皆さんこんにちは。西の果てを彩る愉快なカードショップ "ハンドレッド・ハンズ" の店長アブソル・クロークスです。もっとも、世間的には "吸収店長" と名乗った方がいくらかピンと来るかもしれません。ほらほら、例の西部四店長。デッドエンドさんやダァーヴィットさん、ゴーストリックさんとは無二の親友で何度も全力で殴られました。『貴様と並び称されるなど反吐が出る』とは誰の言でしたか。こうも不朽の友情を我々は築いているのです。

 ……とかなんとか退屈な名乗り口上はこの辺にしておこう。無駄にかしこまったお喋りはゴーストリックくんとキャラが被ってしまう。えーと、今回は……そうそう。『Duel Days』から決闘について一席ぶつ機会をもらったから筆を執ることにしたんだ。なんとも筆無精(ふでぶしょう)なこの手だが、最後までお付き合い頂けるとありがたい。

 さて今回、具体的に 『何の話をするか』 がさしあたって重要なんだが、何を隠そう吸収店長なのだから "吸収" にまつわるデュエルトークをしようと思う。

  Today's Question:吸収とは?

 いみじくも "吸収" と言えば、多くの人はサクリファイスを真っ先に挙げることだろう。他には機皇帝ワイゼルやThe アトモスフィア……おっと、ここで『興味なし』とページを閉じるのはダイヤモンド・ドラゴンの束を捨てるより勿体ない。
 現在の西部では使い手も少なく、益のないおとぎ話に聞こえるかもしれないね。しかし "吸収" という概念はこれらに限ったものではない。サクリファイスはあくまで象徴なんだ。

 そもそも決闘とは自らに札を吸わせることで成立する競技。我々はカード・ユニットをテキストという形で自分自身の中に吸い込み、己の "力" とすることで十全に決闘を行っている。何も吸収とは、掃除機(かぜぞくせい)ブラックホール(やみぞくせい)に限ったことでもないわけだ。

 ならば吸収店長とは? そう。 "吸収という特殊な技の使い手" ではなく "吸収という基礎技能を特化技能にまで高めた者" を指している。ほうら、話を聞きたくなってきた。きみたちはもっと知るべきだ。世界はいつだって呼吸している。僕らが普段そうしているように。

 話を先に進めよう。

 さっき 『吸収とは決闘の基礎概念である』 と言ったが、だとすると吸収の本質とは何なのか。学説はいくつかあるんだが……1つ持論を挙げるなら "ゼロ" にすることだ。

 例えば、2人の男女が映画を観に行った帰り道。甘酸っぱい光景を思い浮かべてほしい。お互いに張り詰め、ひたすら気持ちを探り合う。そんな堅苦しい間合いではろくな会話にならない。繰り返されるピント外れの雑談。本当に言いたいことは、聞きたいことはそうじゃないのに。……こんなことでは偽りなき言葉を吸収できない。勇気を総動員して踏み込み、策謀を駆使して引き込み、互いの距離をゼロにすることで……

 そう。ゼロにするのがコツなんだ。サクリファイスはゼロの申し子。「攻撃力0」は吸収のメルクマール。攻撃力もなく、防御力もなく、空っぽのボディの裏側に空白の世界(ダークホール)を造り出し、吸い込み、彼我の距離をゼロにして、我々は新たな "力" を獲得する!

 ……失礼。一旦、落ち着こう。

 さてさて、ここまで "吸収" について延々長々と語って来たけれど、何かを吸いすぎた時は吐きたくならないかい? そう。そうなんだ。 "吸い込む" と "吐き出す" は表裏一体。 "吐き出す" を知らずして "吸い込む" を修めたとは言えないさ。

 そしてここからは根拠なき妄言なんだが……吐き出すという行為は他者に吸い込ませることとイコールなのではないか。そうなんだ。そうあるべきなんだ。磁石がS極とN極で成立するように、究極の吸収とは向かい合う2人が吸収道を修めることで成立する。ならば、

 この世の正解は決闘が導く!!

 決闘の果てにあるものは? 無垢に考えるなら勝利だろうさ。決闘の勝利手段は大きく言って2つある。1つは自分が相手を呑み込んでしまう。そしてもう1つは相手が自分を呑みきれない。そう! 2つあるんだ! 相手が吐いたものを自分で外から呑み込むか、自分が吐いたもので相手を内から喰い破るか。そしてそれらは1つなんだ。吸えばいい。吐けばいい。何度も! 何度も! 大量生産! 大量消費! 決闘商業主義(コナミズム)万歳!

 ……度々失礼(たびたびしつれい)

 とまあこんな具合に、吸収概念とは勝負事の真理でもあるわけだ。なんとも大仰(おおぎょう)でざっくりとしたテキストになってしまったが、ここまでお付き合い頂きありがとうございました。またの御来店を心よりお待ちしております。

 "吸収店長は貴方の呼吸を応援します"

 ☆追伸☆

 拝啓、我が親愛なる同じ穴の(むじな)アリア・アリーナ。西部を穴の底まで知りたがっているきみに朗報がある。今を去ること5年前、僕が大規模大会に参戦した時のデュエルレポートを今さっき店の穴蔵(あなぐら)から発掘した。ミツル・アマギリが二十歳になった例の大会だ。
 当時はいろいろあった。西部を囲い込む因習の穴蔵(あなぐら)、その奥底に放り込み惰眠を貪っていた駄文であるが、描写の正確性にはいくらか自信がある(多少、補足もしておいた)。
 予め言っておくが……僕は正直者なんだ。みな僕を奸物呼ばわりするが嘘は言わない。是非ともきみのデュエルライフに役立てて欲しい。

 "永遠の友人アブソル・クロークスよりきみたちへ"


DUEL EPISODE 45

虚実の神判(上)


          ――  Turn 1:アブソル・クロークス――

 いつかと言えばTCG歴78年。どこかと言えばインティ&クイラスタジアム。何をと言えば大地の帝王EarthBoundに会いに来た。なのに。西の大地には妙な風が吹いていた。

『エース同士が決闘盤(デュエルディスク)を投げ合った! ハンドプレート型の 決闘掌盤(クロークス) と、ショートブレード型の 決闘風盤(フーガ) が中盤で激突! 先攻権をもぎとったのは……アブソル選手!』
 昼夜(ちゅうや)境目(さかいめ)にある不安定な夕日の下、準決勝第2試合が始まった。
 さて、当の僕はというと、スターティング・ディスク・スローイングを制したことでいくらか気をよくし、フィールド中央に浮かんでいる自前の決闘盤を颯爽と喚び寄せた。
 その名は 決闘掌盤(クロークス)。 長年に渡って使い込んだコイツの核からは5つの指が伸びていた。手の平をモチーフにした我ながら美しい決闘盤で、我が親愛なる盟友ファロ・メエラからも『その目障りな指を1本ずつ叩き折って焚き木にしたい』と絶賛の言葉を頂戴している。
 さてさて。僕はハンドからモンスター・カード・ユニット1枚を選び出すと、大きな大きな鉄の人差し指に装填。それから目の前の対戦相手を一瞥する。

 Team MistValley主将 "決闘雅流(けっとうがりゅう)" ライアル・スプリット

 一言で言えば、緑髪黄眼の優男。優雅な顔立ちの側面からは長いもみあげが伸びていて、いくらかシンパシーが沸いた。僕も(?)髪の毛で目元を隠しているから。
 そしてこのときピンと来た。2つの直観。1つ。この男は己を隠して生きている。そしてもう1つ。アリア、きみに似ている。あるいはミツル・アマギリにも似ている。そしてTCG歴83年現在、敢えて補足するならきみの御友人テイル・ティルモットにも似ている。

           ――Turn 2:テイル・ティルモット ――

「あんにゃろう」
 流石のおれもドキッとした。いきなり人の名前を出しやがって。あいつ、おれがアリアのサイドにひっついて、この資料に目を通すことまで想定してたのか?
「そんでこのライアル・スプリット……ああ〜あれだ。今期の大会にも出てるじゃねーか。ラウ先生が強豪だって言ってたTeam MistValleyのエースだろ」
 アリアやミツルさんはまだしも "おれ" に似てる? 正直、流し読みしようと思っていたんだが、そうもいかなくなってきた。くそ、(しゃく)に障るってのはこのことか。おれは意を決すると、目の前で講演中のアリアにこう言った。
「その昔話、詳しくやっていいぞ。ちゃんと聞いてやる」

          ――Turn 3:アブソル・クロークス ――

「単なる前菜のつもりだったが……」
 僕の目の前にいるライアル・スプリットの佇まいが妙に気に掛かっていた。ならば。僕はおもむろに 決闘掌盤(クロークス) の五指を開く。自分の中にある何かがそそられているのだ。
「それじゃあ小手調べといこうか」
 夏の投盤会が始まった。Team BigEaterの先鋒を担うのは儀式の先導者。その全身は無数の手でできている。掴み取るために。
「さぁ掴め、マンジュ・ゴッド!」

マンジュ・ゴッド(1400/1000)
召喚・反転召喚に成功した時に発動できる
デッキから儀式モンスター1体または儀式魔法カード1枚を手札に加える
[効果] [4] [光] [天使]


「不穏な風だ」
 喋った。ライアルくんが喋った! 何にせよ会話が成立するのは嬉しいが、同時に 決闘風盤(フーガ) も飛んできた。召喚するのは一機の風車。両腕と両脚を生やした自律駆動型の奇怪な風車。正面から古い風を吸い込み決闘置換。新たな風が吹き抜ける。
「風の流れを正そう。廻れ、エア・サーキュレーター!」

エア・サーキュレーター(0/600)
@召喚成功時に発動⇒手札2枚をデッキに加えてシャッフルし、カードを2枚ドローする。
A破壊された時、デッキから1枚ドローする。


「マジック・トラップを1枚セットしてターンエンド」
『もう1つの準決勝が始まった! エース同士が斥候を繰り出し、まずは睨み合いか!』
 お互いに先鋒を繰り出し向かい合う。僕はこの時間が大好きだ。一寸先は光か闇か。互いの間合いにカードを挟んで直立する恍惚。一触即発の間合いこそ決闘の本懐!
 観客達も固唾を飲んで1ターン目の経過を見守っていた。久々の表舞台だが悪くない。こういう決闘も悪くない。今日のロケ地は魅洲斗芭麗(みすとばれい)。番組名は『西部ふしぎ発見』。

 デュエルツアーの始まりだ!

