―― デュエルに、チームデュエルに踏み込んだ途端、テロ君から別れを告げられた。

                      ――  30日前 ――

「暑い」 構築作業のまっただ中、ミィは端的にそうぼやく。特訓に次ぐ特訓。猛暑に配慮した服装はその意味の大半を失い、Tシャツとスパッツが汗浸し。ほんのり伸ばした髪が汗でへたっていた。
 隣では、パルムが決闘盤の改造を続けている。うちわをぱたぱたと扇ぎながらも、手抜きのない無言の作業。倉庫の中にはもう2人しかいない。沈黙、沈黙、沈黙……
「あの」 「あのさ」 「……」 「……」 「どうぞ」 「え〜っと、1戦やらない?」 

「《火の粉》を捨てて《召喚僧サモンプリースト》の効果発動」
「《ブレイクスルー・スキル》を発動。効果を無効にします」
「します?」 「あ、えっと、効果を無効に」 「それなら!」
 パルムは《未熟な密偵》と《大寒気》を伏せると決闘盤を投げる。フィールド中央で蠢く何か。マジック・トラップを主食とする巨大な昆虫 ―― オオアリクイ クイアリ 見参。
「燃費は悪いけど確実だよ。効果発動。そっちの罠もたいらげる」
「むしゃるのやめて! トラップ食べても美味しくないって!」
「サモプリを手札に戻し、《A・ジェネクス・バードマン》を特殊召喚」

A・ジェネクス・バードマン(1400/400)
?自分のモンスターを手札に戻すことで特殊召喚
?風属性を戻すと攻撃力が500ポイントアップ
?特殊召喚した場合、フィールドから離れると除外
[調律] [3] [闇] [機械] 


オオアリクイクイアリ(2000/500)
?マジック・トラップ2枚を墓地に送って特殊召喚
?攻撃を放棄する代わりにマジック・トラップを1枚破壊
[特殊] [5] [地] [昆虫]

「《オオアリクイクイアリ》にバードマンでチューニング、《スクラップ・ドラゴン》をシンクロ召喚。行くよ、効果発動。《幻魔の殉教者》と《キラー・トマト》を破壊してダイレクトアタック」
「いつもより、エンジンかかるの早くないですか……早く、ない?」
「プレッシャーが緩ければ動きやすいよ。ターンエンド」
「ドロー」 ミィは墓地を一瞥。ある。《スキル・サクセサー》が墓地にある。エネミーターンでの迎撃を主眼とする第1の効果に対し、マイターンでの進撃を専門とする第2の効果は墓地発動。800あげればあるいは? ミィは手札を一瞥。ない。攻撃力2000以上のしもべがいない。
(《スクラップ・ドラゴン》を早く倒さないと。なのに……あ、まだいける)
「《死者蘇生》を発動。パルムさ、くんの墓地から《冥府の使者ゴーズ》を……」
 ミィが目を丸くした。墓地から棺を釣り上げ、輪付きの十字架を挿し入れた瞬間ロックがかかる。産まれない者は生き返らない。 決闘小盤(パルーム) に "Disc Throwing" の文字列が浮かんでいた。
 必要なのは、命を吹き込む作業。
「あれ? 投げないと……駄目なの?」

 楽しい反省会中

「蘇生制限。あれは投盤にも言えるから。一度誰かが召喚したモンスターなら投盤抜きで釣れるけど、そうでないものは一回自分で投げないと駄目。《死者蘇生》で相手のモンスターを釣る時も一緒。あのゴーズはライラで落ちた奴だから …… っていうか、リビング使ってたんならわからない?」
 ミィは軽く目を反らしながら両手の指を弄くり回す。気まずそうに。
「《ライトニング・ボルテックス》で捨てても、あの子は特殊召喚できなかったから」
「上手くなってきたと思いきや。もう一回ミツルさんの本を精読した方がいい」
「うん。絶対載ってる。段々と思い出してきた。載ってた。うん。載ってた」
 確認を終えた3分後。ミィはうずくまると、円盤の蓋を開けてデッキの再調整を始める。
「《スキル・サクセサー》はアタッカーが少ないと機能しない。強力な呪文を使う時のコストにいいかもって入れたけど、その呪文が来ないと……あぁ〜いぃ〜うぅ〜」
「ひょっとして焦ってる?」 何気ない問いに、ミィは全力で頷いた。
「全然しっかりしてなくて。あの、その、パルムさんの」 「パルムさん?」 「パルム……くんの
反転世界(リバーサル・ワールド)】、あんなのどうやって組んだんです……組んだの?」
「西と南はフルモン禁止区域。マジック・トラップを5枚は入れないといけなくて、なのに体質の所為でマジック・トラップを使えない。しかもなんか初手に引く。これだけ揃えば開き直れて楽なもんだよ」
「開き直ってどうにかなるんで……どうにかなるの?」
「課題があるなら片付けられる。今でも課題は山ほどあるんだ。もっと早くギアを上げられるように。ギアが上がらなくても闘えるように。時々デッキ枚数を60枚にして 『なんか特殊なパターンでも見付からないかな』 って試してみたり。元が実質35枚だからかつかつだし……あ、ミィも試してみたら」
「それは駄目!」 はっきりとした拒絶にパルムが首を傾げる。
「いきなりテンション上がるんだね、君。なんで駄目なの?」
「入れたいカードは40枚でも60枚でもないから。全部入れたいから」
「……そっか。そうだね」 パルムは納得すると、おもむろに話題を変えた。
「それはそうと……ここにシャワーがないのはどうしようもないか。しょうがない」
「へ?」 「お風呂屋さん。ぼくはああいうところに行きづらいからミィだけ行ってきなよ。ここから近いから。リードが言うにはものの15分でいける」 「え、それって……」 「率直に言って、臭いよ」
「パルくんなんて大っ嫌い!」

「ああもう! デリカシーを知らない人が多すぎる!」
 人気のない女湯に怒気混じりの声が響く。石鹸を押し付けた垢擦りを掴み、全身を必要以上にくまなく擦る、擦る、擦る。 「ラウンドさんは真顔でああいうこと言う」 「ミィ?」 「リードさんもずぼらだから言う」 「ねえミィ」 「尻尾野郎なら超嬉しそうに言う!」 「ミィちゃ〜ん?」 「全員じゃん! 女の子への思いやりが……あれ?」 ようやく気付いて振り向くと、そこには見知った3人の女の子。
「コロにシェルにティア……え〜っと、3人お揃いで、どの辺から聞かれた感じでしょうか」
「 『ラウンドさんは真顔でああいうこと言う』 辺りから」 シェルが冷たくばっさり言った。

 見苦しい弁解中

「うちのお風呂はさ」 椅子を並べ、身体を洗いながらコロナが事情を説明する。
「人が足を踏み入れる場所じゃなくなってきてるから。だからお風呂屋さん」
「なにその魔境」 「練習、がんばってるみたいじゃん。……調子はどう?」
「あと少しなんだけど、あと少しが遠くて。 "しっかり" したいんだけど」
 シャワーで流して湯船に浸かる。肩まで浸かって頭を茹でる。
「コロはそういう時どうしてる?」
「あたしにとっての "しっかり" は一歩一歩前に進むことだから」
「一歩一歩」 「ミィもそうなんじゃないの?」 「……うん、そうだね」
「それで本当にいいの?」 洗い場から三女の声が陰気に響く。
 コロナはぎゅっと目を細めると、いつものリズムで打ち返す。
「シェル、話に加わりたいなら洗うの終わってからにしなよ」
「私は洗うところが多いの」 黒髪の端を摘んでぐるぐる回す。
「成長期だから」 「わかったわかった。何が言いたいの、シェル」
「やりたいことがはっきりしてないで、なんで前に進めるの?」
「あっ」 ミィが口を開き、 「……」 コロナが目を反らす。
 シェルは身体の泡をくまなく流すと、すっと立ち上がって1歩2歩3歩。軽く脚を上げて、ゆっくりと湯船に浸かる。肩を沈め、胸を沈め、一通り湯の味を満喫してから言った。
「 "しっかり" より "はっきり" なんじゃないの」
「じゃあ」 ミィの頭にふとよぎる。
「シェルがやりたいことって何なの?」
「……」 シェルは後ろを向いた。答えたくないとばかりに。
「ティアにでも聞いてみたら。あの子は "ちゃっかり" だから」
 ミィが横を向くといつの間にかティアがいた。聞いてみる。
「ティアは決闘で、どういうことををやりたいの?」
「わたしは〜おねえちゃんと〜デュエルがしたいから〜」
 のぼせているのか、いつも以上にのんびりと喋る。
「デュエルができるように〜できたら〜いいかな〜」
「そっか。うん、がんばろ」 「がんばるる〜るる〜」
 ミィは目を瞑ると、のぼせそうになる頭で考える。
(わたしの、やりたいこと)

 一方その頃、倉庫では、

「パルくん、か、パルくん……」


DUEL EPISODE 32

新鋭見参 Tag Duel Tournament

打ち砕き、吸い尽くし、奪い取る者達



               ―― 大会会場(第16試合) ――

『初日もそろそろ折り返し! 精鋭達が、続々と勝ち名乗りを上げていくぅっ!!』
「どこが勝つと思う?」 「EarthBoundの二軍は堅いだろ」 「高校生チームも注目だ」
「いやいやTeam Rock & Lockだろ。ガンチャンの石壁っぷりがたまらねえ!」
「俺はTeam Goddessを推したい。 女神の換気扇 のお陰で会場はいつもクリーン!」
「Team Mysterious Qはどうだ? 判断材料がまるでねえ! 正直なんとも思わねえぜ!」
 大会初日も中盤に差し掛かっていた。引いても引いてもまだ引き足らぬ札の祭典。勝者は喜び場を駆け回り、敗者は墓地で丸くなる。集った人々は一札ごとに一喜一憂し、新手のウイルスに感染したかのように全身の穴という穴からよくわからないなにかよくわからないものを噴出していく。 "開催記念" と銘打たれた自動販札機からは調子に乗って造り過ぎた《ダイヤモンド・ドラゴン》が湯水のように溢れだし、会場の外では怪しげな服を着た怪しげな男が《青眼の白モリンフェン》を販売している。
 かの有名な決闘哲学者ポートランド・ブルステップに 『なんかもうあれだよあれ。説明? 比喩? 定義? うるせえ! バーカ! 御託はいいから引け!』 と言わしめた、決闘なる概念がありとあらゆる形状で一堂に会する。狂喜乱舞の喧騒。そんな中、

「《クレーンクレーン》の効果発動!」
 元気一杯の女子がそこにいた。青いヘアバンドを額に当てた16歳の少女。はつらつと牽引作業を命じると、墓地から魔術師を釣り上げる。マジック・トラップを吹き飛ばす小さな小さな風の魔術師。

フォーチュンレディ・ウインディー(?/?)
?攻撃力・守備力はレベル×300をになる
?召喚成功時⇒マジック・トラップを破壊
[効果] [3] [風] [魔法使い]


クレーンクレーン(300/900)  
召喚成功時⇒墓地のレベル3モンスター
を特殊召喚(効果は無効化される)
[効果] [3] [地] [鳥獣]


 照りつける太陽の下、半袖半パンの白い運動着を汗で滲ませながら、女子高生決闘者がしっかりと左脚を踏み出す。小型水車型デュエルディスク 決闘揚盤(ストラグル) をフィールド上に投げ入れた瞬間、組み立てられる新たな魔方陣。飛び出すは、悪夢を斬り裂く希望の翼。



クレーンとウィンディーでオーバーレイ!

