地縛館でミツル・アマギリと向かい合うあいつが何を考えていたのか。Earthboundの構成員達が何を考えていたのか。実を言うとおれにはちょっとした心当たりがあった。それに関して語る前に、まずはテイル・ティルモットという、妙な尻尾をぶら下げた胡散臭い男について幾つか話しておきたい。

 おれがあいつと初めて出会ったのはチームベリアルとのいざこざからミィを助けることになったあの時だ。それまでのあいつは西のトーナメントシーンに一度も姿を見せていない。(少なくとも西の表舞台では)全くの無名ということになる。それでも、並の使い手じゃないのはゴードンとの決闘からも窺えた。こいつだ、と、おれは直感した。こいつともう1人を引き入れられれば一躍のし上がれるかもしれない。残念ながらもう1人の方は逃したものの、あいつは思いの外あっさりとうちに入ることを承諾してくれた。もっとも、あっさり事が進んだのはここまで。その後は面倒事の繰り返しだった。練習はサボる。試合は怠ける。騒ぎは起こす。ろくでもない奴を引き込んでしまった、そうおれが気付くのに大して時間はかからなかった。いっそクビにして叩き出してやろうかと思ったがそうもいかない。うちには人材がいないんだ。あいつもそれを理解して好き放題やっている(に違いない)。リーダーの威厳などあったもんじゃない。あいつからすれば、最悪クビにされたところで痛くも痒くもないのだから従順になる理由などないというわけだ。くそったれ。

 おれが目を付けたあいつの実力について。最低でも西の百傑、その気になれば十傑、五傑と狙っていけるだけのものは十分感じる。 『破壊』 を苦手にしているのは確かにネックだが、それを補って余りあるセンスの良さを考えれば、短所の1つや2つで欠陥品の烙印を押す理由はない。西の伝統はチームデュエル。おれやラウがちゃんと連携を取れればそれ程の問題ではない……取れればの話だ。あいつはここ一番になればなるほどろくなことをしないタイプの人間だ。

 そろそろ本題に入ろう。話は、以前行われた大規模大会まで遡る。五戦三本先取の大会に実質3人で臨んだ大一番。厳しい闘いではあるが、俺達はなんとか三回戦まで勝ち進み、うまい具合にEarthboundのもとに辿り着いた。んで、ここで問題になるのは試合に出る順番だ。先鋒を誰にやらせるか。テイルだ。おれはそういう結論に達した。なんとなくだが、後ろにあいつを置くとここ一番でやらかしそうな気がしたからだ。もっと言えば、ミツルはおれの手で倒したい(終わってから言うのもなんだが、舞い上がってたんだと思う。あの時は)。そんなこんなで順番は決まったわけだが、問題がもう1つ。聞こうとしないんだ。え? なにがって? 相手の情報。どうもよく知らないらしい。それこそ 『地縛神を使ってくる』 程度の、幼稚園児でも知ってそうなレベルの話しか。勿論教えようとした。なのにあいつは聞きやしねえ。 「おれのこともあいつらはよく知らないんだからこれが正々堂々ってもんだろ」 などとほざきやがる。あいつの普段の態度からして、単にその場で知った方が面白いからとしか思えないが、結局最後まであいつは耳を塞いだまま試合に出た。勝手にしろ。半ばやけっぱちだった。

 これはそんなあいつと、チームアースバウンド最古参にして西の決闘の生き字引、ダァーヴィット・アンソニー(登録名:ダァーヴィット)との決闘の話だ。何度も優勝の栄冠を勝ち取り個人ランキングでも2位につけ、通算勝利数では現役最多を誇る決闘者の中の決闘者を相手にあいつがどう立ち回り、そしてどう決着したのか。備忘録がてらここに記しておこうと思う。


Duel Episode 8

Tail End Tail〜錆びた銃は鉄の尾を貫くや〜


『西の方角、先鋒で出てくるのはなんとダァーヴィット・アンソニー。この大会に賭ける意気込みがひしひしと感じられます。そして東の方角、胸を借りに行くのは新人のテイル・ティルモット』
「出番か。みんな私の決闘をよくみておけ。この闘いは少々長引くかもしれない」
「なんかふんぞり返ったのが出てきたね。それじゃあ精々投げますか。いってくる」
 実況兼立会人の紹介と共に2人が前に出る。ダァーヴィット(敬称略)の出で立ちについて今更触れる必要もないとは思うが、申し訳程度に言及しておこう。身長191cm。わざわざオーダーメイドした黒いコートを纏い、トレードマークのテンガロンハットを被っている。この通称ダァーヴィットスタイルは見栄えの良さから西の映画(西部劇)で度々採用され、今では西のシンボルの1つに収まっている。
『大ベテランVSニューフェイス。この対決は果たしてどちらに軍配があがるのかぁっ!』
「あんたのこと良く知らないけどなんか偉い人なんだって? まっ、気楽にやろうや」
 ダーヴィットの眉が僅かに上がる。間近でみるあの人は、やっぱり英雄だった。
「若造の跳ねっ返りは嫌いじゃない。決闘で卑屈になられても困るからな。【ジャンク】か」
 ダーヴィッドが構えた。軽く膝を曲げ前傾姿勢をとり、腰にぶら下げた 『決闘銃盤』 (※実弾は込められていない)に右手を添える。お得意のガンマンスタイル。
「無礼な若造を教育するのは大人の役目だが、生憎私は教育者ではない。これしか知らん」
 歴戦の戦士特有の威圧感。対戦者として向かい合っているなら兎も角、ベンチに座っているだけなのにこの圧力。動けない。動いた瞬間打ち抜かれそうな気がした。
「話が早いってのは助かるね。饒舌なのはおれの減らず口と……2つのデッキだけで十分」
 言うが早いか、テイルは尻尾から決闘盤を取り出した。狩人とキツネの関係。打ち抜けば狩人の勝ち。なら逃げ切ればキツネの勝ち? いや違う。デュエルフィールド上に逃げ場はない。
 試合開始のランプが点灯した瞬間、2人の決闘者が電光石火の如く踏みこんで ――
 始まった。