「僕のターン、ドロー。バトルフェイズ!」
 僕はデッキからカードを引くと、返す刀で剥き出しの換気扇(ヌーディスト)を指差す。にわかに心が昂ぶっていた。僕の指令を受けたマンジュ・ゴッドが無数の腕を前方へと伸ばし、THE換気扇=エア・サーキュレーターの四肢に絡み付く⇒最短2秒で見事に裂殺。
 バラバラに引き裂かれた換気扇がさしたる意味なく爆散するが、家電業界の保証制度が喪失をすぐさま補填する。特にダメージもない為、ライアルくんに揺るぎはない。
「破壊されたことでエア・サーキュレーターの効果発動。デッキから1枚ドローする」
「都合4枚も弄れば手札交換も済んだ筈。そろそろ仕掛けて来るといいよ、ライアルくん」
 手札交換に貢献できて僕も嬉しい。世間には勘違いされがちだが僕は慈善家だ。カードショップを開き、迷える来店者に便宜を図る。きみらとて、出来の良い肉を見つけたらちゃんと塩胡椒(しおこしょう)を振るだろ? 同じことなんだ。
「僕はマジック・トラップを2枚セットしてターンエンドを宣言」
 何を伏せたかは開いてみてのお楽しみ。それが決闘というものだ。いたずらに表面をなぞっても、他ならぬこの僕が表面をなぞっても、 "核" の真価まではわからない。お互いにぶつかり合って初めてわかる。さあ、ここからライアルくんは、
「風速9.5m/sといったところか。ざわめき始めている」
 森林浴。間違いない。四肢を伸ばして森林浴をしている。《森》が発動しているわけでもなく、無骨なOZONE内で彼は森林浴をしている。
「ライアルくん、きみはいつもそうなのかい?」
「風は距離を教えてくれる。保つべき距離を」
 左腕の 決闘風盤(フーガ) を構えた。来る。 "わからない" が来る。
「私のターン、ドロー。《ドラゴン・フライ》を通常召喚」
未知への案内人(リクルーター)か」

ドラゴンフライ(1400/900)
戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、自分のデッキから攻撃力1500以下の風属性モンスター1体を表側攻撃表示で特殊召喚できる
[効果] [4] [風] [昆虫]


「行け、ドラゴンフライ」
(えぐ)れ、マンジュゴッド」
 トンボ人間とアーム人間が真正面から交錯。そして爆発。俗に言うトンボーム爆風が砂埃を巻き上げていた。視界が見る見る塞がれていく。
「鬼が出るか蛇が出るか」
 余裕綽々。いかにもな態度をぶっこいたまま前方の様子に気を払う。相討ちからのリクルート。対象は風属性。範囲は1500以下。何が来る。何が……

 魅洲斗芭麗(みすとばれい)が飛んできた。

『鷹羽の騎士がアブソル選手を斬り裂いたぁっ! 《霞の谷(ミスト・バレー)のファルコン》飛来!』
「この風圧にしてこの威力! 決闘雅流(けっとうがりゅう)の高位概念、魅洲斗芭麗(みすとばれい)か!」

霞の谷(ミスト・バレー)のファルコン(2000/1200)
(このカード以外の)自分フィールド上のカード1枚を手札に戻さなければ攻撃できない
[効果] [4] [風] [鳥獣]


 霞の谷(ミスト・バレー)のファルコンが僕を斬り裂くや、気ぜわしい観客達が一斉に声を張り上げた。
「バカな! 霞の谷(ミスト・バレー)のファルコンは攻撃力2000。あのリクルーターでは喚べない!」
「何が起こったのかわからねえ! だが! あいつが吸収店長に一発入れたのは事実だ!」
「二発だよ」
 やや大きな声で。備え付けのマイクで彼らに告げる。俄然こちらへと注目が集まった。歓声の雨が肉の壁を透き通っていく。僕は透明で空洞だった。
「きみらときたら吐き出すばかりで吸い込むのが下手だ」
 事実そのものは至って単純だ。いつだって単純だ。
「あの2体の相討ちを呼び水として、ライアルくんは風属性鳥獣族レベル4 ―― "ステルス・イーグル" を喚び出し、刹那のダイレクトアタックをねじ込んだ。そして、」
 手間を惜しまず一から十まで説明する。我ながらなんて優しいんだろう。大丈夫。きみたちの雑音が僕を壊したりはしない。お昼の残飯を火星に捨てるようなものだから。
「殊勝なイーグルがクチバシを刺し込んだ次の瞬間、スワローズ・ネストで "ステルス・イーグル" をリリース。同じ鳥獣族・レベル4である霞の谷(ミスト・バレー)のファルコンを喚び出し、間髪入れずにもう一度ダイレクトアタックを決めた」

スワローズ・ネスト(速攻魔法)
自分フィールドの表側表示の鳥獣族モンスター1体をリリースして発動できる。リリースしたモンスターと同じレベルの鳥獣族モンスター1体をデッキから特殊召喚する


「なんてやつだ! いつの間に!」
 一部の観客達がざわつく一方、我らが "あの男" は冷静に成り行きを見守っていた。
『鷲と鷹の二連撃で見事な速攻! そして! 二回目のダイレクトアタックの直前《リビングデッドの呼び声》を発動。墓地からエア・サーキュレーターを釣り上げています!』
 流石は公式の実況使い。目にも映らぬ一瞬の攻防を伝えるべく、オーロラ・ビジョンを使って何があったかを伝えている(⇒画面上では換気扇がピースサインを決めていた)。
霞の谷(ミスト・バレー)のファルコンの十八番セルフ・バウンス! 攻撃の瞬間リビングデッドを手札に回収しています。それにより! 寄る辺を失ったエア・サーキュレーターは蘇生した傍から破壊され、ライアル選手は1ドローを獲得していたのです!』
「な、なんて実況だ! 信じられねぇっ!」
「あの一部始終を目視したっていうのか!」
 そらそうだ。僕はしれっと発言する。
「流石は西部最強の実況使い瀬戸川弥一」
 いくらか思わせぶりな含みを持たせ、
「ぼくがダメージを受けていない……ということにも気付いているはず」

アブソル:12000LP
ライアル:12000LP

「アブソルのライフが変わってないぞ!」
「イーグルとファルコンで二発入れた筈なのに。教えてくれ実況! 何が起こったんだ!」
『そしてこの時、アブソル選手は《ガード・ブロック》をダブルで発動していたぁっ!』
 一々説明する手間が省けてありがたい。イーグルのクチバシは左手に携えた《サイバー・ヴァリー》で、ファルコンのソードは右手に引いた《リミット・リバース》で、それぞれをオーラで固めて格好良くガード・ブロックを決めていた。
「流石は吸収店長」
 速攻を防がれた格好のライアルくんだったが、大して気落ちする様子もない。僕のブロックはもちろんのこと、実況使いを褒める余裕すら持っていた。
「実況使いの力量も高い。それでこそ決闘を任せられる」
「なんて奴らだ! あの一瞬でここまでの決闘を!」
「吸収のアブソル、風雅のライアル、実況のヤイチ!」
「達人だ! あの3人、紛れもなく達人!」
 きみらがボンクラなだけなのは伏せておく。ぼくはこれでも優しいんだ。
「それではメインフェイズ2。私はマジック・トラップを3枚セットしてターンエンド」
 このターン、ライアルくんがセットしたのはリビングデッドの呼び声と、何らかの防御札と、後は何らかの何らかに違いない。お互い上々の立ち上がり。なら問題は……

「3人で話を続けてもらっても困ります」

 これだ。

 口を挟んだのはポンチョスタイルの変なやつ。今回の僕の相棒ファントム・ファストランドくんだ。そう。これはタッグデュエル。正直、懇切丁寧に書くのが面倒くさいし、なんか大したことも起きていないから彼らの1ターン目はざっくり省かせてもらった。
「ファントム・ファストランドの名の下にデッキからドロー! セットしておいた《岩石の巨兵》をリリース、上級モンスターをアドバンスセット。そして! マジック・トラップカードを2枚セットしてターンエンド」
 ファントム・ファストランド。今大会が初出場であり、この準決勝まで出場記録はない。精々曲者臭を嗅ぎとってもらいたいところだ。そして、
「お待ちかね。私のターンよ、ドロー!」
 ライアルくんの相棒役はこのクリス・マーカー。観ての通り綺麗な女性なんだが問題が2つある。1つは「観ての通り」と言ったところで文章では全く伝わらないということ。この件に関して僕に伝える甲斐性(かいしょう)はない。そしてもう1つは、
「さあ扇いでやろうか飛ばしてやろうか」
「クリス、慎重に間合いを計れ。アブソル・クロークスの《ガード・ブロック》は得意戦術への布石。迂闊に動いては怪我をする」
「ふぅん。なら、あなたのガード・ブロックは何だって言うの?」
 さっき書き忘れたから今言うが、ライアルくんのライフが減っていないのは僕と同じくガード・ブロックを使ったからで、彼女はそれが気にくわないのだ。『当時のタッグデュエルはライフが少ないから仕方ない』なんて理屈は扇いで飛ばす。
「今さら憶病風に吹かれたの? さあいくよ!」
 なんとも勝ち気なレディだ。ファロ・メエラしかり、覇気のある女性は嫌いじゃないが、
「《ハーピィ・レディ》を通常召喚!」

ハーピィ・レディ(1300/1400)
人に羽のはえたけもの。
美しく華麗に舞い、鋭く攻撃する
[通常] [4] [風] [鳥獣]

「さあダンスの時間よ!」
 この気質。この気概。今日に限っては都合が悪い。
「バトルフェイズ。喰らいなさい吸収店長。爪牙砕断(スクラッチ・クラッシュ)!」
 ハーピィ・レディが颯爽と跳び上がり、空を滑りながら爪を薙ぐ。実にいい音だ。喰らってあげてもいいんだが……生憎、今日の僕はタッグデュエルをしにきたわけじゃない。
「任せたよ、ファストランド」
「……っ!?」
 首尾は上々。土の壁が突然迫り上がり、勢いの付きすぎたハーピィ・レディが真正面から土壁に激突。Mistvalleyのライフがゴリっと削られる。

アブソル・ファスト:12000LP
ライアル・クリス:12000→10300LP

「アー、アブナカッター、アト少シデ死ヌトコダッター」
 絶体絶命の危機を逃れてほっと胸を撫で下ろす。持つべきものは頼りになる友人だ。
『この壁は! アシストスペルの介入か!』
「まさしく!」
 もちろん、友人というのはこの男。
「僭越ながらもこのファントム・ファストランドが! タッグ専用永続トラップ《As-攻撃誘導装置》を発動していたのです!」

As-攻撃誘導装置(永続罠)
相棒及び相棒のモンスターへの攻撃を自分フィールド上のモンスターに変更する


 タッグデュエルが不得手な僕だが、アシストスペルの有り難みは身に染みる。自分のモンスターを相棒にあげたり、相棒のモンスターを逆にもらったり、サポートの種類も様々だ。
『ファストランド選手が活き活きとしている!』
「これこそが我が使命。タッグパートナーの陣地へ踏み込む迂闊なハーピィの一団を……《迷宮壁−ラビリンス・ウォール−》に誘い込む!」

迷宮壁−ラビリンス・ウォール−(0/3000)
フィールドに壁を出現させ、出口のない迷宮をつくる。
[通常] [5] [地] [岩石]


 なにやら演説を始めたファストランドくんの指揮に誘われ、フィールド上を岩壁が駆け抜けていく。うねり、まがり、曲者の深層心理を象徴するかのように。
『ファストランド選手のフィールドが……巨大な迷宮で埋め尽くされてしまったぁーっ!』
「お初にお目に掛けましょう。このカード・ユニットこそが "迷宮師(ラビリンスマスター)" ファントム・ファストランドが誇る至高のエースカードです」
「一山幾らの守備職人風情が」
 舌打ちするクリス嬢を横目に、チームリーダーのライアルくんがさらりと釘を刺す。
「急いては事を仕損じるよ、クリス」
「アンタだって速攻を仕掛けたクセに」
「先制攻撃ではなく強行偵察さ。あの男の "風" を知っておきたかった」
「相手次第で闘い方をコロコロと変えていては、勝てる勝負も勝てないじゃない。パルチザン・デッドエンドは徹しきれなかったから負けたのよ」
「風の在り方は変わらないよ。進むも退くも、それら全てが風属性の決闘だ」
疾風(はやて)の決闘こそ風属性の本領!」
「風の本質は "速度" じゃあない。空はこんなにも広いのに」
 風属性同士の学術的な口論。そそられるものがないでもないが、決闘中に大事なのは "横" よりも "縦" だ。ならばこそ。出し抜けに会話を(さえぎ)った。
「なあきみたち! 1対1でやろう!」
「……みな風向きを変えたがる」 「どういうつもり?」
「正面に立つ対戦相手にしかカチ込まないということだ。僕とライアルくん、ファストランドとクリス嬢で互いに決闘を行い白黒を付ける。どうだい?」
 この提案、罠ではないが罠には映る。ライアルくんに果たして通じるか。
「風の赴くままに身を任せる。それも風属性の在り方だ。クリス!」
「いいよそれで。ウダウダ言ってる時間がもったいない」
 わお。彼女の雑誌を買いたくなってしまった。強気なクリス嬢の言い分はこうである。
「この迷宮は私がさっさと粉砕する。そしたらすぐ合流。2人であいつをタコ殴り」
「あの迷宮壁に風穴はない。迂闊に飛び込めば死を招く」
「珍しくご心配? 私を誰だと思っているの?」
 ライアルくんはその問いに答えなかった。
「……アブソル、きみの発言に二心はないかい?」
「店の評判が掛かっているんだ。きみらの在り方に感謝する」

