが、もしもその表面上無茶に見えるプレイングに釣られた、そんな間抜けなプレイヤーの裏をかくところまでが奴の絵図だったとしたら……その為のキーカードが《クリボー》だったってわけさ。よくよく考えたらあれもチェーンの起点になるカードだ。バトルフェイズオンリーと言っても場合によっては使える。少なくとも、守りが紙のように薄いチェーンデッキの緊急退避要員として入っていてもそうおかしくはない」
「仮に外れてもそのまま殴れば勝てる状況。使わない手はないわね」

「わかった? ちゃぁんとネタはあがってるのよ。さあこれで……アレ?」
 勝ちを確信する智恵。だが、そんな智恵の前に佇むグレファーの様子が何処かおかしい。いや何処かなどという生易しいものではない。全面的にあらゆる角度から見て何かが変だ。もはやこれは違和感などという曖昧なものでは決してない。明らかに、異常者そのものだ。

「グレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレグレ…」

「な、なんだアレ……」
当然のように無気味がる勇一に対し、千鳥が嫌な一言を漏らす。
「不味いな」
「ど、どうしたんだ。普通じゃないぞアレ」
 何かを知っているらしい千鳥の口から漏れた一言。それはある意味で衝撃的だった。
「チィッ、惚れたか!!」
「えぇ!?」

ダーイ・グレファー(智恵ちゃんLOVE)!!

 それはまさしくサプライズ・アタックと呼ぶにふさわしい現象だった。突如惚れ狂ったグレファーが智恵に向かって渾身の愛を込めたダイレクトアタックを仕掛けたのだ。
 怯える智恵。動揺する勇一。立ちすくむ瑞貴。誰もがこのあまりの緊急状況に対し微動だにできない。惨劇の瞬間はすぐそこに迫っていた。この世には神も仏もいないのか。だが、その時奇跡が起こった!

 

瀬戸川流決闘術奥義


『黄昏の盤歌』

 

 一瞬であった。一瞬閃光が走ったかと思うと、グレファーはその場にノックダウン。やったのは千鳥だ。
「ふん。愚か者が。首を落とされなかっただけでも儲けものと思え……もう聞こえていないだろうがな」
 その光景を呆然と見ていた勇一だが、それでもようやく落ち着きを取り戻し今起こったことを分析する。
(一撃で……なんて女だ。グレファーがチエに襲い掛かったあの瞬間、アイツは超高速の踏み込みでグレファーの懐に飛び込み、すれ違い様『決闘盤(デュエルディスク)』の一撃で瞬きする間もなくあの巨漢を仕留めやがった。アイツ、一体何者だ?)
 その千鳥は勇一の方を振り返り、グレファーの非礼を詫びる。
「悪かったな。此方の者が失礼した。この決闘はお前等の勝ちでいい。事実、勝利寸前だったのだからな」
「おまえ……コイツの仲間なのか」
「ああ。そうなるな」
「そうかい。じゃあ次からもっと躾けとくんだな。チエ! ミズキ! 帰るぞ」
 微妙にしこりは残るものの、今日のところはそのまま引き上げようとする勇一。だが千鳥はそんな彼を呼び止める。彼女の眼にはある種の決意が込められていた。
「待て。グレファーの失態は我の失態でもある。このまま汚名を背負うわけにはいかんな」
「じゃあ……どうするってんだよ」
「森勇一、そして西川瑞貴。貴様等に決闘を申し込む」
「何? お前……。お前は一体何者だ!?」
 聞かなきゃいいことを思わず聞いてしまう馬鹿。そして、答える馬鹿。
「自己紹介しておこう。我は『決闘十字軍』に所属する決闘権化が一人、

人札一体』瀬戸川千鳥だ。」

穏やかな筈だった『インターバル』はまだ終わらない。




【こんな決闘小説は紙面の無駄だ!】
※瀬戸川千鳥は花も恥らう乙女です。



↑気軽。ただこちらからすれば初対面扱いになりがちということにだけ注意。


↑過疎。特になんもないんでなんだかんだで遊べるといいな程度の代物です。



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