Starting Disc Throwing Standby――

Three――

Two――

One――

Go! Fight a Technological Card Duel!


「先攻もらい。ドロー。モンスター、マジック・トラップを1枚ずつセットしてターンエンド」
「こちらもドロー。同じくモンスター、マジック・トラップを1枚ずつセットしてターンエンド」
 静かな立ち上がりだった。ある程度は予想できた展開。テイルは序盤遊ぶ。遊ぶという言い方が悪ければ様子を見る。良く言えばあいつ一流の間合いの取り方。ダーヴィッドもデッキの特性上から1巡目に仕掛けることはあまりない。問題はここからだ。どちらが先に動くか。
「ドロー。だらだら何もしないってのもあんま面白くないか。《異次元の偵察機》を反転召喚。それじゃあバトルフェイズ。《異次元の偵察機》でセットモンを攻撃しとくよ」
 攻撃力800の《異次元の偵察機》で攻撃。こういうしょうもない戦法をあいつはよく好む。
「守備力600の《クリッター》だ。戦闘破壊される……が、この瞬間効果を発動させてもらおう」
 結果的に、テイルの行動が時計の針を少しばかり進めたのかもしれない。ダァーヴィットは "例のカード" をデッキから手札に加えた。次のターン、ダァーヴィットは《カードガンナー》で《異次元の偵察機》を軽やかに撃破。幾らかのダメージを与える。小手調べに対する小兵の返礼。
 動かない。ダーヴィッド・アンソニーはまだ動かない。

Turn 5
■テイル
 Hand 5
 Monster 0
 Magic・Trap 1
 Life 6900
□ダァーヴィット
 Hand 3
 Monster 1(《カードガンナー》)
 Magic・Trap 3(セット/セット/セット)
 Life 8000

「ドロー。返しのターンの《カードガンナー》は400ぽっち」
「なら仕掛けてくるがいい。若者とはそうあるべきだ」
 小競り合いに飽きたのかあるいは単なる予定調和か。兎にも角にも最初に主力を繰り出したのはテイルだった。通常召喚した《ジャンク・シンクロン》で《異次元の偵察機》を釣り上げる。レベル3チューナーとレベル2モンスターの同調(シンクロ)。あいつの十八番だ。
「頼むぜ《ジャンク・ウォリアー》。《カードガンナー》をぶん殴れ!」
 鉄の拳 "スクラップ・フィスト" (攻撃力2300)がさっきのお返しとばかりに《カードガンナー》を殴り飛ばす。リバースカードは沈黙したまま。ライフの1/4を削り取る。
「1900のダメージ、甘んじて受けよう。しかしカードは引かせてもらうぞ」
「そいつはいいけどそろそろ遊ぼうぜ。このまま終わったら客も冷めちまう」
「元気のいいことだ。そのデッキ、中々使い込んでいるようだな」
「へえ。なんでわかるの? エスパー?」
「投盤をみれば、随分前から投げ込んでいたことぐらいはわかる」
「正解。餓鬼の頃からの付き合いだからねこの『決闘屑盤(ジャンキー)』とは」
「ならばなぜ今まで出てこなかった。階級や規模を問わず、西の決闘には遍く目を通していると自負しているが、おまえの如き跳ねっ返りの決闘者など知らん」
「かったるいからさ。決闘は1人でやるもんだろ。なんだよチームデュエルって」
 あいつは事も無げにそう言った。背筋が凍ったよ。西の伝統はチームデュエル。そんであいつの目の前にいるのはそのチームデュエルで現役最多勝を挙げているダァーヴィット・アンソニー。勿論おれにとっても青天の霹靂。あいつはおれの夢をたった一行で全否定しやがった。
「人間は独りぼっちなんだ。独りぼっちの決闘者が独りぼっちで40枚のデッキを組んで闘う。学校の教師みたいなもんさ。40人の生徒に1人の教師。じゃないと生徒も迷うだろ」
「みためよりも偏屈な男だ。おまえにはこのチームアースバウンドどう映る」
「物好きの集まりだね。ターンエンド」