 こうして1対1の決闘が始まった。

           ―― Turn 4:テイル・ティルモット ――

「公式戦の準決勝でやるこっちゃねーだろ」
 腹が立つ。大会を冒涜しているとかそういう生真面目な話ではなく、やり口が自分に似ているっていう事実にいっちゃん腹が立つ。なんであいつと被ってんだよ。
 ……待て待てひょっとしたら? 今まさにおれの目の前で、この決闘について朗々喜々として語っているアリアを呼び止め、ちょっと聞いてみる
「なーアリア。なんなら、おれとアブソルって似てるのか?」
「んーあんまり。……遊び好きなところは似てるかも」
 生真面目な人生とやらにほんの少し憧れてしまった。
「何が腹立つって、この一騎打ちが気になるっつーな」

           ―― Turn 5:アブソル・クロークス ――

「僕のターン、ドロー!」
 まずは一息、土の壁で仕分けされたOZONE空間内を俯瞰する。前方で羽根を休めているのは霞の谷(ミスト・バレー)のファルコン。風属性の曲者だ。その足元にはリビングデッドの呼び声が埋まっているから、完全攻略には一工夫が必要になる。
 僕のハンドはカード・ユニットが合計8枚。ガード・ブロックのお陰で良い具合に温存できている。で、この内3枚は儀式セット。特性上、獲物が肥え太ってから喚び出したい。
 ひとくさり情報を摂取したので思考を始める。決闘は序盤。手札にある "もう1体の" LV1モンスター ―― サイバー・ヴァリーで "穴蔵(あなぐら)" に誘い込む選択肢もあるにはある。

 あるにはあるが、

「待つのは得意なんだが……」
 我らがファストランドくんの土壁は永久不変のものではない。もしクリス・マーカーを抑えきれなければ、この甘美な時間に水を差されてしまうだろう。無駄にターンを回したくはない。もっと言えば、霞の谷(ミスト・バレー)のファルコンを放置するのもよろしくない。
「1つ今後を占ってみようか。《真なる一つ目》を発動」

真なる一つ目(通常魔法・制限カード)
相手のデッキトップを確認する。エンドフェイズにデッキから1枚ドローする


 市井では『デュエルオーブが一向に光らない不良品』『キモいやつが使うカード』、パルム少年に至っては『別にいいけど使われるとなんか殺意が湧く。別にいいけど』。なぜか西部では散々な評価に収まっている。しかしだ。
「食べる前に中身を知る必要はない……が、表面を味わう営みは僕らの深層を掻き立てる」
 僕はこのカードを相応に気に入っている。そうさ。目を(つむ)り、鼻を摘まんだ食事の何が面白い。そんな僕の趣向にライアルくんが首肯した。
「同感だ。私のトップは《心鎮壷(シン・ツェン・フー)》。壷の中身はそちらで決めてくれ」

心鎮壷(永続罠)
フィールド上にセットされた魔法・罠カードを2枚選択して発動する。
このカードがフィールド上に存在する限り、選択された魔法・罠カードは発動できない。


 壷の中身……か。中々気の利いたことを言ってくれる。なるほどハンドにはトラップ・カードが2枚ほどスタンバイしているが、同時に伏せようものなら同時に封じられてしまう。この状況で守りに入るのは尚更難しいわけだ。じゃあ仕方がない。

 雑談の時間は終わりだ。

太陽(インティ)が沈む前に決着を付けよう」
 拡げた両手のデュエルオーブに紫色のデュエルオーラを焚く。少しずつ、少しずつフィールド上のボルテージが上がっていくさまを想像してほしい。
「それまでにきみのお手前を是非とも拝聴したい。決勝に上げるべきか否か」
 僕の異変にようやく気付いたのか、インティスタジアムの観客達がにわかに色めきだっていた。いつだって心地よい瞬間だ。西部の喧騒を耳で呑み、大地の硬さを足で知る。
「レッツ・スタンディング・デュエル!」
 僕の決闘は両腕を左右に伸ばすところから始まった。広げた両の手の平に大匙三杯分のデュエルオーラを注ぎ込み、初っぱなから高等呪文を発動する。風使いへの挨拶だ。
『《ハリケーン》! いきなり強打をぶち込んだぁっ!』
 この手の先制パンチは僕の流儀じゃないが、寝た子を起こすには初っぱなの意思表示が肝心だ。吹き荒れる強風が魅洲斗芭麗(みすとばれい)の空を侵した矢先……ハリケーンが霧散した。
「《魔宮の賄賂》でカウンター。その "風" は無粋だよ」
「そうかい。ならカウンターしなければ良かったのに」
「……」
 魔宮の賄賂の効果で1枚ドロー。中華鍋の亜種を引き当てる。引きは上々、気分も上々。空がダメなら陸からだ。魅洲斗芭麗(みすとばれい)へいざ吸わん。
「それじゃあ召喚を始めよう!」
 ひらひらとした衣装の胸元に両手をぐぃっと寄せた。手と手の間から一口の壺が現れる。その中心には "1つ目" の意匠が輝いて、
「《イリュージョンの儀式》を発動」

イリュージョンの儀式(儀式魔法)
自分の手札・フィールドから、レベルの合計が1以上
になるようにモンスターをリリースし、手札から ――


 手の平の《サクリボー》を壺の中に吸わせた途端、中で何かが蠢き始める。蠢き、蠢き、遂には決壊。軽喜劇の始まりだ。
『あ、あれはまさかぁーーー!!』
 溢れ出した瘴気の中に潜む異形。上半身のみで構成される何者か。貪欲に飛び出た単眼、獲物を求めて肥大化したかぎ爪、食虫植物を彷彿とさせる不気味な羽根、そして何より万物を吸い込むおなかの大穴。我らが象徴たる捕食者が闇の中から現れる。


Sacrifice Ritual Summon!!


『アブソル選手の十八番、《サクリファイス》が儀式召喚。吸収店長の本領発揮か!』
 インティスタジアムの上段には巨大なオーロラビジョンが設置されていて、大袈裟な文字がデカデカと浮かんでいた。ザワザワという観客のどよめきが心地良い。
「鷹狩りを始めようか。サクリファイスの効果を発動。吸い込め、ダーク・ホール!」

サクリファイス(0/0)
「イリュージョンの儀式」により降臨。
1ターンに1度、相手モンスター1体を装備する(1体のみ装備可能)。
このカードの攻撃力・守備力は、装備したモンスターの数値になる
このカードが戦闘で破壊される場合、代わりに装備モンスターを破壊する。
装備中に戦闘ダメージを受けた時、相手も同じ数値分の効果ダメージを受ける。
[儀式] [1] [闇] [魔法使い]


 攻撃力0、守備力0、犠牲を強いる者(サクリファイス)捕食活動(ホショカツ)に "距離" なる迂遠な概念はない。直立不動のまま、おなかの穴を大きく広げ、
『腹部の大穴でバキューム・スタート! 霞の谷(ミスト・バレー)のファルコン、踏ん張れない!』
 不可避の吸引力で生きとし生けるものを吸い込んでいく。近くにいる者も、遠くにいる者も、等しく吸い込むダーク・ホール。僕はこの場で待てばいい。運ばれてくる料理を、
「Follow Wind」
 対岸のライアルくんがボソリとつぶやく。薄緑を基調とした彼の民族衣装が風に煽られ揺れていた。風属性の使い手が "吸収" の流れを見極める。
「吸引の風は追い風(フォロー・ウィンド)に変わる。リバース・カード・オープン!」
『《サクリファイス》に向かって……《霞の谷(ミスト・バレー)のファルコン》が飛んだぁーーーっ!』
 風に逆らわず、むしろ追い風とすることでするりと滑空。単眼の吸命機(サクリファイス)目掛けて迷わず突っ込み、頭部の単眼へ隼の剣を突き立てる。

風霊術−「雅」(通常罠)
風属性モンスター1体をリリース↓
相手フィールド上のカード1枚をデッキの一番下に戻す。


「そうはいかない」
 僕は咄嗟に手の平を煌めかせる。あの2体が彼方へ飛び去るその一瞬、僕の両掌はサメのあごと化していた。両手を大きく開くや否や、単眼の捕食者(サクリファイス)をガブリと呑み込む。
「風が止んだ……。自らのモンスターまで捕食するのか」
「伊達や酔狂で "吸収" 店長など名乗らんよ」

強者の晩餐(速攻魔法)
自分フィールド上のレベル1モンスター1体を生け贄に捧げる
⇒2000ポイントのライフを回復する(トークン不可)


アブソル:12000⇒14000LP
ライアル:10300LP

『《風霊術−「雅」》を立ち消えさせた!』
「個人的にはゴッドバードより怖い」
 危うくバイバイするところだった。デッキボトムからもう一度呼ぶのは手間というもの。
「殺されるより戻される方が残酷だ」
 本心だ。皮相な技術論としても、墓地に転がしておけばハンドの《リミット・リバース》を伏せていつでも喚び戻せる。もっとも、それは向こうも同じだろうが。
『アブソル選手、咄嗟の判断で強者の晩餐を発動。ライフを回復しつつ、サクリファイスを墓地に逃がします! しかして一方、ライアル選手も吸収の魔の手から霞の谷(ミスト・バレー)のファルコンを逃がしている! 序盤の攻防はまたしても互角か!』
 主力を墓地に逃がしあって一旦お開き。流石に一筋縄ではいかない。 "心情的に" メインフェイズ2。小賢しい僕は《心鎮壷(シン・ツェン・フー)》にビビっていたのでマジック・トラップを "1枚" セット。そのくせ、世界王者より不敵にターンエンドを宣言する。
「次はきみの番だ。いつでも来たまえ」

「私のターン、ドロー!」
『 "吸収" を凌いだ返しのターン。【魅洲斗芭麗(みすとばれい)】の使い手がいかなる決闘を魅せるのか!』
「吸収店長、その不敵な態度はフェイクだよ」
「僕が嘘吐きだと言いたいのかい?」
「それも違う。あなたは真に不敵な人間だ。そしてそういう人間は一々不敵であることを誇示しない。なのに不敵な態度を誇示している」
「そのこころは?」
「自分の中身をほんの少し教える為だ」
「話が早くてありがたい。ならこうしよう」
 両手を後ろに回す。無抵抗のポーズだ。
「ありのままだ。煮るなり焼くなり好きにしてくれ」
「そうしている方が奸物らしいよ……メインフェイズ」
 ライアルくんのハンドは心鎮壷(シン・ツェン・フー)を含んだ4枚。地中に埋まっている(セットされている)のは十中八九、さっきも使ったリビングデッドの呼び声。コイツでファルコンを喚び戻すと、もれなく換気扇コンボが使用不能になってくれるが……そうは問屋が卸さない。
「《おろかな埋葬》」
 魅洲斗芭麗(みすとばれい)の生産活動が始まった。墓地に肥料を撒いて "収穫祭(リビングデッド)" で芽を吹かす。今日の収穫は? "黒槍" の名を持つ魅洲斗芭麗の特産品だ。
「ブラックスピアを特殊召喚」

ドラグニティ−ブラックスピア(1000/1000)
1ターンに1度、自分フィールド上の「ドラグニティ」と名のついたドラゴン族モンスター1体をリリースして発動できる。
自分の墓地からレベル4以下の鳥獣族モンスター1体を選択して特殊召喚する。
[調律] [3] [風] [ドラゴン]


魅洲斗芭麗(みすとばれい)の "黒槍" が回転! ドラゴニック・ドリルと化して墓地を堀り進み、埋もれていたファルコンを復活させる! それも自らの命と引き替えに……コレが、コレこそが、大地と語らう魅洲斗芭麗(みすとばれい)式の自然交易だというのかぁーっ!』
霞の谷(ミスト・バレー)のファルコンを再び特殊召喚」