ナイトメア・シャーク、装填召喚(エクシーズ・サモン)




ナイトメア・シャーク(2000/2000)  
ORUを1つ消費⇒単体直接攻撃
[装填] [3] [水] [海竜]


『大空を飛ぶ翼! 深海に潜る鱗! 空と海を股に掛ける機動力……何人たりとも止められない!』
「……」 ほんの数秒、ヘアバンドの少女は動きを止める。均整な目でナイトメア・シャークをまじまじと見つめ、ほんの1回深呼吸。新たな戦力に指令をくだす。
「ナイトメア・シャークでダイレクトアタック。スラッシュ・イーター!」
『全身刃物の体当たり! コロナ選手が果敢に攻める!』

「うわ」 テイルは尻尾を大袈裟に揺らし、ラウに向けて言った。
「あれ何気に難しいっていうか、おれでも召喚できないぞ」
「サボったのか」 「あいつらとちょっくら遊んだんだよ。んで、試しに投げてみたんだけど意外と難し ―― 」 「サボったのか」 「いや、ほら、使いどころが言うほどないっていうか、そもそもおれの決闘は 『壁をのっけてぶん殴る』 だから微妙に違うっていうか、忙しくて他にやることあったっていうか……」 「要はサボったと」 「すぐそういう……」 「それは兎も角、日々休まず練習したのがうかがえる良い投盤だ。どこぞの誰かと違って相当努力したのだろう」 「もう少し親友を労われよ」 「2人の面倒を見てくれた件について、改めて礼を言いたい。ありがとう。頼りにしている」 「ホントに労わってんじゃねえよバーカ!」 「面倒な」 「お互い様だ」

『若者同士が火花を散らす! 予備戦から勝ち上がってきたチーム・アリーナが徐々にリードを広げます。ビハインドを負ったのはチーム・ヘキサゴン。ここから巻き返していけるのか!』
「ビハインドなど負った覚えはない!」 Team Hexagonの副主将が荒っぽく吠えた。
「ダイレクトアタッカーと説いて横着者の借金と説く。その心は! 盤面干渉力がない時点で束の間の優位に過ぎん。こいつを生かした時点で!」 副主将が指を差す。いた。蟲がいた。じっと身を固めた六本脚の甲虫が。 「スタンバイフェイズ。羽化の瞬間、来たれり!」 変態する六本脚の甲虫。全身が毒々しく色づくと同時に背中がぱっくりと割れ、薄手の羽根が自己主張を開始する。
「最終進化! 《アルティメット・インセクト LV7》を特殊召喚! さぁ、鱗粉をばらまけ!」
『あぁっと、コロナ選手のナイトメア・シャークに鱗粉がぁっ! 自慢の機動力も形無しか!』
「まだまだぁっ、墓地の昆虫族2体を除外し、、《デビルドーザー》を特殊召喚!」

アルティメット・インセクト LV7(2600/1200)  
LV5の効果で特殊召喚した場合、相手モンスター
の攻撃力・守備力は700ポイントダウンする
[効果] [7] [風] [昆虫族]


デビルドーザー(2800/2600)
戦闘ダメージを与えた時、相手のデッキトップ
1枚を墓地に送る
[特殊] [8] [地] [昆虫]


「させない!」 コロナは知っている。機動力重視の脆弱性を。早いは軽い。軽いは脆い。しかしてそれは、機動力重視の特殊召喚にも当て嵌まる。一発必中、実在を咎める超音波、発唱。
「《昇天の黒角笛(ブラック・ホーン)》を発動。特殊召喚をなかったことに!」 「ぬぅっ! ならば! 《アルティメット・インセクト LV7》でナイトメア・シャークを……」 「《くず鉄のかかし》を発動!」
「くっ、モンスターを1枚、マジック・トラップを2枚セットしてターンエンド」
『コロナ選手踏ん張ったぁっ! エースを活かしてターンを握るっ!』
「あたしのターン、ドロー!」
 抜札、即、黙考。控えめな胸元に手を当て呼吸を整えると、水車の羽根、に潜む、決して多くない選択肢を吟味する。5秒……10秒……ばっと手を広げると、 "Normal" "Magic" "Power" の文字が浮かび上がり《アクア・ジェット》発現。《アルティメット・インセクト LV7》の鱗粉を洗い流す。
『空と海のツインターボ! ナイトメア・シャークの攻撃力が、2300まで上がったぁっ!』
(あたしは戦力としてここにいる。Team Arenaの、戦力としてここにいる。だから)
「ナイトメア・シャークでダイレクトアタック! スラッシュ・イーター」

Team Arena:13000LP
Team Hexagon:11100LP

 半袖半パンの白い運動着と、ハチマキ代わりの青いヘアバンド。小型水車型デュエルディスク 決闘掻盤(ストラグル) を拠り所に、ショートカットのダメージレーサーがひた走る。 (負けない) 掻き集めた水滴で水車をまわし、元気な次女  コロナ・アリーナ が現実の海を掻き分ける。
「マジック・トラップを2枚セットしてターンエンド!」

「そうやって、いつも」 陰気な三女 シェル・アリーナ がぼそりと呟く。
「空元気のまま張り切っちゃうから」 仏頂面で言い捨てる。他方、

「コロちゃん格好いい!」  陽気な四女 ティア・アリーナ が声を上げた。
「がんばれっ! コロちゃん! もう一発!」 全身を震わせ声援を送る。

 三者三様、3人娘が大舞台に臨んでいた。その姿に誰もが ――

「聖コアキメイル学園 高等部 決闘会 主将 として、君達に伝えたい」
 ブレザー・スタイルの男子学生がそう言った。Team Hexagonの主将を務める18歳の青年 ジェームック・マイヤー が、コロナに向けて人差し指を立てる。
「コロナ君、君はこの春より聖コアキメイル学園高等部に進学したそうだね。知っての通り、我らが聖コアキメイル学園はマンモス校。数多の受け皿となっている」
「あ、えっと、その、先輩さんなんですよね。それが何か……」
「聖コアキメイル学園に決闘会あり! 日々是決闘! 西部全域から集まった優秀な生徒達が構築を行い、投盤を続ける。その中でも、特段の成績を収めた者のみが選抜され、受身検定を受け、ポイントを稼ぎ、大会出場にこぎ着ける! その努力を知らないわけではあるまい!」
「もしかして、わたしたちがここにいるのはおかしい……そういう系の話ですか」
「1回戦で当たれたのは僥倖。君達は知るべきだ。札の責任、その意味を」
 青年の瞳は真正面を向いていた。六角形の目でコロナを捕捉、
 いざ、決闘を放つ。
「我が右手に戻れ! 《コアキメイルの鋼核》!」
 ドローフェイズ。正規の抜札権を代償に、墓地から心臓が飛翔する。鋼に守られた六角形の心臓。部長が鋼核を握った瞬間、副部長もまた動く。 「受け取ってくれ、部長!」 ドロー・マネジメントに基づく《As-八汰烏の贈り物》。副将から1枚受け取り決闘準備完了。コロナはぐっと身構える、が、 "え?" っと声を上げるのにそう時間はかからなかった。《くず鉄のかかし》を、《昇天の黒角笛(ブラック・ホーン)》を、レーザー・ビームがを横一線に薙ぎ払う。発射口は右手の鋼核。
『通常トラップ、《レクリスパワー》! コロナ選手の防御網を一網打尽!』
「《コアキメイルの鋼核》を提示することで、コロナ君の後衛を全て破壊する」
 露払いを終えたジェームックが左腕の決闘盤を掲げる。聖コアキメイル伝統の一品。六角形型デュエルディスク、その名は 決闘六盤(ハニカム) 。 「行くぞ!」 右手で掴んで速やかに投盤。基本に忠実なサイド・スロー。 「《コアキメイル・ウルナイト》を通常召喚!」 真鍮の鎧を纏った四つ足の獣戦士が鋼核の真価を解き放つ。 「《コアキメイルの鋼核》を提示し、ウルナイトの効果発動」 ケンタウロスがいななくと同時に、六角形の心臓が変貌を遂げた。六方向に膨張 ―― 門を開く。傭兵と化したコアキメイル・モンスターを集わせる鋼の門。 「デッキから、『コアキメイル』 と名の付くモンスターを特殊召喚する。私が喚ぶのはこの1体。現れろ、《コアキメイル・クルセイダー》!」 

コアキメイル・ウルナイト(2000/1500)  
コアキメイルの鋼核を提示⇒コアキメイルをリクルート
[効果] [4] [地] [獣戦士]


コアキメイル・クルセイダー(1900/1300)
戦闘でモンスターを破壊⇒コアキメイルをサルベージ
[効果] [4] [地] [獣戦士]


 真鍮の鎧を纏った四つ足の獣戦士ウルナイトと、鋼核解放戦線の重戦士クルセイダー。幾多の決闘を勝ち抜いてきたつわものが、伝統を背負って並び立つ。
「コアキメイル・モンスターで今すぐ攻撃したいところだが……それは後々のお楽しみ。まずは!」
 大地に描かれる魔方陣。ウルナイト・クルセイダーを装填し、火走りトカゲ 《ラヴァルバル・チェイン》が浮上。チェイン・コレクション。札の海から財宝を引き上げ、焼け野原に保存する。
「オーバーレイユニットとなっていたウルナイトと、《コアキメイルの金剛核》を墓地に落とす。……効果発動」 抜け殻となった金剛核の使い道。部員達が 「出たぁ! コアキメイル・クッキング!」 「殻を刻んでまぶすことで」 「コアキメイル・モンスターを腐敗から防ぐ!」 と、騒ぐのを余所に墓地から除外。このターン、コアキメイルモンスターを破壊から守る。そして、 「リバース・カード・オープン! 永続トラップ 《コアの再練成》、ウルナイトを墓地から復活!」

ラヴァルバル・チェイン(1800/1000)  
1ターンに1度、ORUを1つ消費して発動
?デッキからカード1枚を墓地に送る
?デッキからモンスター1枚をデッキトップに置く
[装填] [4] [炎] [海竜]


コアの再練成(永続罠)
?コアキメイル・モンスターを特殊召喚
?自分のエンドフェイズ時にそのモンスターが破壊された時、攻撃力分のダメージを受ける


『《くず鉄のかかし》、《昇天の黒角笛(ブラック・ホーン)》といった非破壊勢は《レクリスパワー》で払いつつ、対角からの除去には金剛核を当てて行く。加えて、チェイン・コレクションの発動は再錬成にも繋がっています。若手とは思えぬ綺麗な連鎖。これが聖コアキメイルの伝統なのかぁっ』
「カードとカードの相互扶助、即ち、蜂の巣(ハニカム)構造が性能の過負荷を和らげる。後続あっての主力。部員あっての主将。Team Hexagonの決闘は、伝統と団結の中にあると知ってもらおう」
『鋼核の奇跡よもう一度! 止まらない。ジェームック選手が止まらない』
「《コアキメイル・ウルナイト》の効果発動。鋼核の門よ、再び開け!」 ほんの数十秒間の出来事だった。ウルナイトとクルセイダーが、もう一度コロナの前に立つ。
「これが、先輩の決闘……」
「まだまだぁっ! 手札から、《コアキメイルの鋼核》を除外!」 ジェームックの右手が輝き唸る。鋼の心臓を最大開放に導く投盤。 『僕などがこれを使ってもよろしいのでしょうか』 で始まり、 『代替わりの瞬間まで僕以外には使わせない』 に達した鋼の心臓。



眠れる鋼核を完全解放……現れろ!

