―― 約半年前 ――

 夜の決闘。それは非公式に行われる一期一会の気の迷い。ミィが跳腕のウエストツイストと死闘を繰り広げ、パルムが孤独をお供に闘い続けた郊外のデュエルフィールド。
 廃ビルによって育てられた闘技場で3匹の餓狼がしのぎを削る。
「もう一度、もう一度やるぞバイソン!」
 ゼクトとバイソン。白魔導師と黒魔術師がそこにいた。ゼクトは真っ白なホワイトローブを身に着け、バイソンは真っ黒なブラックローブをその身に纏う。深夜決闘界を駆け抜けた2人組の装束が激しく揺れていた。メインフェイズ1。街灯の薄明かりに照らされながら、光の白魔導師が美指を差す。
「《フォトン・パイレーツ》を通常召喚!」

フォトン・パイレーツ(1000/1000)
自分の墓地の「フォトン」と名のついたモンスター1体をゲームから除外して発動
⇒このカードの攻撃力はエンドフェイズ時まで1000ポイントアップする。
「フォトン・パイレーツ」の効果は1ターンに2度まで使用できる
[効果] [3] [光] [機械]


「白一色にシミは不要。我が決闘に汚名は許さん」
 海賊改め光賊参上。ゼクトが優雅に指示を出す。白装束のフードを被ったまま静かに指を持ち上げ、ゆったりとした動きで光賊に……飛んだ。目の前の敵がいきなり飛んだ。一目でわかるが事実は奇なり。視界を騒がせるのは奇怪な恰好の決闘者。上から羽織った赤い特攻服は "興味津々" を背中に刻み、顔を隠す黒い仮面は《仮面魔獣デス・ガーディウス》を模していた。
 決闘仮面が飛翔する。
「戯れ言を!」
 ゼクトが空を見上げた。光属性の申し子たるもの眩しい光は十二分に知っている。動じはしない。そこにあるのが太陽ならば。しかしてあるのは満月1つ。
「う、美しい……」
 宙を舞い、身体を反るのは長い髪の女性が1人。1VS2の変則ルール ―― 若干の補正はあれど基本不利 ―― を呑んだ仮面の引き手。
 白魔導師が動揺したのはおおよそ2秒。その間に光が消える。"Magic" "Quick" "Seal" 月を背にした決闘仮面が空中で呪文書を歌い上げ、光賊を札の中に閉じこめる。
 名画より美しき速攻魔法。その名は《月の書》ただ1つ。

月の書(速攻魔法)
フィールドの表側表示モンスター1体を裏側守備表示にする。


「……貴様っ!」
 ゼクトの異議もなんのその。空高く飛翔した決闘仮面はそのまま空中で一回転。月面宙返りを決めながら、比較的背の低い廃ビルの上に着地する。
 他方、路上では白魔導師が憤慨。右手を大きく横に薙ぐ。
「月の光で我が愛杖、《ライトレイ ソーサラー》を封じるというのか! 時間稼ぎとは姑息な真似を……メインフェイズ2! マジック・トラップを2枚伏せてターンエンド」
「《心鎮壷(シン・ツェン・フー)》」
 欲望の夜。見透かした手が四方に伸びる。《心鎮壷》がゼクトのセットカードを止めるや否や、鋭き指先から一投入魂、両刃剣型デュエルディスク 決闘戦盤(アームズ) が屋上から真下に放たれる。決闘盤が路上に突き刺さったその瞬間、光陰拳法の師範代《カオスエンドマスター》が一直線に飛び出した。一気呵成の高速戦闘。不埒な光賊を手刀で斬り捨て、夜の路上をSHINOBIが走る。

カオスエンドマスター(1500/1000)
戦闘によって相手モンスターを破壊し墓地へ送った
時、デッキからレベル5以上で攻撃力1600以下の
モンスター1体を特殊召喚できる。
[効果] [3] [光] [戦士]
機甲忍者アース(1600/1200)
相手フィールド上にモンスターが存在し、
自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、
このカードは手札から特殊召喚できる。
[効果] [5] [地] [戦士]

 機甲忍法鉄山靠。軽くのけぞったゼクトは 「それのどこが忍の技か」 と言いかけ口をつぐむ。
 拳士も忍者ももういない。 「貴様は」 夜の闇に何かが溶け込んでいた。 「何だ」 ゼクトの問いかけに応えるかのように、闇の中から現れたのは赤眼の戦士。ゴーグル越しの両眼が赤い光を発したその瞬間、廃ビルのコンクリートが闘技場の周壁へと変わっていく。夜に良く馴染む真っ黒なボディ。血のように浮かび上がった真っ赤なライン。重厚な四肢の闘技者が夜の路上を威圧する。
「マジック・トラップを2枚。ターンエンド」

ギガンテック・ファイター(2800/1000)
このカードの攻撃力は、お互いの墓地の戦士族モンスターの数×100ポイントアップする。
戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、自分または相手の墓地の戦士族モンスター
1体を選択し、自分フィールド上に特殊召喚できる。
[同調] [8] [闇] [戦士]


(打撃型が一体) ゼクトが(つば)をギュッと飲み込む。 (何を恐れる。何を) 実体を超えて、大きく映る何者か。 (私は西部の強豪ゼクト・プラズマロック。こんな輩に、)
「俺がやる! 俺に任せろ!」 「バイソン……」 「ドロー!」
 腰の退けた相棒に代わって黒魔術師が名乗りを上げた。ドレッドヘアの快男児が両手を胸元にかざした瞬間、鎖に縛られた黒い球が手の平の間に浮かび上がる。必要なのは7つ星。戦場からは《マンジュ・ゴッド》を、墓地からは《儀式魔人デモリッシャー》を吸い込み、解き放たれるは鉄鎖の封印。一帯に漂う紫の霧と共に、《破滅の魔王ガーランドルフ》が夜に起つ。

破滅の魔王ガーランドルフ(2500/1400)
儀式召喚成功時、このカードの攻撃力以下の守備力を持つ周囲のモンスターを全て破壊し、
破壊したモンスター1体につき、このカードの攻撃力は100ポイントアップする。
[儀式] [7] [闇] [悪魔]


「夜更かしはこれからだ!」
 夜の王者に武器は要らない。長いお昼寝から解き放たれたその瞬間、全身から漏れ出した紫の霧が《ギガンテック・ファイター》の身体に入り込み……瘴気中断。突如、魔王が暴れ出す。
「はっ、《禁じられた聖杯(硫酸のぶっかけ)》か」
  荒ぶる魔王とは対照的にバイソンは動じない。闘い慣れした猛者らしく、落ち着いた身のこなしから優先権を 「バカな」 バイソンの眼が大きく開く。互いの墓地から、自身の《マンジュ・ゴッド》と相手の《カオスエンドマスター》が除外されていた。 "Chain" "Reverse" "Dimension" "Two" ……《異次元への隙間》。指定されたのは "光"。

異次元への隙間(通常罠)
宣言した属性のモンスターをお互いの墓地から2体選択して除外する


 快楽の夜から不穏の闇へ。焦燥が心を支配する。 (自分のカオスエンドをタダ捨てしてまで。見切られている。《カオス・ソーサラー》の温存を) 《禁じられた聖杯》を頭から浴び、バーサーク状態になった魔王では闘技場の申し子を倒せない。
「ターンエンド」 言ったそばから背筋が凍る。
「なんだ、おまえは」 バイソンが問いを投げたその瞬間。
 決闘仮面が真下に飛んだ。廃ビルから路上への直滑降。地に足が触れる瞬間、ズドンという激突音が周囲に響く。止まらない。何かがコンクリート・ロードを走っている。そう、着地の瞬間、決闘仮面が路上に拳を打ち込んでいた。あふれた魔力が路上を走り、ガーランドルフの足下で決壊。路上から隆起したコンクリート・ランスが魔王のすきっ腹をグサリと貫く。 「《地砕き(アース・ブレイク)》」
 路上から拳をあげ、ゆらりと立ち上がる決闘仮面。錯覚ではない。黒い仮面から ―― 《仮面魔獣デス・ガーディウス》の両目から赤い光が漏れていた。 「来るな」 ゼクトが退く。 「来るなっ!」
「《アサルト・アーマー》を解放。《ギガンテック・ファイター》は両腕を使う」



黒腕戦技(ブラック・アームズ) 双腕百殺(クレービング・バースト)



アサルト・アーマー(装備魔法)
@自分フィールド上に戦士族モンスター1体のみが存在する場合に装備可能。300ポイント攻撃力がアップする。
A装備されているこのカードを墓地へ送ることで、バトルフェイズ中に2回攻撃できる

「ぐはぁっ!」 「ぐああっ!」
 瞬きを終える頃には眼前にいた。逃げようとした時には吹き飛んだ。夜の路上にふざけた衝撃波が炸裂する。 「こんなことで……」 「俺達が……負ける筈……」 全てのライフを失い、それでも立ち上がろうとする2人の前に決闘仮面が不気味にたたずむ。
「折角良い腕をしているのに。カードが泣いてる」
 暫時、唖然としていたゼクトが怒鳴り声を張り上げる。
「涙を語るなら仮面を外せ! 私の美、貴様に何がわかる!」
「わからない。わからないから教えて欲しいの」 「何を言う!」
「ソーサラーの謎。教えられるほど分かっていたら、もっといい勝負に……」
 突如、決闘仮面が口をつぐむ。バサリと特攻服をひるがえすと、 「ま、待て!」 ゼクト・バイソン両名が制止するのを振り切って飛翔。夜の闇に消えていく。
 後に残されたのは敗残2人 ――
「なぜだ」
 ゼクトの咆哮が一帯に響く。
「なぁぁぁぁぁぜだああああああああああ!」

                    ―― 大会会場 ――

「やった! やったやったやった!」
 勝者を照らすのは大歓声とスポットライト。太陽が通りすぎた会場の中で少年少女が輝いていた。足の爪先から頭の天辺まで、ミィの全身から未曾有の激情が溢れ出す。
 短い少女の人生にあっても、押し寄せる感情の処理に困ったことは幾らでも。西部の常識と噛み合わず、時には地方妖怪の烙印を押され、一人遊びに明け暮れる日々。
 いっそ何も感じなければいいと思っていた。
「勝ったんだよ、わたしたち!」
 こみ上げてきた熱い想いを、世界に向かってさらけ出す。
『夕方を越え、夜に達したFirst Duel! 勝ち名乗りを上げたのはパルム・ミィペア! あらゆる攻撃を受け止め、あらゆる困難を撥ね除けた! まさに不屈の闘志と言えましょう!』
「パルくんのおかげだよ。ありがとう。本当にありがとう」
「……2人いたから勝てたんだ。……それより」
 気まずそうにミィの耳元で囁く。
「できればもうちょっと離れて欲しい。若干、世間体が……」
「え?」 
 時間にして約3秒。ミィは耳元を真っ赤に染める。 「あ、ちょ、ごめん!」 一通り慌てふためくと、抱きついていたパルムの全身から身体を離す。
「あ、その……」 胸のドラムがお祭り騒ぎ。一向に静まってくれない。
「えーっと、」 パルムはパルムで呼吸を整えるのに手間取っていた。
「あれだ。今はぼくなんかよりも、あっちを見た方がいいんじゃないかな」
「あ……うん。そう、だね」
 呼吸を整えたミィは今一度視界を広げる。四方八方から情報が雪崩れ込んでくるが、瞳に映すのは唯1つ。超銀河眼の黒震龍がOZONEと共に消えていく。
「アブロオロスはもういないの。身体も、棍棒も、いま消えてるあの羽根も」
「あの黒い羽根は、言うなれば残留思念のようなものかもしれない」
「あの部屋の中で、わたしと一緒に遊んでくれた素敵な残留思念だから」
 母親を早くに亡くし、父親は仕事で忙しく、兄弟も友達もいなかった。ミィにとってアブロオロスは、母親であり父親であり兄弟であり友達でありそしてもう1人の自分であり、そのどれでもなかった。
「さよなら、テロくん」
 ミィは知らない。遊んでくれた親友が単なる幻であることに。それでも、アブロオロスの消失が本当の別れであることを心で知っていた。
「さようなら、アブロオロス」