霞の谷(ミスト・バレー)のファルコン(2000/1200)
このカードは、このカード以外の自分フィールド上のカード1枚を
手札に戻さなければ攻撃宣言できない。
[効果] [4] [風] [鳥獣]


「小難しい技を使うんだねー、きみは」
 蘇生活動の間にワンクッション。因果を絶つ黒い槍(ブラックスピア)を挟むことでリビングデッドとファルコンの因果関係がスパンと断たれる。それはつまり、
「バトルフェイズ。ファルコンの効果でリビングデッドを回収(リサイクル)
 直接リビングを破壊しない限り、霞の谷(ミスト・バレー)のファルコンは永遠の戦士となって飛翔する。
「アブソル・クロークスにダイレクトアタック。 "魅洲斗芭麗(みすとばれい)風韻剣(ふういんけん)" 」
 魅洲斗芭麗(みすとばれい)が誇るファルコン・ナイトの機動力。その本質は羽根ではなく脚部にあった。墓標(リビングデッド)をある種の "壁" に見立て、2本の脚で大きく蹴る。飛び立つ騎士に吹き飛ぶ墓標。まさしく作用と反作用。魅洲斗芭麗物理学!
「Beautiful!」
 ガード・ブロックは使い果たした。リミット・リバースは守る為のカードじゃない。あの時、僕のハンドには被弾を防ぐ方策がなかった。無抵抗のまま喰らう他ない。
『隼の剣が吸収店長を斬り裂いたぁっ!』

アブソル:14000→12000LP
ライアル:10300LP

「僕の弱点を1つ教えておこう」
 これはもうある種の性癖に近い。
「いっぺん殴られないと指が()たないんだ。リバース・カード・オープン! ハンドのサイバー・ヴァリーA及びBを雁首並べて特殊召喚!」
「《無抵抗の真相》、やはり奸物だ」

無抵抗の真相(通常罠)
直接攻撃によって自分が戦闘ダメージを受けた時、手札のレベル1モンスター1体を相手に見せて発動する⇒相手に見せたモンスター1体と、自分のデッキに存在する同名モンスター1体を特殊召喚する。


サイバー・ヴァリー(0/0)
以下の効果から1つを選択して発動できる。
@相手モンスターの攻撃対象に選択された時、このカードを除外。
⇒デッキからカードを1枚ドローし、バトルフェイズを終了する。
Aこのカードと自分のモンスター1体を選択して除外
⇒デッキからカードを2枚ドローする。
B自分の墓地のカード1枚を選択し、このカードと手札1枚を除外
⇒選択したカードをデッキの一番上に戻す。
[効果] [1] [光] [機械]


多機能選択型加速装置(マルチタスク・ドライブ・システム)サイバー・ヴァリー展開!』
 別の案としては、リミリバセットでサクリファイスを喚び戻すパターンもあったが、急ぎすぎるのもよくない。今はゆっくり急ぐんだ。
「普通の人間なら一本いいのが()てばそれで十分なんだが」
「あなたの場合は指が十本か。生産活動には向いていない」
魅洲斗芭麗(みすとばれい)には僕のような生物がいないようだね」
 知的な会話を交わしている間にふと思う。沈着冷静で理知的だが、Team FlameGearの葬儀屋チェネーレ・スラストーニとも毛色が違う。奥に秘めているものの色がきっと違う。
自給自足(セルフ・バウンス)魅洲斗芭麗(みすとばれい)。きみはどうすれば勃つのかな」
 そもそも僕は小競り合いの消耗戦など望んでいない。目的はあくまで "宝探し" なのだから。不敵に微笑む僕を尻目に、ライアルくんはメインフェイズ2へと速やかに移行。マジック・トラップを3枚セットしターンエンドを宣言する。
「3枚か。難儀なものだね」
 軽く溜息を付く。急いては事を仕損じるが、さりとて長びき過ぎても困りもの。ウカウカしているとタッグデュエルが始まってしまう。
「タッグデュエルとは面倒なものだ。誰も彼も所詮1人で生まれてきたというのに」
「その意見には同意する」
 なんと僕の愚痴に賛同してくれた。不思議だ。彼と喋っているとそそられるものがある。ライアルくんは共感を示しつつも1つの意見を口にした。
「それでも必要なものがきっとあるんだよ、我々には」
「そーだね。少なくとも対戦相手が必要だ。対象がなければ吸収も成り立たない」
 僕はおもむろに横を向く。両手の先にあるのは硬い硬い土の壁だった。迷宮壁−ラビリンス・ウォール−の土壁が相棒との連絡を今も遮断している。
「 "縦" はまだしも "横" の関係が果たして必要なのか。贅肉では?」
「それも一理ある。しかしそれなら……なぜ中央出身のあなたが西部で店長を?」
 僕は確信を深める。ライアルくんはアリア・アリーナやミツル・アマギリに少し似ている。そしてテイル・ティルモットにも何かしら似ている。
「 "なぜ西部で決闘をやっているのか" その問いはお互い様だろ? ライアルくん」
 全てを見透かしたように煽りを入れる。もっとも、全てを見透かしていないからこそこうしているわけで半分はハッタリ。しかしもう半分は透けている。
「 "そろそろ" 僕のターンだ。決闘を続けよう」

         ―― Turn 6:ファントム・ファストランド ――

「アブソルさんにも困ったものですね」
 閑話休題。筆者交代。僭越ながらも敢えて書き手を名乗るなら、 "迷宮師(ラビリンス・マスター)" ファントム・ファストランドとでも申し上げておきましょう。
 可及的速やかに本題へ。それではしばしの間、ソファーで休んでいるものぐさなアブソルさんに代わってデュエルレポートの執筆を担当させて頂きます。
 決戦の舞台は土壁に隔てられたもう1つのデュエルフィールド。アブソル・クロークスVSライアル・スプリットのまさしく裏側、一体いかなる決闘連鎖が繰り広げられていたのか。その発端はクリス・マーカーさんのつぶやきでした。
「西部四店長を倒したかったのに。無名の決闘者など何人倒しても目立ちはしない」
 煌びやかな衣装を夏風になびかせながらおっしゃりました。少し不思議な気もします。
「それではなぜ1対1をお受けに?」
「どのみち貴方が邪魔するからよ。ならさっさと始末した方がいいでしょう?」
 なんと直截的な思考回路でしょうか。それはそれで好都合。迷宮へ誘うにはうってつけ。
「なるほど。精々付き合ってもらいましょう」
 決闘盤を構えて愛すべき地べたを這いずります。混じり気なしの臨戦態勢。俗に言う迷宮止水(めいきゅうしすい)の構えを取ると、真向かいのクリス様はフンと鼻を鳴らします。
「さっさとケリを……遅いわよ、実況!」
 実況?
『準決勝第2試合の第2試合も始まっている! 当然、こちらにも実況が入ります!』
 叱咤を受けた実況使いが印を組みました。全身に力を込めると実況が2人に分裂。さらに実況専用呪文《Js-宇空間物質転送装置》を発動。こちら側までワープします。
 これにはクリス様も御満悦の表情でした。
「2人に分身すれば二元中継も容易に可能ってわけ? 流石は西部最強の実況使い。私の勝利を褒め称えるのにもっとも適した人材ね」
『クリス選手とファストランド選手が向かい合う! 天駆けるハーピィ・レディが斬り裂くか、それとも、地に(そび)えるラビリンス・ウォールが弾き返すか。注目です!』

ハーピィ・レディ(1300/1400)
人に羽のはえたけもの。
美しく華麗に舞い、鋭く攻撃する
[通常] [4] [風] [鳥獣]


迷宮壁−ラビリンス・ウォール−(0/3000)
フィールドに壁を出現させ、出口のない迷宮をつくる。
[通常] [5] [地] [岩石]


「役者は揃ったわ。さあ貴方のターンよ!」
「承知しました。ならばお言葉に甘えてドロー。《強欲なカケラ》を墓地に送りさらにドロー。マジック・トラップを4枚セット」
 広大なフィールド上には巨大な迷宮が広がっています。自他を隔てる無限の迷宮。まさしくしかり。迷宮は "無" を無限に隔てるのです。決闘者同士の距離が仮に十メートルとすれば、千メートルでも、百万メートルでも、限りなく無限の距離へ。それこそが迷宮!
「難攻不落の迷宮に是非奮ってご参加ください。西部四店長と事を構えたいというあなたの望み、きっと叶えられることでしょう。ターンエンド」
「ふっ、私のターン、ドロー。バトルフェイズ、ハーピィ・レディで迷宮を突破する」
 なんたる迅速。なんたる特攻。何の迷いもなく迷宮に足を踏み入れ、低空飛行で右に左に迷宮を踏破していきます。しかし、それこそ、
『ハーピィ・レディが爆散したぁーっ!』

万能地雷グレイモヤ(通常罠)
相手モンスターの攻撃宣言時に発動できる。相手フィールドの表側攻撃表示モンスターの内、攻撃力が一番高いモンスター1体を破壊する。


「迷宮壁−ラビリンス・ウォール−は生ある迷宮(リビング・ウォール)! 赤外線センサー以上の精度で侵入者を捕捉! 至る所に設置されたブービートラップで確実に外敵を排除します」
 なんという愉悦。なんという快感。愛すべき侵入者を迎え撃つ恍惚は何者にも代えがたい。無論、爆心地を凝視します。そこには死骸があるからです。数多の死骸こそ迷宮を彩るインテリア。考えうる最悪の居住性こそ迷宮大家は良しとする。それこそが "迷宮師(ラビリンス・マスター)" ファントム・ファストランドの ―― おや?
「ハーピィ・レディの死骸がどこにも ―― 」
「ハーピィを相手に愚策も愚策!」
 なんと凛々(りり)しいまでの生き様か。ハーピィが、傷付いたハーピィ・レディが己の死を顧みず、爆破で開いた穴を通って突っ込んできたのです。
『クリス選手の《突撃指令》! ライアル選手の風霊術同様、一足飛びで!』
「えぐりこめ! ハーピィ・レディ!」

突撃指令(速攻魔法)
トークン以外の自分フィールドの通常モンスター1体をリリース
⇒相手フィールドのモンスター1体を選んで破壊する。


「そうはさせません!」
 迷宮の突破は迷宮生物の "憤死" を意味します。
 なんとしてでも突破されてはならない。
 例え ――
「《我が身を盾に》してでも!」
『自ら出口に立ち塞がり、ハーピィ・レディの万歳アタックを塞き止めたぁっ!』
「惜しかったですねえ……」

ファスト:12000⇒10500LP
クリス:10300LP

「1枚セットしてターンエンド。倒錯してるわ」
 クリス様が何事かをおっしゃりました。
「迷宮の本質は "遮断" すること。ゴールにあたる貴方自身が迷宮を護るなど本末転倒!」
「迷宮とは倒錯者の営みでもあります。貴方こそ、風霊術−「雅」は使わないのですか」
「通常罠よりも速攻魔法の方が速い!」
「兵は神速を重んじますか。ならば!」
 リバース・カード・オープン。《凡人の施し》で資材を搬入。追加のブービートラップをパッパと仕掛け、《カードカー・D》で万全盤石。
「そんな決闘で風が止まるか!」
 丁々発止の攻防が始まりました。風属性と地属性。攻撃側が《鳳翼の爆風》を巻き起こせば、防御側も《魔宮の賄賂》で対抗します。一進一退の攻防が続く中、お次はなんと、《風の精霊ガルーダ》が飛び込んできたのです。

風の精霊ガルーダ(1600/1200)
@風属性1体を墓地から除外した場合に特殊召喚する事ができる(通常召喚不可)
A相手のエンドフェイズ時、相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択し表示形式を変更する事ができる。
[特殊] [4] [風] [鳥獣]