 背筋が凍った。同時に理解する。
 今この瞬間、ティル・ティルモットとダァーヴィット・アンソニーの決闘が始まったのだと。

「物好きか。それもよかろう。ならば!」
 ダーヴィッドの目の色が変わる。ガチだ!
「このチームアースバウンドに全てを捧げた、酔狂な老人の決闘というものがどれほどのものか味わって貰おうか。永続罠《神の恵み》を発動。これより射撃体勢に入る! 私のターン、ドロー……」
 《神の恵み》の効果によりダァーヴィットは500ポイントのライフを回復する。ライフ回復は一般的に言ってそれ程強力な選択肢じゃない。にもかかわらず、観客は「きた!」 「きたぞ!」 と期待を込めた反応を口々に。ダーヴィッドの手の内を聞こうともしなかったテイル。それでも気配くらいは察している筈だ。あいつの尻尾が(どういう原理なのかは知らないが)ぴょこんぴょこんと反応していた。
『ダァーヴィット選手が遂に動いたぁ! 《リビングデッドの呼び声》と《リミット・リバース》を順次発動! 《クリッター》と《カードガンナー》を墓地から蘇生。これで場には永続罠が3枚! 山を支える準備は整った! これぞ魔界の三点倒立! 後は発射台を待つのみか……きたきたきたーーーーーーーーーーーーーー! 《死皇帝の陵墓》! 歴戦の勇士が、ここに十八番の陣を張ったぁ!』
 ダァーヴィットが永続罠を張るということ、それは無間の地獄が始まるということ。
「行くぞ若造。2000ポイントのライフを祭壇に捧げ、我が最大のしもべを召喚しようではないか!」
 ダァーヴィットが腰を落として決闘盤を構えた。丸太のような腕に血管が浮かぶ。どれだけの力が籠もっているのか。それはすぐにわかる。投げ入れられた決闘盤からはっきりとわかる。
「はぁあああああああああああああああああああああああああああ……はぁっ!」





Earthbound Immortal Wiraqocha Rasca

Advance Summon



地縛神 Wiraqocha Rasca(効果モンスター)
星10/闇属性/鳥獣族/攻 100/守 100
「地縛神」と名のついたモンスターはフィールド上に1体しか表側表示で存在できない。
フィールド魔法カードが表側表示で存在しない場合このカードを破壊する。
相手はこのカードを攻撃対象に選択できない。 このカードは相手プレイヤーに直接攻撃できる。
また、このカードが召喚に成功した時、このカード以外の自分フィールド上のカードを3枚まで選択して持ち主のデッキに戻し、戻したカードの数だけ相手の手札をランダムに捨て、このカードの攻撃力を捨てたカードの数×1000ポイントアップする


「ウィラコチャラスカの効果発動。私の場の《リビングデッドの呼び声》、《リミット・リバース》、《クリッター》をデッキに戻すことで弾丸を装填。我が自慢の銃をみせてくれよう」
 こういう話を聞いたことはないだろうか。おれもラウから聞いたんだが、ウィラコチャラスカとは造語らしい。それも、既存の言葉2つを組み合わせた造語らしい。ウィラコラスは旧式言語で 『コンドル』 の意を表している。ウィラコチャラスカからウィラコラスを引いた残りの単語、即ちチャカはこれまた旧式言語で 『ピストル』 の意を表している(ヤクザが拳銃のことをチャカと呼んだりするのはこれの名残だそうだ)。この話を纏めるとこうだ。ウィラコチャラスカとは鳥と銃の複合生物。禿鷹の照準は人間の比ではなく、銃器の威力は鉤爪の比ではなく。まさに ―― 最強 ――



鳥銃戯画甲巻―Burst Shot―



「おれのハンドが……3枚同時に打ち抜かれた……!?」
「これが 『砲銃』 を象った地縛神、ウィラコチャラスカの力だ」
 言わんこっちゃない。あれがダァーヴィットの十八番。手札破壊(ハンドデストラクション)。それも1枚ではない。決闘者の命とも言える手札を根こそぎ刈り取るバーストショット。3発の弾を同時に発射、きっちり打ち抜く熟練の技。1度に3発もの弾丸を発射する都合上、その銃は複雑な内部構造を強いられ、調整にも技術を要する……あの人だからこそ扱える一品(デッキ)だ。
「随分とハンドが寂しくなったな小僧。しかしまだ終わりではないぞ。《リミット・リバース》が場から離れたことで《カードガンナー》は破壊され効果を発動。デッキからカードを1枚引かせてもらう。そして! ウィラコチャラスカは打ち落としたカードのエナジーを吸収することで真の力を解放する」
 ハンデスの成功により攻撃力を3100まで上昇させたウィラコチャラスカ。額の紋様(◇)から、瘴気を圧縮した物質をあたかも光線のように伸ばし《ジャンク・ウォリアー》の額に合わせる。アースバウンド式レーザーサイトだ。逃がさないという意思表示。一撃で仕留めるという意思表示。
「《ジャンク・ウォリアー》、その脳天は我が掌中にあると知れ!」



鳥銃戯画乙巻―Head Shot―



テイル:6100LP
ダァーヴィット:4600LP

「中々やるね。そろそろ実感が湧いてきたかな」
「カードを1枚セットしてターンエンド、さあどうする」
 瘴気を圧縮した弾丸に《ジャンク・ウォリアー》の頭蓋が砕かれるのを目の当たりにした時、あいつの言うように実感が湧いてきた。アースバウンドを相手にしているという実感が。夢にまでみた光景。嬉しくて震えが止まらない。いや、怖いんじゃないんだって。武者震いだから。怖いわけがない。
「さあどうするって言われても。こいつらに聞いてくれよ。こいつらに」
 それだけ言ってテイルはデッキに手を伸ばす
 ある意味では頼もしい奴だった。