 決闘の煌きは会場全体に行き渡る。
 ドラゴンヘッドに囲まれた四隅の一角、西側の観客席はそれ自体が西部の中心だった。座っているのは西部の英雄。Earthboundのエンブレムが刻まれたブラックジャンパーは、夜の会場にあってもその光沢を失いはしない。喧噪の中、ミツル・アマギリが目の前の出来事を振り返る。
「タッグデュエルはダイレクトコースが空きやすい、が、盤面自体は複雑に入り組んでいる。攻撃担当が倒しきれない時に備えて防御担当が推進剤を抱えていた。最後の最後で罷り通す為に」
 そこまで言い終えてからふと気付く。
「……妙な推進剤を使ったものだ」
「ほう」
 左端に座るバルートンが揶揄するように笑う。
「妙ちくりんな推進剤の大家がとぼけたことをおっしゃる」
 釘を刺されたミツルがとがめるような視線を送るが、バルートンはひらりとかわす。
「構築を始めた時点で危ない橋だったんだ。死ぬ気で綱渡りの特訓をしたんだろうさ」
「……あの少女はうちに道場破りを挑んだことがある。今までで一番貧弱な挑戦者だったが、ケルドを本気にさせる何かを秘めていた。そうはいっても、まさかここまで早く」

「ミィは攻めの姿勢を貫いたから」 

 妹に対する姉のような視線と共に。決闘を見守っていたアリア・アリーナが横合いから口を挟む。
「最初のライラ。中盤の砂塵。超銀河一発分は稼いでる」
「なるほどな」
 相槌を打つのはレザール・オース。
「ドゥルダークの効果は攻撃宣言を飛ばす。攻撃意欲の差が出たか」
「リュウコウは問い掛ける決闘。ミィは踏み込む決闘。裏目を引く覚悟でミィは踏み込んだから。リュウコウも薄々気づいてはいただろうけど、ミィの踏み込みの強さはリュウコウの想像を超えていた」
「ははっ」
 軽快に笑うのはバルートン。
「まさかそこまでバカだとは夢にも思わなかったんだろうさ。ボーラとやり合った時もあいつは笑っちまうぐらい意固地だった。おんなじくらい意固地な奴と出会ったおかげで、欲望の活かし方を覚えたんだろうさ。そう、こいつは欲望の差だ。蘇我劉邦の息子……としては兎も角、蘇我劉抗には決闘者としての欲望が足りていなかった。そうだろ、ミツル」
「欲望史観か。変わっていないなバルートン」
「おまえが変わりすぎただけだ」
 さらっと撥ね付けると、ノーフレームの視界にパルムを捉える。
「カウンタータイプ以外の高レベル搭載量が増えている。初見の利に頼り切らない構築か」
「あの少年の投盤は美しい。うちの連中にも見習わせたいぐらいだ」
「生まれてこの方、この俺に勝ち越してる2人の内の1人だからな」
「ふむ。それは中々……マジで!?」
「ミツルさん?」 「ありぃ?」 「おや」  横に座っていたレザール、アリア、アブソルが好奇の視線を寄せるのに気付くとミツルはゴホンと咳払い。語気を強めて詰問する。
「それは本当なのかバルートン。腕が鈍ったんじゃないのか」
「あれあれ? それは過小評価が過ぎるんじゃないのか。差し合いで言えばまだまだ発展途上だが、ひっくり返った珍奇な絵……そいつを垣間見る能力で言えば」
「 "勝ち越し" とはどういう意味だと聞いている」
「あいつはおれに10割勝ってるからなあ」
「10割」 ミツルがふと気づく。 「0勝1敗か?」
「ああ、そうだが?」
「変わっていないなバルートン。さっきの 『俺が引くほど饒舌』 からして悪い冗談にも程がある。おまえが引くのはカードだけだ。……Team FULLBURSTとはどういう関係……」
「おっと、そろそろSecond Duelが始まるか」 「バルートン」 尚も追求するミツルを視界から外すと、誰よりも饒舌な男が簡潔な解答を振る舞う。含みのある笑顔と共に。
「頭の悪い連中さ、特に大将はな」

「ぼくらの決闘、見てくれた?」
「胸焼けで死にそうになった」
 リードはじっとりとした瞳でパルムを出迎えていた。ふて腐れ気味に16歳の頭を掴むとぐしゃぐしゃ揺らす。 「スポットライトには興味なかったんじゃないのか。ガキみたいにはしゃぎやがって」
 頭を掴まれたパルムは、髪をぼさぼさにしながらわずかに微笑んだ。そうして決闘を振り返る。
「目を瞑って踏み越えるぐらいの気持ちがあったのかも。無理だし、失礼だし、何より勿体ないから。……あのさ、リード。フェリックスは」
 突然リードが人差し指を口元に立てる。
 2ヶ月前を思い出したパルムは一旦口を閉じ、
「はいこれ」 カバンから決闘盤を取り出しその手で渡す。目の前の試合に話題を変えた。
「バイソン・ストマードについては朝伝えた通り。夜の決闘でかち合ってからしばらく経つけど、十中八九《カオス・ソーサラー》を使ってくる。本領発揮される前に動いた方がいい」 「ああ、わかった」 「新しい決闘盤だから、投げる前にもう1回頭の中でシミュレーションした方が」 「ああ、わかった」 「……ちゃんと聞いてる?」 少年特有の険しい視線が刺さる中、考えごとを終えたリードがゆっくりとかがんで2人の眼の位置を合わせる。年齢差は約5年、身長差は30センチ。心で埋めた。
「ありがとよ。おまえはいつも最高だ。会えて良かった」
「……自分の為にやっただけだよ」
 若干照れくさそうに顔を背けると人差し指で頬を掻く。目線を下げてあれこれ考えるが、じきに観念して素顔を上げた。 「あのさ……って、本当にそれ着るの?」
 緑一色。新手の特攻服をリードが羽織る。背中には "津々浦々" の文字が刻まれていた。
「いいだろ」 「何が」 呆れ顔の16歳に向かって22歳が豪語する。 「殴り込む感MAX!」 「低脳感剥き出しなんだけど」 「ははっ」 「笑うとこ? ならもう仮面でも付けてお祭り気分を演出したら」 「いくらおれでもそこまでバカじゃない」 「十分バカだよ、暴引族を笑えない……リード?」
 軽口を叩き合う最中、最後の言葉を聞いた瞬間リードの表情が一変する。
「いいんだよ。おれはもう……誰も嘲笑わない」
「名言でも言ったつもり?」
「名言にするんだよ、今から」
 近くと遠くを同時に見据える研ぎ澄まされた表情。その背中を見送りながら、腐腕の少年はぐっと拳を握っていた。 「いってらっしゃい」 「ああ、いってくる」

「本当に勝っちまった」
 気怠そうに尻尾を垂らしながら、テイルはベンチの前でぼそりと呟く。
「暖炉に囲まれ震えてたガキんちょがよくもまあ」
 ふらりと視線を前に向けると、向こうからスカート付きのガキんちょが小走りで戻ってくる。テイルは軽く溜息を付くと、転ばず帰ってきたミィに誰よりも早く文句を垂れた。
「段取りが不味過ぎるんだよ。案の定、実験室が出遅れましたと」
 ミィは笑顔を絶やさない。ふやけきった顔で適当に言い返す。
「手札に来ただけ万々歳のオーケーでした」
「勝ったから言えるんだろ、そういうのは」 ミィとは対照的な渋い顔を浮かべると、フィールドに向かって人差し指を指し示す。 「おまえの胃液のせいで大変なのは知っとけよ」 「はえ?」

『おぉっと! 既に試合を終えたTeam Goddessのリーダー、清掃兼決闘者のエア・スケルトン選手がフィールドを掃除しているぅ! 流石は "女神の換気扇"! デッキブラシ型デュエルディスク 決闘掃盤(エルヴィン・フォン・ワルキューレ) を自在に操り、巧みに汚れを拭き取っていくっ!』
 西部決闘界きっての掃除の名手エア・スケルトンが所狭しとフィールドを綺麗にしていく中、
「流石は我が友」
 会場を囲むクイラヘッドに立つ1人、ライアル・スプリットが独り言を呟く。
「決闘者の残滓とも言うべき残留闘気を残しつつ、試合続行に支障のある汚れのみを拭き取っている。西部広しと言えどもあれができるのは彼ぐらいのもの」
「清掃完了」 エア・スケルトンが完潔のポーズを決める。 (次の試合はゼクトか。 『待てば光路の日和あり』 光漏れを防ぐ毅然としたプレイング、ドロー&サーチを駆使した優雅な抜札。だが、)
 両手に抱えたデッキブラシを目の前に掲げると、エア・スケルトンが先端のアタッチメントを発射する。強靱なワイヤーが付いた先端を観客席で待つ仲間のもとに打ち込み、そこから、
「回収!」
 号令と共にふわりと浮いた。掃除したフィールドに足跡を残さぬ小粋な配慮。エア・スケルトンが言葉を残す。 「我々も美を愛する者の端くれ。魅せてもらおうか、ゼクト」

「……すんません」 「今日の昼飯じゃないのが不幸中の幸いってなもんだが、そんなことをやっているから地方妖怪扱いされるんだろ」 「う……その……あの時は……余裕なくて……」 目元を縮め、気まずそうに固まるミィを見ながら口元を引き絞る。鋭い視線と共に一言投げた。
「それで、おまえは何を得た」
「え?」 突然の問いにミィが固まる。 「えっと、あの、その」  テイルは2回ほど頭を掻くと、無言で北の空を見上げた。尻尾を伸ばしても届かないほど、遠く、遠く、無限遠に広がる空を眺め終えると、ミィの額にデコピンを決める。 「痛っ」 「次の試合を見ながら考えろ」 狐の尻尾を揺らしながら即座に反転。颯爽と仕事を放り出す。 「てなわけで先生、後よろしく」

「相変わらずだな」
  "先生" と呼ばれた男がベンチに座っていた。 「そういう台詞は自分でやる時に言うものだ。おまえは監督か」 「監督を置かないのが一国一城の矜恃だろ」 「なら無茶ぶりは控えろ」 「アテにしてるんだよ」 「過大評価は身を滅ぼす」
 ラウはカバンからブレード型のデュエルディスクを取り出すと、しっかりと左腕に装備する。 「先生も新調? 前のより古そうだけど」 「前のは下取りに出した。無駄に高級品だから高く売れたよ」 「旧型? そいつの取り柄は?」 「頑丈さが気に入った」
 準備を終え、立ち上がると同時にテイルが煽る。
「 『自分でやる時』 ってんなら先生も何か言ってやれよ」
 ラウとミィ。2人の視線がふと噛み合う。14歳の少女がじっと聞き耳を立てるが、22歳の "先生" は何も言おうとしなかった。 「ラウンドさん、あの、」 沈黙を耐えかねたミィが話し掛けるが、ラウは遮るように手の平を突き出す。露骨な拒絶に数秒戸惑うが……ミィは瞳を反らさない。
「ラウンドさん、がんばってください!」
「良い決闘だった。後は任せろ」