 ひたすらハーピィ・レディを使い回す戦術上、クリス様が普段なら使わないカード……ですが、いざ目の前にすると中々に厄介。仮にガルーダをそのまま放置してしまえば、自慢の迷宮が昼下がりのオープンカフェへと変わってしまう。
 ならばこそ。グッと屈み込み、広げた手の平をギュッと地べたに張り付けて、
「  "迷宮師(ラビリンス・マスター)" ファントム・ファストランドの決闘は堅固なる大地を自由自在に使役します。土壁を生み出すことも、そして大地を槍とすることも!」
『《地砕き》! ガルーダが串刺しだ!』
 再三再四のアタックを受け止め、迷宮壁−ラビリンス・ウォール−は未だ健在。跳ね返された恰好のクリス様が苛立たしげに舌を打ちます。
「そんな決闘が楽しいの?」
「楽しいです。この愉悦は何物にも代えがたい」
風属性(わたし)には理解に苦しむ決闘。閉じこもって守るばかり。何が楽しいものか」
 なるほど迷宮とは一種の抑止力。死の臭いを一帯に漂わせ、侵入者に二の足を踏ませる陸の防波堤。すなわち専守防衛には迷宮師の基礎がある。
 ですがもう1つ。そもそも人間という種族は難攻不落なものほど攻略したがる度し難い生き物です。迷宮師はそれを誰より知っている。だからこそ育むのです。
「クリス・マーカーさん」
「?」

「迷宮とは、愉快な殺人兵器です」

 迂闊にもクリス様は休息中でした。入り口の手前は迷宮に非ずという独断的油断。世の迷宮師は餓えている。隙あらば引き込もうと餓えている。
「事件が迷宮入りするのではありません。迷宮こそが殺人事件そのものなのです」

 "迷宮変化"

「壁を(つた)って、影を走らせ、ウォール・シャドウ!」

ウォール・シャドウ(1600/3000)
「迷宮変化」の効果でしか特殊召喚できない。
[迷宮] [7] [闇] [戦士]

最強の盾(装備魔法)
戦士族モンスターにのみ装備可能。
装備モンスターの表示形式によって以下の効果を適用する。
●攻撃表示:装備モンスターの攻撃力は、その元々の守備力分アップする。
●守備表示:装備モンスターの守備力は、その元々の攻撃力分アップする。


『迷宮の入り口は迷宮師の射程内! ウォール・シャドウが迷宮から伸びて絡みつき、クリス選手の四肢をギリギリと締め上げている!』
迷宮関節奥義(ラビリンス・グラップ)! シャドウ・メイキュー・ホールド!」
『四の字固めや八の字固めの比ではない! 冒険者を引き込み、絡め取り、そして容赦なく叩き折る。迷宮運営こそがサブミッション・アーティストの究極形ということかぁーっ!』
 迷宮の抱擁。気に入ってもらえたでしょうか。その回答は僅か数秒で返ってきました。
「みっともないわよ、乞食性!」
『クリス選手がウォール・シャドウをバトルフェイズごと吹っ飛ばしたぁっ!』

強制終了(永続罠)
自分フィールド上に存在するこのカード以外のカード1枚を墓地へ送る事で、このターンのバトルフェイズを終了する(バトルフェイズでのみ発動できる)


「コストは《蘇りし魂》。キモ過ぎて発動するのが遅れたわ」
 なんとせっかちな。対戦相手のバトルフェイズを面倒の一言で却下。ひたすら前へ前へ出ようとするランウェイ・デュエル! これがデュエルモデルのスタイルか!
「私のターン、ドロー。《ハーピィ・クィーン》を経由して私専用のフィールドを呼び込むわ。我が愛しの晴れ舞台。《ハーピィの狩場》を発動」

ハーピィの狩場(フィールド魔法)
@「ハーピィ・レディ」または「ハーピィ・レディ三姉妹」がフィールド上に召喚・特殊召喚された時、フィールド上に存在する魔法・罠カード1枚を破壊する。
A表側表示の鳥獣族モンスターは攻撃力と守備力が200ポイントアップする。


「ライフを800支払って《早すぎた埋葬》を発動。《ハーピィ・クィーン》を特殊召喚」

ハーピィ・クィーン(1900/1200)
手札から墓地へ捨てて発動⇒デッキから「ハーピィの狩場」1枚を手札に加える。
また、このカードはフィールド上・墓地に存在する限り「ハーピィ・レディ」として扱う
[効果] [4] [風] [鳥獣]


アブソル&ファスト:10500LP
ライアル&クリス:10300⇒9500LP

「もうここは迷宮じゃないわ……。私の狩り場よ!」
 特殊召喚されたハーピィ・クィーンが渦巻く風を一手に掌握。召喚時の勢いそのまま風の刃で斬り付け御免。ウォール・シャドウは伝説の盾を斬り離され、並のモンスターへと成り下がってしまったのです。嗚呼そうなれば、
「わざわざ入り口までご足労。ご褒美を上げるわ、爪牙砕断(スクラッチ・クラッシュ)!」

ファスト:10500⇒10000LP
クリス:9500LP

「……ゴキブリ並にしぶとい」
『健在! 迷宮は依然として健在!』

安全地帯(永続罠)
@フィールド上に表側攻撃表示で存在するモンスター1体を選択して発動できる。選択したモンスターは相手のカードの効果の対象にならず、戦闘及び相手のカードの効果では破壊されない(そのモンスターは直接攻撃できない)
Aこのカードがフィールド上から離れた時、そのモンスターを破壊する。
Bそのモンスターがフィールド上から離れた時、このカードを破壊する。


「まだまだ参りませんよ! 迷宮は不滅!」
 起死回生。むしろここからが真骨頂。
「さあ続きを ―― 」
「飽きたわ」
「飽きた?」
「貴方の相手はもううんざり! 《強制終了》を墓地に送り《マジック・プランター》を発動。デッキから2枚引き、《レスキュー・ラビット》を通常召喚!」

レスキュー・ラビット(300/100)
@このモンスターはデッキから特殊召喚できない
Aフィールドのこのカードを除外して発動できる。デッキからレベル4以下の同名の通常モンスター2体を特殊召喚する(エンドフェイズに破壊される)(「レスキューラビット」の効果は1ターンに1度しか使用できない)
[効果] [4] [地] [獣]


「ウサギの一声(ひとこえ)でさらなるハーピィを……まさか!!」
「安全地帯? 笑わせるわ。貴方は迷宮の自爆スイッチを自分自身の手で用意した」
 言われてみればご名算。ウォール・シャドウへの反撃を意識した安全地帯 ―― 迷宮の延長ですが、パリンと割られれば迷宮は潰える。つまり、
「レスキュー・ラビットをリリースし、デッキからツイン・ハーピィを喚び込むわ!」
 狩り場の効果を再発動。空高く舞い上がったハーピィ・レディが地上の安全地帯を ――
「息絶えなさい! 双爪牙砕断(ツイン・スクラッチ・クラッシュ)!」
「くっ……宮廷のしきたりを発動!」

宮廷のしきたり(永続罠)
お互いのプレイヤーは「宮廷のしきたり」以外の永続罠カードを破壊できない(「宮廷のしきたり」は自分フィールド上に1枚しか表側表示で存在できない)


「なんとかなりまし……」
「なってないわよ何一つ」
 クリス様はこの決闘で初めて笑っていました。 決闘扇盤(ウェンディ) を扇いで豪奢に煽る美しさ。
「貴方のミスは自分から迷宮の外側に茶々を入れたこと。それで済むなら私も同じことをすればいい。高高度爆撃で迷宮ごと吹き飛ばせばそれで済む」
 藪蛇(やぶへび)でした。まさに最悪の相性。これではサンドバッグになる他ない。
「狩場の効果はハーピィが召喚される限り何度でも。さぁ、いつまで持つかしら」

          ―― Turn 7:アブソル・クロークス ――

魅洲斗芭麗(みすとばれい)風韻剣(ふういんけん)!」
「サイバー・ヴァリー、シールド・チャージ!」
『一進一退! 互いに主導権を譲らない!』
 僕達の決闘は互角の攻防が続いていた。互いに被弾を防ぎつつの小競り合い。指が1本でも届けばいいが、その為の隙がまるでない。
「無風の決闘では退屈だろうに」
「迂闊に飛び込めばあなたは吸い込む」
 困った。含蓄のない猪決闘は好みじゃないが、沈み込むほど沈着冷静でも困ったものだ。迷宮産砂時計の残り時間が着々と削れていく。
「メインフェイズ2。私はマジック・トラップを2枚セット。ターンエンド」
 2枚か。それなら、
「待った!」
 カードゲームをしよう。今から少々面倒臭い話をするので麦茶片手に聞いて欲しい。
 
@僕は知っている。《リビングデッドの呼び声》と《心鎮壷》をライアルくんがデッキから引き入れた事実を知っている。

Aそしてターンの開始時、ライアルくんは2枚のカードを伏せていた。

B彼は2枚のセットカードの内、リビングデッドの呼び声を(ファルコン経由で)一旦ハンドに戻し、改めてハンドから2枚のカードを追加でセットした。

Cその結果、セットカードは合計3枚。

 僕のプレイングを縛り続ける心鎮壷(シン・ツェン・フー)も十分鬱陶しいが、出たり入ったりを繰り返すリビングデッドはもっと鬱陶しい。しかし本当に警戒しないといけないのはラスト1枚。僕の直観が《デモンズ・チェーン》と告げていて、後から考えてもそれは正しかった。
 デモンズ・チェーンも霞の谷(ミスト・バレー)のファルコンで再利用可能。なら今の内に割っておきたい。そして僕の場には《砂塵の大竜巻》が伏せてある。Good!
 但し問題もある。砂塵の大竜巻でデモンズ・チェーンを割るつもりなら "追加でセットしたカード2枚" が候補になる。イコール、運否天賦の2択になってしまうということだ。この場合、運悪く2択を外しても外れ籤の中身は第二希望 ―― 霞の谷の無限再生(ミストリビング)。それはそれでと言いたいところだが、それで良しとするのも人が良すぎる。
 そもそも大前提として、ターゲットが永続罠なら発動した瞬間に砂塵を被せるのがイージーなプレイだ。だが、ライアルくんの《心鎮壷》を躱しつつ、ハンドのリミット・リバースを最速で活かすならこのタイミングは逃せない。それになにより……

 僕らは決闘してるんだ!

「リバース・カード・オープン、《砂塵の大竜巻》を発動。 "エンドサイク" を仕掛ける」
 彼はこの試合中、リビングデッドを合計3回ほど伏せていて、その内の2回は右端に伏せている。そんで僕の狙いはデモンズ・チェーン。なら、
「右端のセットカードを破壊する!」
 今回のセットは気配が違う! 1ミリのぎこちなさが僕に正解を教えてくれた。彼は真ん中にリビングデッドを、右端にデモンズ・チェーンを伏せている。ビンゴだ!
『右端のセットカードを……心鎮壷(シン・ツェン・フー)を吹き飛ばしたぁっ!』

 あれ?

「ライアルくん……ライアルくん?」
 二重の意味であんぐりとした。まず1つ、ライアルくんの発した気配はニセモノだった。本当は "ミリの揺らぎ" すら生まないままいつもと違うセットができたのに、僕のエンドサイクをまんまと釣り上げる為わざと気配をお漏らししていた。
「その心鎮壷(シン・ツェン・フー)、すぐには伏せなかったのか」
「吸収店長の罠は誘い込む風だ。ムリに追っては沼地に嵌まる」
 そしてもう1つ、僕が掴んだ外れ籤はリビングデッドなんかではなく心鎮壷(シン・ツェン・フー)だった。デッキトップをピーピングされたのを逆に利用し裏を掻いてきたんだ(論理必然的に彼は、心鎮壷(シン・ツェン・フー)を引く前からデモンズ・チェーンを引いて温存していたわけだ)
「まんまと外してしまったか……。僕は決闘が下手だなー、ほんっと」
 あーあ。全くもう。お茶目すぎるじゃないか。本当に……本当に……
「それでこそ来た甲斐がある!」
「……っ!!」
「素晴らしいよライアル・スプリット! ならば《砂塵の大竜巻》第2の効果を発動。ハンドからマジック・トラップを1枚セット!」
 リミリバ伏せまーす。反撃を開始しまーす。本領を発揮しまーす。きみは良い。きみの決闘には一寸先の怖さがある。ならばこそ。決闘を振る舞う価値がある!
「僕のターン、ドロー! 速攻魔法《手札断殺》を発動! お互いに手札を2枚交換!」
お遊びは終わり(スロースターター)か」
 御名答! デッキの動悸がビンビンと伝わってくる。そう、僕等は一心同体。魅洲斗芭麗(みすとばれい)の風さえも吸い込む【オールドレイン】。今こそ喰らって魅せようか!