鋼核龍 コアキメイル・マキシマム!




コアキメイル・マキシマム(3000/2500)
1ターンに1度 フィールド上のカード1枚を
なんであろうと問答無用ではっきりと破壊
by ジェームック・マイヤー
[特殊] [8] [風] [ドラゴン]


『鋼核龍のウインドブレスが、ナイトメア・シャークを吹き飛ばしたぁっ!』
 ジェームックの胸には決闘校章が刻まれていた。学業の質は可もなく不可もなく、学食の味も可もなく不可もなく、学費が兎に角安いことで知られる公立校・聖コアキメイル学園。行政の道楽から始まった性質上、校風は限りなく私立に近く(私立並のスカートの丈からも一目瞭然!)、その象徴とも言えるのが決闘会(定員300名・男子部)。ジェームック・マイヤーが衆を引く。
「我らがコアキメイル・モンスターは、既に発動済みの永続魔法 《オーバー・コアリミット》 の恩恵を受ける。即ち! 500ポイント攻撃力がアップする!」
「流石は主将!」 「扱いの難しい【聖コアキメイル】をこうも!」
「力の差を見せつける気だ」 「主将の場を見ろ!」

             主将[オーバー・コアリミット]
                (LP:11100)

     コアの再練成                ラヴァルバル・チェイン
   (Continuous Trap)                 (1800)

   コアキメイル・ウルナイト         コアキメイル・クルセイダー
       (2500)                   (2400)

               コアキメイル・マキシマム
                   (3500)


「フィールドが六角形を築いている!」
「《コアキメイルの鋼核》そのものだぁっ!」
「互いに人事を尽くそう」 ジェームックが狙いを定める。
「バトルフェイズ。しっかりと構えてくれよ、コロナ・アリーナ」
 強固に組まれた布陣が高濃度のコアキメイル・エナジーを放出していた。夏の陣に描き出される六角形の頂点が、つぶてとなって降り注ぐ。



聖コアキメイルの矜恃を今ここに!

六 角 形 の 魂(コアキメイル・ハート)




Team Arena:6300LP
Team Hexagon:11100LP

「流石は主将!」 「スマッシュヒットでガードクラッシュ!」
「見たかひよっこ! コアキメイル・ブレザーのプライドを!」
「うちの部員はこれだから」 六角形の双眸はにこりともしなかった。コアキメイルの布陣の内、最強の一撃を止められたという現実。直撃を免れたとはいえ、コロナの闘志が萎えていないという現実。脳裏を過ぎるのは攻撃直前の映像。防がれた鋼核龍のダイレクトアタック、墓地に送られていた《ネクロ・ガードナー》、起動したのは《明と宵の逆転》。それができたのは1人だけ。

明と宵の逆転(永続罠)
手札の光属性・戦士族(闇属性・戦士族)
を墓地に送り、同じレベルを持つデッキ内の
闇属性・戦士族(光属性・戦士族)をサーチ


ネクロ・ガードナー(600/1300)
墓地から除外⇒モンスター1体の攻撃を無効にする
[効果] [3] [闇] [戦士]


「ありがとう、コロ」
 赤い瞳が煌めくと同時に、戦陣を脅かす一陣の風が舞った。闘気の長女 アリア・アリーナ が《砂塵の大竜巻》を発動し、温存されていた副将のセットカードを虚空に散らす。
「おねえちゃん……」
「《砂塵の大竜巻》、第2の効果を発動」
 平和な水車からはほど遠い、縦長のブレードが煌めいた。両刃剣型デュエルディスク 決闘戦盤(アームズ) にマジック・トラップを1枚セット。対岸のジェームックは戦慄と共に視認する。
(赤いパーカーに黒いレギンス。丁度コロナの対極か。これだけの闘気をこうも)
 上がり目の目尻からは気が漏れていた。ジェームックは即座に覚悟を決める。
「ウルナイト・クルセイダーの維持に3枚目のクルセイダーを提示する。更に」 (壁を築く。僅かでも、守備力を) 「このカードを《コアキメイル・マキシマム》に喰わせ、六角形を堅持。ターンエンド」

「ドロー!」 両刃剣の柄頭はデッキホルダーになっていた。淀みなく札を引き抜くとフィールドを一瞥。颯爽と動く。 「明と宵の逆転 ―― 闇の誘惑  ―― マジック・プランター」
(闇属性から光属性、光属性から闇属性。こちらの反応が遅れている?)
 アリアは両刃剣のグリップを横に曲げると、トンファー状となった 決闘戦盤(アームズ) を右手で掴む。アンダースローで開拓されるデュエル・ロード。 "Summon" "Light"  "Warrior"  …… 《カオスエンドマスター》を通常召喚。 「《アサルト・アーマー》」 白一色の師範代が衣を纏う。

カオスエンドマスター(1500/1000)
戦闘破壊時 レベル5以上・攻撃力1600以下
のモンスターをリクルート
[調律] [3] [光] [戦士]


アサルト・アーマー(装備魔法)
?戦士族モンスター1体のみの場合、そのモンスターに装備可能装。攻撃力が300ポイントアップする。
?墓地へ送る事で、このターン装備モンスターは1度のバトルフェイズ中に2回攻撃する事ができる。


(あんなに白くて綺麗なのに) コロナはじっと見つめ、
(白いままじゃいられない) 唇をぎゅっと締め付ける。

「《魔導ギガサイバー》を特殊召喚」

魔導ギガサイバー(2200/1200)
自分フィールド上に存在するモンスターの数が
相手フィールド上に存在するモンスターより
2体以上少ない場合、手札から特殊召喚可。
[効果] [6] [闇] [戦士]


( 『壁』 を前提にしたカウンター・アタック) ジェームックが息を呑む。
(このターンの為にチャージしている。この速度。まだ上がるのか)

「《死者蘇生》 ―― 《強化蘇生》 ―― "ランク4" "エクシーズ"」

 更に加速。

「マジック・トラップ、発動」

 鬨の声が響いた。

 局地的全体強化系永続マジック ―― Solidarity of Family

 墓地発動型単体強化系通常トラップ ―― Skill Successor

「うちの子は良い子だから」

一族の結束(永続魔法)
墓地のモンスター全てが同種族の場合
フィールド上の同種族全てを800UP


スキル・サクセサー(通常罠)
墓地から除外することで発動
対象のモンスター1体を800UP


(これは……なんだ……)
 ジェームックがある現象に気付く。有り触れた、それでいて不可解な。
(OZONEの、申し子とでも) 《一族の結束》のもと、 混沌の師範代(カオスエンドマスター) が飛躍した。下級から上級への飛躍。華奢な体が筋量を増し、白銀の鎧が光輝を放つ。
(アリア・アリーナ。抽選参加。予備大会。火力のデータが足りない。本戦を見据え、力を抑えて勝ち進んだというのか。彼女は、彼女は一体どこから来た) 墓地から。墓地から発動した《スキル・サクセサー》が 混沌の先導者(カオスエンドリーダー) を更にもう一段飛躍。白金の鎧を纏わせる。
混沌の統括者(カオスエンドルーラー) が、白腕を構えたぁっ』

「まただ」 観客席のテイルが呟く。 「あいつの結束型を見るのはアブソル戦と合わせて2度目だが、あん時より更にはっきりと飛躍してる。鏡よ鏡よOZONEさん、あいつの何を映してんだ、おい」

「何が違うのかな」 シェルが黒髪の端を摘みながら言った。
「あの人みたいにバンバン召喚できないし、あの人みたいにバンバン強化できないけど、似たようなことができないわけじゃない。なのに、なんであんなに、根っこから違って見えるんだろ」

「装備魔法、《アサルト・アーマー》を解放」 解放されたデュエルオーラの余波で、アリアの長髪がほんの少し持ち上がる。 「《カオスエンドマスター》は 2回攻撃 を得る」
(耐えろ!) ジェームックが歯を食いしばった。
(あの攻めを耐え切る。副将にドローを!)
「バトルフェイズ、行くよ」 一番手は《魔導ギガサイバー》、鋼核龍に剣を向け…… 「迎え撃て!」 ジェームックが叫んだ。 「マキシマム・シックス・ストリーム!」 鋼核龍が風属性のブレスを放ち、編み込まれた風の槍が反骨の戦士を貫く。一般部員達は喝采を上げる、が、ジェームックはぴくりとも頬を緩めなかった。 「この現象は、まさか」 一対多の闘いに明け暮れた救援の士が霊体と化し、2つに別れてマキシマムとチェインに取り憑く。 "Bounce" "Deck" "Double" ……救助という概念は、時として暴力に化ける。 「 自由、解放 」

自由解放(通常罠)
自分フィールド上のモンスターが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時に発動。
フィールド上に表側表示で存在するモンスター2体を選択して持ち主のデッキに戻す。


 瞬きを終えた頃には敵が消えた。《カオスエンドマスター》+《アサルト・アーマー》。光の戦士と影の戦士による瞬足の双腕掌。目を見開いた頃には場が空いた。ウルナイトとクルセイダー、その心臓がいとも容易くぶち抜かれ。息を吐く頃には肺が止まっていた。戦場から飛び出した2人の修羅 ―― 機鋼忍者ツインアースが主将の身体へ一直線。機甲忍法、双山靠を叩き込む。合計6100ダメージ。ジェームックの身体がかすかに浮いた。……いる。そこにいる。今際の際を看取る一筋の影。真っ黒な忍装束をその身に纏い、2本の、真っ赤な忍者刀を振り下ろす、即ち。



心に抱くは鋼の刃 刃に込めるは鋼の心

機甲忍者に油断無し 油断有るは死体のみ

『忍』 の一文字 二刀有り

『任』 の一文字 二心無し

忍×任

 務

 完

 了

機鋼忍者マシンナーズ・コマンド 鋼鉄心斬ブレード・ハート




機甲忍者ブレード・ハート(2200⇒3000/1000)
ORU1つを取り除き「忍者」1体を選択して発動
⇒このターン、選択した「忍者」は2回攻撃できる。
[装填] [4] [風] [戦士]


Team Arena:5800LP
Team Hexagon:0LP

『鋼鉄の心臓を斬り裂いたぁっ!』
「ぐはぁっ」 飛んだ。十字の斬撃紋を刻まれ、ジェームック・マイヤーの身体が飛んだ。
『六角形には六連撃を! 闘いの中で進化するフィールド! 10000オーバーのフィールドを粉砕し、更なる加速で、10000オーバーのライフを一気に斬り砕いたぁっ! Second Duelを制したのは、Team Arena! 彼女は一体何者か!』
 黒い瞳孔を囲む赤い虹彩。両刃型デュエルディスク 決闘戦盤(アームズ) を構える、アリアの配色は決闘と共に。1本1本に闘気が染みこんだロングヘアを、汗を吸い込み張り付くシャツを、腰元から足首まで伸びるレギンスを、真っ暗な墓地が黒く染め上げる一方、羽織ったパーカーを戦場の返り血で赤く染めていく。《死者蘇生》と《強化蘇生》を双刀に変えて、《機甲忍者ブレード・ハート》が試合を決めた。

