「Team FULLBURST!」
 17ターン目の宣戦布告にリードとラウが目を見張る。目の前に突きつけられたのは魔法の杖、すなわち、マジックワンド型デュエルディスク 決闘白盤(ホワイト・スタッフ)
 その使い手の身体が金色の光に包まれ、眼光鋭く言い放つ。
「私こそが……NeoGalaxyのエース・デュエリストだ!」
『ゼクト選手が眩いばかりに! 光輝いているぅぅぅぅぅぅっっっ!』
 宣言と共にさらなる発光。全身から放射された光のオーラが波動となってリードを呑み込む。
 押し込まれたリードは条件反射で防御体勢に移行。手の平を使って目元を覆うが白魔導師のプレッシャーは変わらない。メインフェイズ1は問いから始まる。
「デッキトップに置かれたカード。見えない理由を知っているか」
「さっきあんたの相棒が言ってたな。真っ暗だから……」
「眩しいからだ!」
「こんちくしょっ! ほざきやがって!」
「デッキとは可能性の光の凝固体。ゆえに眩しいこのように!」
 ゼクトの右手が煌めいた。 決闘白盤(ホワイト・スタッフ) の先端に手を伸ばし、2本の指をデッキに添えて、
「我らのターン……ドロー!」
 親指は使わない。真っ直ぐ伸ばした中指と人差し指を使うツー・フィンガー・ドロー。輝かんばかりの美しいドローが夜を斬り裂いた次の瞬間、OZONE空間内に見慣れた文字列が浮かび上がる。 "Reverse" "Trap" "Draw" "Double" "Triple" ……
「やはり使ってくるか」
 いち早くラウが反応を示す。カイクウの数珠ミサイルと《邪神の大災害》がぶつかり合う中、ドサクサ紛れに発動していたドロー・ブースト。ラウに並んだ2枚目とさらに上回る3枚目。

ゴブリンのやりくり上手(通常罠)
自分の墓地に存在する「ゴブリンのやりくり上手」
の枚数+1枚を自分のデッキからドローし、
自分の手札を1枚選択してデッキの一番下に戻す


 そして、

「私は《非常食》をチェーン! 発動中の《ゴブリンのやりくり上手》2枚を墓地に送ることで、我々NeoGalaxyは2000ライフを回復!」

ゼクト&バイソン:9600⇒11600LP
リード&ラウ:10000LP

非常食(速攻魔法)
このカード以外のマジック・トラップを任意の数だけ墓地へ送って発動⇒送ったカードの数×1000LP回復する


 2枚のやりくり上手が光の結晶へと変わり、手の平のデュエルオーブから吸収。ライフに比例してオーラも増大、さらなる道へと突き進む。
『ゼクト選手もやりくりターボ! Team FULLBURSTを抜き返す!』
「違う。違うぞ。違うのだ! バイソンと歩んだ私のドローはものが違う。墓地にある3枚のやりくり上手を即座にカウントすることで!」
『必殺必中やりくりターボが始まった! やりくり上手2枚と《非常食》で3枚使い、4+4で8枚引いて、使わない2枚をデッキに戻す。差し引き3枚のカードが舞い込みます!』
「さあ、ゆくぞ!」
 ゼクトが杖状の 決闘白盤(ホワイト・スタッフ) を大地に突き刺し、先端のデッキホルダーを目の高さに合わせる。空いた。ゼクトの両手が空いた。自身が着ている、フードの付いたホワイトローブのえりもとに美指を伸ばすと首元の布をギュギュッと掴む。脱いだ。ゼクトが白装束を。
「あれは!」
 フェリックスが驚きの声を上げる。ホワイトローブの下にあるのは、 "Team NeoGalaxy" が刻印された銀河色のユニフォーム。そして、
『なんということだ! ゼクト選手の腕が8本に増えている!』
「あのプレイングはまさか!」
 ミツルの脳裏に浮かぶ約1ヶ月前の情景。電柱の上から飛んで来た千変万化(スターダスト)の衝撃波。人呼んで決闘紳士のサブアーム……
「いや、違う。あれは!」
「はああああああああっ! ドロー!」
 引いた。ゼクトが引いた。残像が残るほどの速さそして美しさ。あまりの美しさゆえに知覚が狂い、8本の腕で同時に引いたかのような錯覚を与えるオクトパスドロー。その実態をミツルが見抜く。
「今のドロー。わかるかレザール」
「ミツルさん、あれは一体……」
「あれこそまさしくゼクトパス!」
「……ッ!?」
「決闘美術の担い手として、確固たる地位を築いたゼクトさんさえ新たな可能性を追っていた。あれはゼクトさんとバイソン・ストマードの執念。先制攻撃の水面下であの人は貯めていたんだ。レザール、ここから数ターンの攻防を良く見ておけ。あの人は覚悟を決めている」
「デッキにカードを2枚戻し、メインフェイズを続行。《サイバー・ヴァリー》で除外した《ライオウ》で1体、《ミラクルシンクロフュージョン》で除外した《ライトレイ ソーサラー》と《アーカナイト・マジシャン》でもう2体。光属性3体の除外を条件に……」
 大地に刺さった魔法の杖を抜き取るとすぐさま投盤の構えに入る。全長1メートル以上のマジックワンドを矢に見立てた華麗なるダーツスタイルが今ここに。しかして、
(まだだ。まだ足りん。もう1枚チューナーがいる)
 ゼクト・プラズマロックは拡がった。
「私は! 《ライトレイ マドール》を特殊召喚!」
「マドール!?」 「ここにきて新手を!」
『全てを斬り裂くギアフリード、全てを消し去るソーサラーに続く三種類目のライトレイ。全てを受け止めたいマドールが! 肉体派魔導師《ライトレイ マドール》が! 決闘総動員法発令か!』
「魔法使い族専用装備魔法《ワンダー・ワンド》を発動!」

ライトレイ マドール(1200/3000)
このカードは1ターンに1度だけ、戦闘では破壊されない
[特殊] [6] [光] [魔法使い]


ワンダー・ワンド(装備魔法)
このカードを装備した魔法使い族を墓地へ送る事で、デッキからカードを2枚ドローする


「「ラーイトレーイ!」」
 ゼクトとマドールが鬨の声を上げた。剥き出しの蒼い肌に白マント。半裸の仮面魔導師《ライトレイ マドール》が魔法の杖を振りまくり、リードとラウが迎え撃つ。
「来やがったな! 8割変態のマゾ野郎!」
「気をつけろリード、次が来るぞ!」
 《ワンダー・ワンド》の効果発動。半裸で踊り明かしたマドールを墓地に収監、無期懲役と引き替えにさらなるドロー。引き当てた2枚に満足すると、ここぞとばかりにゼクトが踏み込む。
「召喚条件口上省略。ただひたすらに見るがいい。現れいでよ!」
 ゼクトの投盤が煌めいた。得意のダーツスタイルを進化させた力感溢れるジャベリンスロー。まるで槍のように、鋭くフィールドに突き刺さった 決闘白盤(ホワイト・スタッフ) がカードの封印を解き放ち、光の中からホワイトローブの魔導師が現れる。



ライトレイ ソーサラー、特殊召喚(スペシャル・サモン)



 ―― 塵一つ残さぬ除外美。既に完成された美と決めつけた

 ―― 除外の優位性を誇るライトレイに蘇生帰還は不要

 ―― 除外の致死性に拘るライトレイに攻撃宣言は不要

ライトレイ ソーサラー(2300/2000)
通常召喚できない。除外されている自分の光属性が3体以上の場合のみ特殊召喚。
1ターンに1度、除外されている自分の光属性モンスター1体を選択してデッキに戻し、
フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択してゲームから除外できる。
この効果を発動するターン、このカードは攻撃できない。
[特殊] [6] [光] [魔法使い族]


「私は見くびっていたのだ」
 ゼクトの視線が金網間近のアリアを射抜く。
「ソーサラーの謎に今こそ答えよう。カオス 『 ・ 』 ソーサラーが 『 ・ 』 を持って己を規定し、他方、ライトレイ『 』ソーサラーが空白を求めるその意味を。わかるかリード」
「知ったことかよそんなもん!」
「ふっ、ならば答えよう!」 「!」 「中点は結合、空白は拡張。《カオス・ソーサラー》は混ざろうとし、《ライトレイ ソーサラー》は拡がろうとしていた。だからこそ、だからこそ、嗚呼だからこそ限界の壁にぶち当たり、効果と制約の狭間で足掻く!」
 喝破の瞬間、金網の尖った箇所を掴んだアリアの皮膚から血が垂れる。 「あいつら無茶苦茶決闘してる。なんでわたしはあそこにいないの。あいつら、あいつらがあそこにいるのに」
「ならば! 使う資格は勝利への意志。ギャラクシーアイズも、ドゥルダークも、ソーサラーズも、闘い勝ち抜く為に効果を持った。我々NeoGalaxyは……決闘への道を切り開く! 効果発動!」
 ゼクトと直結した《ライトレイ ソーサラー》が両手を重ね合わせる。《カオス・ソーサラー》が対極同士を混ぜ合わせるのとは好対照。叛列の白魔導師は光に光を凝縮する。そして、
「ジャック・A・ラウンドのフィールドを選択。貴様との鬼ごっこにも白黒をつける」
 凝縮に次ぐ凝縮からの解放。光が! ラウのモンスターを呑み込んでいく。
「シャイン・バニッシュ・マジック!」
「機甲戦士《ガントレット・シューター》が消し飛んだぁっ!」
 両手を失った機甲戦士の全身が消し飛ぶ。
 エクシーズ・モンスターを丸々呑み込む、眩いばかりの光の中で、
(ゼクトは持ち味を捨てていない)
 ラウは気がついていた。
(決定力不足のガス欠、わかった上での先制攻撃。序盤から必死こいて走ること、それ自体が戦略だとすれば。終盤戦を得意とするゼクトの持ち味。それを最大限活かす為に殴り続けた。だとすれば、)
「次は貴様の番!」
 決闘白盤(ホワイト・スタッフ) の先端が向こう岸のリードを指すが、指されたリードは疑問を拭えずにいた。
( 『僕達二人三脚でやってきました』 と言わんばかりだが、それならそれで辻褄が合わない。バイソンが7の闇に3の光を足すなら、ゼクトは7の光に3の闇でないとおかしい。なのにあいつは)
「ゼクト! なぜ光しか使わない!」
「使っているさ!」
「……っ!?」
「夜を追い求めたのは迷える私の本能。バイソンとの日々が私に教えてくれたのだ。このフィールドを見よ! 日が沈んだ今こそ我々の本領! 夜の 『黒』 こそギャラクシー・キャンバス! 私が追い求めた白き光は、混沌に満ちた宇宙の中でこそもっとも輝く!」