Turn 7
■テイル
 Hand 5→2
 Monster 1→0
 Magic・Trap 1
 Life 6900→6100
□ダァーヴィット
 Hand 2
 Monster 1(《地縛神 Wiraqocha Rasca》(Attack:3100))
 Magic・Trap 3(セット/《神の恵み》/《死皇帝の陵墓》)
 Life 4600

「ドロー。そんじゃモンスターを1枚セットしてターンエンド。どうにかなるっしょどうにか」
 カード枚数に差を付けられた上、場には3100の地縛神。守勢に入るしかない。だが。
「ならば私のターン、ドロー。《神の恵み》でライフを回復。今度は別の銃が入り用かな?」
 フィールド上にはモンスターという名の護衛が屯っている。普通ならこいつらを蹴散らさない限り主人である決闘者の元へは辿り着けない。普通なら。空間を一杯に埋め尽くそうとも隙間はある。触れることすら許さぬ弾速とミリ単位の幅を通す照準、そして歴戦の勇士の腕前があれば隙間を通すことは容易い。ウィラコチャラスカの嘴が、スナイパーライフルの照準がテイルを狙う。
「地縛神の前に障害などないも同然。ウィラコチャラスカでダイレクトアタック」
 喰らえば一気に不利になる。けど、こういう時のテイルはそうそう簡単にはやられない。
「リバ〜ス、《スピリット・フォース》を発動。バトルダメージを無効にして墓地から《ジャンク・シンクロン》を手札に戻す。ありがとさん。おかげで手札が整ってきたかも」
「なるほど。《ジャンク・シンクロン》はサーチもサルベージも容易。良いカードを使っている。ならば精々攻めてこい。観客を冷ますわけにはいくまい。私は1枚セットしてターンエンドだ」
 決闘は動いた。けどそれは第一幕が終わったに過ぎない。
 ここからだ。

Turn 9
■テイル
 Hand 3
 Monster 1(セット)
 Magic・Trap 0
 Life 6100
□ダァーヴィット
 Hand 2
 Monster 1(《地縛神 Wiraqocha Rasca》(Attack:3100))
 Magic・Trap 4(セット/セット/《神の恵み》/《死皇帝の陵墓》)
 Life 5100

「ドロー。《魔導雑貨商人》をリバース、効果発動。デッキを捲ってって魔法を1枚ゲット」
「そのカードは……」
「確かそれ……ウィラコチャラスカが目の前にある限りこっちの打撃は通らないんだろ? それならさっさと退場してもらうよ。手札からマジックカード発動。いくぜ! 《ソウルテイカー》!」
「……」
「……」
「……」
「あれ? 試合のテンションならいけるかと思ったんだけどやっぱ無理か……」
 なぜいけると思い込むのか。ふざけてる。あいつは絶対にふざけてる。
「いやあ確定除去苦手でさ。どうしよっか……よし、《ジャンク・シンクロン》を通常召喚。肥えた墓地から《チューニング・サポーター》を釣り上げる。速攻魔法発動!」

地獄の暴走召喚( 速攻魔法)
相手フィールド上に表側表示でモンスターが存在し、自分フィールド上に攻撃力1500以下のモンスター1体が特殊召喚に成功した時に発動する事ができる。その特殊召喚したモンスターと同名モンスターを自分の手札・デッキ・墓地から全て攻撃表示で特殊召喚する。相手は相手自身のフィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択し、そのモンスターと同名モンスターを相手自身の手札・デッキ・墓地から全て特殊召喚する。