 旧型の 決闘堅盤(モーメント) を左に嵌めて、ジャック・A・ラウンドが試合に臨む。


DUEL EPISODE 33

立ちはだかる者


 太陽のような熱気をFULL BURST側が帯びる一方、NeoGalaxy側は月の静けさを写し取ったかのような静寂に包まれていた。銀河と化していた夜のフィールドに1人の敗者が立っている。左腕に装備するのは仲間達から受け継いだ 決闘豪盤(パワー・クロス)。 右手に握りしめるのは盟友に倣った《ライトレイ ギア・フリード》。投げ込む未来はそこにない。自らが生み出した最大にして最高の光 ―― 《超銀河眼の光子龍》が目の前で光に戻ってゆく。歯を食いしばり、拳を握りしめ、その眼を尚も開けていた。誰にも聞こえないほど微かな声でぼそりと呟く。
「私のターンは、来ぬか」
 強豪の未来が虚空に消えゆく中、過去の遺産も役割を終えていた。 「親父……」 決着と同時に崩れ落ちた蘇我劉抗が涙を漏らす。 「トチ狂うほど好きなら、もっと俺に」 父の遺産、《A・ジェネクス・ドゥルダーク》もまた闇の中に消えていく。
「バカヤロウ」
 ようやく顔を上げると、目の前にはフェリックスが立っている。
「すまない」
「何をわびることがある」
 ……若者の脚は依然膝を折っていた。右手が、地べたに打ち込んだ右手が小刻みに震えている。 「ドゥルダークで殴るべきだった……奈落の発動を待つべきだった……違う。あいつらを、いや、決闘者のことを何もわかっちゃいなかったんだ。あんたを敗者に……ここに立つ資格がなかった」
「それは違う」
 突然リュウコウの両肩が重くなる。フェリックスがしっかりと両肩を掴んでいた。指先に力を込めたまま断固とした表情で言い放つ。
「おまえこそ、ここに来るべきだったのだ」
「……っ!」
「Second Duelが始まる。ベンチに戻るぞ」
 右手を掴んで立たせると、フェリックスは毅然とした態度でベンチに戻る。真横を歩きながらリュウコウは喋ろうとした。言葉が出てこない。無言の歩行が続く中、もう一度喋ろうとした。やはり出てこない。フェリックスの横顔は哀しいほど凛々しく、

「今日の夜はこっからだ!」
 突然、リュウコウの首筋に軽めのラリアットが飛んできた。無理矢理フェリックスと引き離されたリュウコウは何事かと首を振る。いた。黒魔術師がそこに。
「面白い決闘を魅せてくれるじゃないか。気に入ったぜ、小僧!」
 バイソン・ストマードが陽気に言ってのけるが、リュウコウは即座に目を反らす。
「負けちまったら何の意味もないだろ。親父の決闘は継げないし、フェリックスは負けちまったんだ」 「はっ、辛気くさいことを。なんなら 『仇を討ってくれ』 ぐらい言ってみろ」
「!」 リュウコウはハッとしつつも首を振る。 「おれの闘いは終わったんだ」
 言ったそばから身体が揺れた。胸ぐらを掴んだバイソンがブラック・フェイスを近づける。
「ガキがこいてんじゃねえぞ。そんなもん何百回でも始めりゃいいんだ。2回戦でなっ!」
 胸ぐら掴みから解放されると、リュウコウは哀しげな笑みを浮かべる。
「あんたのエース・モンスターが出てきて思わず奈落打っちまった。あれの仕様がドゥルダークに似てたから、ついつい過大評価しちまったんだ。ここ一番で殴れないんじゃ親父も地獄で ―― 」
 精一杯の軽口が思わず止まる。
 夜の決闘者バイソン・ストマードが歯を見せて笑い、黒い拳を突き立てていたから。
「その過大評価、現実にしてやる」

「敗れたかフェリックス」 「ゼクト」
 1人になったフェリックスはゼクトと向かい合っていた。 「何か私に言うことは?」 厳しい口調で詰問する白魔導師に対し、龍髪の偉丈夫は哀しげに胸を張る。 「私は勝利が欲しかった。御託などとうに言い尽くしたよ。例え醜くとも勝利が欲しかった。それだけだ」
「確かに醜い」 聞き届けたゼクトが悠然と物語る。 「《光の召集》で手にした《ライトレイ ギア・フリード》。折角墓地から拾っておいて喚び損ねるとはお笑い草よ。ルール上、私が使うわけにもいかん。第一デッキに合わんからな。同じ冠でも随分違う。いつもそれで喧嘩になった」
 一言、一言、当時を懐かしむように告げると……語気を強めて雄々しく語る。
「画竜点睛。貴様にとっては勝利こそが龍の瞳。美を完遂する営みに醜さなどありはしない」 
「ゼクト……」
「勝者は喜び敗者は嘆く。動かしがたい決闘のことわり。しかし、敗北からでも繋げるバトンはある」 
 ゼクトは美指を動かし、フェリックスが持っていた《ライトレイ ギア・フリード》の表面をなぞる。
「美しい決闘を示してくれた、我らがニューリーダーに伝えよう。我々には!」
 美丈夫が総大将の前にひざまずく。
「 "勝て" その一言で足りるのだ」

 白魔導師と黒魔術師がデュエルフィールドの手前で肩を並べていた。
 ゼクトはほんの少しためらうと……意を決して隣の相棒に伝える。
「バイソン。この試合の前に言っておきたいことがある」
「どうしたんだよ、藪から棒に」
 粗にして野なれど卑ならず。豪放磊落を地で行くタッグパートナーを前にして、ゼクトの鼓動が少しずつ高まる。しばしの躊躇から覚悟を決めた。白魔導師が混じりけのない真実を伝える。
「遊びだったのだ」
 ゼクトは視線を過去に飛ばすと、正閏叛列Boy'sでの闘いを振り返る。
「汚れず、穢れず、美しく。白一色の決闘こそ至高。半端に属性の入り交じった紛い物など認めるに値しない。おまえと組んだのは半ばヤケの、単なる気の迷いでしかなかったのだ」
「……」
 2人の間にしばしの沈黙が訪れる。数秒じっと見つめた後で、奈落の底を思わせるような低い声でバイソンが聞いた。 「なぜ今になって、それを」
「抱えたままでは勝てんと思ったのだ。身勝手な思考に怒りを灯すやもしれない。だが!」
「知っていた」
「知っていた?」
 一転、黒魔術師の声色がひっくり返る。 「あふれ出るあんたの矜恃を思えば、なんだって夜のチンピラ風情と組む気になる。夜の決闘はそういうもんさ」
「バイソン、私は……」
「気の迷い大いに結構! おかげさまでここまでこれた」
「バイソン……」
「それで今、あんたは何をしたいんだ」
「こんな私にもやらねばならぬことがある。しかし1人では叶わん」
「俺でいいのか?」 「おまえでなくてはならぬ。我々に力を貸してくれ」
「はっ!」 相棒が勢いよく駆け出す。 「夜の! 決闘の! 始まりだ!」

『Second Duelスタンバイ! Team FULLBURSTがこのまま2回戦進出を決めるのか。あるいは、Team NeoGalaxyが意地の一札をみせるのか。クイラスタジアムの闘いは尚も! ヒート! アップ!』
 会場の四方を囲むドラゴンヘッド。その両目はささやかなスポットライトになっていた。中央のデュエルフィールドに向かって光の円がスライド。淡月特有の淡い光を補うように、決闘者達を照らし出す。

『北の方角! 仁王立ちするのは初参戦! 黒い猛牛バイソン・ストマード!』
  "NeoGalaxy" と刻まれた白いペンダントを首から下げて、夜の黒魔術師が決闘に臨む。頭以外の全身を覆っているブラックローブは、背後で観戦するいかなる構成員達とも異なっていた。
「地上の夜か。悪くない」
 黒髪を束ねたドレッドヘアが威嚇するように揺れていた。夜風を相手に一呼吸。広げた指先に力を込める。引く、喚ぶ、殴る、置く、放つ。デュエルイメージが頭の中を駆け巡り、剥き出しの神経を研ぎ澄ます。 「ビンビン来てるぜ。最っ高に面白くしてやる」

『南側からは黄色い声援! ジャック・A・ラウンドォッ! 腹筋使いレザール・オースを破り、寡黙な葬儀屋チェネーレ・スラストーニがライバルとして挙げるこの男! 精密機械は今期も健在!』
 上は短く下は長く。ブラック&ブラウンのスポーツウェア。合理性を重視する精密機械は眼鏡を外さなかった。質実剛健を地で行く特注の長方形。レンズ越しに対戦相手が良く映る。
(10年か)
 腰のポケットに手を入れると "無病息災" のお守りを取り出す。じっと見つめ、胸元のポケットにスッと挿し込み戦場へ。 (EarthboundとGalaxyの歴史がほぼ10年。10年程度で何を成せる)
「精々教えてもらおうか」

『東側にはチーム・リーダーの御到来。四方八方ボサボサ頭! 今期も《デビル・フランケン》が吠えるのか! 一撃必殺系男子、リィィィド・ホッパー! 声援はそれなりだぁっ!』
 《マスター・オブ・OZ》を彷彿とさせる緑一色の特攻服。見る者全てをドン引きさせる一張羅が早くも自己主張を始める中、当の本人は至って静かにたたずんでいた。パルムが開発した新しい決闘盤を左腕に付け、懐から取り出した黒いハチマキを額に締める。
 真正面にあたる西側を静かに覗き込み、備え付けのベンチに座るフェリックスを一瞥。グッと歯を噛みしめていると、視界に何者かが割り込んだ。 「ようやく来たか」

 一際大きな歓声が上がり、メインイベンターが戦地に立つ!

『そして! 西側に立つのは "白旗の王"、ゼクト・プラズマロックゥッ! かつての西部十傑が、半年間の雌伏を経て遂に帰還! "強豪は美意識を誇るべし" 今日も魅せてくれるのか!』
「安定感で言えば西部でも随一」
 ミツル・アマギリが白魔導師を評する。 「沈着冷静・傲岸不遜。真正面から堂々と除外するアーティスティックなビューティフル・スタイル。うちの連中も何度か不覚を取っている」
「うちの姉貴も言ってました。 "なんかうるさい" 」
「己の美学に拘りすぎるきらいもあるが、フェルティーヌも腕前そのものは認めている。美大を卒業後、油絵師から決闘者になった異色の経歴。決闘美学を語らせれば右に出る者はいない」

(フェリックス)
 美を謳う白魔導師がデュエルフィールドを凝視する。 (目指すものは同じ。ならば私の道に誤りはない) 勝利、敗北、協調、不和。全てを受け入れゼクトが吠える。

「誤りはない!」

『あ、あれは! あのデュエルディスクは何物かぁっ!?』
 ゼクトとバイソンが高々と杖を持ち上げる。白い杖には扇状の先端。黒い杖には髑髏の先端。使い手の身長に匹敵する杖を持ち上げ、2人が高らかに名を放つ。
「装飾杖型デュエルディスク 決闘白盤(ホワイトスタッフ) !」
「髑髏杖型デュエルディスク 決闘黒盤(ブラックスタッフ) !」
「長物型の決闘盤か!」
 ラウはそのスタイルを知っていた。 「ジャムナード・アックスの両刃斧型デュエルディスク 決闘斧盤(グレイトアックス) 、あるいは、エア・スケルトンのデッキブラシ型デュエルディスク 決闘掃盤(エルヴィン・フォン・ワルキューレ) のような特殊型の決闘盤」 そしてもう1つ。自分に決闘を教えた中央十傑、ゴスペーナ・ファルスエッジの 決闘鎌盤(ラ・モール) が脳裏に浮かぶ。 「あんな使いづらそうなものをわざわざ大会に持ち込むとは」

 ―― 好きこそものの上手なれ。貴方には縁のない言葉かしら

「物好きな連中もいたものだ」

『こ、これは一体!? ゼクト選手とバイソン選手が天地上下に両腕を広げているぅっ!』
「はぁあああ」 「うぉおおお」
 解放された2人の魔力が天地両端を唸らせる。ゼクトの双眸が光輝を放ち、バイソンの蛇髪が闇夜に揺れた。白と黒、2つのデュエルオーラが並立する。
「あれは!」 「知ってるんですかミツルさん!」
 天地咬渦狗流の大家ミツル・アマギリはそのスタイルを知っていた。
「 "表裏一対の構え"。 あのゼクトさんが歩調を!」

 叛列の白魔導師と正閏の黒魔術師が闘気を開放。天地上下の構えを取る一方、
「初っぱなから目立ちやがって」
 機先を制されたリードが不満げに呟く。 「あんにゃろ」 「平常心だ」 「ああ、わかってる。パルムとミィが貴重な勝ち星をあげてくれたんだ。何が何でもヘマはこけねえ」
 何気ない会話の最中、ラウがふと異変に気付く。
(確かに落ち着いてはいる。しかし、)
 Team FULLBURSTの2人も投盤の体勢に入る。
 闘技場の集中力が徐々に膨れあがり、そして ――



Starting Disc Throwing Standby――

Three――

Two――

One――

Go! Cross Spiral Chain Duel!