「やってくれるね!」
 左の手の平に右の拳を打ち付け、Team FrameGearのファロ・メエラが通りのいい声を上げた。
「バイソンのスリップストリームに入ったのはラウンドだけじゃない。ゼクトもだ。思えばスターティング・ディスク・スローイングの時からバイソンはゼクトを押していた。前を走りながらも後ろから、並列速攻を隠れ蓑にバイソンのマシン(デッキ)がゼクトのマシン(デッキ)を。決闘が片寄った分だけゼクトには余力(バッテリー)が残ってる」
 隣で聞いていたチェネーレが静かに聞いた。
「いかに《カオス・ソーサラー》があるとはいえ、バイソンさんの余力は最低限。最初からそういう決闘をなさるつもりで……終盤の貫通力を高める為に敢えて?」
「うちのエースに教えとこうか。エースは孤高なんだよ!」

「そして!」
 眩いばかりのオーラをその身にまとい、ユニフォーム姿のゼクトが一気呵成に攻め立てる。
「レベル1光属性チューナー、太陽の妖精《サニー・ピクシー》を再び通常召喚。チューニングを行うことで1000ライフを回復する。私がチューニングするのはライトレイ……ライトレイ 、ソーサラー……」

サニー・ピクシー(300/400)
光属性シンクロモンスターのシンクロ召喚に利用され
墓地に送られた場合、1000ライフポイント回復する
[調律] [1] [光] [魔法使い]


 急迫から一転、ゼクトがゆっくりと構えに入る。左腕を上げて右腕を引き、限界まで身体を引き絞ると…… 決闘白盤(ホワイト・スタッフ) を巨大な矢のようにつがえて狙う。NeoGalaxyの武器は導く為に。
『自分の身体を弓のように展開! まさに人間弩砲(バリスタ)発射態勢!』
「我々2人にEarthboundやFlameGear、そしてあの決闘仮面ほどのデュエルパワーはない。しかし、闘い続けることで得られる力もある」
(ダーツに槍投げ、今度は全身弩弓か)
 リードは呼吸を聞いていた。フィールド2つ分の距離をものともしない波動のようなプレッシャーが目の前に。体感30センチの距離で、手を伸ばせば届きそうな距離でゼクトの呼吸を聞いていた。
(白魔導師の回復) (黒魔術師の攻撃) (先攻1ターン目は攻撃できない) (バイソンが殴ってからゼクトが) (直列) (並列に加えて直列) (バイソンが宇宙……ゼクトが銀河……並列に直列……)
「グランドクロスか!」
 銀河の十字架が飛来した。夜のキャンバスに描かれる光の十字。人間バリスタと化したゼクトの腕から光陰の矢が発射され、ソーサラーとピクシーを巻き込みうねる。最初は豆粒のようだった光が見る見るうちに拡大。近く、大きく、得体の知れない巨大な螺旋が、
「じゃじゃ馬がっ!」
『ラウンド選手がバリアを!』
「それがどうしたっ! 突き抜けろ!」
 ラウがリバース・カードを発動するが怯まない。
 全てを嚙み砕く竜の顎、硬く尖った蝙蝠の翼、ギラリと光る鷲の脚、視界の彼方まで伸びる蛇の尻尾。あらゆる混沌を巻き込み決闘者の輝きを映し出す銀河の鏡。《エンシェント・ホーリー・ワイバーン》が光の矢となって突き抜ける。バリアを貫き突き抜ける。



Life is Beautiful!



エンシェント・ホーリー・ワイバーン(2100⇒4700⇒3900⇒8600/2000)
光属性チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
@自分と相手のライフポイントの差で攻撃力が上下する
A戦闘で破壊され墓地へ送られた時、1000ライフを払う事で墓地から特殊召喚
[同調] [7] [光] [天使]

 光陰激突! ノーガードのままもんどり打ち、その場に倒れ込むリードを目の当たりにしつつも ―― ゼクトは真っ白な美歯を晒さない。この程度、そう言わんばかりに。
「さあ立ち上がれ! 今こそ雌雄を決しようではないか!」

ゼクト&バイソン:11600⇒12600LP
リード&ラウ:10000⇒6100LP

「あのゼクトがこうも貪欲に勝利を」
 ベンチに座るフェリックスが拳を握りしめていた。自慢の三角眉をギュッと引き締め、食い入るようにフィールドを覗き込む。フェリックスばかりでない。隣に座っていた蘇我劉抗もふと呟く。
「俺は自分のもやもやをぶつけるばかりで、なにがなんでも殴り勝つ意思が足りなくて負けた。あの人はその先に行こうとしている」
「初めて出会った10年前からそうだった。試合に出られん素人同然の頃から、誰よりもカードを敬っていたのだ。必ずしも勝利を目指していたわけではない。だがあいつは、自ら求めた美に誠実であろうとした。停滞も迷走も全ては……全ては……ゼクトォッ……!」

「もっと早く気づくべきだった」
 ラウは思い出していた。《サニー・ピクシー》でチューニングを行うゼクトの戦いぶりを。あるいは、ダイレクトアタックに《ガード・ブロック》を合わせるバイソン・ストマードの仁王立ちを。 「ライフ差が拡がれば拡がるほど、ピーキーな投盤を必要とするじゃじゃ馬か。もしライフ差が1万であろうと」
「1億であろうと投げるつもりでいた。貴様が追いかけていなければ」
「そういうセリフはおれが言いたい。決闘で腹が立ったのは初めてだ」
 次の瞬間、ぶち破られたバリアの残骸がパリンと割れる。割られたバリアの名は《ドレインシールド》。割ったのはゼクトの二投流。

「《禁じられた聖槍》か」
  ベンチに座っていたパルムが舌を打つ。 「流石にドローが肥えてる。1本目の矢をブン投げてから槍の方もブン投げたんだ。直列繋ぎでラウの《ドレインシールド》を」
「パルくん、あれって最初の」
「スターティング・ディスク・スローイングの時と同じだ。1本目の後ろから2本目をぶつけて突き破る。今のゼクトは1人でそれを」
「混じって拡がって道を作って。それが魔法使いなら、あの人は」

(今のは効いた)
 リードは寝転がったまま夜空を眺めていた。
 身体の中心にある土手っ腹には光の残留粒子が残っている。
(店長がほざいた "重さ" がこれか。《クリアー・バイス・ドラゴン》で映したおれの一撃よりなにやら重たい。もしラウが……ホープやシューターで競り合ってくれなかったら……)
『ダメージレースはまたしてもダブルスコア。追い抜かれても抜き返す。これが強豪Team NeoGalaxyのプライドか!』
 白魔導師に決意あり。甘やかされたエースカードを良しとせず、《ライトレイ ソーサラー》を軸に決闘を最適化。何が何でもダメージレースを駆け抜ける。それが、
「100ライフを競う粗野な決闘の中にも美は存在した。我々の【生存優位戦略(ライフ・アドバンスド・デュエル)】はもう止まらん!」

 2人の尖兵で攻める

 2人のエースで攻める

 2人の合体技で攻める

 そして今、2人の軌跡がリードを倒す。

(何度も何度も繰り返し攻めながら、螺旋階段をえっちらおっちら登っていくように進化していく。闘い続けることが力になる決闘か)
 リードがゆっくりと立ち上がり、目を上げれば大災害もいいところ。龍でもあり、蝙蝠でもあり、大鷲でもあり、大蛇でもある天の使いが堂々降臨。OZONE傘下の特殊重力圏を支配する。 (攻撃力8600……本当に怖いのはそれを使ってるあんにゃろう。おれが知ってる怖い奴らとおんなじだ。プライドっつうかとにかく必死こいてる。おれはきっとここで初めて……本物のゼクトと闘っている)
 会場を席巻するNeoGalaxyコールが雨あられのように降り注ぎ、声帯を振り絞ったミィの声援が僅かばかりの傘となる。そんな中、リード・ホッパーはかつてないほど怖がっていた。