「なるほど。先程の茶番は兎も角中々いい戦術だ。地縛神はフィールド上に1体しか留まれない孤高の存在。《地獄の暴走召喚》のリスクをゼロに抑えることができる」
「ハンデス好きには悪いけど、おれはこいつらに寂しい思いをさせる気はないんだ。いつだってな。いくぜ! 雑貨以外の全員を使ってシンクロ召喚。Go! 《ジャンク・アーチャー》!」
 同時に《チューニング・サポーター》の効果も発動。1体につき1枚、合計3枚デッキから引く。 「あれ? 手札戻っちゃったかな」 とはあいつの弁。どこまでも人を喰った奴だ。
「落とされた手札を引き直す。この私に手札の数で真っ向勝負を挑むつもりか」
「もち。《ジャンク・アーチャー》の効果発動。地縛神をフィールド上から除外……」
 6枚の手札をひらひらさせつつ地縛神を次元の狭間に追いやるテイル。
 あのダァーヴィット相手に一歩も引いていない。盤面的にも、そして精神的にも。
「心配しなくても《地縛神 Wiraqocha Rasca》は戻ってくる。ちゃんと返すよ。本体だけは」
 《ジャンク・アーチャー》の効果は、本来ならダイレクトアタックへの血路を開く為の効果。けどやっこさんの戦闘力が何らかの事情で上がってるときは話が別だ。次元の狭間から帰還を果たしたとしてもその攻撃力までは戻らない。無力化したも同然。テイルの狙いもそこにある。
「100ぽっちのウィラコチャラスカと2300のアーチャー、お互いダイレクトアタックを繰り返したらどっちが最初にくたばるのかな。試してみる? バトルフェイズ、ダイレクトアタック!」
「《ガード・ブロック》」 「構いやしないさ。23回殴られる間に1回殴ればいいんだろ」
 あいつの言うことは間違っていない。但しそれは、
 相手が凡庸な超重兵器の使いならの話だ。
「ターンエンド」
「甘い」
「へ?」
「私のターン、ドロー! 《神の恵み》でライフを500回復。確かにウィラコチャラスカは地縛神の中でも最強の攻撃能力を持つ反面、硬性に関しては最弱も最弱。しかし ―― 地縛神を舐めるな!」
 プレッシャーが一段と強くなった。まだ奴は全ての技をみせていない。ここからだ。
「攻撃力ばかりが地縛神の拠り所と思わぬことだ。手札から《地縛旋風》を発動」
 伝説の禁止カード、《ハーピィの羽根帚》と同じ効果を持つ地縛神専用魔法。
「悪いけど1枚は避難させてもらうよ。《八汰烏の骸》を発動。デッキから1枚ドロー」
 2枚の内、1枚は逃げたもののもう1枚は潰される。いや、逃げたとすら言えないのかもしれない。
「避難? それを避難というのか。それが避難と言えるのか。甘いぞ若造! 手札から《アドバンスドロー》を発動。レベル10、ウィラコチャラスカを祭壇に捧げ2枚のカードを授かり、同時に《神の恵み》でライフを回復。《ダーク・バースト》発動。墓地の《地縛神 Wiraqocha Rasca》を手札に戻す。サーチにサルベージ、主力でそれをこなすのは何もおまえの専売特許ではない」
 《クリッター》に《ダーク・バースト》、元々の攻撃力が低いのはなにも欠点ばかりではない。サーチもサルベージも容易に行えるということ。ダーヴィッドはここですかさず永続罠を起動。
 そこから導き出される結論は ――

Turn 11
■テイル
 Hand 4→5→2
 Monster 2→1(《魔導雑貨商人》)
 Magic・Trap 2→1→0
 Life 6100→5300
□ダァーヴィット
 Hand 2
 Monster 1(《地縛神 Wiraqocha Rasca》(Attack:3100))
 Magic・Trap 3(セット/《神の恵み》/《死皇帝の陵墓》)
 Life 4100

「連射するようなもんだっけ、それ」
 11ターン目、増やした手札は再度毟られ、召し上げたしもべは再度頭蓋を砕かれる。言わんこっちゃない。普通なら満を持して決定機に出てくる地縛神。それを序盤から連続して投げる異形のスタイル。銃の躍進は連射技術と共に始まった。火縄銃に代表される単発式の時代から連射式の時代へ。戦線維持を務めると同時に弾薬として機能する永続罠が奴の基盤を支えている。何度みても恐ろしい。徹底した弾薬管理により実現した怒濤の連射。1回で駄目なら2回3回と試みる。この執拗さこそがダーヴィッドの真骨頂。あれを初見で破るのは難しいと言わざるを得ない。
「鈍重であるということは、軽快にする余地が溢れているということだ。そして、そちらがいかなる技を持っていようとも、私が連射すればするほどにそちらの選択肢は矮小化する」
 ハンデスの何が恐ろしいかと言えば、攻撃力と防御力を同時に削がれるのがヤバイ。決闘者を鍛冶屋に例えたビーク・ガスターニ曰く 『手札は鉄だ。鉄がなければ剣も盾も造れない』。
 直接攻撃権と戦闘拒否権を併せ持つ地縛神は攻防一体戦闘の管理者。干からびた手札では攻撃も防御もままならず、孤独な闘いの中いいように蹂躙されるしかない。 『使われる前に落とす』。それも徹底的に落とす。偏ったデッキのリスクを、より偏らせることで克服する所業。





 それがダァーヴィット・アンソニーの愛銃:【最良の結末(ウィラコチャ・ラスト)】。

「さあターンエンドだ。好きなように反撃すればいい。何度でも何度でも反撃すればいい。しかしそれが私の喉元にまで届くことはない。豆鉄砲で鷹は落とせんぞティル・ティルモット」
「ドロー。《地縛旋風》だっけ? その禿鷹ちゃんがいる限り、迂闊にセット置くわけにもいかないか……やっぱ1枚セット。雑貨を守備表示にしてターンエンドって言っとくよ。ターンエンド」
「ドロー。《闇の誘惑》。《神の恵み》で合計1000回復。その隙貰った!」