「行くぜ!」
 挑戦者(リード)が大きく踏み込んだ。足を大きく上げるリフトアップ。大地にめり込むパワーステップ。エアーズ・ロック・インパクトさながらの投盤でOZONEに挑む。隣ではラウが精密極まるフォームからディスク・リリース。誰が投げてもこれ以上
「負けるわけにはいかんのだ!」
 白魔導師のフードが夜風に揺れた。親指と人差し指で魔法の杖を挟み込み、身の丈程もある長い杖をダーツのように構える。比較的ゆったりとしつつも、そこから先は俊敏だった。全身躍動、天に向かって右腕を突き上げ、前方に向けて振り降ろす。大上段からの一投がOZONEを裂いて加速した。光の矢と化した 決闘白盤(ホワイトスタッフ) が狙うは一点。デュエルサークル上で3つの力場が火花を散らす。
「やってくれるじゃねえか! だがな!」
 力と技。Team FULLBURSTの双盤がじりじりと押し始め、そのまま押し切ろうと
「いけっ! 相棒!」
決闘黒盤(ブラックスタッフ) が後ろから飛んできたぁっっ!』
 縦一列。バイソンの 決闘黒盤(ブラックスタッフ) が後方から加速。 決闘白盤(ホワイトスタッフ) の後端を押し込み、さらなる加速。
 淡月の夜 ―― 後方からの援護を受け取り、白魔導師が雄々しく吠える。
「絶っっっ対にぃっ! 負けるわけにはいかんのだ!」
「ちぃっ!」 「この力は!」
『Team FULLBURSTを吹き飛ばしたぁっ! 先攻を取ったのはゼクト・プラズマロック!』
  決闘白盤(ホワイトスタッフ) は矢のように進み、矢のように戻る。帰還した魔法の杖を右手で掴んだゼクトは、扇状に広がる先端部のデッキを一瞥。恐るべき速度で札を引き抜き、そして、
『ゼクト選手が振りかぶったぁっ! 間髪入れずの召喚体勢(ダーツ・スタイル)!』
「フェリックスは我らが生かす」

Turn 1
■16000LP
□16000LP
■ゼクト
 Hand 5
 Moster 0
 Magic・Trap 0
□リード
 Hand 5
 Monster 0
 Magic・Trap 0
■バイソン
 Hand 5
 Moster 0
 Magic・Trap 0
□ラウ
 Hand 5
 Monster 0
 Magic・Trap 0



我らが美は、敢えてここから始めよう!

広範囲対応型攻撃装置(マルチアングル・オフェンス・システム)ライオウ、通常召喚(ノーマル・サモン)




 雷偶。それは近代化された土偶。焼土の代わりに鉄鋼を、呪力の代わりに電力を使った決闘祭具。モンスターゾーン中央にピタリと静止し、変わらぬ鉄仮面で戦場を咎める。
(学名《ライオウ》) ラウがいち早く反応。記憶の倉庫から情報を漁る。 (その実態は 広範囲対応型妨害装置(マルチアングル・ディフェンス・システム)。土偶の神秘性とは異なり、機能性によって敵を祓う)

 T:下級生物を駆逐する光線 ―― レーザー・キャノン

 U:探知を阻害する妨害電波 ―― ノイズ・ジャミング

 V:特殊召喚を迎撃する自爆装置 ―― アクティブ・プロテクション

 不動の雷偶がOZONEへの空間干渉を開始した。 "Effect" "Jamming" "Eternal" …… 雷偶の周囲がバチバチと弾ける。見えない何かがOZONE内を掻き乱し、リードの領域を曖昧に歪めていく。
電磁波の結界(ノイズ・ジャミング)。《クリッター》が封じられたか)
 軽く舌打ちすると、皮肉混じりに苦情を入れる。
「魔法使いのクセして、文明の利器に頼るのか」
 リードの舌鋒を受け止めるや否や、ゼクトの口角がゆっくりと上がる。白魔導師は当たり前のように光っていた。両手が光を帯びると同時…… 決闘白盤(ホワイトスタッフ) を頭上に向かって投げ飛ばす!
「我が魔術、とくと味わえっ!」
 静寂一転、空いた両腕をこれでもかと大きく広げる。指先の一本一本に力を籠め、光を圧縮する勢いで両手を合掌。バチンと音が鳴り、ほぼ同時。歪んだ夜空に亀裂が入る。
「開け!」
『ゼクト選手が両手を広げたその瞬間! 夜空に大穴が開いたぁっ!』
 戦場の風景が一変した。満天の星空には異次元に繋がる穴が空き、妨害電波まで飛び交う始末。リードを囲い込むのは二重の結界。
 落ちてきた 決闘白盤(ホワイトスタッフ) をゼクトが掴む。
「永続魔法《次元の裂け目》を発動。1枚伏せてターンエンド!」

ライオウ(1900/800)
@お互いに、ドロー以外の方法でデッキから
 カードを手札に加えることができない
A墓地に送ることで、チェーンブロックを
 作らない特殊召喚を無効にする
[効果] [4] [光] [雷]
次元の裂け目(永続魔法)
墓地へ送られるモンスターは墓地へ行かず、異次元に除外される(この点、君らはネガティブなイメージを持っているようだが、私に言わせれば無知蒙昧の極み。異次元とはそれ自体がパワースポット。真に美しい者だけが到達できる美の真髄とでも主張しよう ―― ゼクト・プラズマロックの手記より抜粋)

「おれのターン、ドロー!」
 ラウから教わったデュエルプランが頭に浮かぶ。 "序盤はおれに任せろ" "チャージ優先の立ち回りでいい" "先史遺産アトランタルには気をつけろ" "恐らくは後半勝負" "《ライトレイ ソーサラー》と《カオス・ソーサラー》には餌をやるな" ……二重結界の処遇までは聞いていない。リードが二の足を踏む一方、ゼクトの美声が一帯に響き渡る。
「サーチャーでも、リクルーターでも、好きに喚べ」
「無駄にいい声しやがって」
 《ライオウ》と《次元の裂け目》を前に、一瞬、前のめりになるがすぐさま身体を起こす。悪態混じりに道化を喚んだ。 「野郎の穴、ズコバコ突っこむ趣味はねえんだよ。《クレボンス》を通常召喚!」

クレボンス(1200/400)
攻撃対象に選択された時、800ライフ
を払って発動⇒その攻撃を無効にする
[調律] [2] [闇] [サイキック族]


『バリア大好き我が侭ピエロ。サイキック・モンスター、《クレボンス》!』
「サイキック族の守り手」
 ゼクトが白杖をぐぃっと突き出す。
「己の魔術の貧弱さをライフコストで補うか」
 美声の挑発。リードの太眉がピクリと動くがじっと息を潜める。蔓延するのは未来を絶ち斬る不快な電波。 (魔除けの人形(ライオウ)がある限りサーチャーは始まらない) 拡大するのは死体を吸い込む脅威の魔術。 (デカイ掃除機(じげんのさけめ)がある限りリクルーターも始まらない) リードが目元を引き絞る。
「ターンエンド」 (それでも《クレボンス》なら、こいつのバリアなら……)
「気をつけろリード! 来るぞ!」
『バイソン選手が始まっているぅっ!』



そんなもん、いくらでもぶっ飛ばしてやる!

死霊騎士デスカリバー・ナイト、通常召喚(ノーマル・サモン)




 加速、加速、加速。フィールドに突き刺さった 決闘黒盤(ブラックスタッフ) の先端 ―― 禍々しい髑髏が馬上の騎士を喚び寄せる。今は昔、《雷帝ザボルグ》に処刑された《首なし騎士》の怨霊が黒魔術で再生強化。特殊効果への復讐心を胸に、新たな依り代で戦場を駆ける。
「視界の悪いところでデュエってきたんだ。見えてる壁なんざ怖くもねえ!」

死霊騎士デスカリバー・ナイト(1900/1800)
@特殊召喚できない
Aモンスター効果の発動時リリース(強制)
⇒効果を無効にしそのモンスターを破壊する
[効果] [4] [闇] [悪魔]

 
『光属性と闇属性! ライオウとデスカリ! 2つのメタモンスターが雁首揃え、フィールド上に睨みを効かせている! ゼクト・プラズマロックとバイソン・ストマード。表裏一対の並列攻撃!』
「こんにゃろ!」
 目元を歪めるリードに対し、一気呵成に攻めるは馬上の霊騎士。
「喰らえクソピエロ! デスカリバー・スラッシュ!」
「《クレボンス》の効果。800ライフを支払いサイコバリアを」
「ブロッカーなど置かせるものか!」
 さらに加速。手元の 決闘黒盤(ブラックスタッフ) を力強く振り下ろし、先端の髑髏が怪しく光る。
「強制効果発動! デスカリバー・チャンネル!」
 死霊騎士が身体を捨てた。ゴーストVSサイキッカー。取り憑かれた《クレボンス》が制御不能の暴走を開始する。混ざった結果は爆発飛散。サイキッカーが散っていく。

ゼクト&バイソン:16000LP
リード&ラウ:16000LP⇒15200LP

『先制したのはTeam NeoGalaxy! 積極果敢に突っこんだぁっ!』
「《死霊騎士デスカリバー・ナイト》を墓地に送る。そして!」
「我が《次元の裂け目》の効果! 《クレボンス》を除外する!」
 死霊騎士の抜け殻は地下に埋まり、サイキッカーの依り代は夜空に消える。バイソンはマジック・トラップを1枚セット。始まりと終わりを声に出す。 「ガンガン行くぜ! ターンエンドだ!」