Duel Episode 38

Cross Spiral Chain Duel


                      ―― 2週間前 ――

「はっ、はっ、はっ」
 冷たい床を踏み抜きながらリードが走る。目の前にあるのは真っ暗な地下通路二丁目の曲がり角。壁に手をつけ左に曲がるが待っていたのは蟻の巣ロード。
「ダンジョンデュエルたぁふざけたもんを。いくら回復ポイントがあるからって初期ライフが少ないにもほどがあんだろ……あった!」
 あらかじめばらまかれていたライフアップを石の壁の中に見つけると、手のひらのデュエルオーブを上から被せる。 チャリン♪ 石の壁に囲まれた迷路の中では効果音が良く響く。
「こいつでなんとか最低限か」
 懐中電灯代わりの決闘叛盤をジロリと確認。液晶画面に映し出されたLife Point:2300にホッと一息 「げっ!」 曲がり角から何かが飛び出しさあ大変。地下のもののけ《クリッター》の嚙みつきが
「くれてやるかよ!」
 鞘から刀を抜くように。デッキからカードを抜札!
 ドロー・エネルギーを魔除け代わりに、まんまるあくまを退ける。

ガード・ブロック(通常罠)
相手ターンの戦闘ダメージ計算時に発動できる。自分への戦闘ダメージは0になり、デッキからカードを1枚ドローする。


「くそったれ、もう来やがった」
 デッキから引いた《異次元からの埋葬》を大雑把にしまってリードが逃げる。走って、曲がって、また走り、飛び出た刃もなんとか躱す。
「振り子刃の拷問機械……安全対策は万全か? トチ狂いやがって」
 照明(ライフ)が足りない。何もできない。底なし沼のような真っ暗闇の真っ只中。(ライフ)を探してリードが走る。
「ここは……」
 迷路を抜けると待っていたのは広い空間。道標となる石壁を失ったせいか、暗闇の中に投げ飛ばされたかのような錯覚に陥る。どうしよう。こうしよう。薄暗い広場を慎重に散策。ド真ん中に置かれていたライフアップと《闇の誘惑》を受け取ると、入り口に注意を払いつつモンスターをセット。ターンエンドを宣言しながらさらなる調査。ぐるんぐるん。リードが首をぐるりと回す。
「なんで見覚えあるんだか」
 妙な既視感に首をかしげつつ、砂利混じりの地べたを触っていると……
 突然、後ろから声が響く。
「今日はお休みだ」
「誰だ!」
 その場で反射的に振り向くと、体格のいい男が壁際に座っていた。
「それはこっちのセリフだが……俺はグスノー。グスノー・チャンプ。ここで決闘を仕切ってる……あれだよあれ。地上で言うところのならず者の1人だ」
「決闘?」
「ああそうさ。賭け決闘やら八百長決闘やら殴り合いやらまあしょうもなくて楽しいものが盛り沢山。例えば……そうだな。あれやらこれやらコスプレした女を電流ロープの前に立たせて、盛り上がった観客共にドローさせたり。あれは結構な当たりだった。踏み心地は最悪だったがな」
「後半は何を言ってんのかイマイチぴんとこねえが大体わかった」
「はっはっは! あいつは本当にいかれてた。電流ビリビリよりもライブラリーアウトの方が嫌だとほざきやがる。そういう妙なしがらみを抱えたバカ共が、このデュエルフィールドに転がってくるのさ」
「デュエルフィールド? そうか。ここはひょっとして……来やがったか!」
 召喚の気配を察して即座に振り向く。いない。いる。上にいる。見上げたリードの視界にはピエロが1人。天井スレスレまで無節操に飛び上がり、雑に三回転を決めると無理矢理着地。脚がグシャっと折れ曲がろうが気にする気配はノーサンキュー。
 欲望の道化師《死霊操りしパペットマスター》が地下から決闘を掘り起こす。

死霊操りしパペットマスター(0/0)
アドバンス召喚成功時2000LPを払って発動。自分の墓地の悪魔族モンスター2体を特殊召喚する
(この効果で特殊召喚したモンスターはこのターン攻撃できない)
[効果] [6] [闇] [悪魔]


「……っ!」 瞬時に身構えるが既に効果は始まっていた。 "ライフ・イズ・パスト" の真骨頂。フィールドのド真ん中に立つリードに対し、右端と左端の床がギリギリうごめき等しく決壊。石の床を破壊しながら2体の女人形が一気に登場。リードを挟んで可愛がる。

ダーク・ネクロフィア(2200/2800)
モンスターゾーンのこのカードが相手によって破壊され墓地へ送られたターンのエンドフェイズ、相手フィールドの表側表示モンスター1体にこのカードを装備し、装備されたモンスターのコントロールを得る。
[特殊] [8] [闇] [悪魔]


「次から次へと!」
 憎悪に釣り上がった眼。刃物のように鋭い耳。禿げ上がった頭の女人形。2体の《ダーク・ネクロフィア》が左右からリードを挟み込む。右か。左か。リードが首を振って間合いを図るが、後方からはグスノーが煽る。 「あんちゃん、余所見してる時間はないぜ!」
 言われた通りに余所見をやめると、正面の道化師に女性が抱きついていた。人間ではない。地下の瘴気が生み出した液体金属生物《シェイプシスター》がその真価を発揮する。

シェイプシスター(永続罠)
発動後モンスターカード(悪魔族・チューナー・地・星2・攻/守0)となり、モンスターカードゾーンに特殊召喚する(このカードは罠カードとしても扱う。「シェイプシスター」は1ターンに1枚しか発動できない)


 《シェイプシスター》が艶やかな嬌声を上げた。《死霊操りしパペットマスター》に抱きついたままの状態でドロドロに溶けていく。そのまま全身に行き渡り欲望を開放。女を知った道化師が紳士に変わる。シルクハットの悪魔紳士《ブラッド・メフィスト》シンクロ召喚。

ブラッド・メフィスト(2800/1300)
相手のスタンバイフェイズ時、相手フィールド上に存在するカード1枚につき300ポイントのダメージを与える事ができる。また、相手がマジック・トラップをセットした時、300ポイントのダメージを与える。
[同調] [8] [闇] [悪魔]


「《竜騎士ガイア》をぶっ倒したあれか。次から次へと懐かしいもん出しやがって……。その辺どっかにいるんだろ。こそこそ隠れてないでさっさと……」
 リードの後ろでまたしても地面が吹っ飛んだ。こんにゃろうとばかりに振り向くと、砂埃の後ろに 決闘書盤(ヴァリュワール・リーブル) を持った決闘者が立っていた。 "Magic" "Reborn" "Equipment" ……禁じられた文字列が地下のフィールドに浮かび上がり、リードの悪態も加速する。
「あんたといいグスノーといい、後ろを取るのがお好きらしいな!」
「800ライフを支払い《早すぎた埋葬》を発動」

早すぎた埋葬(装備魔法)
800ライフポイントを支払う⇒自分の墓地に存在するモンスター1体を表側攻撃表示で特殊召喚し、このカードを装備する(このカードが破壊された時、装備モンスターを破壊する)


 地下の曲者が埋葬された悪魔達を掘り起こす。満を持して現れたのは地下を守る何者か。黒い鎧に青い翼、プロテクトブレードを携えた最上級の悪魔騎士。《闇の侯爵ベリアル》召喚。

闇の侯爵ベリアル(2800/2400)
フィールド上に表側表示で存在する限り、相手は「闇の侯爵ベリアル」以外の表側表示モンスターを攻撃対象に選択できず、マジック・トラップの対象にする事もできない。
[効果] [8] [闇] [悪魔]




「囲まれた!? パルム戦のアレンジか」
 前門のベリアル、後門のメフィスト、左右からはネクロフィア。
 四面楚歌がリードを囲むとフィールド一帯の明かりが灯る。
「驚かすのはいつだって楽しい」
 地下闘技場のショータイム。バルートン・ベリアルが現れる。
「初期ライフが常におんなじというのは……考えてみると中々面白い」
「そうかもな。そんでここも闘技場ってわけだ。以前来た1階とは随分違う」
「あそこは玄関口だ。おまえらTeam BURSTや、さっきおまえがちょろっと言ったマンドック・モンタージュのような物見遊山が時々喧嘩を売りに来る。こういうところはそういうものだ」
「1階が交流用で地下1階が惰眠用。でもって地下2階が遊戯用か」
「ここは俺達の拠点だが、走り回れば他にも……どうした」
「なにやら見覚えがあるのはおかしいよな。灯りがついてようやくわかった」
 リードの脳裏には10年以上前の肖像が浮かんでいた。周囲四方向に配備されたのは闇属性機械族のロボット軍団。電撃戦の申し子A・ジェネクス・パワーコールを正面に、左側からはフィンガー・ミサイルを発射する高速滑空のA・ジェネクス・リバイバー、右側からはバックパックに直結した火炎放射器が伸びるA・ジェネクス・ベルフレイム、そして背後で構えるは、右手から高圧縮レーザーを放つA・ジェネクス・ドゥルダーク……
「袋小路の四面楚歌は蘇我劉邦の十八番。ここはインティ&クイラスタジアムの前身。西部スタジアムのミニチュアだ!」
「……」
「ボーラのリアクター、ガスタークのジャイアントキラー、ゼッペスのヘブンズストリングス。蘇我劉邦が使っていた闇属性や機械族の比率が高い。昔々、あった筈の世界の上から地縛神が降ってきて、地下の底までめり込んだ……そうだろ!」
「《早すぎた埋葬》というわけだ。そしておまえが倒したブロンは……ブロートン・リタラルは闇属性機械族にドラゴン族を足しました」
「《トライホーン・ドラゴン》……」

トライホーン・ドラゴン(2850/2350)
頭に生えている3本のツノが特徴的な悪魔竜。
[通常] [8] [闇] [ドラゴン]


「ミツルは元々、《真紅眼の黒竜》をはじめとした闇属性ドラゴン族使いで決闘を始めた。それを知ってるブロートンはサイバー・ダークと埋葬学で文学的超克を狙っていたのさ」

 ―― で、でた! ブロートンさんの《早すぎた埋葬》。死に魅せられた暗黒の文学

 ―― 《早すぎた埋葬》は臓器売買をも視野に入れた現代文学!