鳥銃戯画丙巻―Snipe Shot―



テイル:2200LP
ダーヴィッド:5100LP

 遂に喰らってしまった。地縛神の本領、ダイレクトアタック。吹っ飛ばされて大の字になるテイル。
「レギュラー、サブ、スポンサー、ファン……一万を優に上回る者達の想いを背負って私はこのフィールドに立っている。時には押し潰されそうになる程の重圧が我々の背中を押すからこそ、地縛神の一撃は何よりも重いのだ。なぜ地縛神がフィールド上に1体しかいないのかわかるか? 代表だからだ。全てを背負っているからだ。孤独な闘いを賛美する貴様にこの意味はわかるまい」
 駄目か。素直にそう思った。あいつに根性だのなんだのを期待してもしょうがない気がしたからだ。むしろここまで良く闘った……などと考えていた矢先、あいつはふらふらとだが立ち上がる。
「おぉーっとお! テイル選手の闘志未だ衰えず! 人はみかけによらなかったーーー!」
「立ち上がるか。思ったよりも気骨逞しいようだ。幾らかの興味が湧いた。敢えて先程の続きを聞こう。孤独を肯定するおまえがなぜ今更西の表舞台に姿をみせた」
「女の子に振られて寂しかったんだ」
「馴れ合いを拒む者が色恋を語るか。それこそ馴れ合いではないのか」
「俺達は決闘者だ。決闘者は孤独なんだ。孤独だからデッキ(こいつら)を愛してやれる。そんで孤独だからこそ向こう岸にも決闘者が必要なんだ。おれはあいつの決闘に恋をした。あんた西の生き字引きなんだろ。だったらアリアって決闘者を知らないか? どうにも忘れられなくてさ。探してるんだ」
「知らんな」
「そうかい。残念だな。おれは2つの目的でここに、西の決闘の最前線に来た。1つはあいつと再会すること。もう1つはあいつをみつけるまでの暇潰し。残念だ。どちらも叶わない」
「聞き捨てならんな。前者は兎も角後者、このダァーヴィットの決闘が退屈だとでもいうのか」
「ああ。あんたの決闘はもう見切った。残念だよダァーヴィット・アンソニー。あんたはおれの敵にはなれない。敵じゃないんだからおれはあんたを愛してやれない。人間には限界ってものがある」

Turn 13
■テイル
 Hand 2
 Monster 1(《魔導雑貨商人》)
 Magic・Trap 1
 Life 2200
□ダァーヴィット
 Hand 1
 Monster 1(《地縛神 Wiraqocha Rasca》(Attack:3100))
 Magic・Trap 5(セット/セット/セット/《神の恵み》/《死皇帝の陵墓》)
 Life 5600

「ドロー。こっちも《リミット・リバース》。《異次元の偵察機》を釣って……《ソウルテイカー》は不発のままハンデス喰らったけどこういう選択肢もある。《異次元隔離マシーン》を発動」
「何かと思えば《ジャンク・アーチャー》と同次元。馬鹿の1つ覚えとはこのことよ。甘い! 《ゴッドバードアタック》を発動。《地縛神 Wiraqocha Rasca》をリリース。《異次元の偵察機》と《魔導雑貨商人》とを破壊。これで地縛神は墓地へ行く。釣り上げの容易い墓地へ」
「十分。モンスター、マジック・トラップを1枚ずつセットしてターンエンド。これでハンドはゼロになった。獲物がなければ流石のコンドルも腹を減らして力を出せないんじゃないの?」
 "見切った"。あいつは確かにそう言った。間違ってはいないさ。ハンデスが成立しなければウィラコチャラスカの攻撃力は上がらない。確かにそうだ。だが……
「何かと思えばそういうことか。皆同じ行動に至る。ウィラコチャラスカの攻撃力を100に落として勝ち誇る。皆同じ発言に至る。ハンドがなければ召喚しても意味がないと嘲笑う」
 そんなわけないじゃないか。
「しかし彼らは一様に黙る」
 あのダァーヴィット・アンソニーがその程度で終わる決闘者なわけないじゃないか。
「その甘い認識が地獄への特急券だと知るからだ。私のターン、ドロー! 《神の恵み》 でライフを回復。《リミット・リバース》。攻撃力100の《地縛神 Wiraqocha Rasca》を特殊召喚。この晴天の空の下、披露仕ってみせようか! 我が永 続 罠 戦 術(エターナル・トラップ・タクティクス)の神髄を。我が陣地から永続罠:《メタル・リフレクト・スライム》を発動、レベル10モンスターとして特殊召喚。この2体でオーバーレイネットワークを構築……見るがいい! 《地縛神 Wiraqocha Rasca》そのものを弾丸に変え撃ち出す第4の砲銃。こぉれぞおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」





Superdreadnought Rail Cannon Gustav Max

鳥銃戯画丁巻―Cannon Shot―

テイル:200LP
ダァーヴィット:5600LP

超弩級砲塔列車グスタフ・マックス(エクシーズ・効果モンスター)
ランク10/地属性/機械族/攻3000/守3000
レベル10モンスター×2:1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。
相手ライフに2000ポイントダメージを与える。