(妙) 南側のラウが疑惑の目を向けていた。 (バイソンのデスカリは兎も角、置物を使うとはゼクトらしくもない。アトランタルへのルートを捨てることにもなる) カードを引きつつ思考を開始。 (狙ってくれた方が楽ではある。準備が面倒なアトランタルはそれ自体が大きな隙。元々四大召喚を好まないゼクトなら敬遠しても不思議ではない……が、もう少し様子を見るか)
 足下に這い寄る得体の知れない何かを気取りつつ、手札から1枚のモンスター・カードをセット。自分で見た目を設定した "動くと崩れる曖昧な影(セットモンスター)" をフィールド上に潜伏させる。
「さらにマジック・トラップを1枚セット。ターンエンド」
(!?) 宣言とほぼ同時。フィールド上を殺気が駆け抜け、ラウの背中に悪寒が走る。敵影確認。戦闘体勢。鋭い起動音が鳴り響き、《ライオウ》の両眼が苛烈に輝く。

Turn 5
■16000LP
□15200LP
■ゼクト
 Hand 3
 Moster 1(《ライオウ》)
 Magic・Trap 2(《次元の裂け目》/セット)
□リード
 Hand 5
 Monster 0
 Magic・Trap 0
■バイソン
 Hand 4
 Moster 0
 Magic・Trap 1(セット)
□ラウ
 Hand 4
 Monster 1(セット)
 Magic・Trap 1(セット)

「ちぃっ!」
 被弾と共にのけぞるリード。闇夜が一瞬煌めくや否や、空っぽのフィールドを一条の光線が駆け抜ける。 『レーザーキャノン炸裂ぅっ!』  雷偶(ライオウ) の胸部がまばゆく光り、真紅の光線がリードを射貫く。 『一閃! バイソン選手が開いた道をゼクト選手が狙い撃ち!』 

ゼクト&バイソン:16000LP
リード&ラウ:15200LP⇒13300LP

「効くかよ! こんなもん!」
 リードの強がりを心地良く受け流し、白魔導師が新たな魔法に着手する。ターン開始時、《ゴブリンのやりくり上手》で引き入れた1枚。 "Search" "Remove" "Two Turn" 金細工の箱が夜空に浮かぶ。 「《封印の黄金櫃》を発動。デッキから《ライトレイ ソーサラー》を除外!」
「エースカードの重役出勤! 変わっちゃいねえな!」
「そうかもしれんな。我がターンはこれにて終了!」

「ドロー!」
(《闇の誘惑》か。単なるドロー・カードなら《ライオウ》の妨害電波をすり抜ける。《クリッター》を捨てるか?) リードは一旦、南側に立つ相棒をちらりと確認。変わらぬ無愛想を見付けると深呼吸で熱気を冷ます。ゆっくり。ゆっくり。胸のドラムが落ち着くまで……優しい夜風を取り入れる。
(焦り過ぎもよくない。ラウなら置物を処理してくれる。それまで待って、空いた瞬間一気に……)
 突然、背中に怖気が走る。白魔術師の血走った目。黒魔術師の剥かれた歯。恐ろしく直線的なデュエルオーラがリードを貫く。 ( 『待つ』 ってなんだ。パルムやミィの待ち方はこんなんじゃねえだろ) 
 記憶 ―― 大会では1人敗れ、地縛館では振り回され、夜の決闘では間に合わず、地下決闘で醜態を晒す。直近の記憶がリードを煽る。 (重役出勤? おれがそれを言うのか。あいつらはあいつらの答えを出した。おれはまだ……あいつらに何も示していない)
「《闇の誘惑》を発動! 2枚引いて《クリッター》を除外!」
『二重結界に我慢ならずか。《クリッター》を捨てたぁっ!』
「モンスター、マジック・トラップを1枚ずつセット。来い!」

「いい気迫だ」
 バイソンが大きな笑みを晒す。 「いいぜ、いいぜ、いいぜっ! 俺のターン、ドロー! 後ろのおまえら! 声が足りねえぞ! もっとだ! もっと叫べ! ゼクトを支えろ!」
「そ、そうだ!」 「声を出せ!」 「強豪!」 「強豪!」 「いけいけ強豪!」 「大☆強☆豪!」
「いいぜぇ」 バイソンがニヤリと笑う。 「もっとだ。もっと叫べ。もっともっともっともっともっともっとMOOTTOOOOOOOO! 暴れろ! 《霊滅術師 カイクウ》を通常召喚!」

 紫装束の壱千八百(1800)。 背中に背負うは 『滅』 の一文字

 壱:下級生物を撃ち殺す仏弾 ―― 数珠(じゅず)ミサイル

 弐:墓地への攻撃を防ぐ結界 ―― 末法コート

 参:死体同士の対消滅 ―― 昇天ダンス

 不良僧侶が戦地に降り立つ!

霊滅術師 カイクウ(1800/700)
@このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、相手はお互いの墓地のカードを除外できない。
A相手ライフに戦闘ダメージを与えた時、相手の墓地のモンスターを2体まで選択してゲームから除外できる。
[効果] [4] [闇] [魔法使い]


『念仏と共に末法コート発現! バイソン・リード間のフィールドが紫色に染まっていきます。カラス一匹入れはしない! ライオウ! 裂け目! カイクウ! 三重結界がリード選手を襲う!』
「手が早い」
 パルムが呟く。
「攻撃と妨害を弱いところに集中している」
「いけ、バイソン!」 「任せろ相棒。行くぜカイクウ!」
 手持ちの数珠(じゅず)がおもむろに分解。散り散りになった球が周囲に浮かぶ。
「ハチマキ野郎のセットモンスターを殺る。喰らえ!」
 浮遊から一転、別れた数珠(じゅず)が雨あられとなって降り注ぐ。
『カイクウ必殺の数珠(じゅず)ミサイル! フィールド上に逃げ場無し!』
「蜂の巣にしてやるよ!」 ブラックローブが刺客を放ち、
「裂け目の中に消えろ!」 ホワイトローブが殺気を放つ。
 殺意のモーニングコールが頭を揺らす、その瞬間 ――
「こいてんじゃねえ!」
 "Trap" "All" "Destruction" 迫り来るミサイルの勢いを反動に、四方八方を吹き飛ばす。異次元さえ薙ぎ払う魔界の嵐。その名は、
『《邪神の大災害》が発動しているぅっ!』

邪神の大災害(通常罠)
相手モンスターの攻撃宣言時に発動できる。
フィールドの魔法・罠カードを全て破壊する。


「ふっとべ!」 「死んでこい!」
 突然のヘビー・ストームが《次元の裂け目》を吹き飛ばし、他方、セットモンスターには数珠(じゅず)ミサイルが全弾命中。夜の戦場が唸りを上げた。
『暴風と爆風が阿鼻叫喚! フィールドは一体どうなったぁ!』
 3秒……5秒……暴れて爆ぜる風の一団が過ぎ去り、曇っていた視界が晴れたそのとき……赤毛のサイキック・ガールが傷だらけになりながら歌っていた。散り際の一唱、同族達への想いを残す。 「《静寂のサイコウィッチ》の効果発動」
 挑戦者の瞳が定まっていた。一戦に賭ける男児の睨み。
「自己紹介ありがとよ。こっからは……俺達のターンだ」

静寂のサイコウィッチ(1400/1200)
破壊され墓地に送られた時、デッキから
攻撃力2000以下のサイキック族1体を除外
⇒次のスタンバイフェイズに特殊召喚する
[効果] [3] [地] [サイキック]


「 "らしく" なってきた。あれならいける」
 パルムが太鼓判を押す一方、隣に座るミィは一言も喋らず……代わりに視線を研ぎ澄ます。砂漠に落としたダイヤモンドを探すかのように、偏執的な視線をデュエルフィールドに収束させる。
 他方、焦げ付くような視線を送るのはミィばかりではない。

「あれがデッドエンドの愛弟子かい!」
 Team FrameGear大将、赤毛の女傑ファロ・メエラが高い声を響かせる。左舷には陽気な花火師エルチオーネ・ガンザを、右舷には寡黙な葬儀屋チェネーレ・スラストーニを従える堂々の観戦。ぐつぐつと煮えたぎる舌鋒を所狭しと叩き付ける。
「相も変わらぬクソ甘え大災害! まともに機能するとこ初めて見たよ!」
「なんと!」
 ツナギ仕立ての花火師が誰よりも早く茶っ葉を燃やす。
「デッドエンドさんのことまだ恨んでるんすか? 婚期逃したからって」
「ふざけたこと言ってんじゃないよ! 逃した魚は決闘1つさ!」
「結局恨んでるんじゃないですか。姐さん、シワが増えますよ」
「……ったく、跳ね返りはこれだから。チェネーレ、フォローしろ!」
 ファロからの要請を受けると、灰色装束の葬儀屋は淡々とエルチオーネをたしなめる。
「FrameGearの前身、Team DeadFrameの創立者パルチザン・デッドエンド氏。自らのチームを抜けてまで西部決闘会に尽力する……その彼の弟子を気に掛けていらっしゃるのだ。茶々は控えろ」 
「模範解答ありがとう」
 ファロは満足げに頷きつつも煽ることを忘れない。
「あたしの話なんてどうでもいいんだろ」 「……」
 ファロは南側のラウに指を差すとにんまりとした笑みを浮かべる。そこから一転、沈黙するチェネーレを焚き付けた。 「人目気にせず存分に燃えな。そういう場所なんだよ、ここは」

 二巡目ラスト。ラウのターンが始まる。
「ドロー。スタンバイフェイズ……」
「この瞬間、サイコ・テレポートを発動! 《静寂のサイコウィッチ》の2体目をおれの場に特殊召喚。悪いな、ラウ。先に動いちまって」
「構わん。自分を信じろ」 ファロから指を差された男、ジャック・A・ラウンドがそこにいる。
(First Duelの勝敗が露骨に影響を与えている。負けた側はプレッシャーで自滅するか、そうでなければ奮起する。あちらは後者。勝った側は勢いに乗るか、そうでなければ逆に慎重になる。こちらも後者か) ラウの手の平が静かに光り始める。 "Trap" "Draw" "Single" ……
「《ゴブリンのやりくり上手》を発動。第1の処理、デッキトップから1枚をドローする」
(リードは下克上志向。初戦の勝利で無意識の内にリミッターがかかり、殺気に触れて火が点いた。
昔取った杵柄(サイキック)も機能している。おまえはそれでいい)
 攻撃、防御、装填、強化、除去、封殺……選択肢が視界を巡る。
 ほんの1枚、"異様" なカードが手札に混ざっていた。
(なら、おれは……)

                     ―― 1ヶ月前 ――

 街外れにある工場跡。鉄屑が至る所に転がった鉄の墓地。知る人ぞ知る隠れデュエルスポットで闘いが始まっていた。戦場に睨みを効かせるのは1人の戦士。白金の鎧に鋼鉄の翼。甲冑に身を包んだ専守防衛の騎士1人。その後ろに控えたジャック・A・ラウンドが軽く目線を上げる。
「……」
 目の前に積まれたのは残骸の山。その天辺を絶え間なく凝視する。2秒……4秒……
「効果発動。ムーンバリア!」
 希望皇ホープが鋼鉄の翼を展開。ウイングをシールドに変えた瞬間、音が鳴る。鋼鉄同士の激突音。最短最速の忍者抜刀、機甲忍者ブレード・ハートが双刀を真上から打ちつける。
 双翼と双刀の正面衝突。激しく火花を散らせながらも弾き返したのは希望皇。
 機甲忍者も負けてはいない。後ろに一回転しながら着地を決める。
 その背後、残骸のてっぺんには長い黒髪の女が1人。

No.39 希望皇ホープ(2500/2000)
自分または相手のモンスターの攻撃宣言時、
このカードのORUを1つ取り除いて発動できる。
そのモンスターの攻撃を無効にする。
[装填] [4] [光] [戦士]
  
