「諦めてる」
 ゴスペーナの言葉にラウは耳を疑った。2メートル近くあるデスサイズ型決闘盤(デュエルディスク) "断札の鎌(ラ・モール)"を、綿飴でも弄るかのように軽々と振り回す女性。ボディビルダーのような身体ならまだしも、ある日自然と足が浮いても違和感がないほど華奢な肢体。 『うちはみんなこうなの』 妖しくはにかみながらそう語る姿に 『興味深い現象だ。試しに一度衝撃波を喰らわせてもらえないだろうか』 と真顔で返したのが2人の始まり。 『絡まったら嫌だから』 後ろ髪が背中にかかることはなく、代わりに前髪が触覚のように垂れている。理知的な一方で退廃的。二十三歳。二十代とは思えぬ程の老成。 『諦めてる』 彼女はそう言った。指導決闘とはいえ実力差は歴然。決闘を始めて間もないラウが、中央十傑を謳われる彼女に勝つのは余りにハードルが高い。それでもラウは可能な限り手を尽くした。ゴスペーナの癖を自分なりに細かく分析し、対策も練って、20ターン粘りに粘った。
「ここまでやって、 『弱い』 でも 『温い』 でもなく 『諦めてる』 と言われるのか」
「強いということは理不尽なの。わかる?」 「理不尽な評価でもいいと?」
 ゴスペーナは笑って首を振った。わかってないわね、そう言いたげに。
「理不尽な力がある。才能、幸運、権力、財力……努力ですら、時には理不尽な力にみえる」
 ゴスペーナがラウの前腕を掴む。ラウの身体がふわりと浮いた。彼女はラウの顔を一瞥すると、にっこり笑ってそのまま壁に叩きつける。蠅叩きを打ち付けるかのように。持ち上げ、叩きつけ、持ち上げ、叩き付け。一度笑ってからは無表情のまま、何度も何度も叩きつける。
「気分はどう?」
「なぜ」
「なんとなく」
「なんとなくか」
「ほら諦めた」
「意味がわからない」
「私も忙しくなってきたからそろそろお開きかしら。楽しかったわ。貴方は覚えも早いし頭もよくて、なのにどうしようもないから退屈しなかった。そうね、折角だから1つだけアドバイス。高等教育を終えたら西で決闘をやりなさい。移籍条項には多分引っかからない。貴方でも少しは楽しめるかも」

――
―――
――――

(思っていたよりは開放的だ。これも文化か)
 ラウの第一印象はその程度のものだった。葬儀を執り行う大きな施設の、向かいに位置する葬儀用品店。ラウの他に客はいなかった。目的があって入ったわけではない。入っていた予定 ― 音楽研究会主催のイベント:ハイパー・アンサンブル・ステファニー ― が直前にキャンセルされてしまい、なんとなくあたりをふらついていた時、偶々目に入ったのがここだった。
(西の葬儀文化にも色々あるということか。この薪はどう使えば……)
「Team BURSTのジャック・A・ラウンド。今日は客として、か」
 最初に心を惹かれたのは奥行きを感じさせる眼だった。次いで、火で炙られたような肌が目に付いた。知っている。同い年。身長はラウとほぼ同じ。175センチ前後。肉付きはそれ程でもないが貧弱とは言えない。見る者が見れば意図的に身体を絞っていることがわかる。必要十分な肉体。
「Team FlameGearのチェネーレ。おれのことを知っているのか」
「知らぬわけがない。前々から手合わせ願いたいと思っていた」
「社交辞令は兎も角、店員としての知識や経験に用がある。バイトじゃないんだろ」
「ああ。葬儀屋の息子として、時折こっちを任されている」 「そうだと思ったよ。雰囲気が違う」
「身内に不幸が?」 「いや、単なる興味本位だ。気分を害するようならすまない」 「構わんさ」
「なら少し教えてくれ。おれはこちらの文化にそこまで詳しくない。この薪は何に使うんだ?」
「うちは火葬だ。火は信仰の対象でもある。その薪は墓の前で燃やす為に使う。一周忌だ」
 "火葬" その言葉を聞いてラウは納得した。Team FlameGearは燃えさかる(ほのお)の集団。炎に適性のある人間が日夜研鑽を積んでいる……そう耳にしていたから。
「一周忌か。ありがとう、参考になった」 「葬儀に興味があるのか」 「ああ、少しな」
「己の死に興味を持つ若者は少ない。なんなら裏手の墓も見ていけ。 "火打ち石" だ」