「がっ!?」
「武器を失い、白旗を揚げればそれ以上の追撃がこないとでも思ったか! チームアースバウンドで長年レギュラーを張り続けたこのダァーヴィットが、そんな間抜けな決闘者だとでも思ったか!」
 これが、これが俺達の尊敬を一身に受ける男、ダァーヴィット・アンソニーの決闘だ。
「わかったか? 若造」
 なのにあいつは ――
「わかってるよ。ここまでやっても仕留めきれないあんたの腕が限界だってことが」
 ダァーヴィットの眉が釣り上がる。テイルは本当の意味でダァーヴィットを見抜いていたんだ。
「あの地縛神を "連続で" 投げ続けるのは相当な負担だろ。それを長年続けてればガタも来る」
「戯れ言を。何を根拠に言っている。何を……」
「じゃあなんであんたの一撃はあんなに軽いんだ?」
「むぅ……」
「ダイレクトアタックを喰らったとき 『見切った』 って言っただろ。なんだっけ? みんなの想いとやらを背負ってるんだろ。二者択一。あんたの背中を押すみんなの想いとやらが水素より軽いのか、それともあんたの腕がポンコツなのか。この期に及んで腕が悪くないって言い張るなら、おれはもう一方の結論を採る。いいのか? 水素より軽くなっちゃうぞ」
「……バトルフェイズ、グスタフマックスで壁をふんさ……ぐっ」
「《クリッター》だ。破壊されたことでサーチ効果を発動する。悪いな」
『これは!? ダァーヴィット選手の様子がおかしいぞ。まさか、故障を抱えているのか!』
「……ターンエンド。ふっ、上手く隠していたつもりだったんだがな。よく見抜いた。しかし!」
 テイルの言うとおりダァーヴィットは故障していた。それも昨日今日の躓きではない。長年に渡って積もりに積もったダメージの噴出。簡単にはやられないテイルを押し込んでいる内に、自分をも追い詰めてしまった。けどダァーヴィットは止まらない。止まれない。
「このダァーヴィット・アンソニー、どこの馬の骨とも知らぬ若造に負けて道を譲るわけにはいかんのだ。さあ来い! その残り少ない手札でこの私を倒してみるがいい!」
「断る」
「なに!?」
「残り200でもこのまま決闘を長引かせるだけなら意外と簡単だったり。長期戦が過ぎたんだ。もうあんたの腕は次に耐えられない。ぶっ壊れるのは目に見えてる。もう終わりだ。無駄に一本腕を廃棄処分するのも勿体ないだろ。おれにあんたを壊す気はない。勝手に逝ってくれ」
 そう言うとテイルは反転してこっちに戻ろうとする。当のおれはというと、めまぐるしく変わる状況に頭が混乱して正確な判断を下せなかった。どうしていいかわからない。
「もし納得いかないなら、おれがフィールドから出る前にサレンダーしてくれ。じゃあな」
「このダァーヴィット・アンソニーを生殺しにするというのか! 貴様それでも決闘者か!」
「興味ないんだ。あんたがどんな想いでここにいるとかそんなことはどうでもいい。昔おれには親友がいた。良い奴だったよ。燃えるような闘志と情熱で決闘に打ち込んでいた。決闘してる時も熱い思いがこっちにまでビンビン伝わってきた。なのに弱かった。正直言って全然面白くなかったよあいつとの決闘は。しょうがないだろ。どんなに綺麗事並べても、どんなに魂とやらがこもってても、蟻と喧嘩して楽しい象はいない。しょうがないんだ。おれたちは愛せるものしか愛せない」
「私は蟻か」
「動かない象と闘ってもしょうがないだろ」
「女の尻を追いかける男の言葉とは思えんな」
「女の札を追いかけてるんだよ。女の札を追いかける暇潰しに男の札で妥協しようって言ってるんだ。おれはバイだから。男も女も、決闘者ならデュエルフィールドにあるものが全てだろ」
 あいつがこっちに戻ってくる。打算的に考えればどうするのが最善手なのか、その時のおれにはそういうことを考えるだけの余裕がなかった。ただ、気がついたらおれはあいつの前に立って腕を広げ、 "ここは通さない" というポーズを取っていた。なんでかは未だによくわかってない。
「……」
 テイルがおれの行動をみてほんの一瞬足を止めた瞬間、ダァーヴィットは一つの質問を投げ入れた。それはある意味執念だった。あの人は闘って散ることを望んでいたんだ。
「弱きものなど幾らでもいる。私へのそれは哀れみとしか受け取れん」
「……別にそう受け取って貰っても構わないけど。あんたの好きにすればいい」
 その時フィールド上に響いた。ダァーヴィット・アンソニーの哀しき咆哮が。
「若者よ! 哀れみをかけるというのならなぜこのターンで私を倒さない。私に決闘盤を投げさせたくないのなら尚のこと。今ここで私を倒せばよかろう! 憐憫は強者の特権。このダァーヴィット・アンソニー、弱者からの施しは受けん! 哀れみをかけるというのなら強者であることを証明してみろ。私が新たに決闘盤を投げる前に! 私を倒してのけるのだ! 今ここで! このターンに限り、我が肉体は未だ健在! この1ターンで己の決闘を証明してみろ、テイル・ティルモット!」
 ……。
「リード、もういいよ。なんか敵が残ってたから。倒してくる」
 テイルが後ろ飛びで反転するその間際。おれは確かにみた。
 あいつの目に何かが宿るのを。

Turn 15
■テイル
 Hand 1
 Monster 0
 Magic・Trap 1
 Life 200
□ダァーヴィット
 Hand 2
 Monster 1(《超弩級砲塔列車グスタフ・マックス》)
 Magic・Trap 3(《リミット・リバース》/《神の恵み》/《死皇帝の陵墓》)
 Life 5600