「左右対称の六連撃」 ラウが感嘆の声を漏らす。
「2人分の火力に近いものがある。見事なものだ」
「ラウ先生的にはさ」 テイルが出し抜けに口を開く。
「昔の連れ合いがああなってるのどうなん? ブ・レ・ハ」
「良い決闘者に使ってもらえてカードも嬉しがってるだろうさ」
「それだけ?」 「おれにそれ以上を期待しないでくれ。それより」
「ああ」 テイルは、心を占めていたもう1つの議題に尻尾を伸ばす。
「飛躍しないんだよ」 「飛躍か」 「1回戦の帝王が使っても、インヴェルズを呼ぶ者がインヴェルズを集う者にはならない。そう言い張って違和感がないほど見た目が変わったりはしない。《スキル・サクセサー》の800を重ねても同じ事が起きた。それでも、なんていうか、不思議と違和感がねえし、 "OZONEは色々空気読むからそういうものか" ぐらいに思っていた。けどよ」
「ああ。あの《機甲忍者ブレード・ハート》は露骨におかしい。普通のブレハは黒と紫。なのにあいつのは、召喚直後から黒と赤。あれではちょっとしたクリムゾン・シャドーだ」
「あいつの《ギガンテック・ファイター》が黒と赤なのはそういうもんだと思ってた。サイドラのブラックヴァージョンなんてのもこの世にはある。けどよ、あのブレハの出所ははっきりしてる。動きどころか色さえ違う。ひょっとすると、あいつは西の規格を超えてるかもな」
「西の規格?」
「ちょいと調べたんだが、西部の決闘環境が整備されたのはここ10年ぐらい。案外大雑把な環境の中、上に飛び抜けた奴と下に蹲ってる奴がおんなじチームにいる」
「……あまり余所に肩入れしすぎるな。余所は余所だ」
「ああ。余所は余所だ。いつでもどこでも余所者だ」

(なんでだろう) コロナは手の平をぎゅっと握りしめる。 (おんなじ。あたしに注意を引き付けてブレードハート。ラウンドさんの時とおんなじ。なのに違う) 赤い瞳から目を反らす。 (いつも助けてもらって、今日もネクガで守ってもらったのに、なんで、なんであのブレードハートはこんなに冷たく感じるんだろ。あたしたちは、おねえちゃんの……遠いよ、おねえちゃん)

マイティ・ウォリアー(2200⇒4500/2000)
戦闘によって相手モンスターを破壊した場合、
その攻撃力の半分のダメージを与える。
[同調] [6] [地] [戦士]


「うわぁっ!」
 Third Duelは恐怖と共に始まり、悲鳴と共に終わる。赤い身体に黒い四肢。Team Hexagonのデュエル・エリートを襲う《マイティ・ウォリアー》の強化された右拳。プライドを投げ捨て盾を構え、デュエルを投げ捨て身を匿う。空白地帯に 黒腕戦技(ブラック・アームズ) が炸裂した。そこにはもう、誰もいない。
『決まったぁっ! Team Arena2回戦進出!』



Technological Card Game ――

Chain Duel ――

Complete ――

Winner ――

Team  Arena !




「理不尽過ぎる!」 「そうだ!」 「許せねえ!」 「よくも部長を!」
「筋肉が足りん!」 筋の一声に部員達が竦み上がる。部員達を一喝したのは、聖コアキメイル学園高等部 OB ビッグ・ブラザー。真横にスモールを伴い、試合を終えたベンチの前に進み出る。
「あの程度で恐れおののくとは。貴様等にプライドはないのか!」
「ビッグ……」 コロナが息を呑む中、もう1つの声が響き渡る。
「おまえたち、下がれ!」 ジェームックが、よろめきながらも一喝した。
「我々は正々堂々雌雄を決したのだ。ならば、誇りある敗者たれ」
 ベンチから立ち上がって数歩歩みを進めると、アリアの正面で背筋を伸ばす。
「アリア・アリーナ。我々の不甲斐なさにさぞ呆れたことだろう。深くお詫びしたい」
「あんたがもう少し早くこっちを警戒してたら、そんな簡単にはいかなかった」
「いずれにせよ勝敗は変わらない。沢山、課題が見付かった。……コロナ君」
 ジェームックは、傍らの少女に優しく声を掛ける。
「結果があべこべになってしまったな。2回戦も頑張ってくれ」
「ひょっとして、あたしたちのことを心配してくれて、それで」
「決闘は好きかい?」 「……好きでいたい。いたいから」
「恐れる気持ちと、楽しむ気持ちの両方を持ち続けてくれ」
 全てを言い尽くした主将は、副将に担がれ退場する。
 アリアは短く言った。
「ありがとう、主将さん。さようなら、主将さん」
 謝辞を述べるその陰で、3人娘が複雑な表情を浮かべる。コロナは半端に貰った衝撃波の感触を思い出し、シェルは険しい目付きで唇を噛みしめ、ティアはなんとなく空を見上げていた。

                    ―― 20日前 ――

「そのカードチョイスは幾らなんでも有り得ないと思う」
「作戦に必要なの。あの作戦でいくって決めて……」
「それはそれ、これはこれ。物には限度があるから」
「パルくんなんて、壊れたカードまで平気で入れるじゃん」
「ぼくはぼくの合理性を追求してるだけ。何度言えば……」
 かれこれ2時間ほど続いているパルムとミィの論争を横目に、テイルは比較的どうでもいい位置に寝っ転がっていた。軽く2〜3度あくびをかくと、いい加減うんざりして目を細める。
(《キラー・トマト》か《巨大ネズミ》か、《サイバー・ドラゴン》か《異界の棘紫竜》か、アタッカーかブロッカーか、単体除去か全体除去か、二者択一か一挙両得か……元気な若者かよ。若者だった)
「おまえら夫婦喧嘩は昼にやれ。親御さんに許可は取ったのかちゃんと」
「アトモスフィアにクロキシアンにビッグアイ。タッグデュエルならカウンター・アタックのターゲットには困らないけど、妨害も多いから大技は神経に悪いよ。使うけど」
「《トラップ・スタン》って、なんかこうスタイリッシュっていうか格好いいから憧れてたけど、《砂塵の大竜巻》の方がいいのかも。パルくんが反転させるターンに使いたいけど、なんかその前に良く割られるし」 「砂塵なら、返しの除去にチェーンして適当なの割れるしね。妨害の絶対数を減らしてくれれば、後はこっちでなんとかしてみせる。なんにせよ、火力は上げていかないと」
「あれ? パルくんのデッキ。ひょっとして《バトルフェーダー》は要らないんじゃ」
「きみの構成にも寄る。即死が怖いから入れてるようなもんだよ。トラゴーズと比べると、反転時の力不足は否めない。抜けるなら抜きたいんだよホントは。 "これ" も使いたいし」
「パルくんには最大出力を伸ばして欲しい。隙ができてもフォローするから」
「単純計算で倍の枚数が要る。きみのデッキの攻撃力は下がっちゃうよ、どうしても」
「そのつもり。攻撃か防御なら、わたしは防御面を重視する。そういうデッキにしたから」
「……」 テイルは尻尾から携帯を取り出す。ぴ、ぽ、ぱ……送信先はラウ。
「なんだ」 「寂しいから相手してくれ」 「今忙しい。切るぞ」
 時間にして5秒。心温まる会話が終了するともう一度目の前を見る。温まるどころか燃え上がっている2人を眺めて溜息を付くと、色々諦めた末に自分のデッキを弄り始める。現状を極力変えない一時除外から、昔取ったきねづかに。 「なんでおれ、こんなとこでこんなことやってんだか」

「あのプランを活かすなら」 パルムがひょいと案を出す。
「ブレイカーよりもライラだろ? 効果が噛み合ってる」

魔導戦士 ブレイカー(1600/1000)  
召喚成功時⇒魔力カウンターを置いて300アップ
魔力カウンターを消費してマジック・トラップを破壊
[効果] [4] [闇] [魔法使い]


ライトロード・マジシャン ライラ(1700/200)
守備表示にすることでマジック・トラップを破壊
エンドフェイズ デッキから3枚を墓地に送る
[効果] [4] [光] [魔法使い]


「打撃力を取るならブレイカー、補充力を取るならライラ。ぼくならノータイムで後者を取る」
「《カードガンナー》を触ってみた時も思ったんだけど、何が落ちるのかわからないから」
「Team MistValleyのジャムナード・アックスが聞いたらカリカリしそう。そういう風に考えるなら使わない方がいいかもしれない」 「パルくんはどういう風に考えてるの?」 「ライラは時計の針を3つ分進めることができる。デッキへのアクセスがドローフェイズ3回分早くなる。掘り進んだ分だけ未来に近づける」 「未来に……近づく……」 「あれを不確実な効果だと思ってる内は使うべきじゃない。 『発動に成功すれば確実にドローフェイズ3回分』 墓地を肥やすつもりで使ってるならお門違いもいいところ。落とすんじゃなくて引くんだよ、あれは」 「墓地への、ドロー?」  「ボーラとの一件もあるし、相手に見られるのを嫌う気持ちもわかるけど、1回試してみても損はないと思う」
「うん、わかった! ありがとう、パルくん」
 ミィは 決闘小盤(パルーム) から皆勤賞の札を外し、受け取った新戦力を挿し入れる。横から眺めている内にパルムの表情が変わった。 「どうしたの?」 少女の問いに少年が答える。
「ぼくに都合が良すぎるんじゃないかな。短い間だったけどきみの趣向は大体わかった。無骨なモンスターで攻撃したいんだろ。華麗なマジックで翻弄したいんだろ」
「……テイルさんから貰ったカードも散々練習したけど、大会レベルのパワープレイは間に合いそうにないから。今のわたしにできることを限界まで磨きたいの。パルくんはわたしと組んでくれた。大事なものを沢山もらった。わたしに都合の悪いことなんて1つもない。パルくんこそ……」
「ごめん、間違ってた」 理性よりも早く、感情よりも早く、パルムが思わず否定する。
「くだらないこと言っちゃった。ぼくら2人で決めたこと。やれるからやる。やる為にやる」
 ミィは、言葉を発する代わりに静かにゆっくりと頷く。数秒後、パルムが話題を変えた。
「あのさ。その辺にある箱取ってくれない? もう一度吟味したいから」
 ミィは幾つかある内の、 "Level 7" と書かれた小さな箱に手を伸ばす。視認性を上げる為か、小さな箱の蓋には2枚分のカードユニットを嵌め込めるようになっていた。蓋の右側に挿さっているのは、《ヘブンズ・セブン》と刻まれたカード。ミィがふと指を差す。
「地下決闘で使っていたカード。もう使わないの?」
「リードに発破をかけたくて使ったようなもんだけど、あれは2度も3度もやるような芸当じゃないし、タッグデュエルに向いてるわけでもないから」 「発破?」 「初めてあいつと会った時、受け取ったカードなんだ」 箱から《ヘブンズ・セブン》を取り出し軽く撫でる。 「使うことは滅多にないんだろうけど、目の届くところに置いておきたい。大事な思い出だから」 小さな箱に設けられた2つの部屋の、右側の入り口にもう一度《ヘブンズ・セブン》を挿し込む。 「さっ、やるべきことを」 「うん、やろう」

                  ―― 大会会場(第18試合) ――

「《魔轟神獣ガナシア》を手札から捨て、《魔轟神獣ノズチ》を特殊召喚。効果発動。ケルベラルとガナシア》を特殊召喚! 更に! 《魔轟神クルス》を手札から捨て、《魔轟神獣チャワ》を特殊召喚……シャシャーシャッシャッシャッシャ! 地下決闘仕込みのソニック・デュエルを見せてやる! 《魔轟神レイジオン》をシンクロ召喚! デッキから2枚ドロー …… まだまだいくぜぇっ!」
『初参戦! Team Sonicの猛攻! 小刻みな衝撃波が二乗三乗に膨れあがっています!』
 衝撃波の独占販売が始まった。カルテルトラストコンツェルン。レイジヴァルキュルレヴュアタン。寄せては返すヨーヨーが猛威を振るい、フィールド上を衝撃波が覆っていく。
「シャシャーシャッシャッシャッシャ! 今の俺はデオシュタインより……」

 人は誰しも、己の中に小さな部屋を持っている

「安い衝撃波だ」 溜め息と共に、真正面から言葉が漏れた。
「誰も死なない。誰も死ねない。そんな衝撃波を誇るなど」
 気怠そうに揺れたのは、目元まで覆われた白髪。衝撃波の弾幕を全身に浴びながら、人気の少ない路地裏を歩くように淡々と。当たっている。ことごとく当たっているが、その歩みは止まらない。
『御覧ください! 一体何の気紛れか、古の店長がデュエルフィールドに帰ってきたぁっ! 西部五店長の中でも屈指の奇人! 『吸収』 店長アブソル! 怒濤の衝撃波をノーガードで受けている!』
「なにぃ!? この俺のソニック・デュエルが効かないだと!?」

 その部屋は大きかった。とてもとても大きかった

「骨を折るなら折らせてやればいい。そのお手本を示そうと思っていたのに、これではその辺の女子校生すら殺せんよ。君の衝撃波など、我が盟友デオシュタインの足下にも及ばない。そもそも魔轟神とは魔が轟く神。この程度の投盤では、魔が囁く餌がいいところ」
「ほざくな! 投盤の衝撃波で足りないってんなら、バトルフェイズの衝撃波で ―― 」

 他人の部屋さえすっぽり入るほどに、その部屋はあまりに巨大すぎた



ブルゥゥゥゥゥアイズゥゥゥゥゥッッッ!