「墓場に来るのは何年ぶりか……」
 火打ち石の名の通り、2つの石が地を挟んで三角形を描いている。ラウはその場に佇んだまま動かなかった。特にこれといった理由も目的もなく、なんとなくそうしていた。1時間が経った。2時間が経った。ラウは動かない。脳裏に浮かんでは消える精力的な活動記録。
(4年経ったか。あの頃のゴスペーナとそう変わらない年になった。安い目標1つ見付からず、俗な目的1つ達成できていない。ビッグ、おまえはそう間違っていないさ。おれはきっと……)
「まだここにいるとは驚いた」
「まだ?」 「今日はもう店仕舞いだ」
 ラウは辺りを見回す。一通りの事情を把握した。
「すまない」 「時間を忘れるほどの思索。重要なことだ」
「そんな上等なもんじゃない。なあ。今すぐ心臓麻痺にでもなって、この墓地であんたのお世話になったらどうなる。生まれは中央だ。おれの魂とやらは西部に眠るのか。それとも中央に帰るのか」
「魂は西で眠る。中央を向いて眠る。故郷とはそういうものだ」
「そうか……。いい答えだ」
「何か迷いでもあるのか」
「何もないから迷っている」
 ラウは空を見上げた。真っ暗な世界が広がっている。
「葬儀か。いかに始めるかは色々考えていたが、いかに終わるかは考えていなかった。教えて欲しい。葬儀とは何だ。あんたは職業柄、人より多くの死に触れている。そこに虚しさはないのか」
 問い。この手の問答に慣れているのか、チェネーレはものの数秒の間に意思を表明した。日の光をレンズに集めるかの如く、凝縮され、身を焦がすような視線を放つ。  「その問いに答えるとしたら俺にはこれしかない」 チェネーレが掲げたそれは、炎の意匠をあしらった鉄の歯車。
決闘炎盤(フレイムギア)……まさか……」
「決闘は火葬だ」
「"決闘は強豪" "決闘は腹筋" "決闘は前進" "決闘は欲望" 色々と前向きな意見を聞かされたものだが、そいつは初めて聞く意見だ。冗談というわけでもなさそうだな。受講料は?」
「2週間程前だったか、Earthboundと練習会をした。レザールが絶賛していたよ。 『ジャック・A・ラウンドは甘えた決闘を見逃さない。嫌でも己を見直さずにはいられない』 」
「過大評価だ」 「互いに過大評価かもしれないが、そうでないかもしれない」
「……」 「札を引けばわかること。それ以外に真実はない」
「こんなところで闘り合うわけにはいかないだろ」
「場所を変えればいい。公園が近くにある」
「なら時間も変えてくれると助かる」 「所用があるのか」
「カードショップの店員。一度やってみたかったんだよ」