 ―― 冒涜の新時代! 倫理の蹂躙劇!

 ―― 俺達を天国へ連れてってくれ! もう逝きそうだあ! ま・い・そ! ま・い・そ!

 ―― 縛る、そのために生まれた(チェーン)がサー・ブロートンの作品(デッキ)を解き放つこのパラドクス。倒錯と転倒の狭間でブロートン文学の傑作がコマのようにまわり続ける

「まさか! あいつもそうなのか。あいつも西部を」
「文学的天上天下唯我独尊。実力が伴っていなかったがな」
「はは……はっは……はははははっ!」
「なにがおかしい」
「なんてこった。ブロートンには思想があった。そしておれには腕力があった。お互いそれだけでなんとかしようとした。同じ穴のムジナだ」
「ブラッド・レイン!」
 悪魔紳士《ブラッド・メフィスト》の効果発動。目の前に置いたカードから赤い血の槍が吹き出し、目覚まし代わりの1200ダメージがリードを襲う。
 即座にバルートンが否定した。
「あいつのようにはなるな。必要なのは空虚な言葉じゃない。初めて会った時、おまえはおれを力任せにふりほどいた。必要なのは踏み越えていく覚悟だ。今おまえの目の前にある、このしみったれた布陣はとっくの昔に死んでいる。もののついでに否定していけ」
「断る!」 「あ?」
「否定するための闘いじゃないし、おれが倒したいのは地上だ」
「このデッキは所詮地下での戯れに過ぎない。パルム同様これを踏み越えていかなければ地上も倒せはしない。さあトドメを刺してみろ」
「ラウが言ってた。 "自分を信じろ"、"肯定する道を探せ"、"持ち味を活かせ"、世界がデッキでデッキが世界でうんたらかんたら……何言ってんのか8割方わかんねえけど、たぶんそれは意固地になれって意味じゃない。前に進むのは後ろを否定するだけじゃないだろ。あんただって」
「……蘇我劉邦の十八番を守備型にアレンジした。それがこの陣形だ」
「……」 「デッキの記憶を継ぐ気か。いくら馬鹿力があっても潰れるぞ」
「デオシュタインはさ。我儘で融通が効かなすぎるパワーを死ぬ気でねじ伏せて制御したから強くなったんだろ。やればできるとは限らねえけど、やればできるでやり込まないとできないこともある。おれは世界に声を張りたい。そんで跳ね返ってきたもんをガツーンとさ」
「正気か。ガツーンどころかグシャっといくぞ」
「倒れる時は前のめり。それがおれの、最低限だ!」
 笑った。嘲笑の笑みではない。バルートンが口を開けて笑った。
「最低限など知ったことか。おまえの最高(デュエル)を見せてみろ」
「《闇の誘惑》を発動。もらってくぜ、地下決闘!」

                     ―― 大会会場 ――



 世界は十字架でできていた。個人主義の東部、宗教国家の南部、永久凍土の北部、始まりの地中央、そして英雄主義の西部。蘇我劉邦からミツル・アマギリへ。英雄の名の下に結束し、チームデュエルを構築した西部の選択。それが今、激震せずにはいられない。
 決闘の震源はここにある。四つの龍に囲まれたクイラスタジアムのド真ん中。
 フィールドに立つ4人の意識が揺れ動く中、
(リード・ホッパー、よくぞここまで我慢した)
 メインフェイズ2。ゼクトの瞳には爆発物が映り込んでいた。黒いハチマキを締め、緑色の特攻服を羽織った生身のダイナマイト。最小限のライフ漏れに抑えられた爆発寸前のデュエルオーラが
(両足がまるで大樹のよう。尻餅をついても足はそのまま)
 ゼクトは理解している。恐怖と期待が入り混じる最高の瞬間を。
(銀河を捻じ曲げるか、或いは一気に呑み込むか。いずれにせよ次のターン……違う)
 大きな瞳からほとばしる剥き出しの意思。それをゼクトは疑わない。
(必ずエンドフェイズに仕掛けてくる。先の《サイコ・デビル》とは比較にならぬ全身全霊……ならば!)
 ゆっくりと、ゆっくりと、 決闘白盤(ホワイトスタッフ) を天に向かって突き出す。ゼクトのオーラが殺気と化した。
「……!」
 リードの右腕に震えが走る。拳を握りこみ、力づくで堰き止めてから応戦開始。そのまま静かに両腕を持ち上げ十字に交差。手の平のデュエルオーブを見せつけるように拡げると、
 拡げたままピタリと止まる。
『リーダーとエースが! 向かい合ったまま動かない!』
 ラウとバイソンは何も言わなかった。会場中も息を呑みじっと見守りながら永遠のような時間が過ぎていく。なおも蒸し暑い夏の夜。集中力を高める2人の汗がひたいから滲み、地べたにしたたり落ちた次の瞬間 ―― ゼクトが 決闘白盤(ホワイトスタッフ) を振り下ろす。
「マジック・トラップを1枚セット!」
『ゼクト選手が動いたぁーーっ!』
 畳み掛けるようにエンドフェイズへ移行。ターンエンドに向かって駆け抜けるがそうは問屋がおろさない。右手からは "Trap" "Set" "Destroy" 、左手からは "Trap" "Return" "Draw"。 クロスさせたリードの両腕。右手と左手が同時に輝く。
「《砂塵の大竜巻》を発動! 《サイコ・チャージ》をチェーン!」

砂塵の大竜巻(通常罠)
相手フィールド上のマジック・トラップ1枚を破壊する。その後、手札からマジック・トラップ1枚をセットできる。


サイコ・チャージ(通常罠)
自分の墓地に存在するサイキック族モンスター3体を選択し、デッキに加えてシャッフルする。
その後、自分のデッキからカードを2枚ドローする。


「ようやく来たか。待ちかねたぞ!」
「逆順処理。サイキック3体をデッキに戻して2枚ドロー。そして!」
 墓地に眠るサイキック・モンスター3体を未来(デッキ)に向かって送り出す。3体がかりの加速がリードに追い風を呼び込んだ。スリップストリームを利用しデッキから2枚をドロー。
 リードがチャージする束の間、処理を停止していた《砂塵の大竜巻》が渦を巻き、砂利混じりの竜巻が一直線にフィールドを駆け抜ける。 「セットカードを破壊する!」 したはいいものの、してやったりの手応えがそこにない。
「ブラフ1つにうるさいことを」
「あんたがそれを言うのかよ。他の誰に言われても、あんたにうるさいって言われる筋合いはねえ! 《砂塵の大竜巻》第2の効果を発動!」
『リード選手、自ら起こした風に乗っかり手数を増やす!」
「手札からマジック・トラップを1枚セット!」
「ならば! ターーーン、エンドォオッ!」
「俺のターン、ドローォォオオオッ!」
 札に託した言霊の戦争が始まった。リード・ホッパーとゼクト・プラズマロック、剥き出しのデュエルオーラがぶつかり合う中、
「始まったか」
 南側のラウがぼそりと呟く。
 2人の鍔迫り合いをじっと眺めつつ、脚を止めたもう1人にも注意を向ける。
 誰よりも疾く駆け抜けたドレッドヘアの黒魔術師が豪気な笑顔でゼクトを見守っていた。夜の魔王から天狼王へと移り変わり、共に闘った相棒を信じるバイソンが。
 ラウはほんの一瞬考えると、バイソンに向けて言った。
「走るだけ走っておいてそれか。相棒がドンドン向こうに行くぞ」
「それが交わるってもんだ。夜は明ける。もうあいつは止まらねえ!」
「どいつもこいつも。いつも勝手に盛り上がる」 
 ラウは腹を立てていた。ダブル・ライトニングに《闇次元の解放》。
 エンドフェイズでの加速。フライングの思い出ばかりが詰まっている。
(遊戯王はフラゲ上等。踏み込む速度に決定的な差があった。おれは、いつだって追いかけることしかできない)
 ラウは疲労する。疲労 "している" など生ぬるいと言わんばかりに、徹夜続きの身体は過不足なく合理的に疲労する。睡眠時間の極限を目指したラウは決闘においても極限を……ある。最後の1枚が目の前に。ラウの集中力と気の迷いがピークに達した、その時、
「誰に断って夜明けるつもりだ」
「はっ!」
 バイソン・ストマードが殺気に気づく。
「それがなんだってんだ! 混ざりたいならはっきり言ってみろ!」
(こちとら年がら年中飽きずにダラダラエンドフェイズをやっている。この際だ。暑さに頭をやられてみるか) ラウが右手を目の前にかざす。集中力を高めて言った。 「ならはっきり言わせてもらう。スタンバイフェイズは……おれの独壇場だ! リバース、《As-アクセル・リミット》を発動!」

As-アクセル・リミット(永続罠)
スタンバイフェイズにのみ発動可能。相棒の墓地にある攻撃力1000以下のモンスターを特殊召喚する。また、相棒のスタンバイフェイズに発動する。相棒のデッキの上からカードを1枚墓地へ送る。