「なにぃっ!?」
『《青 眼 の 白 龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)》がブレスを吐いたぁっ! 殲滅のバースト・ストリーム! 《バーサーク・デッド・ドラゴン》に匹敵する全域放射が戦場を! しかし、しかしこれは!』
 範囲攻撃の代償は己の命。 "Release" "Destruction" の文字列が虚空に浮かぶ一方、限界を超えて吐き続けた白龍が破裂する。通常トラップ、《バーストブレス》。魔轟神を一網打尽。 
「君がちんたらやっているから、僕の相棒が痺れをきらしてしまった」
 アブソルはフィールドに背を向けると、壁に向かって歩き出す。
「後は任せたよ、 マンドック 」

「ウガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
「な、なんだ、こいつ」 禍々しいデュエルオーラが大地を揺るがす中、Team Sonicは《魔轟神レヴュアタン》の効果を発動。散らばったコンボパーツを掻き集めながら虚勢を張った。
「は、はは。おまえ、地下決闘で惨敗したマンドックだろ。下手な融合使いが粋がってんじゃねえよ。あれだろ? 《竜騎士ガイア》。バニラアイスが好きなら、デパートの屋上で遊んでろよ。この ―― 」
  喉元を掴まれたかのように声が止まる。全身の細胞の1つ1つを握りつぶそうとするかのような殺気。龍騎士マンドック・モンタージュ改め、狂龍騎士サイコマンドックが剣を取る。
「私ハ……私ハ……ワタシ ハ 正シイノダアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
 サイコマンドックが唸りを上げた。胸元に両手を寄せると、2枚のブルーアイズ・ホワイト・ドラゴンを魔方陣に放り込む。合計2回の儀式術。あのアブソルと瓜二つ、温故知新の儀式術。
『《高等儀式術》が発動しました。文字通りの高等呪文を、連続で発動しているぅ!』
 儀式専用の門が前面に開くと同時に、サイコマンドックが決闘盤を構える。黄金の盾剣型デュエルディスク 決闘騎盤(カオス・ブレード) を握ると、横一文字に剣を振る。斬る為ではない。飛ばす為。横薙ぎの勢いで盾が飛ぶ。……飛んだ先には儀式の門。増築された【Dragon Knight】が新たな内装を突き付ける。



ウガアアアアアアアアアアア!

カオス・ソルジャー、儀式召喚(リチュアル・サモン)




高等儀式術(儀式魔法)
デッキから墓地に通常モンスターを送る⇒レベルの
等しい儀式モンスターを手札から儀式召喚する


カオス・ソルジャー(3000/2500)
ひとつの魂は光を誘い、ひとつの魂は闇を導く
[儀式] [8] [地] [戦士]


「儀式だとぉっ!?」 蒼き鎧を纏った伝説の騎士の到来。何かが違う。何かがおかしい。恐れおののく地下の住人に対し、アブソルは壁により掛かったまま解説した。
「 決闘騎盤(カオス・ブレード) の投盤はいつ見ても傑作だ。ファルスエッジ家の伝統、かの 決闘鎌盤(ラ・モール) に匹敵する扱いづらさ。完全習得すれば他の高性能決闘盤に匹敵する……などといった特典も一切ない。装着時の見栄えの良さと、投盤の珍妙さ以外に何の見所もない駄作中の駄作」
「ウガァッ! ウガァッ! ウガアアアアアアアアアアッ!」
「それがいい。ある種の様式美とはそれ自体が魔法のようなもの。ゼロ+イチの足し算が一体何をもたらすか。折角の機会だ。自分の身体で味わってみたまえ』
「なんなんだよ、おまえ!」 大地をえぐるほどの衝撃波が魔囁餌(ましょうえ)使いを襲う。えぐったのはツイン・カオス・ソルジャーの曲刀。即ち、混沌双破斬が盾を弾き、更に膨れ上がっていく。
「チカ ノ ゴミドモハ! コノ マンドック・モンタージュ ガ タオス!」

(Team BigEater) 妹達と歩きながら、アリアは宿敵の選択肢を見定めていた。
(エアロシャークの攻撃名と全く同じ。悪い冗談? それとも、『名は体を現す』 と言いたいの)
 赤い瞳が闘技場を見下ろすと、単眼の吸命機が不気味に佇んでいた。儀式生物《サクリファイス》。飛び出た単眼、突き出た鍵爪、記憶に新しい吸収生物。しかし、腹の大穴には何も吸われていない。不味いと言わんばかりに《強制終了》で吐き出し、食い足りないと言わんばかりにゼロを敷く。
「手は扉。扉は家の象徴」 小さな身体に大きな部屋を。ブラックホールのように巨大な部屋を持つ産まれながらの精神吸収系決闘者。部屋の扉を開くように、ばっと手の平を開け放つ。 「特に決闘者のそれは雄弁に物語る。その手では足りない。被食者としても、捕食者としても。君達の部屋は、要らない」 まるで指揮者のように手をあげる。 「さぁ君達。夢をその手に」

「ヒャッハァ!」 マンドックではない。いる。もう2人いる。
「な、なんだ "こいつら"! ヤクでも極めてるってのか!」
「オレノ《騎竜》ハ《サイバー・ドラゴン》ニ進化シタ。文学的デスヨネ、文学的デスヨネ、ドウ! デモ! イイゼェッ!」 龍の背びれを思わせるモヒカンヘッドが天を衝く。 「チカラ ダ! チカラ ガ アレバソレデイイ!」 結合の文学チャンドラ・サッサ改め、狂結のサイコチャンドラが吠える。
「我ハ無迷」 「くそっ! こいつら、まるで痛みを感じてねえぞ!」
「我ハ無謬」 禿頭の修行僧が、"運命のBloo−D" のポーズを極める。
「我ガ アンティーク・ギア ニ 迷イハ ナイ。 迷イナド アル筈ガ ナイ!」
 確信の文学ゴードン・スクランブルエッグ改め、狂信のサイコゴードンが猛る。
「正義!」 「結合!」 「確信!」

 人は皆、部屋を持っている。自分の中に小さな小さな部屋を持っている

 手の平サイズの小さな部屋を、デッキとして具現化するのが決闘者

 大きすぎる者がいた。何もかも吸い込み、決して壊れぬ無尽蔵

 他人の部屋さえ、他人の決闘さえ喰らってしまうブラックホール

 中央十傑が1人、アブソル・クロークスが両手を広げて吸い尽くす

「融けて、合わさり、大きくなあれ」



青 眼 の 白 龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)3体融合!

青 眼 の 究 極 竜(ブルーアイズ・アルティメット・ドラゴン)



サイバー・ドラゴン3体融合!

サイバー・エンド・ドラゴン!




古代の機械巨人(アンティーク・ギア・ゴーレム)3体融合!

古 代 の 機 械 究 極 巨 人(アンティーク・ギア・アルティメット・ゴーレム)




青眼の究極竜(4500/3800)
史上最強 にして 華麗なる 殺りく兵器
[融合] [12] [光] [ドラゴン] 


サイバー・エンド・ドラゴン(4000/2800)
鉄騎竜 三機 を 結合させた殺りく兵器
[融合] [10] [光] [機械]


古代の機械究極巨人(4400/3400)
絶対的 確信 に 基づく 殺りく兵器
[融合] [10] [地] [機械]


「う、うわああああああああああああああああああ!」
 "アルティメット・マニフェスト"  "アルティメット・エタニティ" "アルティメット・プラウド"。地下の住人を誅殺する究極の三審制。死刑、死刑、そして、死刑。あたり一帯を焦土に変える殲滅主義者達の咆哮が、狂気に染まったデュエルオーラの波が、Team Sonic自慢の衝撃波を押し流す。
『First Duelも、Second Duelも、Team BigEaterの勢いが止まらない! 儀式と融合の圧殺劇! ブルーアイズ・アルティメット・ドラゴンが、サイバー・エンド・ドラゴンが、アンティーク・ギア・アルティメット・ゴーレムが、サクリファイスを囲んで唸りを上げる! これがBig Eaterの本領かぁっ!』
 試合を終えたアブソルは、両手を広げたままぼそりと言った。
「もう何も隠さなくていい。全てを晒け出せばいいんだよ、アリア」



Technological Card Game ――

Chain Duel ――

Complete ――

Winner ――

Team  BigEater !