「……ドロー。《死者蘇生》を発動。《ジャンク・アーチャー》を復活させる。こいつの☆を1個喰ってあんたが落としてくれた《レベル・スティーラー》を特殊召喚。まだまだいくぜ! 《ジャンク・シンクロン》を通常召喚。チューサポ釣って3体でシンクロ……《ジャンク・ウォリアー》だ!」
『決闘再開! 今日猛威を振るった鉄の拳と鋼の矢! 怒濤の勢いで再展開!』
「《チューニング・サポーター》の効果で1枚ドローし……《ジャンク・アーチャー》の効果を発動。グスタフ・マックスをこのターンの間だけ異次元に閉じ込める。これでおれの前に障害はない」
 あいつは一撃離脱を得意とする。なぜか。うっすらわかってきた。非確定型のリムーブやバウンスでは魔物を倒しきれないが、倒しきれなくてもいいのだ。ほんの一瞬でも、辿り着きさえすれば問いかけることが出来る。あいつが見据えているのは決闘盤を構える一個の生命体。あいつは、数多の魔物を従える"決闘者本体"に真偽を問うタイプの決闘者。
 【屑鉄の抱擁(ジャンク・エンブレイス)
「行くよ」 テイルは静かにそう宣言する。
「来い」 ダァーヴィットは静かにそう受ける。
 おれの心臓が高鳴った。
 次の一瞬で……全てが決まる。

 Battlephase!

「《ジャンク・ウォリアー》、スクラップフィスト!」
 《ジャンク・ウォリアー》の鉄拳がダァーヴィットの腹にめり込む。その程度で沈むダーヴィッドではない。眼光鋭く睨み返す。2300ダメージ。これでは足りない。
「《ジャンク・アーチャー》、スクラップアロー!」
 矢継ぎ早に《ジャンク・アーチャー》の矢が刺さる。合計4600ダメージ……神の恵みを受けたダァーヴィットを沈めるにはまだ足りない。ハンデスギミックに特化したダァーヴィットの防御力そのものは決して高くない、が、ハンデスを喰らいまくったテイルの攻撃力では……。
「その程度か。その程度でこの私に情けをかけるというのか!」
「メインフェイズ2……」 終わった。ダァーヴィットを崩すことはできなかった。そう思った。
「《シンクロキャンセル》を発動。《ジャンク・ウォリアー》を分離する」 だが違った。
「ばらけた素材をもう一度シンクロして "カタパルト" を造る。《ジャンク・アーチャー》!」
 目を疑う光景だった。《ジャンク・アーチャー》の骨が折れ、皮が曲がり、トランスフォームしていく。
「発想ってのは似通うもんだなダーヴィッド。あんたに4つの銃があるように、こっちにも三本目の矢がある。スクラップアロー、ディメンションシュートに続く三本目の矢が。《ジャンク・アーチャー》そのものを巨大な一本の矢に変形させ、 "カタパルト" に装填。いくぞ、ダーヴィッド」
「申し分なし! 見事この私を打ち抜いてみろ。テイル・ティルモットォ!」



Warriors Strike!



テイル:200LP
ダァーヴィット:0LP

カタパルト・ウォリアー(シンクロ・効果モンスター)
星5/地属性/戦士族/攻1000/守1500
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
自分フィールド上に存在する「ジャンク」と名のついたモンスター1体をリリースして発動する。リリースしたモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。この効果は1ターンに1度しか使用できない。


『きぃぃぃぃぃまったああああああああああああああああああああああああああああああああああ! 大方の予想を裏切って! 番狂わせを起こしたのは新鋭、ティル・ティルモットォォォォォォォォォ!』
「あんたとやり合う機会はもうないんだろうな。寂しくなる……かも」
「何を寂しがるというのだ。Earthboundにはミツルがいる! 皆がいる! おまえが西のトーナメントシーンにいる限り、私の息子達が貴様の相手をしてくれよう。いいか! この老いぼれ風情を倒して図に乗るなど笑止千万。ランキングなどは過去の遺物。このダァーヴィット・アンソニー如き、Earthboundでは一番の下っ端に過ぎん!」
 いかに全盛期を過ぎ衰えたとはいえ、Earthbound黄金時代を築いた功労者がそれを言う。この試合を契機に引退したダァーヴィット・アンソニーに、改めておれは畏敬の念を抱いた。
「何なら地縛館に遊びに来い。我が子供達が丁重に出迎えてくれるだろう」
「……あんたの弾丸(たま)、軽くて重かったよ。じゃあな、ダァーヴィット……さん」
 試合を終えて戻ってきたテイルに 「よくやった」 と何はともあれ声をかけた。そしたらあいつは 「礼なら空気を読んだこいつらに言えよ」 と決闘盤をかざす。おれの話はこれで終わりだ。極めて胡散臭い男なのは事実だが、こいつとはもう少し長い付き合いになりそうだ。なんとなくそんな気がした。

 あんたと闘るのをおれも楽しみにしていたよ。ミツルさん。



【こんな決闘小説は紙面の無駄だ!】
読了有り難うございました。
↓匿名でもOK/偶には直球。コメントKUREEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE


□前話 □表紙 □次話







































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































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