 スタンバイフェイズに突入したリードのもとに発破が届く。デッキの頬をパンと貼りつけ《カードガンナー》を墓地に落とすと、そのまま墓地に向かってGo to Hell! 墓守協賛、墓地復活! モンスター・ゾーンに穴が開くや泥が溢れて沼と化す。
 Level 4 Monster dispatch、Phantom of Chaos Special Summon!
『ラウンド選手の粋な暑中見舞い! 自由選択性のお中元《ファントム・オブ・カオス》を特殊召喚。リード選手のフィールドにっ!』
「ラウ!」
 振り向かずに呼んだリードに対し、ラウが決闘で発破をかける。
「自分を信じて好きにやれ……なんでもいいからブチかませ!」
(いつもそうだ)
 リードの目の前には小さな沼ができている。モンスター・ゾーン一枠分。埋もれてしまった残留思念を写し取る小さな沼が。
(気づけばあいつに助けられている。なのにおれは、あいつの奥にある必死さをちゃんとわかってやれていないし、気の利いた一言をかけてやることすらできない。だから)
「はぁっはっは!」
 一部始終を見届けたバイソンが天狼王と共に吠え猛る。
「いい相棒を持ったな! しかし! おまえさんの墓地に《カオス・ソーサラー》はいなぁーい! さあ何を……むっ!」
「メインフェイズ」
 軽口を塞ぐリードの殺気。バイソンは口の代わりに目を開き、相手の両手をじっと見る。するとそこには黒が一色蠢いていた。夜の黒とは似て非なる真っ暗闇な地下の黒。黒いオーラがリードの両手を揺れ動く。 「まず1つ! 《闇の誘惑》を発動。デッキから2枚引き、2枚目の《ファントム・オブ・カオス》を手札から除外する。もう2つ!」
 宴が始まった。 「右腕だけじゃない」 「両腕を使っている」 蘇我劉抗とアリアが気づく一方、リードは広げた両手を墓地へと突き出す。真っ黒なオーラが目の前の墓地に急転直下。

 通常、速攻、魔法発動。

 "Deck" "Grave" "Boost" ―― Foolish Burial!

 "Dimension" "Grave" "Return" ―― Burial from a Different Dimension!

 《おろかな埋葬》と《異次元からの埋葬》が共演。除外ゾーンからは《サイコ・デビル》、《ファントム・オブ・カオス》、《クレボンス》が墓地に吸い込まれ、
「デッキからは "コイツ" を墓地にブン投げる」
『デッキから、異次元から、墓地にカードが大集結! 最早ここは墓地ではない。決闘を生み出す秘密基地!』
「ファントム・エモーション!」
 地下から地上へ《ファントム・オブ・カオス》の効果発動。コールタールのようなドロドロの液体が秘密基地へと潜り込み、記憶を呑み込んだ沼の霊気が《デビル・フランケン》の像へと凝固していく。

ファントム・オブ・カオス(0/0)
1ターンに1度、自分の墓地にある効果モンスター1体を除外して発動。エンドフェイズまで同名カード扱いとなり、同じ攻撃力とモンスター効果を得る(相手プレイヤーへの戦闘ダメージは0になる)
[効果] [4] [闇] [悪魔]


『ここで登場! 打倒ミツルを公言するリード選手の十八番。純正の悪魔族に喧嘩を売った、機械仕掛けのデビルズ・ロード!』
「遂に来たか」 「どっからでも来い!」
 ゼクト・バイソンも覚悟完了。ラウが、テイルが、パルムが、そしてミィが固唾を飲んで見守る中、リード・ホッパーが西部に踏み込む。
「カオスフランケンの効果発動!」
 《ファントム・オブ・カオス》が吸い上げた過去の中には、融合魔術に憧れる科学者の野望が眠っていた。その本質は強引極まる命の水上置換。自分の身体をフラスコ代わりに、体内の血を水の代わりに、決闘者から5000ライフを引っ張り魔力を抽出。お空にぶち込む準備完了。

デビル・フランケン(700/500)
5000LPを払って発動⇒エクストラデッキから融合モンスター1体を攻撃表示で特殊召喚する
[効果] [2] [闇] [機械]


『リード選手が《デビル・フランケン》と同調。注ぎ込んだライフエネルギーをサモンエネルギーに決闘置換。擬似融合へと駆け登る!』
 リードが投盤の体勢に入る。左脚で踏み込み、右腕を振り抜き、上斜め45度の角度から決闘盤(デュエルディスク)を捻じ飛ばす。リードの立つ東側からゼクトの立つ西側へ。会場が沸き上がる中を一直線。
「エアーズロック・インパクト!」
 人造の悪魔を経由しライフとエネルギーを交換。単性融合への扉を開く。5000とは! 火炎地獄をくぐり抜けて1000、メテオが降ってきて2000、滅びのバーストがストリムって3000、路上で巨神兵にブン殴られて4000……さらにその上!
 指先から放たれた決闘盤が回転しながら直進、直進、直進。モンスター・ゾーンのド真ん中に到達した瞬間、まるでロケットのように空へ向かって大きく飛翔 ――
「それを待っていたのだ」
「!?」
 空を見上げていたリードが地上に目を戻すと、対岸のフィールドでゼクトが対空ミサイルの発射体勢に入っていた。グッと膝を曲げ、斜め上の空を仰ぎ見る。
 問題ない。OZONEより下なら打ち抜ける!
「気の迷いから始まった決闘。今の私に迷いはない!」
 ゼクトの美指から 対空ミサイル(ホワイトスタッフ) が発射される。真っ暗な空に向かってグイグイと加速。その先端には小さな何かが乗っていた。
「あれは」
 ミツルがいち早く察知する。レベル1・光属性・魔法使い族のチューナーがもう1体いることに。
「決闘紳士が持ち込んだ手札誘発。実装していたか!」
『ゼクト選手の対空ミサイル(エフェクト・ヴェーラー)が! 決闘成層圏の決闘盤を撃墜したぁっ! 銀河への夢、潰える!』

エフェクト・ヴェーラー(0/0)
相手メインフェイズにこのカードを手札から墓地へ送り、相手フィールドの効果モンスター1体を対象として発動
⇒その効果をターン終了時まで無効にする。
[効果] [1] [光] [魔法使い]


 瞬間、オーロラヴィジョンに注目が集まる。クイラスタジアムに備え付けられた巨大な画面。映し出されたライフゲージが一気に動く。

ゼクト&バイソン:12600LP
リード&ラウ:6100⇒1100LP

 一撃必札。リードが呆然とする一方、ミツル・アマギリがかすかにうなずく。
 NeoGalaxyとEarthBound、ユニフォームとブラックジャンパー。強豪と英雄……
「うちも来季は練習しますか」
 腹筋使いのレザール・オースが小声でささやくかたわら、ミツルはその意味に気がついていた。
「正式なカードリリースはつい先日。西部屈指の光属性使いとはいえ、搬入されて間もなく発動のノウハウもない。……いち早く導入し、この最終局面まで温存するとは」
「ミツルさん、やりくり上手で引いたカードじゃないんですか」
「《野性解放》や《巨大化》を重ね、《死者への供物》でねじ込む必殺の一撃を防ぐだけではない。あそこで使えば5000バーン付きのカウンタースペルにもなる。そこまで計算済みのダメージレース」
「いや、ですから、やりくり上手で今引きした可能性も」
「あの人を誰だと思っている。この西部、最も美しい決闘者だ」
 ダーツを、ジャベリンを、破城槌を、バリスタを、そしてミサイルを。魔法の杖を千変万化。現代文明さえも取り込んでブレイク。未来へと拡がり続ける魔導師が、ゼクト・プラズマロックがここにいる。
「その技は既にミツル・アマギリが破っている。自分に都合良く条件を絞り、追い詰められれば機能しない下克上など……我らが【生存優位戦略(ライフ・アドバンスド・デュエル) 】の肥やしに過ぎん」
 5000ライフが溶けていく、決闘叛盤が落ちていく。《エンシェント・ホーリー・ワイバーン》の攻撃力が10000を優に上回り、昼間と間違えるほどの光の量を前にして ―― リードの震えが止まらない。

「貴様に失望している時間はない」
 ゼクトは爪先立ちのまま務めて毅然としていた。巨大化した《エンシェント・ホーリー・ワイバーン》が放つ眩いまでの光の下、NeoGalaxyそのものとなってリードを圧倒する。
「自分の脆さを知って震えるか」
「違う」
「何も違わない。貴様も決闘者なら、この教訓を今後に活かせ!」
「違う。おれは知っていた。デオシュタインが、デッドエンド店長が、そんでもって、ここにいるおまえらみんなが教えてくれたんだ」
「我々が ―― 」
「もうおまえらには期待しない。何がミツル・アマギリだ。あんなもん隙だらけだろさっさと倒せよ。寝ても覚めてもおんなじ所をグルグル回って何が楽しい。おれはおまえらとは違う……そう思ってた。確かに違った。おれだけだ。おれだけが自分の限界と闘っていなかった」
 身体がガタガタと震え、心臓がバクバクと高鳴る。止まらない。何もかもが止まらない。
「目を反らしたんだ。最高の決闘者になることをハナから諦めサイキック族を捨てて……《デビル・フランケン》に自分の責任を全部押し付けた。弱小も強豪も初期ライフはおんなじっていう都合の良さにぶらさがって、5000払って誰が相手でもワンチャンスな自分に酔っていた。おれは西部を嫌ってるくせして、西部に転がってるチャンスに甘えていた」
 決壊したダムのように言葉が噴き出し、リードの意識が定まっていく。
「さっさとあっち行きたくて、そんでショートカットしようとしたら……死ぬ気でやってるでっかいもんにぶつかって、そしたらさ。あんたらのことも急に怖くなった」
「承知の上ならなおのこと。この期に及んで」
「怖いからだよ、こっからが!」
「……っ!」 「……っ!」
 ゼクト・バイソンが気迫に圧されて一歩引く。リードはまだ引かない。生まれついての太い眉と大きな瞳が、ありったけの気迫で押していた。
(なぜだ) バイソンは知っている。ツイスト・クリエイトを叩き込んだパルムの執念を。 (なぜだ) バイソンは知っている。マジカル破城槌をぶち込んだゼクトの執念を。 (なぜおまえが) バイソンは知らない。 (デビフラを止められライフを失い、なぜおまえにその顔が) リードの執念をまだ知らない。
「あの人は!」
 ミィがベンチから立ち上がる。
「震えてるんじゃない。リードさんは激震してる!」
 リード・ホッパーが激震した。
 緑色の特攻服から色素が膨張。足元からエメラルドグリーンのオーラが走り出す。まるで小さな津波のように膨れ上がり……前後のフィールド上を駆け抜ける。
「むぅっ」
 ゼクトのフィールドまでも一気に飲み込み、後ろに聳え立つ透明な壁にグリーン・ウェーブが激しく衝突。緑色の津波がOZONEの更新を開始した。ビジュアルフェイズが次の段階に入った瞬間、2人の背後にあったはずの透明な壁が巨大なカプセルへと変身。すぐさまゼクトがそれに気づく。
「このエフェクトは……サイキック族の実験施設か」
 1つ目の実験は召喚!
 爆発のリスクと引き替えに召喚権を拡張。
 もう1つの実験は効果!
 爆発物を背負い込みノーライフで効果を発動。
 ツーサモン&ノーライフ! その実験施設の名前は!
「《脳開発研究所》を発動。おれは今日フィールドに上がる」