「ろくでもねえことしやがって」 テイルがパチンと舌を打つ。
(ガキ共が寝てて良かった。大会に慣れるまでは黙っておくか)
「ていうかよお、あんたら的にあいつはどうなんだよ、同僚だろ」
 テイルは、傍らの西部五店長に問いを立てる。 「謎の多い男なので見張っておいた方がいい」 「よくもまああんな連中を探してきたものだ」 「ファロは生理的に奴を嫌っている」 等々、聞いてる内にふと気付く。アブソルの素性、知らないまま警戒しているという事実に。
 テイルは押し黙ると、欄干に手を付いて空を見上げる、が、耳元で囁く声一つ。西部五店長が1人、『変幻』 店長ゴーストリック・ライアスタ。小声でテイルに話し掛ける。
「お気になられますか? アブソル・クロークスのことが」
「……」 「わたくしめにとっては、盟友の一人ですから」
「……おまえは、仮面を被る生き方を知っているのか」
「お互い様でしょう。ミツル様やアリア様に近づいたのは、そういうことではありませんか?」
「訳知り顔で生きてると、たまに足下を掬われるぞ」 「素晴らしいことです。何が起こるか予想はできても確信はできない。決闘の醍醐味とはそういうものではありませんか?」
「かもな」 テイルは、今一度フィールド上を眺めてぼそりと言った。
「迷えって言ったろ、ゴードン」

                     ―― 10日前 ――

「作戦会議を始める。……真っ先に考えるべきはサイドボードの構成だ」
 ラウがホワイトボードの前に立つ。眼前の席に着くのはテイル、パルム、そしてミィ。全員がこちらを向いたことを確認すると、ラウが1つずつ解説を始める。
「今回は "試合直前" と "Third Duel直前" にサイドチェンジの機会がある。地下決闘を彷彿とさせるが、あれと違って枚数制限があるのがポイントだ。勿論、相手の目の前で変えたりはしない。試合開始までFirstとSecondの相手はわからないから、迂闊にチェンジすると裏目を引く可能性もある。FirstとSecondが両方強く、個々の傾向も異なるEarthboundはその辺が強い」
 ホワイトボードに適宜メモを入れながら、ラウの講義がすたすた続く。
「1チームにつき15枚。5人で分けると1人3枚の計算になる。こういう風に考えた場合、多いか少ないかで言えば当然少ない。ならどうすればいいのかという話になるが、真っ先に思いつくのが 共有 という選択肢だ。《砂塵の大竜巻》のように、汎用性の高いカードをサイドに詰め込んで共有する方式が何かと便利だが……生憎うちは、共有性に関しては1枚も2枚も落ちる」
「おれとパルは」 テイルが発言した。あぐらを組みながら話に加わる。
「砂塵使えないもんな。方向性が違うとこういうとき困るか。どうする? パル」
「いっそ枠を開けた方がいいんじゃないかな。ミィのデッキならサイドを活かせる」
「それもそうか。おいミィ。今回は試合前にサイドチェンジがある。もし構築に迷ったら、おれでも使えるカードをサイドに放り込んでおけ」 「えっ? えっと……」 「マイクラでも積んどけってこった。そんでラウ先生、あんたはどうすんの? やっぱ対応型でクロウでも積むん?」

「好きにやらせてくれ」

 数秒の沈黙。 「……いいよ」 最初に口を開いたのはパルム・アフィニス。 「ぼくらは文句言える立場じゃないから。そうだろ、ミィ」 改めて聞くまでもなく、ミィはこくこくと首を振る。
 ラウは軽く礼を言うと、テイルに向かってもう1つ。
「頼む。おまえの札もおれにくれ」
「もってけもってけ」 「ありがとう。我が儘を言ってすまない」
「あんたのお陰で持ってる部分が山ほどあるんだ。色んな奴らが少しずつ妥協して、少しずつ我が儘言って、それがチームってもんじゃねえの……っておれが言ってもあんま説得力ねえか」
「いや、そう言ってくれると助かる。後は、あいつが来てからもう一度……」

「サイドボードも悪かねえが、メインデッキがねえと始まらねえだろ」
 入り口から通りの良い声が鳴り響く。付けっぱなしの鉢巻きと付きっぱなしの顔の傷。4人が入り口を見るとそこには、Team BURST 最初の1人ことリード・ホッパーが立っていた。
「リードさん!」 ミィが、
「……おかえり」 パルムが、
「噂をすれば」 「なんとやら」 ラウとテイルが、口々に帰還を歓迎する。
 リードは2ヶ月前を懐かしむように首を振ると、自然体のまま大股で前に進む。4人のところまで来ると一旦停止。それぞれに向けてはっきりと言い放つ。
「好きにやっていいぞ。その代わり死ぬ気でやれ。死ぬ気で罷り通せ」
「わかった。善処する」 「はい!」 「うん」 「ん、まあ、それなりに」
「足踏みする時はおれに任せろ。無理矢理背中を押してやる」
「ところで」 ラウは1回頷くと、すぐさま話題を切り替える。
「…… あいつ との特訓はどうだったんだ。得るものはあったのか」
 聞かれたリードは "にっ" と笑い、決闘盤をバッグから取り出す。
「あれって!」 ミィが反応した。 「あれはパルくんが創った……」
「ああ。あれがあいつの新しい鞘だ。中身はぼくも知らないけど」
 リードは2・3歩前に出ると、ラウに新型を突きつける。 
「知りたいってんならさっさと構えろ。論より決闘だ」
「一理ある」 一旦距離を取ると、2人は互いに決闘盤を構える。
 リードは前傾姿勢の構えを取ると、4人に向けて大声で言った。
「五臓六腑を叩き起こして受け取りな! こいつがおれの新型だ!」

                 ―― 大会会場(第24試合) ――

『2号選手が《ヒーロー・シグナル》を発動! デッキに向かって救助信号を飛ばします!』
  空に浮かんだ『 H 』 の一文字。《E・HERO オーシャン》が倒されたその瞬間、全身白タイツのホワイトマン2号がライトを照らす。 "React" "Deck" "Summon" 新たなる英雄が……
「はっ」 対岸の 男? 女? が水を差す。 「救助戦士(オーシャン)が救助されるなんて、ミイラ取りがミイラじゃないか。そもそもさぁっ! それ見る度に思ってたんだけど、救助信号出すの遅すぎない? むざむざ仲間を逝かせるなんて、地上の英雄のやることかしら」
「ふっ」 ホワイトマン2号がにんまりとした笑みを浮かべる。 「流石は地下の有象無象。安い難癖がお似合いだ。《ヒーロー・シグナル》の効果、デッキからレベル4以下のエレメンタルヒーローを、プリズマーを特殊召喚! ターンエンドか? ターンエンドか? ならばぁっ、私のターン、ドロー! エクストラデッキからグロー・ネオスを提示、メインデッキからはノーマルネオスを墓地に送り、プリズム・コーディネートを発現! プリズマーを真っ白に、穢れなき白一色に染め上げる。そして!」

E・HERO プリズマー(1700/1100)
1ターンに1度、エクストラデッキの融合モンスター1体を相手に見せ、それに記載された融合素材モンスター1体をデッキから墓地へ送って発動できる。
⇒エンドフェイズまで、このカードは墓地へ送ったモンスターと同名カードとして扱う。
[効果] [4] [光] [戦士]


E・HERO ネオス(2500/2000)

 

[通常] [7] [光] [戦士] 



 2号の手の平がぱぁっと輝き、広く、大きく、膨れあがっていく。 魂を炎に変える《火霊術−「紅」》よろしく、プリズムネオスの魂を白に変換。全てを呑み込む憤怒の白。即ち、
「跡形もなく消え去れ、《ラス・オブ・ネオス》!」
「大味過ぎるんだよ、カウンター・トラップ・オープン!」
 一般的に、魔導士の世界では最低でも 『燃えるゴミ』 『燃えないゴミ』 『プラスチック』 『マジック』で分別が行われている。一念発起、手の平に 『マジック』 専用のダストボックスを形成すると、ゴミの収集を開始した、が、ゴミ箱開けてあら不思議。中にあるのは《H−ヒートハート》1枚限り。
「我らは西部の防波堤! 《マジック・ドレイン》を堰き止める!」

ラス・オブ・ネオス(通常魔法)
自分フィールド上に表側表示で存在する
「E・HERO ネオス」をデッキに戻し、
フィールド上のカードを全て破壊する。


マジック・ドレイン(カウンター罠)
相手の魔法カードの発動を無効にし破壊する。相手は手札から魔法カード1枚を捨ててこのカードの効果を無効にする事ができる。


「ああ〜もう! これだから不確定カウンターは嫌いなんだよ! 二度と入れるもんですか!」
『見渡す限りの真っ白な世界! ボーラ選手の場が、跡形もなく吹き飛ばされてしまったぁっ!』
「《ヒーロー・シグナル》に端を発した救助……ここに完結すると知れ! 墓地から、ネオスとオーシャンを除外し《ミラクル・フュージョン》を発動! 救うのはこれからだっ!」


西部の白き防波堤よ、今こそここに!

E・HERO Absolute Zero、融合召喚(フュージョン・サモン)




E・HERO アブソルートZero(2500/2000)
?フィールドを離れた時、相手モンスターを全て破壊
?水属性の味方が存在する場合 500UP
[融合] [8] [水] [戦士]


『雪のように、氷のように真っ白な! 白氷の戦士、絶対零度!』
「オーシャンはここにいる。救助活動はここに完結したのだ。喰らえ、ホワイトランス!」
『空気中の水滴が固まってぇっ、氷の槍が乱れ飛ぶ! 天然のミサイルポッドが ―― 』
「なんだよ。それ」
 左右非対称の決闘者が苛立ちと共に呟いた瞬間、軌道が逸れる。2本の小さな竜巻、それも、双発機のプロペラから放たれた2本の小さな竜巻がアイスミサイルを薙ぎ払う。
 防御に秀でた、迎撃戦闘機(インターセプター) ここにあり。
『アイスミサイルを防いだのは、《サモン・リアクター・AI》!』

E・HERO The シャイニング(2600/2100)
?除外された「E・HERO」1体に付き300アップ
?フィールド上から墓地に送られた時、除外された「E・HERO」2枚を手札に加える
[融合] [8] [光] [戦士]


サモン・リアクター・AI(2000/1400)
1ターンに1度、相手の召喚・反転召喚・特殊召喚時に800ポイントのダメージを与える(このターンのバトルフェイズ、相手モンスター1体の攻撃を無効にする)
[効果] [5] [闇] [機械] 


「墓地融合は嫌いじゃない」 彼/彼女は左右非対称で出来ていた。肩にかかるほど左側の髪を長く、耳にも届かぬほど右側の髪を短く。地下決闘筆頭補佐、ボラ―トン/ボーラがここにいる。
「正規融合でも墓地融合でも好きなようにやればいい。けどさ。死体を混ぜこぜニコイチなんて、それはもう違う命だろ。美談にでもしたいってんなら、"救助魂を受け継いだ" とか言っときな。んでもってあんた、沈んだ母艦の滑走路からこの子が飛んだのド忘れしたの? なんで攻撃した」
「威嚇射撃のようなもの。我ら白き防波堤は圧力を持って攻める。1枚伏せてターンエンドを宣言」 「はっ、虚仮威しかい」 「なんならそちらから攻めてみろ。アブソルートZeroは氷の栓、堤防を堰き止める氷の栓。迂闊に栓を抜けばダム決壊、津波で押し流してくれよう!」

「あらあら? 安い挑発に乗っかる阿呆が、【防衛許可証(リアクト・パーミッション)】 を使えるかい。あたしのターン!」
 左に赤、右に青、左右非対称のカラコン越しに睨み返すと、そのままドロー。手札から《ブラック・ボンバー》を通常召喚。第1の爆発により《魔装機関車 デコイチ》をかち上げ、第2の爆発により倉庫を開ける。冥土の土産はデコイチ …… ではない。《サモン・リアクター・AI》にチューニング。

ブラック・ボンバー(100/1100)
召喚成功時 墓地からレベル4・闇属性・機械族
モンスター1体を効果を無効にして特殊召喚
[効果] [チューナー] [] [闇] [機械]


サモン・リアクター・AI(2000/1400)
こいつで8000丸々削り切った 時が
最高に気持ちよかった by ボーラ
[効果] [] [闇] [機械] 


「はん!」 楕円型デュエルディスク 決闘両盤(ツインラビット) をその手に掴む。円盤型とブレード型、両方の利点を備えた(と本人は豪語する)、ハイブリッドな決闘盤。
「威嚇射撃どうもありがとう。お礼に1つ教えてあげる」



両手の華は大事に使うもんだよ!

ダーク・フラット・トップ二番艦、出ろ!