DUEL EPISODE 27

構築の所在〜死と炎の龍〜


 Team BURST大将:リード・ホッパーの目の前で、Team Earthbound大将:ミツル・アマギリが大声援を受けていた。リードにとってミツルは、己の栄華に拘泥した見栄えがいいだけの男でしかない。 『天地咬渦狗流・人狗一対の構えを取る前に倒す』 慢心した足下を掬ってやればどれだけスカッとするだろう。この日の為に全てを投げ打ち育て上げ、野性を解放した《マスター・オブ・OZ》をぶち込む。ぶち込んだ筈だった。ミツル・アマギリは油断などしていない。《バトルフェーダー》。あっさりと《マスター・オブ・OZ》が止まる。返しのターン、《死皇帝の陵墓》から浮上する巨大な地縛神。闇を纏った壱の拳が迫ってくる。逃げるしかない。どこへ。世界だ。世界に向かって飛べばいい。飛んだ筈だった。巨大なものにぶつかる。中央十傑:トゥリスミーラ・デオシュタイン。ボルト仕掛けのDARK RULERが殲滅の光を放射した。どこにも行き場はない。内から闇が、外から光が、リード・ホッパーを押し潰す。

「うわああああああああっ! はぁ……はぁ……ここは……どこだ」
 悲鳴を上げ、動悸と共に眼を覚ましたリードの第一声がそれだった。荒涼とした大地が眼前に広がっている。夢の可能性を検討したが、その間に頭が冴えてきて 「なんだよ、現実じゃねえか」 と認めざるを得ない。リードは懸命に頭を絞るが、迸る闘気が思考を断ち切った。誰だ。膝を立てて反転する。見知った顔がそこにはあった。鉄板のような胸板。丸太のような手足。悪鬼の如き形相。殲圧を是とする巨漢。いつも店で一緒にいる筈の豪傑。西部五店長が1人、パルチザン・デッドエンド。
「デッドエンド店長。ここは一体。なんでおれたちはこんなところに……」
「甘ったれた店員への制裁を始める。決闘盤を取れ」
「何言ってんだよ」 「決闘盤を取れ」 「夢から覚めたと思ったら。悪夢の続きかよ」
「貴様は店員業を舐めた」 「店員業?」 リードの顔が青ざめる。 「まさか……その所為で……」
「この一週間の態度は最早万死に値する。決闘とは一歩間違えば危険な競技。同様に、札を捌いて営利を成すカードショップの店員は、一歩間違えれば死の商人と言っても決して過言ではない」
「待ってくれよ店長。確かにここ数日は店員として身が入っていなかった。それは認める。けど……」
「カードショップの店員とは心技体札の四条項が整っていなければならぬ。世界を股に掛けるほどの偉大な決闘者はこの四条項を備えていて然り。昔、このデッドエンドに向けて言った。世界を取ると。しかし! 今の貴様は! 平店員業すらままならぬ腑抜けと成り果てた」
 デッドエンドが内なる気を解放した。吹き飛ばされそうになるほどの、闘気。
「まさか。あれをやる気なのか。西部カードショップに伝わる【店意武法(てんいむほう)】を」
「カードショップの経営とは戦争のようなもの。10年前、暴引族全盛期にあってはその傾向が極まっていた。無軌道に荒れ狂う暴引族達に対抗する為、我々店長は己の決闘を高め、あらゆる過酷な条件下で闘い続けた。故に! 道を外れた者には厳札を持って臨むのだ。それこそが店意!」
(足りねえ! 心の準備が圧倒的に足りてねえ! 店員の座を賭けた勝負、そうであるとしても)
「寝起きの目覚ましにいいことを教えよう。この決闘の形式はフリーフォール・デスマッチ」
「フリーフォール・デスマッチだと!?」 「負けたものがこの先の崖から突き落とされる」
「暴引族同士の抗争かよ! 正気か」 (目が据わってやがる。なんという剥き出しの殺気)
「帰宅手段を知るのはこのデッドエンドのみ。餓えるか落ちるかの違いでしかない。さあ構えろ!」
(腕っ節の喧嘩じゃ勝ち目はねえ。やるしかねえか。やらなきゃ殺られる。デッドエンドにされる)
「安心したぞ」 「あん?」 「決闘盤を構えるだけの心意気はまだ残していたようだ。ならば!」
 デッドエンドが更なる闘気を解放する。往年の西部五店長と比しても遜色ないほどの闘気。
 リードが決闘盤を掴み、外し、投盤の体勢を取った。半ば強制的に心を定める。
「時代が違うぜ時代が。いかにあんたが相手でも、おれは前に進まなきゃいけないんだ」
 リード・ホッパーが決闘袋盤(マーチ・オブ・コアラ)を構える。カードを、デッキを、チームを容れるリードの袋。限界まで最適化されたパルムの改造で幾分投げやすくはなっているものの、形状は平凡。中肉中背の体格と相まって、構えた姿は極々普通の決闘者。
 歯が埋まるほど噛みしめられた口元と、抜き身の激情迸る眼光を除いては。
「おれはカードショップを、ひいては世界を取る! ここでくたばるわけにはいかねえ!」