脳開発研究所(フィールド魔法)
@サイコ・カウンターを1つ置くことと引き替えに、通常召喚に加えて1度だけサイキック族モンスターを通常召喚できる
Aサイコ・カウンターを1つ置くことと引き替えに、サイキック族モンスターの効果をライフコストゼロで発動できる
Bこのカードがフィールド上から離れた時、乗っていたサイコカウンターの数×1000ポイントのダメージを受ける。


 リードの両手からは緑色のオーラがバチバチと唸りを上げていた。巨大なカプセルを背にしてさらなる発光。緑色の光が、反撃の狼煙と言わんばかりに四方に弾け、西側のゼクトも息を呑む。
(残るは《サイコパス》で回収した《マックス・テレポーター》。所詮は醜い悪足掻き……なぜだ? なぜ私は昂ぶっている) 「今更……サイキック族にすがるとは笑止千万。そんなものが通用すると!」
「おれは凡人のまま世界一になろうとしていた」
「世界……?」
「世界一になる人間は腕がいいのか、頭がいいのか、金があるのか、運がいいのか、いずれにせよ1つは言える。世界一になる奴はまともじゃないしまともであって欲しくない。おれはあんたらのあんたらっぷりを受け入れる。その代わり……おれがまともであることを認めない!」
「!?」
 変異に次ぐ異変。もう緑ではない。ゼクトの視界に映るのは地下から汲み上げたもう1つ。真っ黒なオーラがリードの両手から溢れ出す。
「相反する2種類のオーラ。まさか、まさか貴様も」
超銀河の混沌龍(ネオギャラクシーアイズ・カオス・ドラゴン) がおっかなくておっかなくて。なのにあいつら勝ちやがったんだよ。そんであいつらが……あいつらがこんなおれを信じてくれたんだ。……リバース・カード・オープン!」
 自ら起こした風に乗っかり黒いハチマキがゆらゆら揺れた。《砂塵の大竜巻》でセットしたカードを今こそ発動。リードのオーラが竜巻のように跳ね上がる。呼応するかのようにオーロラビジョンのライフゲージも変動。1100、2100、3100……
『勝利の女神が借用書をばら撒いたぁっ! 治験に加えて借用書!』
「《女神の加護》を発動。おれのライフを膨らます!」

ゼクト&バイソン:12600LP
リード&ラウ:1100⇒4100LP

女神の加護(永続罠)
3000ポイントのライフを回復する。自分フィールド上に表側表示で存在する
このカードがフィールド上から離れた時、3000ポイントのダメージを受ける。


『《脳開発研究所(マジック) 》と《女神の加護(トラップ) 》がリード選手に直結! デュエルオーラがバーストしているう!』
(人間には限界があるのかもしれない。だがおれは本当に限界まで行ったのか。本当にバカを貫いたのか。おれのガチは3回戦を勝ち抜く為のガチ……そうじゃない。本気でトップを目指すってんなら)
『こ、これは一体!? リード選手の決闘盤がどうにかなっているううううううっ!』
 ガシャン、ガシャン、ガシャン、ギュィィン、ガガガガガ。謎の起動音を伴いリードの決闘盤が変形する。右のモンスター・ゾーン・ウィングと左のスペル・ゾーン・ウイングが真横に展開。さらに本体も上下に拡張。十字架どころの騒ぎではない。膨張する何かがここにある!
「逆十字型デュエルディスク 決闘叛盤(クロス・リバース)!」
「なんだと!」 「まさか!」
 ゼクト、バイソン、そして、
「あれは!」 「フェリックスの!」
 フェリックス・蘇我劉抗も瞠目する。
「私の 決闘豪盤(パワー・クロス) に似ている。あの男もまた!」
 せめぎ合う。リードの両手で緑と黒がせめぎ合う。2色のオーラが入れ替わり立ち替わり点滅し、せめぎ合いがピークに達したその時、



Duel Episode 38

Cross Spiral Chain Duel ―― Limit Over!



「ファントム・オブ・カオスフランケンをリリース!」
 点滅の末、真っ黒なオーラが一際大きく揺れ動く。
 リードはその場で右回転。バックハンドでディスクを投げる。
「《死霊操りしパペットマスター》をアドバンス召喚!」
「悪魔族だと!?」
 地下に潜伏していた道化師が地べたを砕いて現われる。単体では三回転宙返りすらろくに決められない道化だが、決闘者のライフポイントと直結することで欲望を開放。1000ライフで1体、2000ライフで2体。何が何でも2体を復活。強欲な姿勢にミツルが気づく。
「あのクセはやはり! バルートン、なぜあの男に決闘を!」
「ライフを振り絞って限界を超え、身体に覚えさせていくのがあいつの決闘。 『おれにだって10年はある』 んだとさ。さあいけ大馬鹿者。地下の10年もくれてやる」
「2000ライフを支払い《死霊操りしパペットマスター》の効果発動。こちとら崖から落っこちたんだ。そのまま地下まで習ってきたぜ! 釣り上げろ! ライフ・イズ・パスト!」

ゼクト&バイソン:12600LP
リード&ラウ:4100⇒2100LP

死霊操りしパペットマスター(0/0)
アドバンス召喚成功時2000LPを払い、自分の墓地の悪魔族モンスター2体を特殊召喚する(この効果で特殊召喚したモンスターはこのターン攻撃できない)
[効果] [6] [闇] [悪魔]


 ライフを注ぎ込んで効果発動。冥界工業の傑作デビル・デビル・ノビールワイヤーを地獄に降ろし、墓地(かこ)から悪魔達を釣り上げる。
「《ファントム・オブ・カオス》2体を特殊召喚!」
 蘇ったのは過去を写し取る生きた沼。過去から過去へとさかのぼる。

ファントム・オブ・カオス(0/0)
1ターンに1度、自分の墓地にある効果モンスター1体を除外して発動。エンドフェイズまで同名カード扱いとなり、同じ攻撃力とモンスター効果を得る(相手プレイヤーへの戦闘ダメージは0になる)
[効果] [4] [闇] [悪魔]


(なんだあれは) ゼクトの目の前で決闘が徐々に加速する。 (悪魔族3体) (攻守ゼロ) (残りは精々2100) (《女神の加護》を割られれば即死亡……まだやるつもりか) ゼクトの視界がまたしても塗り変わる。緑色のオーラがバチバチと弾け回り、そして
「《死霊操りしパペットマスター》をリリース!」
「まさか! 悪魔にサイキックを合わせるというのか!」
 投盤を終えて戻ってきた 決闘叛盤(クロス・リバース) の一端を掴むとそのまま左回転。他方、同時に、バチバチとほとばしる緑色のオーラで《脳開発研究所》に身体を直結。ライフを預けてさらにブースト。
 地上と地下が、過去と未来が混ざり合う。
「うちの古参を紹介するぜ。《脳開発研究所》にサイコカウンターを1つ載せることで召喚権を増やし、《マックス・テレポーター》をアドバンス召喚! さあおまえら、声を張り上げろ!」
「イエイ! イエイ! イエイ! イエイ! イエーーー!!」
 白衣紫髪の念動力者が奇声を発して躍り出る。死闘の末にカース・オブ・ドラゴンを仕留めた実績を持つバリバリの武闘派に分類されるが、その真価は戦闘に非ず。リードはそれを知っている。
(デッドエンド店長は全カードに魂を込めている。あの人は横一列にショーウィンドウを組み上げた。それがあの人の店意なら、おれは決闘(こいつら)とも向き合う)
「2つ目のサイコカウンターを載せ効果発動。そんじゃあまずは……」
 サイキック族には声がある。サイレント・ヴォイスにマックス・ヴォイス。《静寂のサイコウィッチ》が序盤の劣勢を耐え忍び、そして今、《マックス・テレポーター》が仲間達を喚び覚ます。
「声を張り上げろ! ライフ・イズ・フューチャー!」
 ライフを担保にライブハウスの利用契約を締結。《マックス・テレポーター》がその真価を発揮した。伊達にニュー・ウェーブ系サイキックバンドのボーカルを務めてはいない。効果(エフェクター)の効いたサイキック・ヴォイスは時空(デッキ)を跨ぐ。