機甲忍者ブレード・ハート(2200/1000)
1ターンに1度、このカードのORUを1つ取り除き、自分フィールド上の「忍者」と名のついたモンスター1体を選択して発動⇒このターン、選択したモンスターは1度のバトルフェイズ中に2回攻撃する事ができる。
[装填] [4] [風] [戦士]

 今を去ること1時間。トレードを申し込まれ、当然のように模擬戦を求めた決闘者。アリア・アリーナが赤い瞳で見下ろしていた。静かなる殺気にラウが応える。
「なぜそんなところに立つかは知らんが、美女が立つなら絵にはなる」
 デッキからカードを引くと今一度戦況を確認。ブレハとセット。簡潔にして奇妙な布陣。
(ブレハは攻撃力でホープに劣る。にも関わらず攻めてくる。こちらの残存戦力……潮時か)

「《No.39 希望皇ホープ》を再装填」
 専守防衛の剣・希望皇ホープが新たな剣に変わる。砂地に浮上した魔法陣の中に吸い込まれ、一回り大きな剣が入れ替わりに浮上する。そして! ホープ同様人型に変形。銀の鎧と金の翼をフィールドに晒し、ラウがその名を読み上げる。
「カオスエクシーズチェンジ。カオスナンバーズ39、希望皇ホープレイ」

CNo.39 希望皇ホープレイ(2500/2000)
自分のライフポイントが1000以下の場合、ORUを1つ取り除く事で、
エンドフェイズ時までこのカードの攻撃力を500ポイントアップして
相手フィールド上のモンスター1体の攻撃力を1000ポイントダウン。
[装填] [4] [光] [戦士]


「新しいギミック」
「そうでもないさ。ORUを1つ使い効果発動。ブレード・ハートの攻撃力を1200まで落とし、ホープレイの攻撃力を3000まで上げる」 装填、吸収、もう1つ。決闘盤を放り込む。
「《荒野の女戦士》を攻撃表示で通常召喚。バトルフェイズ」
 逆境を好む剣士・ホープレイが2本の剣を両手に掴むがそれだけでは終わらない、背中に背負っていた大剣をサブアームでガシッと掴む。
 ホープレイVSブレードハート。1本目の剣は1つ目の刀で止めた。2本目の剣は2つ目の刀で止めた。止まらない。最も巨大な剣が止まらない。一刀両断、風の忍者が真っ二つ。
「悪手か」
 浅い手応えにぼそりと一言。裂かれた風が2本に収束、ラウの部隊を薙ぎ払う。

自由解放(通常罠)
自分フィールド上のモンスターが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時に発動する事ができる。
フィールド上に表側表示で存在するモンスター2体を選択して持ち主のデッキに戻す。


「まんまと釣られたな」
 試合終了後、ラウが試技戦を振り返る。
「敢えてブレハで仕掛ける強攻策。聖杯聖槍の類がチラ付いた。こちらの強攻策を誘ったようだが、もし消極策を選んだら? 《自由解放》はおれの側に2体いなければ発動しない」
「奇数より偶数の方が好きそうだから」 「……」 「お弟子さんから沢山お話を聞いてるし、コロ達もお世話になったみたいだから。前々から一度やり合ってみたくて」
「文字通りの試技戦ということか。感想は?」
「隙間を狙うのが上手いから油断できない。ブレハもそういう用途で?」
「ああ。戦士族限定でなければ今も使いたいが、検討中のデッキには入らない」
「そっ……か。わたしも隙あらば使っていくから、 "そっちのその子" もよろしく」
(テイルご自慢の人脈ならろくな人間ではない。そう乱暴に考えていたが……なるほど確かに妙な女だ。洗練された闘い方の中にも何か……ある種の貪欲さ、か?)
「頼みがある。もう1枚、 ―― を融通してくれないか」
「わたしには "あっち" があるから構わないけど、本当にそれでいいの?」
「あれでいい」 ラウは一時も表情を崩さない。
 じっと眺めていたアリアは、にわかに導火線へ火を付ける
「チェネーレって名前の炎使いを知ってる?」
「なぜそれを?」
 ラウの表情が瞬時に変わる。
「丁度一昨日、公園で闘ったの」
「おれのことを聞いたのか」
「火傷の跡が残ってたから」
「火傷の跡? いや、そんなことより結果は? 勝ったのか?」
 詰め寄るラウを前にして、アリアは記憶を頼りに戦評を始める。
「枝は荒削りなのに幹が綺麗。ドンドン咲いてドンドン枯れてその度に強くなってる」
「少し前に10戦。あの時は5勝5敗で終わった。おれと比べてどう映る」
「……」 「大会での決着を望まれている。差し支えないなら」

「負けるよ、あんた」

 全てが静止したかのような静寂。そこかしこに屑鉄が転がる時間が止まった世界の中、ラウは真顔で立っていた。呼吸も、脈拍も、心音も、不気味なほど一定のリズムを刻んでいる。
「……そうか。丁度時間になるし、ここでお開きにしたい」 「用事?」
「病院に行く」 「悪いの?」 聞かれたラウはしれっと言った。
「胃潰瘍だ。うちのリーダーが問題児で……手を焼いている」

                      ―― 大会会場 ――

『さぁ、ここまで沈黙を続けるラウ選手。一体何を狙っているのか!』
(《邪神の大災害》の発動時、ゼクトもやりくり上手を発動。あの殺気なら即戦力を求めるだろうが、自分のスタイルを崩せばおのずと隙が生まれる。目下の脅威は、)
 前門のライオウ。後門のカイクウ。大歓声と共に躍動する2体の刺客。
(ライオウは兎も角なぜカイクウ? 状況を踏まえればもう少し後で喚びたい)
 静かに、それでいて早く、決闘の井戸に思考を降ろす。
(喚べるモンスターが他にいないとすれば。《カオス・ソーサラー》を寝かしているとすれば。脆い仮説ではある。しかし、)
 手札から "異様" な1枚を選択。やりくり上手の処理で一旦デッキボトムに送り返すと、丈夫が取り柄の 決闘堅盤(モーメント) を右手に持ち替え、視線を上げる。大災害もどこ吹く風か、黄金の櫃が太陽のように輝いていた。 (光属性が来る前に茶々の1つも入れておく。ここからはおれの仕事だ)
「メインフェイズ」
 今は昔。多発する墓地犯罪対策に結成された特殊防衛部隊。その構成員達はある種の特性を備えていた。墓地周辺には瘴気が満ちている。対応するには闇の僧侶でなくてはならぬ。墓荒らしは暗闇に乗じて現れる。対抗するには影の忍者でなくてはならぬ。 『彼ら』 は闇の僧侶であると同時に影の忍者でもあった。墓荒らしを想定し、防衛任務に特化した僧侶忍者集団。その名は、



墓 守 (グレイブ・キーパーズ)



「《墓守の偵察者》を反転召喚」
 僧侶忍者が姿を晒したその瞬間、焔の葬儀屋が誰よりも早く言葉を燃やす。
「あの男、葬儀屋を墓から閉め出すつもりか」
「効果発動、ハカモリロード」
 僧侶は硬く、忍者は速い。先遣隊の指示に従って、黒装束の増援が暗闇の中から駆けつける。
「《墓守の番兵》を特殊召喚。 "守備表示" 」
 ラウの行動に迷いはない。ブレード型のディスクを短剣に見立て、サイドスローで投げ入れる。
 第3の刺客、《月読命(つくよみ)》見参。

墓守の偵察者(1200/2000)
リバース:自分のデッキから攻撃力1500
以下の「墓守」1体を特殊召喚する
[効果] [4] [闇] [魔法使い]
墓守の番兵(1000/1900)
リバース:フィールド上の相手モンスター
1体を持ち主の手札に戻す
[効果] [4] [闇] [魔法使い]

『《月の書》を編纂した神の使い! その能力は勿論!』
「効果発動。バイソンのカイクウには眠ってもらう」
「夜の警備活動ってわけか。寝かしつける気満々 ―― 」
 言った傍から首が飛ぶ。僧侶忍者の短剣が暗闇を斬り裂き、不良僧侶が《首なし騎士》へと成り果てる。思考は沈着、行動は性急。ラウのカードがフィールド上で動き出す。
「メインフェイズ2、手札からマジック・トラップを1枚セット」
(リードの決闘はライフを使う。この攻防、後半に向けてリソースをどれだけ残せるかの勝負。あちらの狙いは先手の優位が続く間に毟ること。こちらの狙いはリードがチャージするまで粘ること。1VS2で無傷など虫が良すぎる。この際おれの持ち分8000まではくれてやろう。だが、) 

「なんと! 慎重派ここに極まれりってか!」 エルチオーネが舌を鳴らす。
「一斉に仕掛けるとミラフォが怖く、単機で攻めると幽閉が怖い。二列攻撃か!」
「月を味方に付けている」 夜空を見上げながらチェネーレも口を開く。 「《月読命(つくよみ)》と墓守の補給線。持ち駒を増やせば1VS2でも対応できる。そして墓守なら……当然あれもある」

「メインフェイズ2」
 地べたに手の平を当てたその瞬間、OZONEの末端に石壁が迫り上がる。いたずらな蘇生を許さぬ石の結界。燃え盛る炎さえも封じ込める魂の禁猟区域。
「《王家の眠る谷−ネクロバレー》を発動。チェーンラインはバイソン」

月読命(1100/1400)
召喚・リバースに成功したとき、
モンスター1体を裏側守備表示にする
[霊魂] [4] [闇] [魔法使い]
   
王家の眠る谷−ネクロバレー(フィールド魔法)
@「墓守の」の攻撃力・守備力は500ポイントアップ
A墓地のカードに効果が及ぶ魔法・罠・効果モンスター
 の効果は無効化され、お互いに墓地のカードをゲーム
 から除外できない。

「なんとなんとぉっ! 守備に長ける墓守、墓地を封じるネクロバレー、あんなもんどうみてもおまえ対策じゃねえか! 《真炎の爆発》の習得さえも読んでいた、そういうわけか!」
「……」
「《邪神の大災害》を警戒してアタックの後に発動。2人がかりならいつ割られてもおかしくねえが、目の上のタンコブにでもなればそれで十分ってわけだ。けどよ」 エルチオーネの炎声が一旦静まる。 『噴火』 と呼ばれる荒々しさを身体に収め、一転、氷河期の視線をフィールドに刺し込む。
「うちのエースを舐めんじゃねえよ」



Duel Orb Liberation


Twin Thunder Break




「……っ!」
 咄嗟の反応。腕を交差させたラウを二重の光が覆い尽くし、暗闇に染まったクイラスタジアムが強烈な光を帯びる。それはエンドフェイズの出来事だった。戦場に乱れ飛ぶのは光の刃。石の結界ネクロバレーがズタズタに斬り裂かれ、月読命も帰らぬ精となる。
「《サンダー・ブレイク》、バイソンか」
 交差した腕の隙間から事実を読み取る。 「フリーチェーンで《月読命(つくよみ)》の戻り際を叩き、コストに使った《魔轟神獣キャシー》でネクロバレーを潰す。一挙両得というわけか」

サンダー・ブレイク(通常罠)
手札を1枚捨て、フィールドのカード1枚を対象
として発動できる。そのカードを破壊する。
        
魔轟神獣キャシー(800/600)
手札から墓地に捨てられた時、
表側表示のカード1枚を破壊する
[調律] [1] [光] [獣]

『一方が台風! もう一方が雷雨! 取り合っています! お互いが、決闘の主導権を激しく取り合っています。先に主導権を掴むのはいったいどちらのチームかぁっ!』
「ちんたらしてんじゃねえ! 昼間の奴にはおねむだろうが」
 夜の住人、バイソン・ストマードが闇夜に吠える。
「夜は生きてんだよ! 拡がれっ、ゼクト!」