ダーク・フラット・トップ(0/3000)
?1ターンに1度、リアクターを復活させる
?破壊され墓地に送られた場合、手札から
 レベル5以下の機械族を特殊召喚できる
[同調] [8] [闇] [機械]


トラップ・リアクター・RR(800/1800)
1ターンに1度、相手のトラップ発動時、
そのトラップを破壊して800ダメージ
[効果] [4] [闇] [機械]


『紫紺の空母の二番艦! 長い長い滑走路から、《トラップ・リアクター・RR》が発進したぁっ!』
 戦闘機部隊(リアクター・シリーズ) を修理・展開し続ける事に特化した、捻子と鉄板の錬金術師が空を占める。
「まだまだいくよ! 爆弾でかち上げたデコイチと、母艦で修理したリアクターでオーバーレイ! 《No.66 覇鍵甲虫マスター・キー・ビートル》をエクシーズ召喚!」

覇鍵甲虫マスター・キー・ビートル(2500/800)
目が黒い内は破壊させない。白くなったら知らん
[装填] [4] [闇] [昆虫]  


 対空防御に秀でた地上の甲虫。ボーラをして 『あたしにここまで投げ込ませるなんて、対した図太さだよこいつは』 と言わしめた戦線維持の鍵が、極めて厄介な防御効果を発動する。
「オーバーレイユニットを1つ取り除き、マスター・キー・ビートルの効果発動。マスター・キー・ビートルが存在する限り、うちの母艦は破壊されない。さあバトルフェイズ。絶対零度は面倒臭いから放置して …… マスター・キー・ビートルで1号のアナザーネオスをぶち抜く!」
 虎視眈々と一挙両得を狙う、絡み付くような視線。頭髪の処理からカラコンに至るまで、彼/彼女の出で立ちは徹底していた。左の髪は長く、右の髪は短く、左目は赤く、右目は青く、

    右 左
髪  短 長
目  青 赤

 雌雄同体を自称する、左右非対称の保札者がいけしゃあしゃあと攻撃を宣言。マスター・キー・ビートルの角から発射された怪光線がアナザーネオスを撃ち抜く。しかし、
「攻めが緩いぞ、それでも一挙両得か」
「ぶっぱなしは嫌いなんだよ。ああ、クソ、全然減らねえ!」

「8200対8100」 尻尾がだらりと垂れ下がっていた。いい加減うんざりした様子でテイルが欄干に顎を付く。 「こんだけダラダラ長く続けてようやく折り返しかよ」 「おまえはいつも適当なところでスパッと終わらせるからな」 「ラウ先生もそうだろ。何百ターン続ける気だよあいつら……」
「Team WhiteWallは西部の強豪。専守防衛の持久戦を得意としている。シャイニングやヒーローシティなどで戦線を維持し、アブソルートゼロやラス・オブ・ネオスで定期的にリセット。付いた渾名が、西部の白い防波堤」 「うえぇ」 「個人ランクを度外視し、この大会に全てを費やす妙な連中だが腕は確かだ。戦力も整い、今期はこれ以上ないぐらい仕上がっている」
「ホワイトマン1号が継戦タイプ、ホワイトマン2号が迎撃タイプ、合わせて地獄の持久戦。対岸は対岸で持久タイプだからクソみたいに長引く。お互いガンガン固めてるから、てんで動かねえ」
「いつかは動くさ。Team WhiteWallには十八番の札がある」

『さあ次は、ホワイトマン1号選手のターンです!』
「ドロー! フィールド魔法、《摩天楼2−ヒーローシティ》を発動」
 都会の生命力が形を成した摩天楼。超高速の都市計画で建築された白い高層ビルが周囲一体を取り囲む、が、悪質な政治的取引が建築を妨害。落盤と共に崩れ落ちる。
「《魔宮の賄賂》でカウンター。マジックもトラップも一挙両得、全っ然効かないねえ」
「ならば法に従い損害賠償を請求! デッキから1枚ドロー …… 引いたぞ!」 「げ」 「通常魔法 《O−オーバーソウル》。墓地から、《E・HERO アナザー・ネオス》を釣り上げる」
「ああもうウザい! なんかもう適当に死ねよ、《奈落の落とし穴》を発動!」
「甘いわっ! アナザー・ネオスをリリース、手札から速攻魔法発動!」
『手の平に魂を収束ぅっ! プラズマに変えて撃ち出したぁっ!』
「《デュアルスパーク》を発動。狙いは正面右端のセットカード!」
「くそっ、思わず嵌まっちまった。バル兄ぃっ! そっちいったぞ!」

「俺は何をしようか」

 フレームを廃したメガネの奥、広く鋭い上がり目の瞳が暢気に空を見上げていた。苛烈にほとばしるプラズマがセットカードに炸裂するが動じない。既に、その "何か" は始まっていた。打ち抜かれた筈のセットカードから尚もプラズマが伸びる。対角に向かって、伸びる、伸びる、伸びる。ホワイトマン2号がセットしたカード目掛けて伸びる。着弾、帯電、破壊。通常トラップ 《サンダー・ブレイク》。
「なら俺は何をしよう」 ノーフレームの視界が標的を捉え、捉えられた1号2号が怒気交じりに言葉を返す。 「好き放題暴れておいて今更何を」 「知らぬと思ったか、気づかぬと思ったか、地下の有象無象が雪崩れ込んだのは、貴様の仕業に他ならん」
「まだ何もしていない」 バルートンは、何食わぬ顔で淡々と言い連ねた。 
「偶然。あるいは必然かもしれない。地下と地上、交わる時が来たんだ」
「戯言を!」 1号が人差し指を突きつける。
「ここは地上の繁札街。地下の屑共に居場所などありはしない。そう。我々こそ西部の防波堤。地下も、外部も、あらゆる濁音を廃した白き世界を守り抜く。即ち……」
「 "ヒーローフラッシュ"。 使いたいんだろ、今すぐに」
「な……」 突然図星を突かれ、狼狽える1号。バルートンは事も無げに言った。
「条件を揃えにくいヒーローフラッシュも、自然と長期戦になるおまえらなら問題ない。普通は〆に使って格好良くフィニッシュを飾るところだが、敢えてこの辺で使っておき、終盤はマス・デストラクションから総力戦を挑む腹づもり。終盤で罠を踏んだら怖いもんな。俺達には絶対負けられないんだろうが、専守防衛が電撃戦など慣れないことを。そわそわしすぎる」
「貴様。我々を、Team WhiteWallを愚弄するつもりか」
「ならどうする。こちらはモンスターとトラップが1つずつ。使ってもらえると嬉しい」
「どうするだと?」 ホワイトマン1号が白い歯を噛みしめる。そして、
「こうするのだ! エマージェンシーコール、デッキからアナザー・ネオスを手札に加え通常召喚。更にヒートハートを発動。アナザー・ネオスの攻撃力を、限りなくネオスに近づける」
「おいおい本気でやるつもりか? そんなことしちまったら」
「既に看破は終えている」 「なっ、看破だと!?」
「我が必殺の高等呪文を受けよ!」

 『H』−Heat Heart

 『E』−Emergency Call

 『R』−Right Justice

 『O』−Over Soul

「この4枚を墓地から除外し、ヒーローフラッシュを発動!! デッキから《E・HERO ネオス》を特殊召喚し、このターン、純ネオスと準ネオスはダイレクトアタッカーとなる!」
『フィニッシュカードのヒーローフラッシュを、ここで使ってきたぁっ!』
「《E・HERO アナザー・ネオス》でダイレクトアタック!」

バルートン&ボーラ:5700LP
ホワイトマン1号&2号:8200LP

『アナザー・ネオスのダイレクトアタックが決まったぁっ!』
「なぜだ……セットがミラフォでないと、なぜ見抜けた」
「ミラーフォースを張っているなら、ヒーローフラッシュを見抜いているなら、なぜそれを教える。 『見抜かれた以上は攻撃を中止しよう』 そんな思考に誘導する狙い。一網打尽などありはしない。バトルフェイズ続行、ネオスでダイレクトアタック!』
「ちっ、リバース・カード・オープン!」 「単体除去なら一向に構わん、礎となれ、ネオス!」
 ネオスが跳躍した。向かう先が決闘者であろうと次元牢であろうと構わない。覚悟を決めた真っ白な手刀。即ち、収束型ラス・オブ・ネオス。憤怒の抜き手が炸裂した瞬間、1号が白目を剥いた。
「小賢しい……真似を……」

バルートン&ボーラ:5400LP
ホワイトマン1号&2号:8200LP

 負けるが勝ちのバトルが、勝てるが負けのバトルに転倒する。第三の可能性。ネオスはその手刀を持って、怨嗟を凝縮した青肌の魔人形 ―― 《ダーク・ネクロフィア》の土手っ腹を貫いていた。狼狽した1号は残りの2枚をセットするが時既に遅し。エンドフェイズ、凝縮された怨念が新たな依り代に憑依する。 真っ黒な怨念が、真っ白な英雄に憑依する背徳的情景。
「《ダーク・ネクロフィア》で《E・HERO ネオス》に憑依、支配権を得る」
 

ダーク・ネクロフィア(2200/2800)
相手によって破壊されたターンのエンドフェイズ、
相手モンスターに装備してコントロールを得る
[特殊] [8] [闇] [悪魔]


「《地縛霊の誘い》」 ラウが呆れたように呟く。 「ネオスの攻撃対象を無理矢理《ダーク・ネクロフィア》に誘導して効果発動。相も変わらず肝が太い男だ。あんなもの、よくも入れる気になる」
「あんにゃろう。何を土産にここに来た」

                                      
   E・HERO アナザー・ネオス    | E・HERO アブソルートZero  

                        覇鍵甲虫マスター・キー・ビートル
       E・HERO ネオス         ダーク・フラット・トップ
       ダーク・ネクロフィア    |                    


「ネオスか。真っ白なもんだ」 OZONEという名の特殊重力下、支配権を変更したカードユニットがバルートンのもとに移動する。 「さて」 じっと見据えてふと呟く。
「口から先に生まれてきたんだ。言いたいことが幾つかある」
 侵食的な黒が揺らめいた。ダークスーツを着た侵入者が門番達を問い糾す。
「防波堤を名乗るやつが津波で押し流すというのは中々気の利いたジョークと言える。しかしだ、防波堤を名乗る奴らが地縛神を野放しにするってのは、いったいどういう了見だ。あんなもんどこをどうみても悪役だろ。まっくろくろすけが守り神? おまえらそれでもヒーローか。笑えねえ」
「地縛神は土地神! 荒廃する西を救った守り神。御神体を守るのが我らの勤め。貴様こそ分かっているのか。穢れなき "白" はHEROの真髄。覚悟してもらうぞ、奸物!」

「ああ。覚悟ならできてる」 バルートンは、事典型デュエルディスク 決 闘 書 盤(ヴァルワール・リーヴル) に右手を添える。 「もっと早く覚悟すべきだった。その代わりと言っちゃぁなんだが……遅れてきた札は美味いぞ。俺のターン、ドロー!」 愛読書を捲った瞬間、その脳裏に決闘が過ぎる。群雄割拠の、決闘が。



Team Earthboundは 正々堂々王者の決闘で迎撃した



Team FlameGearは 消耗戦からの一点突破で貫通した



Team MistValleyは 強固な世界観で外来種を拒絶した



Team Arenaは 稚魚を囮に死角からの暴力で粉砕した



Team BigEaterは 吸い込んだ部屋を解き放ち膨張した



「なら俺は何をしよう」 ほのかに沸き上がるデュエルオーラと共に、地下の餓狼が殺気を徐々に解放していく。デッキは銃口、カードは弾丸。狙いを付けるは 地上 の頂点。 「俺は、俺達は」