奈落の落とし穴(通常罠)
相手が攻撃力1500以上のモンスターを
召喚・反転召喚・特殊召喚した時に発動できる。
その攻撃力1500以上のモンスターを破壊し除外する。


聖なるバリア−ミラーフォース−(通常罠)
相手モンスターの攻撃宣言時に発動できる。
相手フィールドの攻撃表示モンスターを全て破壊する。

 ……なんたる引きだ! 人が折角、満を持してカウンター・アタックを仕掛けようと言うのに、ドローしたのはコテコテの防御札が2枚。誰だ! こんなつまらんデッキをお組みになったのは! 僕だよ畜生(ちくしょう)! はぁ〜……と溜息を吐くのはまだ早い。
 そうさ。そうなんだ。裏目を引いてからが決闘だろ。
「砂塵を釣って御満悦かい? ククク……既にきみは、僕の戦術に嵌まったんだよ!」
「……???」
 実は《闇の誘惑》を握っていたのだ。もちろん、このセカンド・チャンスでも何も引けないようなら穴蔵(あなぐら)に籠もりたくなること請け合いだ……が!
 僕を誰だと思っている。天下の吸収店長アブソルが己のデッキからカード1枚吸えないとでも? 僕は己のデッキをこの世の誰より信じている。10年経っても、100年経っても、なんちゃらの横好きってのは変わらないものだね我が友よ(デオシュタイン)
「闇の誘惑を発動。デッキから2枚引き……ハンドから《サクリボー》を除外!」
 引いたカードを一瞥する。……素晴らしい引き寄せ。こうも素晴らしいデッキを組んだのは一体誰だ? もちろん僕だ。吸収店長アブソルだ!
「ライアル・スプリット、きみの腕前は流石だが今のきみなら怖くはない」
 負け惜しみに聞こえる? 事実、負け惜しみなんだが、今の発言はハッタリじゃない。
「上手く立ち回っているようでもあり、現状維持の為に小細工を弄しているようでもある」
「……」
 沈黙=肯定。一定の間合いを保ち続ける "空気の決闘"。けれど僕が拝みたいのはそれじゃあない。序盤戦で魅せた神速の片鱗。きっとまだ先がある。
「まずはその、目障りなファルコンを退かしてみようか。リミット・リバースを発動。墓地から我が象徴サクリファイスを復活させる」
 金華猫を引いていればもう少し違うムーブもあっただろうが、これでも十分事足りる。
「効果発動。ダーク ―― 」
『《デモンズ・チェーン》! ライアル選手が《サクリファイス》の効果を封じている!』
 事足りる。僕はそれでも事足りる。
「《融合呪印生物−闇》を通常召喚。《千眼の邪教神》に擬態する」

千眼の邪教神(0/0)
人の心を操る邪神。千の邪眼は、人の負の心を見透かし増大させる。
[通常] [1] [闇] [魔法使い]


「僕には目が沢山あるんだ」
 左腕に装備した 決闘掌盤(クロークス)鋼鉄五指(ファイブ・フィンガーズ)を大きく開く。2枚のカード・ユニットを手の平の奥に呑み込むと、デュエル・オーラを一気に開放。荒れ狂う 決闘掌盤(クロークス) を抑え込み、
「サクリファイスと千眼の邪教神を融合!」
 口元に笑みを湛えたまま戦場に 決闘掌盤(クロークス) を投げ込んだ。鉄の五指が大きく開く。


Thousand Eyes Sacrifice

Special Fusion Summon!!


「もう少し遊ぼうか、ライアルくん」
 僕が愛してやまない "千眼の吸命器"。貪欲に飛び出た単眼はより硬く、獲物を求めるかぎ爪はより鋭く、全てを吸い込むおなかの大穴はより禍々しく拡がっている。
 そして、
『融合召喚と同時にインティスタジアムも効果を発動! 太陽が西に沈んでいたぁーっ!』
 変わる。変わる。暗闇に覆われた夜へと変わる。会場を囲い込む4つの赤いドラゴンヘッドも青へと変わり、クイラスタジアムへと変異する。
「夜の暗闇こそ我がサウザンド・アイズ・サクリファイスにはふさわしい」
 我が愛機の全身には無数の眼球が埋まっている。しかしそれでは到底 "千" に満たない。ならどこにある? 足りない眼球はどこにある? 
『夜空に無数の目が(ひら)く! ライアル選手のファルコンが "千眼呪縛" に囚われた!』
 そう、正解は "空" にある。OZONE空間のあちこちに裂け目が入り、空間上で眼が開く。見渡す限りに眼が浮かぶ素敵な夜景(デートスポット)。 "眼球の結界" が僕の視界を補完する。

サウザンド・アイズ・サクリファイス(0/0)
「サクリファイス」+「千眼の邪教神」
@モンスターゾーンに存在する限り、このカード以外のフィールドのモンスターは表示形式を変更できず、攻撃できない
A1ターンに1度、相手フィールドのモンスター1体を装備カード扱いとしてこのカードに装備する(1体のみ装備可能)
Bこのカードの攻撃力・守備力は、装備モンスターのそれぞれの数値になり、このカードが戦闘で破壊される場合、代わりに装備モンスターを破壊する
[融合] [1] [闇] [魔法使い]


「レベル1軍団の親玉か。流石は吸収店長アブソル・クロークス」
 ライアルくんに誉められた。事実、西部広しと言えども、このカード・ユニットと絆を結んで投盤可能なのはこの吸収店長を置いて他にはいない。もっとも、その所為で新型の開発が停滞しているという噂も聞くが……僕は気長に待っている。
「さあ逝こう。サウザンド・アイズ・サクリファイスの効果を発動」


Infinity Dark Hole!!


霞の谷(ミスト・バレー)のファルコンを吸収する。そして……」
 バトルフェイズ。虚空に開いた千の眼が一斉に光り輝いた。Beautiful!
「サウザンド・アイズ・サクリファイスでダイレクトアタック…… "千眼呪殺"!」
 四方八方から降り注ぐレーザー光線。嗚呼、なんと素晴らしい光景か!!

アブソル:10000LP
ライアル:9500⇒7500LP

『Team BigEaterが一歩リード。Team Mistvalleyに反撃の芽はあるのか!』
「あるさ。あるに決まっている。そうだろう、ライアルくん」
「……千の眼に見つめられるのは、怖い、な」
 逃げ道は残さない。千の眼で先回りして囲い込む。
「あなたの決闘は夜になってからの方が活き活きしている」
 小首を傾げている。いいぞ。疑問は興味の入り口だ。
「太陽は沈んだが、決闘の決着にはまだ遠い。サウザンド・アイズ・サクリファイスの結界は心理の投影。あなたは現状維持を望んでいる」
「それはどうかな。きみの(かぜ)は隔てる為だが、僕の()は壊される為にある」
 僕は望む。 "()" への解答を出す者を。互いのラスト・カードを披露する瞬間を。
「サウザンド・アイズ・サクリファイスはドレイン・モンスターの一大傑作。このカード・ユニットを晒す意味、きみには是非知って欲しい」
 そしてもう1つ。僕はハンドのあるカードを一瞥する。実はさっき《マジック・プランター》を発動し、デッキから引き当てていた大物だ。

絶望神アンチホープ(5000/5000)
理想郷の先にあるもの、その名は絶望
[特殊] [12] [闇] [悪魔]


 僕のデッキにはミスリードが仕込まれている。そう、そうなのだ。サクリファイス、サイバー・ヴァリー、サクリボー、金華猫、無抵抗の真相……レベル1の多重搭載に絶対性はない。"レベル1" という先入観が次の一手を引き立てる。
 そう。僕のデッキにはいわゆる…… "超最上級" がしれっと挿してある。先の試合でも西部を席巻した地縛神。それと同等以上の "神" を。
「TCGにはローカルな神が沢山いる。それこそ千眼の邪教神のように慎ましやかなお方もいらっしゃるが……。きみは神というものをどう考える」
「霞のようなもの。迷える世界が人類には必要だ」
 含蓄(がんちく)のある御言葉を頂くと、僕はもう1枚を一瞥する。

トライアングル・ワン(通常魔法)
手札を1枚捨てて発動⇒次のターンのドローフェイズをスキップ⇒次のターンのスタンバイフェイズにデッキ・墓地・除外ゾーンからレベル1モンスターを1体ずつ特殊召喚する


 お膳立てとしては上々だが、もう少し待つことにする。僕は大きく息を吸った。吸って、吸って、吸って、吸って、吐かない。僕はそれでも生きていける。淫らな嘔吐は不名誉さ。
「ハンドから2枚のカードをセットする」
 この布陣は守る為でも抗う為でもない。僕の防御札は喰らい続ける為にある。
「なー、ライアルくん。勝つ気も負ける気もない決闘など退屈だろ? 古今東西、迷路というのはね、最後にゴールするから楽しいんだ」
 脚を揃えて直立し、両手を広げて薄く微笑む。僕なりの礼儀作法だ。
「ぼくの決闘は未来を見据えた気長な営業だ。ぼくの吸収は遠くの者をギュインと引き寄せる。ならきみは? ぼくはね、きみの空に何があるかを知りたいんだ」
 魅洲斗芭麗(みすとばれい)。その深淵を覗き込む。窒息する前に息を吐け。
「きみの決闘は過去を維持する迂遠(うえん)な営為。きみのバウンスは近づく者を適度に遠ざける。……いつまでも決着が付かないわけだ。それでいいのかい?」
「……」
「きみは待っている。魅洲斗芭麗(みすとばれい)に踏み込む無遠慮な人間を。ターンエンド」
 種は蒔いた。この先は彼次第。決闘が終わるまでに芽吹くか否か。

 大丈夫。

 待つのは得意だから。

「わかったよ」
 !!?
「あんたの言うとおりにしよう」
 なんと。恋文の返事が最速で飛んできた。
「いくぞアブソル! 私のターン、ドロー!」
 来た! "決闘雅流(けっとうがりゅう)" ライアル・スプリットが来た!
『《霞の谷(ミスト・バレー)のファルコン》を吸収されたライアル選手、いかなる反撃を見せるのか!』
 緑髪黄眼の優男。その独特な雰囲気が徐々に変容する。空を泳ぐ風が彼のもとへと集い始めていた。風の申し子の本領、その正体をジッと凝視する。
「メインフェイズ」
 Team Mistvalleyの主将は未だ実力を出し切っていない。それは単なる直観ではなく、大会中に判明した事実からも如実に伺える。なぜなら……
魅洲斗芭麗(みすとばれい)に風が吹く」
 僕の視界が変異した。フィールド魔法は発動していない。なのに。見渡す限りに草花が生い茂り、大自然がOZONEを浸食する。
「精神感応系決闘者。そしてその根源は」
 ライアル・スプリットは余力を残している、その根拠は "魅洲斗芭麗(みすとばれい)" という概念それ自体にあった。虫も、獣も、作物も、そして七色の鉱石も。大自然をも包摂する卓越した決闘概念。つまるとこ、 "魅洲斗芭麗(みすとばれい)" という概念は "霞の谷(ミスト・バレー)" とイコールじゃない。
「《宝玉の絆》を発動。デッキから "宝玉獣" を手札に喚び込み、マジック・トラップゾーンに《宝玉獣 コバルト・イーグル》を奉納する」

宝玉の絆(通常魔法)
デッキから「宝玉獣」モンスター1体を手札に加え、そのモンスターとカード名が異なる「宝玉獣」モンスター1体をデッキから選び、永続魔法カード扱いとして自分の魔法&罠ゾーンに表側表示で置く(1ターンに1枚しか発動できない)