マックス・テレポーター(2100/1200)
2000LPを払う⇒自分のデッキからレベル3のサイキック族モンスター2体を特殊召喚できる
(フィールド上に表側表示で存在する限り1度しか使用できない)
[効果] [6] [光] [サイキック]


 《マックス・テレポーター》が吠えた。決闘者の(ライフ)とバリバリに共鳴する時空転送能力(マックスシャウト)こそ真骨頂。悪魔も、兵器も、サイキッカーも、全部纏めてセッションオーライ、Oh Yeah! Oh Yeah! Oh Yeah Yeah!! シャウトを聞きつけデッキの中から時空を超えた。浮遊砲台《サイコ・コマンダー》がダブルで参上。長い砲身をベースに変えてスタンバイ。

サイコ・コマンダー(1400/800)
戦闘時、ライフを500まで支払うことで、相手モンスターの攻撃力を払った分だけダウンさせる
[調律] [3] [地] [サイキック]


 他方、両端の《ファントム・オブ・カオス》の容姿も《カードガンナー》のそれへと変わっていく。ドドドドドッ、ドドドドドッ、ドラマーと化したファントムガンナーが太鼓(デッキ)を叩く。叩いて叩いて叩くほどデッキからカードが溢れ出し、リードの想いも溢れ出す。
「おれは西の殻を破りたい破りたい言いながら西の殻に閉じこもってた。おれも、デッキも、そんなスケールじゃ物足りねえ!」
「貴様! 《デビル・フランケン》さえも氷山の一角と位置づけ、さらなる領域に達しようというのか!」
「おまえらが【生存優位戦略(ライフ・アドバンスド・デュエル)】で限界まで追い詰めるなら、おれは【生命拡大戦略(ライフ・エキスパンション・デュエル)】で限界そのものを超えてやる。おれの墓地は過去がああだこうだでそんでもって……おれのデッキは未来だ!」

 ツインベース! サイコ・コマンダーがカードを調律!

 ツインドラム! ファントム・ガンナーがデッキを乱打!

 そしてデュエルを叫ぶのは、ボーカルのマックス・テレポーター!



『5体のモンスターがVの字を描くように並んでいる!』
「それが貴様の……」
「マスター・マックス・フォーメーション!」
『《マックス・テレポーター》を先頭に勝利の陣を展開したぁっ!』
「拡げてる!」
 真っ先に叫んだのはミィだった。彼女は激震の音を聞いている。
「あの人はウイングを拡げてるんだ。リードさん、がんばって!」
 リードは振り返らない。両腕を伸ばして親指を立てる。そのまま五指をがばっと開くと、手のひらでせめぎ合うのは2つのオーラ。深黒のオーラが過去の死を、新緑のオーラが未来の生を。
「来い!  決闘叛盤(クロス・リバース) !」
 戻ってくる。サイキック・モンスターの召喚を終えた決闘叛盤が高速回転しながら戻ってくる。異常なまでのパワーと共に。
「あの決闘盤の回転数は!」 「あの勢い、自滅する気か!」
 人札激突! ゼクト・バイソンの驚愕を他所にリードが十字をガシッと掴む。 「ぐぅっ!」 押し込まれそうになりながらも大地に右脚を打ち込み、中軸に変えて一回転。右膝を、右肘を、ギリギリと軋ませながらバックハンドで投げ飛ばす。パッショナブル・チューニング・スタンバイ。
「パルム! バルートン! おまえらの無茶ぶりを聞いてやる!」
 過去と未来、悪魔族とサイキック族の十字交差が世界を揺らす。左翼と右翼に展開する2体のサイコ・コマンダーとファントム・ガンナーがそれぞれ上下にドッキング。空陸自在のコマンド・ガンナー×2が完成すると、地平を滑空する 決闘叛盤(クロス・リバース) に導かれOZONEを爆走。辿り着いたモンスター・ゾーンの先端で、決闘盤もろとも飛翔する。
 見守っていたパルムと、そしてバルートンが呟いた。
「リードは創ったんだ。自分の決闘を」
「こいつはな。否定を超える闘いだ」
「シンクロ召喚!」
 それは異形の龍だった。蝶を思わせる羽根。背面に向けて伸びる緑髪。
 フィールド上で生と死が交じり合い、古代の龍を喚び起こす。



Ancient Fairy Dragon!


Ancient Pixie Dragon!


Double Synchro Summon!



「表の五竜《エンシェント・フェアリー・ドラゴン》! そんでこいつが! 裏の五竜《妖精竜 エンシェント》!」 表は太陽、裏は淡月。表裏一対の古代竜が最前列に突出。召喚時の風圧がプレッシャーへと変わっていた。パルムから無条件で譲り受けた光属性 ―― 《エンシェント・フェアリー・ドラゴン》がゼクトを、バルートンから期限付きで貸し渡された闇属性 ―― 《妖精竜 エンシェント》がバイソンを、それぞれ圧し込むエンシェントなプレッシャー。
 フィールド上で翼がうねり、異形の龍が逆V字の陣を組み上げる。それ即ち龍翼の陣!



「このデュエルパワーは……」
 ゼクトが気づき始める。喉元から四肢へ。全身を使った決闘に。
「ライブかと思えば今度はウイング。なんとうるさい決闘をするか」
「ダーツからミサイルまで使ったあんたと同じさ。ありったけでまぁだまだいくぜっ! 《エンシェント・フェアリー・ドラゴン》の効果発動。脳味噌駆け抜けろ(ブレイン・オーバー)!」

エンシェント・フェアリー・ドラゴン(2100/3000)
1ターンに1度、フィールド上のフィールド魔法カードを全て破壊し、自分は1000ライフポイント回復する。その後、デッキからフィールド魔法カード1枚を手札に加える事ができる。
[同調] [7] [光] [ドラゴン]


 リードの背後にある緑色のカプセルが弾けた。《脳開発研究所》が粉々に砕け散って単なる透明な壁へと戻り、 「ぐっ……」 保管されていたダメージ・エネルギーがリードに逆流する。

ゼクト&バイソン:12600LP
リード&ラウ:2100⇒100LP

『極限の世界がこんにちは! 《エンシェント・ホーリー・ワイバーン》の攻撃力が14600に!』
「上等! 《エンシェント・フェアリー・ドラゴン》の効果によって1000ポイントのライフを回復!」
「表の太陽……私の《サニー・ピクシー》と同じ効果か!」
「もう1つ! デッキからは同名フィールドを手札に加える」
『《脳開発研究所》の効果で2000ダメージを受ける一方、《エンシェント・フェアリー・ドラゴン》の効果でライフとカードを獲得! マイナスとプラスのダイナミズムが世界を揺るがすというのかぁっ!』
「吐き出すだけじゃじり貧ってんなら吐き出すと生み出すを両方やってやる。2枚目の《脳開発研究所》を発動し、《妖精竜 エンシェント》の効果も発動。脳味噌絞り抜け(ブレイン・ブースト)!」

妖精竜 エンシェント(2100/3000)
@1ターンに1度、自分のターンにフィールド魔法カードが発動した場合、デッキから1枚ドロー
[同調] [7] [闇] [ドラゴン]


 古代竜は歴史の転換点に現われる。太陽を戴くエンシェント・フェアリー・ドラゴンが破壊からの新生をもたらす一方、月から喚ばれた妖精竜エンシェントは新生からの破壊をもたらす ――
 大空から何かが降ってくる。
『あぁーっと! 跳ね上げられた 決闘叛盤(クロス・リバース) が大空から降ってくるぅっ!』
 縦横無尽に飛び回る 決闘叛盤(クロス・リバース)
 その一挙一動をつぶさに見守り、心臓をバクバクさせながらパルムが呟く。
「ちゃんとした技術者が作った気の利いた決闘盤なら、着盤時の衝撃波を向こう側に放出する。使い手の負担を緩和する仕様になっているけど 決闘叛盤(クロス・リバース) はその反対。むしろ蓄積する。4枚のウイングにサモン・エネルギーを蓄積しながらさらに加速。こっち側からもありったけをぶつけることで!」
「おいちょっと待て」 すぐさまテイルが聞き返す。
「大将は基本不器用だ。そんなことしたら "重い" なんてもんじゃない。いくら特殊重力(オゾン)が負担を軽くするっつっても限度があるだろ」
「リードは骨董品の《デビル・フランケン》を投げ続けた。あれが禁止にならなかったのは、毎度毎度死ぬ気で力むことを要求するから。そうさ。それしかなかったリードは鍛えたんだ。決闘を変えても経験は消えない。あいつなら…… 決闘叛盤(クロス・リバース) を引き出せる!」
 リードが上空を見上げた。大空から大地へと降り注ぎ、
 豆粒のようだった 決闘叛盤(クロス・リバース) が徐々に大きくなっていく。
「ない札は引けない。ある札なら……引いてやる!」
 落下する決闘盤をリードが迎え撃つ。 決闘叛盤(クロス・リバース) を両腕でずっしり受け止め、OZONEを味方にそのままレシーブ! 「こなくそおおおおおおおおおおおおおおお!」
 デッキからカードを引き抜くのではなく、掴んだカードからデッキを離す異端のドロー。決闘盤ごと自分の真上にかち上げ、そして、
「墓地の《サイコ・デビル》と《クレボンス》を除外!」
「あれは私の!」 「まさかあいつも!」
 リードの両手が荒々しく輝く。 『同調』 と 『融合』。 2つを合体。虚空に向かって自分の両拳を打ち付ける。何度も! 何度も! 打ち付ける。自棄でもなく、依存でもなく、挑戦者の魂が鼓動する。
「強く踏み込むってんなら、あんたの専売特許じゃないんだぜ!」
 黒いオーラは過去を受け継ぎ、緑のオーラは未来を引き出す。両手に合わせて一気に膨張。ほとばしるオーラを生み出し、弾け、そして! 再度上空から、大地に向けて落下する 決闘叛盤(クロス・リバース) をロックオン。胸元に落ちてきた瞬間、身体全体を預ける勢いで掌底を打ち込み ―― モンスター・ゾーンに向かって発射投盤。全力全開の全身動作で超高等呪文を解き放つ。
タンスの引き出し(エクストラデッキ)からこいつを喚ぶぜ。来い!」
 極限の域に達した悪魔族出身のサイキッカー。黄色の爪が、緑色の翼が、そしてもれなく全身が、溢れんばかりのサイコ・エネルギーによって極限まで膨張。その名は ――