Team BelialCrossは 境界線を踏み越え決闘を冀求(ききゅう)する



「《As-アシスト・アタック》を発動。ボーラの《ダーク・フラット・トップ》を拝借する」
「Why!? 空戦部隊との連携もなく、母艦のみを調達してどうするつもりだ」
「そんなもん売っぱらうに決まってるだろ」 解体される紫紺の空母、競売される捻子と鉄板、手元に舞い込む札の束。 「《アドバンスドロー》。母艦は高く売れるんだよ」
「おいバル兄ぃ! 人様のカードを勝手に売るんじゃねえ!」
「更にもう1つ、手札から《死者蘇生》を発動。棺桶開いて、はいおいで、おまえんとこの《E・HERO エアーマン》をかっぱらって効果発動。デッキから悪魔もどきの、《D−HERO ディアボリックガイ》を引っ張る。もう一丁! 
《闇の誘惑》を発動。2枚引いて、ディアボを除外」
 決 闘 書 盤(ヴァルワール・リーヴル)は開かれっぱなしだった。 "Draw" の文字が浮かぶ度、頁を破り取るようにカードを引く。笑っていた。バルートンは確かに笑っていた。 「はぁーはっは! ドローは楽しいなあ、おい!」
「戯れ言を。墓地へ送られ、除外され、手札の枚数もろくに変わらん。何も変わってはいな ―― 」
「バル兄ぃはめくったんだよ」 左右非対称の(自称)雌雄同体、ボーラが口を挟む。 「あたしのドローは金銀財宝がっぽがっぽなドロー。バル兄ぃのドローは似て非なるそれだ。バル兄ぃのドローは、ページをめくる為のドロー。新しい可能性を引き出す為のドロー。手が届くなら、引き抜けるなら、どこにあろうが追いつける。バル兄ぃの、【強欲な悪鬼(アヴァール・デモン)】なら追いつける」

「兄者」 ベンチで呟く者1人。三兄弟末弟ブロートンが仮面越しに呟く。 「なぜ今更地上に。《早すぎた埋葬》を禁止する世界など、文学的に間違っているというのに。兄者ぁ……」

「《異次元からの埋葬》を発動。動かない物を動かしに来たんだ。なんだってやるさ」
 墓場も、次元も、何もかも。欲望を滾らせ、次元を超えて、更なるページを捲り取る。
「ディアボを墓地に戻して効果発動。ディアボ?を特殊召喚。エアーマンとディアボリックガイ、2つのヒーローをリリース。そう、これだ。西部の伝統、弱肉強食のアドバンス召喚といこうか!」
(デオシュタイン、パルム、でもって大馬鹿……御陰様で、大事なページが仕上がった)
 黒一色の抜札者が広く鋭い視線を放つ。縁を廃したツーポイントのメガネ。額を晒したオールバックの黒髪。ダークスーツの決闘者が決 闘 書 盤(ヴァルワール・リーヴル)を右手で開く。左手に持っていた "デーモン" をしおりのようにすっと差し込むと本を閉じ、そのままゆったりと投盤の態勢に入る。右腕を横に振るバックハンド・スロー。投げ入れられた決闘書盤がモンスターゾーンでふわりと開き、本の中から冀求(ききゅう)の悪魔が現れる。 「暴れていいぞ」 ミツル・アマギリと2つ違いの27歳、二者択一のバルートンが歯を晒して笑う。地下から引きずり出された決闘のはらわた。埋葬されていた悪鬼達を率いる紫煙の王。血塗れの大剣を携え、地下の凶皇が動き出す。



さあ新型のお披露目だ!

戦慄の凶皇−ジェネシス・デーモン!




戦慄の凶皇−ジェネシス・デーモン(3000/2000)
手札・墓地の「デーモン」と名のついたカードを1枚除外
⇒フィールド上のカード1枚を破壊する(以下省略)
[効果] [8] [闇] [悪魔族]


『悪魔の総大将が剣を握ったぁっ! 対抗する術は果たしてあるのか!』
「ならば!」 1号がデュエルオーブを光らせた瞬間、覇鍵甲虫マスター・キー・ビートルの土手っ腹がぶち抜かれる。ノーマルトラップ 《ヒーロー・ブラスト》。攻撃力2500以下のマスター・キー・ビートルを破壊すると同時に、手札に《E・HERO ネオス》を回収する。
「面白いプレイングだ」 「恐れをなしたか」 「恐怖なんてもんは、地下決闘じゃ御馳走の代名詞。墓地から《トリック・デーモン》を除外し、ジェネシス・デーモンの効果発動。マリシャス・ディスチャージ!」
 人間は酸素を吸って二酸化炭素を吐く。1人1人では極めて微弱な自然破壊。凶皇は違う。悪魔の魂を吸い、悪意の塊として吐き出す。一騎当千の災厄がアナザー・ネオスを襲ったその瞬間、



西部の白き防波堤よ、今こそここに!

超 融 合(スーパー・フュージョン)、E・HERO The Shining!




E・HERO The シャイニング(2600/2100)
?除外された「E・HERO」1体に付き300アップ
?フィールド上から墓地に送られた時、除外された「E・HERO」2枚を手札に加える
[融合] [8] [光] [戦士]


 試合会場にひときわ大きな歓声が上がる。誰もが見知った西のヒーロー。固められた石膏のように真っ白なボディ。《超融合》の導きにより白光の戦士が現れ、実況が賛辞を送り出す。
『《ヒーロー・ブラスト》で回収した巡ネオスをコストに、純ネオスと準ネオスで超融合を発動! ダーク・ネクロフィアを外しつつ、マリシャス・ディスチャージを躱しつつ、エースカードを降臨させたぁっ!』
「そうそう好きにはやらせんぞバルートン!」
「腐っても鯛。

 おかげさんで、

 奪い甲斐が出る」
『あぁーっと、シャイニングが沼地のように黒く染まっていくぅっ!』
「なにぃ!?」 「1号! こっちもだ! アブソルートZeroが」
『真っ白なシャイニングが、真っ白なアブソルートが、真っ黒に!』

堕落(装備魔法)
場にデーモン・カードがなければ自壊
装備されたモンスターの支配権を奪う


堕落(装備魔法)
場にデーモン・カードがなければ自壊
装備されたモンスターの支配権を奪う 


「持久戦ってのは沢山引けるから堪らない。なに、似たような話さ。ゆったりヒーローフラッシュのパーツを集めたように、のんびり《堕落》を満喫したってわけだ」 「我々のHEROが……」 「そっちが地上の作法で地縛神を崇めるってんなら、こっちは地下の流儀で英雄様を従える。笑えるようになったろ。おまえらはうち向きだ」 「……貴様ぁっ! 地上の栄光を掠め取ろうというのか」
「栄光?」 「我らは西の防波堤! 我々がいる限り、決して……」
 ほんの一瞬、場を照らす日光がふっと消える。遮ったのは底なし沼の英雄。シャイニングが背中の短剣を降らし、アブソルート・ゼロがアイスミサイルを降らす。散弾の雨が晴れた次の瞬間、
「ぐはぁっ!」 破裂音と共に防波堤が弾ける。巨大な剣を握ったのは魔界の凶皇。 ブラッド・ブレードが血の雨を降らす。 「とっくに終わってる。とっくに始まってる」 抜札者が名乗りを上げた。

Team Belialkiller:5400LP
Team WhiteWall:0LP

『ぶった切ったぁっ!  四方八方にアプローチ! 恐るべき男が現れた!』
(バル兄ぃの【二者択一】が仕上がっている。眼前だろうが、正面だろうが、対角だろうが、真横だろうが、ありとあらゆるものを視野に入れ、リスク&リターンの二者択一をふっかける)
「ざまあない」 バルートンは淡々と呟く。 「そんなザマだから、俺達は」
 一旦ベンチに戻り、 闇の侯爵ベリアル と刻まれたカード・ユニットを一瞥する。
「初出のHEROシリーズは融合素材の名前を指定していた。基準を誤魔化すイミテーション・モンスターを使わない限り、HERO以外を融合素材にはできなかった。なのに基準が緩和された。外様とも融合できるようになった。エレメンタルの言葉通りあらゆる要素と融合したくなったんだ。その結果生まれたのがネオスであり、ゼロであり、シャイニングであり……保守主義も原理主義も結構なことだ。それはそれで面白い。けどな、自分の足下すら見えてないんじゃお先が知れてる。なあ、ミツル」



Technological Card Game ――

Chain Duel ――

Complete ――

Winner ――

Team  BelialCross !




「おい!」 観客席の最前列から、テイルが声を掛ける。
「ろくでもねえな! 身も蓋もない勝ち方しやがって」
「【壁撞き遊び(ナイン・ウォール)】、ほざいたおまえが言えるのか」
「それを言われるとなんとも言えねえ。まあ何にせよ」

「はぁーはっはっはっはっはっは! 久しぶりだな尻尾野郎!」
 テイルの視界が何かで濁る。無理矢理入り込む2つの仮面。
「おまえらは……」
「はっはっは……」 「ふっふっふ……」

  決闘法定主義の祖マグナ・カードと、

  決闘料理界 『札』 の鉄人中村富照
                         」
「違う!」 「違う!」
 2つの仮面は勇躍すると、異様なハイテンションで自己紹介を繰り出す。
「地獄の沙汰も札次第。カーニバルマスクを赤く染め、黄金のマントを羽織った新機軸の人形師! 我が名は! 『地獄の 無限軌道(ベルトコンベニスト) 』 ネオッッッ! ガスターク!」
「聞く物全てを天国に誘う一大演説。マスカレードマスクを緑に染めて、銀色のマントを翻した古典主義的独演者! 我が名は! 『 唯我論的天国観(パラダイム・オブ・ゼッペス)』 シィィィィィィィン・ゼッペス!」
「なにぃ! ガスタークが、ネオガスタークになって蘇っただとぉっ!?」 
「真ゼッペス!? おれが倒したゼッペスは偽りだったというのか!」

「バルートン、何の為にここに来た」 「リベンジなら後にしてくんない」 2つの仮面を適当にあしらい、ラウとテイルが問い糾す。バルートンは楽しげに答えた。
「それも悪くないが、今回はちょっと別口だ」
「なんでもいいけど随分と浮かれてんな」
「当たり前だろ?」 「そのこころは?」
「西はこの10年間遅々として、同じことをずっと繰り返してきたのさ。いい加減、機が熟したと思わないか? 地上と地下、強豪と新鋭、くそったれ共の激突だ!」

                  ―― 大会会場(入り口前) ――

「遂にここに戻ってきた」
 1人の青年がデュエルスタジアムを見上げた。 「戻ってきたんだ」 充血気味の瞳、藍色に染めた決闘着、鍛えられた右腕……全てが一点に向けて凝縮されていた。 「親父」 過去と現在を交わらせ、蘇我劉抗が分水嶺の上に立つ。 「ミツル・アマギリは俺が倒す」
「おまえもミツルをぶっ倒したいクチか」
 背後から裏表のない声がした。太い眉を揺らす屈託のない笑顔と、背中に 津々浦々 と刻まれた緑色の特攻服。リードの顔を横目で睨むと、蘇我劉抗は静かに言った。
「ミツル・アマギリの首は誰にも渡さない」
「そんなら、敬意を払って入ろうぜ」

 ミツル・アマギリが創った世界に


【こんな決闘小説は紙面の無駄だ!】
読了有り難うございました。後手後手遅れで申し訳ない。次回は幕間
↓匿名でもOK/「読んだ」「面白かった」等、一言からでも、こちらには狂喜乱舞する準備が出来ております。


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