「待っていたよ、その決闘!」
 宝玉獣の斥候コバルト・イーグル。その類い稀な存在感の薄さから "ステルス・イーグル" と呼ばれ、広く薄く世間で愛されているモンスター。そしてもう1つ。僕は少し前に《手札断殺》を発動している。そういうことだ。
「もう一度《リビングデッドの呼び声》を発動。【魅洲斗芭麗(みすとばれい)】の名の下に、墓地から《宝玉獣 サファイア・ペガサス》を特殊召喚!」

宝玉獣 サファイア・ペガサス(1800/1200)
@召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、自分の手札・デッキ・墓地から「宝玉獣」と名のついたモンスター1体を永続魔法カード扱いとして自分の魔法&罠カードゾーンに表側表示で置く事ができる。
Aこのカードがモンスターカードゾーン上で破壊された場合、墓地へ送らずに永続魔法カード扱いとして自分の魔法&罠カードゾーンに表側表示で置く事ができる
[効果] [4] [風] [獣]


『天駆ける天馬が決闘に追い風を呼び込むか!』
 天馬の健脚は宝玉の在処(ありか)を指していた。魅洲斗芭麗の大地(デッキ)が小さく割れて大きく発光。決闘鉱山(デュエルマイン)の奥底から稀少な鉱石(サファイア)が発掘される。
「もう1枚のサファイア・ペガサスを宝玉化。マジック・トラップゾーンへ!」
 永続魔法と永続罠が2つずつ。ライアルくんが両手にオーラを込める。
魅洲斗芭麗(みすとばれい)の大地と共に。煌めけ!」

 "Magic" "Trade" "Magic "Draw" 右手からは《レア・ヴァリュー》を発動。

レア・ヴァリュー(通常魔法)
自分の魔法&罠カードゾーンに「宝玉獣」と名のついたカードが2枚以上存在する場合に発動できる。自分の魔法&罠カードゾーンの「宝玉獣」と名のついたカード1枚を相手が選んで墓地へ送り、自分のデッキからカードを2枚ドローする。


 "Magic" "Trade" "Trap" "Draw" 左手からは《マジック・プランター》を発動。

マジック・プランター(通常魔法)
自分フィールドの表側表示の永続罠カード1枚を墓地へ送って発動できる。自分はデッキから2枚ドローする。


 魅洲斗芭麗(みすとばれい)の循環作用が始まった。

『廻っている! 魅洲斗芭麗が強固なサイクルを構築! 一気に4枚を補充した!』
 迎え撃つ僕の陣地には "3枚" の防御札がある。もっとも、発動のタイミングを間違えれば一瞬で御破算? ……(たの)しい。コレだから決闘は堪らない。
「ライアルくん、この決闘のキャッチコピーは 『 "無限" 対 "虚空" 』だ。我がサウザンド・アイズ・サクリファイスはあらゆるものを無に引き込む!」
「ならば魅せよう。墓地からエア・サーキュレーターを除外。飛べ、風の精霊ガルーダ!」

風の精霊 ガルーダ(1600/1200)
このカードは通常召喚できない。自分の墓地に存在する風属性モンスター1体をゲームから除外した場合に特殊召喚する事ができる(以下省略)
[特殊] [4] [風] [鳥獣]


『風属性レベル4のモンスターが2体!』
「私は ―― 」
「1枚目だ。墓地から《妖怪のいたずら》を発動」

妖怪のいたずら(通常罠)
@フィールドの全てのモンスターのレベルをターン終了時まで2つ下げる
A墓地のこのカードを除外し、フィールドの表側表示モンスター1体のレベルをターンの終了時まで1つ下げる(このカードが墓地へ送られたターンには発動できない)


 《手札断殺》の効果で墓地に送っておいた3枚目の防御札。コイツでガルーダのレベルを下げてエクシーズを防ぐ。そうは問屋が卸さない。
「Team Mistvalleyはそれを待っていた」
 そらそうだ。この妨害工作はバレバレだった。

 だが問題はそこじゃない。

「クリス! タイミングはここだ!」
「《As-シフトチェンジV》を発動!」

As-シフトチェンジV(通常罠)
自分のモンスターと相棒のモンスターのコントロールを交換する


「あ」
 世界を隔てる壁は依然あった。しかしそれは絶対じゃない。我々の協定はあくまで "真正面の対戦相手にしかカチ込まない" であり "傍ら(かたわら)の相棒を援護しない" ではなかったのだ。
「隙間があれば吹き抜ける。あんたほどの店長が迂闊なもんだが……穴を開けて誘い込むのがシナリオか。私はそれでも構わない」
 完っっっ全っっっに忘れていた。そういえばこれタッグデュエルだ。ファントム・ファストランドとクリス・マーカーがこの世で酸素吸って二酸化炭素を吐いているという事実そのものを僕は完全にド忘れしていた。だってどうでもいいんだもん。
「僕の手の平で踊るがいいさ」
「超えて欲しいんだろ、あんたは」
「ぶっ飛ばしな、ライアル!」
 クリス嬢の快活な声が響きわたる。西部式タッグデュエルのルールブックを昨日初めてタラタラ読んで結局寝落ちしたのが響いたか。もう少し真面目に考えれば良かった!
『風の精霊ガルーダが一足飛びに壁を飛び越え、クリス選手のハーピィ・レディと入れ替わる! 天を駆ける鳥人達が迷宮壁を飛び越えたぁっ!』
 風の精霊ガルーダがあっちへ行ったことでファストランドくんにも苦労がかかる。折角の一大迷宮がオープンカフェへと成り下がってしまうからだ。ここは1つ、地割れか地砕きでなんとかしてもらいたいが、しかしそんなことを今更懸念している場合ではない。レベル4が再び揃ってしまった。あー、あー、なんてこったい。来るぞ。 "アイツ" が。

アイツ
↓↓
電光千鳥(1900/1600)
風属性レベル4モンスター×2
このカードがエクシーズ召喚に成功した時、相手フィールド上にセットされたカード1枚を選択して持ち主のデッキの一番下に戻す。
また、1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。相手フィールド上に表側表示で存在するカード1枚を選択して持ち主のデッキの一番上に戻す。
[装填] [4] [風] [雷]


 最新鋭の科学によって生み出されたエレクトリック・エネルギー・バード。その活躍を拝んだのが昨日のベスト8。ギャラクシー・フェリックスに今大会初めて苦戦したライアルくんが形勢をバチンとひっくり返したアイツだアイツ。何が面倒くさいかって、特殊召喚を許した時点で最速効果の発動が……あ、そーだ。
「ファストランド!」
「仰せのままに!」
『ペガサスとハーピィが岩の触手に絡め取られているぅっ』
 彼が相棒の手を借りるなら僕も相棒の手を借りればいい。真剣勝負に横槍が入るのは本意じゃないが技を相殺し合えばイーブンだ。
迷宮関節奥義(ラビリンス・グラップ)! 爆裂折檻ネオ卍固め(ばくれつせっかんねおまんじがため)!」

グレイモヤ不発弾(永続罠)
フィールド上に表側攻撃表示で存在するモンスター2体を選択して発動できる。
選択したモンスターがフィールド上から離れた時、このカードを破壊する。
このカードが破壊された時、選択したモンスターを破壊する。


『風雅爆散! 骨を折るのがテコの原理と誰が決めた! 迷宮産の不発弾を抱き込み荒野でもろとも大爆発! 2体まとめて……あ、あれは!?』
 流石はライアルくんだ。一筋縄ではいかない。荒野の大竜巻を利用した関節爆破の瞬間、咄嗟にハーピィ・レディをフィールド上からリリース。得意のスワローズ・ネストで新手を喚んだ。デッキから2体目となる霞の谷(ミスト・バレー)のファルコンが翼を広げて天へと駆け上がり、魅洲斗芭麗(みすとばれい)の大地にドーン! 奈落にドーン! 地獄の底までボッシュート!
『奈落の落とし穴! 徹底してファルコンを封じている!』
 ハイ残念でした。穴に引き込むのはいつだって気持ちがいい。心なしか空気が美味しい気がする。スー、ハー、気持ちのいい風が吹いてきて……ん? 風?
『速攻魔法《サイクロン》! セットカードが吹き飛んだ!』
 僕らがぶった斬った風の流れを無理矢理つなぎ合わせるかのように。1枚目の発動を見届けてから2枚目を潰す。見晴らしの良い景色の前で、彼は、
「ミラーフォースか。悪くはないがアテが外れた」
 僕はにんまりとする。浮かれた甲斐があったというものだ。より正確には、浮かれたフリをして虎視眈々と狙っているフリをした甲斐があった。
「 "エンドサイク" のお返し……にはちょっと安いかな」
「奈落を決めて浮かれた風を装って次の罠で召喚の足下をすくう。そんな気配がしたから風を喚んだが……一連の動作そのものがあんたのお誘いだった」
「人間とは度し難いものさ。僕も含めてね」
「はは……はははは……」
 笑っている? 彼が?
「不思議な店長(おとこ)だ。まるで隙だらけなようでいて逆に死角が見当たらない。わからないものをわからないまま口に入れることさえ憚らない決闘」
 それでいい。フルーツでも、ダイナマイトでも、上等ならそれでいい。
「僕は普通だよ。表紙を眺めて手に取って一気に読みたいだけなんだ」
「はは……楽しいな、楽しいじゃないか吸収店長!!!」
 緑髪黄眼の優男が、あのライアル・スプリットが牙を剥き出しにして笑っている。連携(アシスト)からの連携(エクシーズ)を防がれて逆に喜々としている。そうか。
「そうだったんだ」
 TCG歴83年現在、彼について改めて想う。アリア・アリーナ、ミツル・アマギリ、そしてテイル・ティルモット。共通して(うごめ)いている僕好みの気質。

 そう、きみは、

「個人主義者か!」
「ほとばしれ!」

 魅洲斗芭麗には二乗の風が吹いていた。

『アブソル選手の布陣(じかん)を巻き戻したぁっ!!』
「な、なんだ今の!」
「2枚も消えたぞ!」
 観客達が一様に騒ぎ立てる中、僕はライアル・スプリットを咀嚼(そしゃく)していた。
「きみもミツル・アマギリと同じだ。風が吹き、風が止み、渦巻く風の中で停滞の歴史を繰り返す。だがそこには、決して覆い尽くせない激情が眠っている!」

 静風轟雷(せいふうごうらい)。それがライアル・スプリットだ。

 無風の世界でライアル・スプリットが舞っている。彼はあの時、右腕の 決闘雷盤(サンガ) にカード・ユニットを装填。疾風(はやて)の速度で振りかぶり、目にも止まらぬ速さで投げ入れた。
「相手フィールドに家臣トークンを送りつけ、《雷帝家臣ミスラ》を特殊召喚!」

雷帝家臣ミスラ(800/1000)
「雷帝家臣ミスラ」の@Aの効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
@このカードを手札から特殊召喚し、相手フィールドに「家臣トークン」(雷族・光・星1・攻800/守1000)1体を守備表示で特殊召喚する(このターン、自分はエクストラデッキからモンスターを特殊召喚できない)
Aこのカードがアドバンス召喚のためにリリースされた場合に発動できる。このターン、自分は通常召喚に加えて1度だけ、自分メインフェイズにアドバンス召喚できる。
[効果] [2] [光] [雷]


「雷帝家臣ミスラを生贄に風帝ライザーを召喚」

風帝ライザー(2400/1000)
このカードがアドバンス召喚に成功した場合、フィールドのカード1枚を対象として発動する。そのカードを持ち主のデッキの一番上に戻す
[効果] [6] [風] [鳥獣]


 連続召喚によって発生するソニックブームがブーメランのように旋回し、サクリファイスが呑み込んでいた霞の谷(ミスト・バレー)のファルコンを救出。自らのデッキトップに引き上げる。
 それだけでは終わらない。目にも止まらぬ速さで風帝ライザーをハンドに戻し、今度は風帝家臣ガルームを喚び出した。繰り返す。魅洲斗芭麗(みすとばれい)は繰り返す。