Turn 9
■16000LP
□13300LP
■ゼクト
 Hand 3
 Moster 1(《ライオウ》)
 Magic・Trap 0(※《封印の黄金櫃》発動中)
□リード
 Hand 4
 Monster 1(《静寂のサイコウィッチ》[B])
 Magic・Trap 0
■バイソン
 Hand 2
 Moster 0
 Magic・Trap 1(セット)
□ラウ
 Hand 2
 Monster 2(《墓守の偵察者》《墓守の番兵》)
 Magic・Trap 1(セット)

『止まらない! NeoGalaxyが止まらない!』
 バトルフェイズ。雷偶の照準が偵察者に定まり、胸部の赤い球が再び煌めく。
「喰らえ!」
 間髪入れずのレーザー・キャノン。しかしラウは動じなかった。月はいつも空にあり、月の読み手は《月読命》1人ではない。 "Magic" "Quick" "Seal" 月下の決闘者が本を読み上げ、月の加護で布陣を守る。 「速攻魔法《月の書》を発動。《墓守の偵察者》を裏返す」
『静かなる月の陣は健在! 羽織った黒マントでレーザー遮断! そして! マントの裏からはもう1体の番兵がぁっ! 総守備力は5800! 銀河の洪水を堰き止める!』
(下級ビートは高守備力のブロッカーに弱い。数を並べればあちらも籠もる)

     墓守の番兵  墓守の偵察者  墓守の番兵

ゼクト&バイソン:16000LP⇒15900LP
リード&ラウ:13300LP

 闇夜を照らしていた光線が立ち消え、淡月と照明の淡い光が視界をリセットする。
 防いだラウがなんとか一息入れる一方、防がれたゼクトがにわかに思い出を語り出す。
「滑稽にも! 目を丸くしたと言わねばなるまい。喧嘩別れしたフェリックスが私に頭を下げてまで懇願する。 『何を今更無様な真似を』 そうはっきり言ってやったよ」
(演説? ここで? 攻撃は失敗。何かを語るような場面でも)
「驚かざるを得まい。 『今はバイソンこそ我が相棒』 そう返した私に対し、 『むしろ好都合』 とまで言ったのだから。なんという見苦しさ! アトリエで出会った時から変わらない。そう、あいつは退けん。私ならば潔くサレンダーする試合でも、なんとも不器用に立ち尽くす……メインフェイズ2!」



光とは拡散! 光とは拡張! 光とは拡充!

多機能選択型加速装置(マルチタスク・ドライブ・システム)ヴァリー、通常召喚(ノーマル・サモン)




(学名《サイバー・ヴァリー》。ぱっと見は鋼鉄製の蛇。しかしその実態は 多機能選択型補給装置(マルチタスク・フェリング・システム)

 @防御と補給を同時に行う機能 ―― シールド・チャージ

 A戦場の新陳代謝を円滑にする機能 ―― スイッチ・チャージ

 B廃棄された兵器を再利用する機能 ―― リユース・チャージ

(優雅な反撃を好むゼクトはシールド・チャージを……違う)
 ラウが違和感を汲み取る。
(ゼクトは 『出る前に潰す』 《ライオウ》を無粋と嫌っていた。パルムから聞いたバイソンは儀式使いのパワー・ファイター。そもそもなぜこいつらがタッグを……違う。破れかぶれの速攻では)
「《サイバー・ヴァリー》の効果発動!」
 ゼクトが五本の美指を突き出したその瞬間、鋼鉄の蛇こと《サイバー・ヴァリー》が《ライオウ》に絡み付く。 「 "スイッチ・チャージ"!」 《サイバー・ヴァリー》と《ライオウ》を除外することでゼクトの右手からドロー・エナジーを解放。突き出した肘を即座に曲げると、光の速度で2枚を引き抜く。 

サイバー・ヴァリー(0/0)
以下の効果から1つを選択して発動できる。
@相手モンスターの攻撃対象に選択された時、このカードを除外。
 ⇒デッキからカードを1枚ドローし、バトルフェイズを終了する。
Aこのカードと自分のモンスター1体を選択して除外
 ⇒デッキからカードを2枚ドローする。
B自分の墓地のカード1枚を選択し、このカードと手札1枚を除外
 ⇒選択したカードをデッキの一番上に戻す。
[効果] [1] [光] [機械]


「《サイバー・ヴァリー》で1つ。《ライオウ》で2つ。そして!」
 ゼクトが魔法の杖越しに天を指す。夜空に浮かぶは黄金櫃か。
「 "1枚目の" 《ライトレイ ソーサラー》で3つを除外! 条件は揃った!」
各駅停車(おうごんひつ)は特急券か。気をつけろリード、来るぞ!」
 鋭いバックステップ……から叛列の白魔導師が加速。最早ダーツではない。力感溢れる助走から一気に踏み込み、必殺の槍と化した 決闘白盤(ホワイト・スタッフ) を豪気に投げ込む。
「我らのターンは渡さん!」



銀河の果てまで拡げてみせよう!

ライトレイ ソーサラー、特殊召喚(スペシャル・サモン)




 リードの目元がぎゅっと強張る。知っていた。会場、雑誌、TV。天地上下の構えを取った光の白魔導師(ライトレイ・ソーサラー)を見飽きるほど知っていた……筈だった。
「誰だよ、おまえ」
 純粋培養の美札家が奮迅。リードを押し込む剥き出しの威圧感。
(この殺気……前の試合のフェリックス。ゼクトが、あれを!?)

「我が愛杖の効果発動! 除外された《サイバー・ヴァリー》をデッキに戻す」
 根源(デッキ)に戻すことで白魔導師が魔力を獲得。根源(デッキ)もまた魔力を補充する。得れば失うを良しとせず、失うことで得られる完全美。白衣の魔導師が叛列の構えを取ることで膨張。至高の光が両手に溜まる。  「私が狙うのは……」

 ―― 前大会の3回戦。ミツルを相手にデビル・フランケンで一撃必殺を狙った者がいた。

 ―― あの男の眼光、あれは本気でミツルを喰らおうとするそれだった

 ―― ならば我々は何者であろうか。ゼクト……

「貴様のしもべだ! デビフラ使い!」
 喧嘩を売られたリードの前には赤毛のサイキック・ガールが立っていた。照準完了、至高の光を解き放つ。 「シャイン・バニッシュ・マジック!」

ライトレイ ソーサラー(2300/2000)
1ターンに1度、除外された光属性をデッキに戻す
⇒表側表示モンスター1体を除外する
[特殊] [6] [光] [魔法使い族]


『残歌はおろか悲鳴すら! サイコウィッチが静寂の無に消えたぁっ!』
「粗忽な野心には空っぽの戦場がお似合いだ。ターンエンド!」

「こぉんのぉっ!」
 ターンランプが点灯した瞬間、リードはすぐさま《カードガンナー》を喚び出す。
(この際なんでもいい)
 デッキトップから《サイコ・コマンダー》、《ファントム・オブ・カオス》、《マックス・テレポーター》を墓地に送る。 (殴れ、撃て、ぶっ殺せ) 後退を始めた自分の心を駆り立てる。
「がら空きなのはそっちだろ! ドレッド野郎にダイレクトアタック!」
 小型の人型戦車が躍動。得意のアームキャノンでバイソンを撃つ。しかし、
「そんな豆鉄砲が効くかよ!」
『効いていない! これでもかと胸を張る!』
「地上の夜はこんなもんか! 時速100キロ、暴引族のドロー・ナックルのが効くぜ!」
「本当に効いていないんだ」 パルムがぼやく。 「《ガード・ブロック》が発動している」
「狡い真似を」
「そう思うなら、チマチマ撃ってないで豪快に踏み越えるんだな!」
「ちっ」 2枚を伏せてターンエンド。精一杯の威嚇だが、銀河の濁流は止まらない。

「ドロー!」
 正閏の黒魔術師バイソン・ストマードが攻める、攻める、攻める。 「引いたぁっ!」 甲冑天使で更に攻める。 「《次 元 合 成 師(ディメンション・ケミストリー)》を喚んで効果発動。 "ディメンション・エナジー"! デッキトップの《カオス・ソーサラー》を除外! 攻撃力は1800!」

次 元 合 成 師(ディメンション・ケミストリー)(1300/200)
@1ターンに1度、デッキトップを除外し攻撃力を500ポイントアップ
A破壊され墓地に送られた時、除外されたモンスター1体を手札に加える
[効果] [4] [光] [天使]


「次から次へと。そんな小出しで天下を取れっか!」
そうさ。俺達は無敵、そう信じていた」 決闘は鍋。
「違った。井の中の蛙に過ぎなかった」 世界を掻き混ぜる大きな鍋。
「この俺様が。この環境。こうも糞真面目な連中と。いいじゃねえか」
 バイソンが真価を発揮した。闇のデスカリと光のキャシーを墓地から除外。
「いいじゃねえか!」
 髑髏杖型デュエルディスク 決闘黒盤(ブラック・スタッフ) が闇鍋を混ぜる。




はっ、銀河のド真ん中で混じり合え!

カオス・ソーサラー、特殊召喚(スペシャル・サモン)




『白と黒の魔術師がここに共演! 《ライトレイ ソーサラー》と《カオス・ソーサラー》が仁王立ち! 【ホワイト・スタッフ】と【ブラック・スタッフ】の連装砲! Team BURST艦隊へ次元砲撃を開始したぁっ!』
「ゼクト! フェリックス! リュウコウ! ゴック! バーベル! ガク! 後ろのおまえら!」
 NeoGalaxy側の観客席も思わず沸いた。一般構成員達が懸命に声援を送る中、黒衣の魔術師《カオス・ソーサラー》が異なる生き様を掻き混ぜる。左手に闇を。右手に光を。円を描いて縁を生む。 「俺達こそが強豪だ! バトルフェイズ!」

カオス・ソーサラー(2300/2000)
1ターンに1度、表側表示のモンスター1体を除外する
この効果を発動したターン、このカードは攻撃できない
[特殊] [6] [闇] [魔法使い]


「いけ、《次 元 合 成 師(ディメンション・ケミストリー)》! "ディメンションボール"!」
 甲冑天使必殺の次元弾。小型戦車の低装甲では為す術なしか。
「そんなもんで! ドローっ!」
 《カードガンナー》の死に際効果発動。衝撃の余波でのけぞりながらもリードがデッキから札を引く、が、NeoGalaxyが止まらない!