究 極 念 動 生 物(アルティメット・サイキッカー)

同調(シンクロ)   融合(フュージョン)   召喚(サモン)




「リードさんが本当の融合を!」
「遂にやったんだ、リードが!」

ミラクルシンクロフュージョン(超高等呪文)
自分のフィールド上・墓地から、指定された融合素材を除外し、
シンクロモンスターを融合素材とするその融合モンスター1体を融合召喚する


アルティメットサイキッカー(2900/1700)
サイキック族+サイキック族シンクロ
@カードの効果では破壊されない。
A守備表示モンスターを攻撃した時、貫通ダメージを与える
B戦闘によってモンスターを破壊し墓地へ送った時、破壊したモンスターの攻撃力分だけ自分のライフポイントを回復する。
[融合] [10] [光] [サイキック]


 サイキックの本領は限りない膨張。身体に纏ったサイキック・エナジーは武器にもそして防具にも。守りに徹しては《ライトニング・ボルテックス》さえも耐え抜き、攻めに転じては重ねた鉄板も軽々突き抜ける。究極をその名に冠す超最上級……リードはそれをも超えていく。

 次の瞬間 ――

 蘇我劉抗の瞳に何かが映る。 「あれは……」 フィールドに残された最後の1枚が解き放たれ、《アルティメットサイキッカー》の手前で空間が割れた。 「あれは……」 父・蘇我劉邦が得意としていた《闇次元の解放》と瓜二つ。戻ってくる。戻ってきたぞ。次元の果てから緑光の悪魔が戻ってきたぞ。
「《ブレインハザード》を発動! CrossReverse FullBurst!」

ブレインハザード(永続罠)
ゲームから除外されている自分のサイキック族モンスター1体を選択し、自分フィールド上に特殊召喚する。このカードがフィールド上から離れた時、そのモンスターを破壊する。そのモンスターが破壊された時このカードを破壊する。


 魔界の蝙蝠を彷彿とさせる牙と翼。四肢で弾けるのは溢れんばかりのサイコ・パワー。悪魔族出身の念動生物(サイキッカー)がもう1人、そのポテンシャルは究極さえも凌駕する。
 ゼクトがリードに聞いた。
「貴様に聞きたい。十字を描くそのデッキ。そのデッキの名はなんと呼ぶ」
「【サイコ・デビル】……いや……【クレイジー・サイコ・デビル】だ!」



サイコ・デビル、最終召喚(スペシャル・サモン)



『戻ってきた、戻ってきたぞリード・ホッパー。たっぷりたっぷり脂をのせて! 地獄の四角海域から今ここに! 戻ってきたああああああああああああ!』
「親父……おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉやじぃぃぃぃっ!」 
 蘇我劉抗が叫び、ある種の決闘者達も一斉に気づく。リードが立つ東側からゼクトが立つ西側へ。《サイコ・デビル》が先頭に立った瞬間何かが動く。即ち、

 後衛に立つのは白衣紫髪の念動力者《マックス・テレポーター》

 左右にあたる両翼では表裏一対の妖精龍がウイングを拡げ、

 《アルティメットサイキッカー》がド真ん中で荒れ狂う。

 そして今、《サイコ・デビル》が前衛に立つ。



 白魔導師激震! 目の前にはありったけの決闘風景が広がっていた。
「グランドクロス……いや、これは……まさか……まさかこれは……」
 東西南北中央。 "歪んだ十字架" と評された世界地図がそこにある。
 リード・ホッパーは地図の読み方を変えていた。
「俺に言わせりゃここが世界の先頭だ。こっから何度でもぶち込む」
 世界は歪な十字架でできていた。今にも破裂しそうなほど歪な十字架でできていた。なら1人1人が自分だけの十字架を持っていてもいい。膨張に次ぐ膨張……弾けてうねる十字架を。

「四面楚歌を裏返したというのか!」
 ミツル・アマギリが目を見張る。眼下では十字架がうねっていた。
( 『10年を受け継ぐ』 と 『10年を踏み越える』。 あいつはその両方を……)
「並列と直列を足し合わせることで加速したNeoGalaxyに対し、並列に直列を掛け合わせ爆発させる。それがあの男の決闘……それがあの男の……喧嘩の売り方か」

「格好悪いからぶっ倒そうと思ってた」
 リードが標的を見上げた。攻撃力13600。膨れ上がるだけ膨れ上がった《エンシェント・ホーリー・ワイバーン》に狙いを定める。 「ちょい変わった。あんたらはおっかなくて格好いい。だからちゃんと向き合って、ありったけをぶつけて、そんでもってぶっ倒す」
 召喚の勢いそのままリードが夜空に向かって指を差す。 「あれは」 ゼクトが気付く。雲間を抜けた淡月が異様なほどの輝きを放っていた。実体とOZONEが混ざり合い、満月となって輝き唸る。
「《妖精竜 エンシェント》の効果発動。森葬の霊場(スピリット・ベリアル)!」
『妖精竜のお家元! 満月からビームが降ってきたぁっ!』

妖精竜 エンシェント(2100/3000)
A1ターンに1度、フィールド魔法カードが表側表示で存在する場合、
フィールド上に表側攻撃表示で存在するモンスター1体を選択して破壊できる。
[同調] [7] [闇] [ドラゴン]


 エンシェントにはエンシェント。地上に炸裂した巨大なビームが《エンシェント・ホーリー・ワイバーン》を大地に埋葬。大きな大きな砂埃が数秒経ってようやく晴れると……《サイコ・デビル》がバチバチと弾ける。 「バイソンにチェーンラインを結んで《サイコ・デビル》の効果発動。宣言はモンスター……パワー・オブ・フューチャー!」

サイコ・デビル(2400/1800)
1ターンに1度、相手の手札をランダムに選択し、そのカードの種類を当てる
⇒当たった場合、次の相手のエンドフェイズまで1000ポイント攻撃力がアップする
[同調] [6] [風] [サイキック]


 決闘が続けば召喚される筈のカード ―― 《カオス・ソーサラー》を手札から確認。緑光の悪魔が未来を背負い、全身全霊を振り絞る。
「はっ、マジかよ」
 黒魔術師は計算していない。本能的に自分の未来を覚悟した。
「いいふざけっぷりだ。俺の未来も場代代わりに持っていけ」
「バトルフェイズ」
 十字陣形と共にリードが挑み、白魔導師も覚悟を決めた。
(我らは……決闘をもって愛すべき宇宙を模倣した。しかし貴様は、嗚呼貴様は……決闘を交えることで世界を破裂させ、広大なる決闘の宇宙に飛び出すか)
「フェリックス。おまえの直感はやはり正しかった」

 後衛! 《マックス・テレポーター》が念動力をチャージ ―― 2100

 両翼! 表裏一対の古代竜が熱気と冷気を生成 ―― 6300

 中央! 《アルティメットサイキッカー》が念動波を膨張 ―― 9200

 前衛! 《サイコ・デビル》が狂気の雄叫びを上げる ―― Limit Over!

「バトルフェイズ」 一撃必殺(スナイプショット)から全弾発射(フルバースト)へ。ラストフェイズが始まった。
 両手からサイコ・レーザーを打ち出すマキシマム・シュート。太陽の名の下、熱光線を放射するエンシェント・サンシャイン。月の名の下、冷凍波を発射するエンシェント・ムーンライズ。剥き出しのサイコ・エナジーを直にぶつけるアルティメット・ウォール・バスター。そしてそれらをありったけの拳圧で引っ張るハイパー・サイコ・ナックル。最後の瞬間ゼクトが悟る。
「そうか。FULLBURSTとは……」
 五重のデュエルエナジーが激流となって加速。レーザーが、熱光線が、冷凍波が、衝撃波が、そして拳圧が怒涛の勢いで目の前に雪崩れ込む。OZONEの宇宙から札を選り抜き世界に凝縮、膨張、そして破裂。ゼクトを超え、OZONEを超え、西の果てを超え、そして ――
「ビッグバンか!」



Crazy Psycho Devil


Full Performance Attack


東西南北中央激震(クレイジー・サイコ・バースト) !!




【こんな決闘小説は紙面の無駄だ!】
読了有り難うございました。本当にここまで、ありがとうございました
↓匿名でもOK/「読んだ」「面白かった」等、一言からでも、こちらには狂喜乱舞する準備が出来ております。


□前話 □表紙 □次話

































































































































































































































































































































































































































































































































































































 
















 








 

 

 

 

 

 

 

 

 










 



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


inserted by FC2 system