風帝家臣ガルーム(800/1000)
「風帝家臣ガルーム」の@Aの効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
@自分フィールドのアドバンス召喚されたモンスター1体を持ち主の手札に戻して発動できる。このカードを手札から特殊召喚する(このターン、自分はエクストラデッキからモンスターを特殊召喚できない)
Aこのカードがアドバンス召喚のためにリリースされた場合に発動できる。デッキから「風帝家臣ガルーム」以外の攻撃力800/守備力1000のモンスター1体を手札に加える。
[効果] [2] [風] [鳥獣]


 戻ってきた 決闘雷盤(フーガ) に《風帝ライザー》を再装填。今度は雷帝家臣ミスラの生贄時効果を適用。雷を纏った風の帝王は一度目よりさらに速い。大きく(ねじ)った身体に一旦タメを作ると、柔軟なバネを活かして投げ入れる。
 左腕には 決闘風盤(フーガ) を、右腕には 決闘雷盤(サンガ) を従えた "魅洲斗芭麗(みすとばれい)" の決闘者。その美しくも儚い軌跡がフィールド上で交差(クロス)……、強烈なソニックブームが僕の身体を打ち据えた。


魅洲斗芭麗(みすとばれい)交鎖陣(こうさじん)


『サウザンド・アイズ・サクリファイスが虚空に消えた! ミツル・アマギリの邪帝に匹敵する風の帝王。その風はあらゆるものを巻き戻す!』
 佳境の映画を上映前に、ゴール寸前のランナーをスタート地点に、お迎え前の老人をおぎゃあと産まれるその前に、何もかもを巻き戻す。
「なんて野郎だ!!」
「あの一瞬で二撃を!」
「いいや、三撃だ」
 送り付けられた家臣トークンが真っ二つに裂ける。バトルフェイズは既に終了。必殺必中の風刃が家臣トークンを斬り裂いていた。観客達がワンテンポ遅れて湧き上がる。
「魅洲斗芭麗のライアル! 吸収店長アブソル! どっちに転ぶかわからねえ!」
「……ターンエンド」
 次のドローは当然ファルコン。フィールドに残したリビングデッドを回収して攻めを継続するのだろう。静寂から一転、なんてアグレッシブなんだこの男は。
「距離を一定に保つどころか、彼方まで吹き飛ばされてしまった。実に見事なお手並みだが……なぜ魅洲斗芭麗(みすとばれい)に "(みかど)" がいるんだい?」
「その問いは決闘に含まれる。当ててくれれば語ってもいい」
「Beautiful! 言葉の一つ一つが決闘者らしくなってきたね」
 一度蓋を開けたらもう止まらない。僕の食欲に限界はないのだから。
「序盤の二連撃よりもさっきの三連撃の方がさらに速かったが、それでもまだ "死力を尽くす" には距離がある。 "風属性は最速に非ず" そう語るきみを加速させるものとは何なのか。もっともっと加速できるなら最終的には何が起こるのか」
「買いかぶりすぎだよ。私は流れ者の出来損ないさ」
 言葉と両手が一致していない。引きたがっているのさ、彼は!
「野心もなく生きるのは退屈だろ。もしもきみが保身や体裁をかなぐり捨てるなら、僕も今日の予定をかなぐり捨てて、きみの受け皿になってもいい」
「私は……私の身体は……」

「何をダラダラ駄弁っている!」

『クリス選手が迷宮を突破したぁっ!』
 僕らの心温まる会話もろとも、戦場を隔てる土壁が消し飛んだ。風の刃で斬り刻み迷宮壁を正面突破。立ち上る土煙を 決闘扇盤(ウェンディ) で扇ぎながら、クリス嬢があらぶっている。
「何をチマチマと。憶病風に吹かれたか!」
「おや。ファストランドくんはどうしたんだい?」
「迷宮職人さんならあそこで伸びてるよ」
 OZONE空間の隅っこでファストランドくんが倒れていた。物言わぬ死体になってピクリとも動かない。あー。あー。思わず首を竦めてしまうが、散々、僕の我が儘(わがまま)にあれやこれやと尽力してくれたのだから文句は言うまい。
「気ぜわしいレディがいたものだ」
「決闘は豪奢(ごうしゃ)! 神速を持って今世を生きる! 1枚セットしてターンエンド!」
「クリス、さっきのアシストは良かった。2人でアブソルを倒すぞ」
 あれ?
「今のあいつはまな板の上のなんとやら! ボコボコよ!」
 あれれ?
「アブソルはまだ余力を残している。慎重に行くぞ」
 おいおいなんかふざけたこと言ってるぞ。クリス嬢の乱入によってライアルくんの気勢が露骨に削がれてしまった。現実問題、この盤面では一騎打ちもクソもない。
「全くなんというタイミングだ。僕のターン、ドロー!」
 いつの間にか風が止んでいた。何やら落ち着いてしまったライアルくんは 決闘風盤(フーガ)決闘雷盤(サンガ) を両腕にダラリとぶら下げ、僕に向かってぼそりとつぶやく。
「あなたの申し出は嬉しいが、 "無限" と ”虚空” ではどのみち何も起きないよ」
「……」
 5秒ほど考えて。僕は方針を転換した。
「ねえきみ、クリス・マーカーと言ったね」
「覚えてくれて嬉しいよ吸収店長」
 モデル立ちで凛々しく対峙するクリス・マーカーに対し、本当は今一度 "強制終了" を持ちかけたかった。僕の穴は広いからきみがいても入るけど、僕の心は狭いからきみがいるとダメなんだ。合コンよりはお見合いの方が性に合う。サクリファイスは1対1を好むんだ。

 全てを吸い込んでしまったら? 世界が消え失せてしまうから。

「仕方がない。精々、回り道をしよう」
 長い人生ならそういうこともあるさ。待つのは得意なんだ。
「《貪欲で無欲な壺》を発動。デッキから2枚ドローする。……《一時休戦》を発動。ライアルくん、しばらく待っていてくれ」

 百年はかかるまい。

一時休戦(制限カード)
お互いのプレイヤーは、それぞれデッキから1枚ドローする。次の相手ターン終了時まで、お互いが受ける全てのダメージは0になる。


「クリス・マーカー、きみと少し遊んであげよう」
「それでいいんだよ、吸収店長」
 一時休戦で引いたカードを確認する。そしてふと思う。サイクロン、ハリケーン、砂塵の大竜巻……なぜマジック・トラップへの干渉はもっぱら "風" の領域なのだろう。風の申し子達に聞いてみたいが……まずは目先の問題を片付ける。
「《トライアングル・ワン》を発動。次のターンのドローフェイズをスキップし、スタンバイフェイズに効果適用。デッキ・墓地・除外ゾーンからレベル1を1体ずつ特殊召喚する」

トライアングル・ワン(通常魔法)
手札を1枚捨てて発動⇒次のターンのドローフェイズをスキップ⇒次のターンのスタンバイフェイズにデッキ・墓地・除外ゾーンからレベル1モンスターを1体ずつ特殊召喚する


「召喚予約? ちんたらしてるね!」
 後はもう1つ。ハンドにポカンと浮いていた《ガード・ブロック》を一瞥する。しかし正直なところ、今更このカードに頼りたくはない。
「マジック・トラップゾーンへカードを1枚セット。僕はコレでターンエンドだ」
 さて、決闘もそろそろ佳境だが、この文章を長々読んでくれている殊勝なきみに折り入って頼みがある。まずは自分の首を上下左右にグルリと回し、それからゆっくり深呼吸して、終わったら今日の晩御飯について考えて欲しい。
 ……できたかな? もちろん今の行為には何の意味もないのだが、きみが余所事を考えている間にライアルくんとファストランドくんのターンが終了した。そう。今の僕には瑣事(さじ)を書き連ねる余裕がない。クリス嬢との熾烈な攻防を必死こいて思い出す必要があるからだ。

「私のターン、ドロー! アブソル・クロークス、いざ勝負!」
 当時の映像を記録したDVDを僕はジッと凝視する。
「リバース・カード・オープン! 《銀幕の鏡壁》を発動し、《マジック・プランター》で即生贄に捧げる!」
 ……
「ライアルの風に興味津々? たかが知れている。私の風はさらに速い! 《王家の神殿》を発動。手札1枚をコストに……舞い上がれ風! 吹き荒れろ嵐!」
 …… ……
『《ヒステリック・パーティ》を最速開催! 集いなさい、ハーピィ!」

ヒステリック・パーティー(永続罠)
手札を1枚捨ててこのカードを発動できる。自分の墓地から「ハーピィ・レディ」を可能な限り特殊召喚する。このカードがフィールドから離れた時にこのカードの効果で特殊召喚したモンスターは全て破壊される。


『闘い、傷付き、休息中のハーピィ達が5体同時に目を覚ます。墓地から飛び立ち、"狩場" の中でマジック・トラップを斬り裂きながら!』


Harpie Dancers Special Summon!


ハーピィ・クィーン(1900/1200)
このカードを手札から墓地へ捨てて発動できる。デッキから「ハーピィの狩場」1枚を手札に加える。また、このカードのカード名は、フィールド上・墓地に存在する限り「ハーピィ・レディ」として扱う。
[効果] [4] [風] [鳥獣]


ハーピィの狩場(フィールド魔法)
「ハーピィ・レディ」または「ハーピィ・レディ三姉妹」がフィールド上に召喚・特殊召喚された時、フィールド上に存在する魔法・罠カード1枚を破壊する。フィールド上に表側表示で存在する鳥獣族モンスターは攻撃力と守備力が200ポイントアップする。


「アァーハッハッハー!」
 …… …… …… ……
「笑うには早いよ、クリス嬢」
 …… …… ??
「……っ!?」

荒野の大竜巻(通常罠)
@魔法&罠ゾーンの表側表示のカード1枚を対象として発動できる。その表側表示のカードを破壊する(その後、破壊されたカードのコントローラーは手札から魔法・罠カード1枚をセットできる)
Aセットされたこのカードが破壊され墓地へ送られた場合、フィールドの表側表示のカード1枚を対象として発動する。その表側表示のカードを破壊する。


「ライアルくんの《光の護封剣》を破壊する。きみの決闘はこの程度か」
「……っ! まだよ! 永続魔法《霞の谷(ミスト・バレー)の祝福》を発動。ハーピィ・レディをデッキに戻し、デッキトップからはバード・フェイスを墓地に送り、墓地から!」
 …… …… …… …… …… …… …… …… …… …… …… ……
『ヒステリックパーティで捨てたモンスターを今ここで! 魅洲斗芭麗(みすとばれい)ばりの循環を!』


Harpie's Pet Dragon

Special Summon!!


『緑色の首輪を付けた真紅の番竜! 主人であるハーピィ・レディの為ならば例え火の中水の中。必殺のブレスで薙ぎ払う!』

ハーピィズペット竜(2000/2500)
このカードの攻撃力・守備力はフィールドの「ハーピィ・レディ」の数×300アップする。
[効果] [7] [風] [ドラゴン]


『フィールド上の "ハーピィ・レディ" は4体。ハーピィズペット竜の攻撃力はブルーアイズさえ上回る3200! 一気に総攻撃を仕掛けるか!』
 …… …… …… …… …… …… …… …… …… …… …… ……
「風属性を極め、鳥獣族を極め、ハーピィを極めた私の決闘。喰らいなさい!」
 …… …… …… …… …… …… …… …… …… …… 残念ながら、
「Saint Fire Tera!!」

 覚えていないものは書けない。







【こんな決闘小説は紙面の無駄だ!】
読了有り難うございました。次回は割とすぐです。たぶん。
↓匿名でもOK/「読んだ」「面白かった」等、一言からでも、こちらには狂喜乱舞する準備が出来ております。


□前話 □表紙 □次話











































































































































































































































































































































































































































































































































































































 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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