ゼクト&バイソン:15900LP
リリード&ラウ:13300⇒11900LP

 リードは知っていた。パルムが、あるいは他の決闘者が《カオス・ソーサラー》を喚ぶ瞬間を知っていた。 (こいつは……っ) リードは知らなかった。自分の目の前まで踏み込み、殺気を剥き出しにした《カオス・ソーサラー》の表情(かお)……どれほど苛烈なものなのか。
『いつもの逆っ! 《カオス・ソーサラー》がダイレクトアタックを狙っているぅっ!』
「止めろ! リビングデッド!」
 反射が思考を超えた。眼下の大地から《静寂のサイコウィッチ》を再活性。自分を守る為の壁にする。 「とうに攻撃宣言は済んでいる。除外効果は使えな……」
「構うな! いけ、バイソン!」 「そのままぶち込め!」
 《カオス・ソーサラー》が腰を落として大地に踏み込み、右の掌をサイコウィッチの腹に近づける。 「この構え、まさか!」 リードは即座に想起する。虚空に散った右腕を。



破魔空掌混合真拳(カオス・ダークネス・バースト)



ゼクト&バイソン:15900LP
リード&ラウ:11900⇒11000LP


『剥き出しの魔力によるゼロ距離射撃! 無理矢理攻めを続行したぁっ!』
「バイソン……」 蘇我劉抗が呆然とする中、散りゆくサイコウィッチが歌を残し、夜も帰らぬ観客達が沸き上がる。混ざる、混ざる、熱気が混ざって渦を巻く。
「マジック・トラップを2枚セットしてターンエンド! さあ、ガンガン行くぜ!」
「……ったく」
 リードは西側を一瞥。ベンチに座っているフェリックス・蘇我劉抗を視界に入れる。 
「Second Duelなんてやるもんじゃねえな。幸せもんだよ、おまえらは」
 握った拳に力を込めると、西部の銀河をその目で睨む。

「やるな、流石に仕上がってるか」
 パルムが舌を巻く中、隣のミィがスッと立ち上がる。 「ミィ、どうしたの?」 軽く訪ねるが聞こえていない。立ち上がったまま無意識に呟く。
「今、一瞬……何か……」

(気づく余地はあった)
 ラウが一連の攻防を掘り込む。 (ライオウによる先制。次元の裂け目とアトランタルのアンチシナジー。儀式の気配はまるでなく、メタアタッカーを多用。何かが違う。だが、《封印の黄金櫃》を見た瞬間、『優雅で悠長な戦法は未だ健在』 そう思い込んでしまった。いや) 持ち前のポーカーフェイスが僅かに乱れる。 (思いたがってしまった)  "成長" ……腹立たしい言葉が脳裏に浮かぶ。 (激情に身を任せただけの決闘ではない。構築段階から高速機動戦仕様になっているのは誰の目にも明らか。火付け役が誰かは知らんが余計なことをしてくれる)

「テイル!」
「あれ? アリアリさん……上で観てたんじゃないの?」
「なんであんたが出ないの!」
「大将の決闘にぶっつけで合わせようと思ったらラウ先生一択。当然1人余るってわけ。安心しろよ。あの人ならきっとなんとか……」
「前にあいつらと、ほんの少し気分が乗ったからしばらくやり合ったの」
「……ほんの少し?」
「いいから! あの夜、ゼクトは締め括る為にライトレイを使ってた。バイソンは跳ね返す為にカオスを使ってた。今日は違う。隙を減らしてガンガン踏み込んでくる。ない隙は突けない」
「……ラウ先生も異変には気付いてる。気付いてるが変えづらい。直観程度ならリスクが勝る」
「『死中に活』 がミィなら、『君子危うきに近寄らず』 がラウンド君。敢えて踏み込みを浅くすることで対応の余地を残してるけど、あの手の正面突破はそういうのに強いから。逆に隙を突かれてる」
「大将に気を遣ってるのかもしれない。《ライオウ》に《月の書》を打たなかったのもそういうことだろ。ぶっちゃけタッグの練度が足りてない。ガキ共と違って個人練習オンリーだからな」
「最短ルートを突っこむ相手に日和ったら……命取りになる」
「そんなの!」
 藪から棒に言葉を突っこんだのはミィだった。地縛館でのレザール戦、ヤタロックでのビッグ戦、地下決闘でのゼッペス戦、その他……その他……ミィは見たことがない。 "自分と組んだとき" を除くなら、 ジャック・A・ラウンドが負けるところなど見たことがない。
「あの人が、負けるわけない!」

「ドロー」 ラウのスタンバイフェイズ。リードの場に《静寂のサイコウィッチ》が再びテレポート。ラウは一旦、自分の場を俯瞰する。3体の僧侶忍者が5800の防御を固めていた。
(タッグデュエルは不均衡の戦場。真面目にぶつかり合うならまだしも、出し抜こうとする相手に一箇所を固めても意味がない。当てた者勝ちのダメージレースならダイレクトコースの有無が物を言う)
 眼鏡の左右に2つの戦場風景を映し出す。西側に立つ白魔導師ゼクト・プラズマロックは《ライトレイ ソーサラー》を喚び出し、北側に立つ黒魔術師バイソン・ストマードは《カオス・ソーサラー》を喚び入れる。自走式の砲台から遠近両用の格闘まで、全てをこなすレベル6のバニッシャー。
(あいつらはリードを狙っている。ライフをゼロにしたいんだ。まるであいつのように)
 白い光と黒い闇の向こう側。紫の炎がチラ付いた。 (あんたの予言通りだよゴスペーナ。西の環境は今こそ燃えている) ラウは後ろを一瞬うかがった。教えた少女がそこにいる。

 ―― 決闘者だからだ!

二十歳(はたち)が楽しみだ」
『長考! ラウンド選手ここにきて長考!』
 硬直する盤面。Team FrameGearの特攻隊長、エルチオーネ・ガンザが首を振る。
「あれがおまえのライバルってんなら腹が立ってしょうがねえ。五分が付くのは昔の話。今のおまえの敵じゃない。俺達が倒すべきはミツル・アマギリ。そうだろ?」
 問われたチェネーレは沈黙したまま語らない。寡黙な葬儀屋を謳われる西部の成長株がじっと眼下の展開を見守っていた。ほんの少し、夜風に熱い闘気が混ざる。

「嫌がらせはもう終わりか!」
 業を煮やしたバイソンが挑発の槍を差し向ける。
「下手な考え休むに似たりって知らないか。付け焼き刃じゃ勝てねえぜ!」
 ラウにぶつけられたのは遠慮のない夜の咆哮。ラウは、少し考えてから言葉を返す。
「一理ある。ネクロバレーの発動だけでもなにやら徹夜が続いたものだ。……暗いところでの闘いに自信を持っているようだが、その原動力はなんだ。信念か、それとも美学か」
「俺はフェリックスほど真面目じゃないし、相棒ほど芸術的なわけじゃない。至って単純、決闘が楽しいからさ。悪かったな。面白い答えを用意してやれなくて」
「羨ましい奴だ」 「皮肉が効いてるぜ。お気楽な生き方なのは否定しねえが今日は特別だ。相棒のダチと俺様のブラザーが後ろで待ってんだ。勝利を置いてとっとと失せな」

 ジャック・(エース)・ラウンドは信じていない。信念も、美学も、快楽も、そして栄光も。

「付け焼き刃の闇属性。夜の路上で戦い続けたあんたと比べれば、なるほど経験不足は否めない。だが、こちらにもアドバンテージはある」 「ああん?」

 生き甲斐を知らない男は、西部に来る前から患っていた。

「うちの実家はいわゆる没落貴族なんだ」 「それがどうした」

 発覚したのは17歳。体内の病巣はもう消えない。

「なんだかんだでそれなりの遺産はあるらしい」 「遺産?」

 告げられた時間は10年程度。受け入れた両親からの贈り物。

「太っ腹な両親から多少の小遣いをもらっている。羨ましいだろ」

 可能な限りあらゆることに触れてきた22才。残り時間はおおよそ5年。

「マネー・アドバンテージだと? 鼻持ちならねえ野郎だな! そいつをざざんとばらまいて、入り用の札を一式を集めたってか? そんなもんで俺達に!」



墓を一式



「今……なんてった」 「石と土と棺桶を買い揃えた。当然のように真っ暗だが入り心地は悪くない。あの1ヶ月はそう悪いものでもなかった」 「まさか……組んだというのか。墓の下でデッキを!」
「メインフェイズ1、《墓標の砂》を発動! 《墓守の番兵》をリリースし、デッキから《アステル・ドローン》を特殊召喚。更に、手札から2体目の《アステル・ドローン》を通常召喚」

墓標の砂(速攻魔法)
自分フィールド上に存在する闇属性・魔法使い族
1体をリリースして発動。リリースしたモンスターと
同じレベルの地属性・魔法使い族1体をデッキから
特殊召喚する。
 
アステル・ドローン(1600/1000)
@このカードをエクシーズ召喚に使用する場合、レベル5モンスターとして扱う事ができる。
Aこのカードを素材としたエクシーズモンスターは、エクシーズ召喚時に1枚ドローする効果を得る

[効果] [4] [地] [魔法使い]

『地属性の装填魔術師! 可愛い顔して効果は素敵!』
「あれはパルくんが使ってたカード」
 呟くミィのかたわら、呆れたようにパルムが語る。
「まさしくそのもの……耳を疑ったよ。 『墓守の研究の為にお墓を買ったら、お札を仕入れる為のお金が足りなくなった』 そんなの……世界中探してもあの人だけだ」
 ラウは世界の端っこに立っていた。今にも滑り落ちそうな端っこに。
「Team FlameGearのチェネーレ・スラストーニ曰く 『決闘は火葬』 らしい。傾聴に値する意見ではある。しかし、それが全てだろうか」
 中身の入った棺桶を土の中に埋め込み、酸欠の危機に陥るが……ラウは思考をやめない。
「《次元の裂け目》を見れば分かるが、除外ゾーンは 『天』 に開いている。他方、《リビングデッドの呼び声》を引き合いに出すまでもなく、墓地は文字通り 『地』 に広がっている。この点、遊戯王という媒体は蘇生手段が豊富であることも考慮する必要がある」
「相棒よりも語りが下手だな! 何が言いたい!」
 バイソンの苦情を聞き流し、ラウは東側のリードに視線を送る。わかっているのかどうなのか、こくりとうなずく総大将の顔を確認すると、ラウは結論に向かって喋り続ける。
「死体は頻繁に復活する。一々灰にして埋めるのは非合理だと思わないか? 《大火葬》という分かりやすい例もある。ここから導かれる結論は1つしかない」
 ラウが 決闘堅盤(モーメント) をその手に掴み、召喚の準備を整える。地属性と闇属性。大地の上に墓標を立てる腐れ縁。《アステル・ドローン》と《墓守の番兵》で二度の装填(エクシーズ)を試みたその瞬間、希望の四文字が戦地に浮かぶ。 「決闘の基本は 『土葬』 だ!」



剣に抱くは(のぞみ)の心 盾に込めるは(のぞみ)の証

斬り飛ばすは剣の業 防ぎ止めるは盾の縁

(のぞみ)』の一文字双刀然り

(のぞみ)』の一文字双璧然り

希 望
求 郷
の の
剣 盾
よ  よ
! !

希望双皇 二律双斬(ツインホープ・オブ・ザ・ユートピア)



ゼクト&バイソン:15900LP⇒15500LP
リード&ラウ:11000LP


『希望皇ツインホープの四刀流! ソーサラーズを斬り裂いたぁっ!』
「ふっ、少しは骨ありと見える!」 「はっ、面白くなってきやがった!」
 駆け抜けたのは白金の鎧に鋼鉄の翼。甲冑に身を包んだ専守防衛の騎士2人。請け負った任務は総大将の援護1つ。2人で攻めて、2人で守る。二列攻撃の偏執形にチェネーレが瞠目する。
「基本をおさめた上で大きく踏み込み、自分の身体を盾にするつもりか」
 希望皇2体を前面に張り出し、ラウがNeoGalaxyを迎え撃つ。
「おれにも拘りたいことの1つぐらいはある。辿り着くまでは負けられない」 
 墓と土から希望を育み、月の盾を構える1人の男。
「そんなに生き急いでもしょうがないだろ」
 頑丈が取り柄の 決闘堅盤(モーメント) をかたわらに、
 希望なき男が立ちはだかる。
「付き合ってもらうぞ、最後まで」



【こんな決闘小説は紙面の無駄だ!】
読了有り難うございました。
↓匿名でもOK/「読んだ」「面白かった」等、一言からでも、こちらには狂喜乱舞する準備が出来ております。


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