Starting Disc Throwing Standby――

Three――

Two――

One――

Go! Fight a Technological Card Duel!


Turn 1
■デッドエンド
 Hand 5
 Monster 0
 Magic・Trap 0
 Life 8000
□リード
 Hand 5
 Monster 0
 Magic・Trap 0
 Life 8000

「ぬるいぞ!」
 気迫。むしろ殺気。デッドエンドが繰り出した決闘盤はリードのそれをえぐるように弾き返す。渦巻く気炎が二重三重の層を成してリードを圧していた。デッドエンドは掌に殺気を込め、爛々と輝かせる。
 聳え立つ大樹から言の葉燃やすこと許さず。永続魔法:《禁止令》。フィールド上に立て札が突き刺さり、カードショップの荘厳たる秩序の下で《野性解放》の発動を封じる。リードが舌打ちした。彼は知っている。これだけでは終わらないことを知っている。永続魔法:《強欲なカケラ》。2巡を跨ぐことで《強欲な壺》へと完成する希望の断片。更に! 永続魔法:《一族の結束》。投入種族を一種に限定することを条件に、攻撃力を800ポイント上昇させる団結の大旗。更にマジック・トラップを2枚セット。
 西部五店長:パルチザン・デッドエンドが勇を成す。

Set Card 禁止令 一族の結束 強欲なカケラ Set Card

「早くも開店する気か! 永続魔法を主体とした、【 全 展 開 決 闘(フル・エキスパンション・デュエル) 】」

 【 全 展 開 決 闘(フル・エキスパンション・デュエル) 】 ――
 永続魔法は、縦横無尽に最速展開できる点において優越しており、故に、使い手にはある種の潔さが要求されると言われる。通常、決闘者はセットという行為を通じ、己の意を隠したままカードを展開できる。それこそが遊戯王の醍醐味であることは誰もが認めるところであるが、 "隠す" という行為の成立は "晒す" という行為の誕生にも一役買ったと言わねばなるまい。逃げも隠れもせず、敢えて1巡早く《一族の結束》まで晒すことによる非合理的な威圧感。西部五店長が一人、パルチザン・デッドエンドの決闘とはそれ即ち店意の決闘。店長業に専念すべく大会から退き、西部指折りのカードショップ:ヤタロックの就職志願者達を悉く殲圧。圧迫面接が今まさに、当時そのままの姿で蘇る!

(同じ多重展開でもロックやパーミとは根っこから違う。店長業の中で鍛えられた店意の決闘)
「ターンエンド」 かの宣言から1秒要さず、リードは勢いよくドロー。布陣への突破口を探る。
(あからさまな決闘。永続魔法が3枚。残りの面子もおおよそ読める。なら)
「手札から《クリッター》を通常召喚。ダイレクトアタック」

デッドエンド:7000LP
リード:8000LP

「マジック・トラップを1枚セットしてターン……」
「甘いわ小童! リバース・カード・オープン!」
 通常罠:《サンダー・ブレイク》。コスト:《ミンゲイドラゴン》。デッドエンドが繰り出した雷がリードのセットカード:《ドレインシールド》を打ち抜いた。文字通りの電撃戦。来る。決闘者としての 『殲圧』 店長パルチザン・デッドエンドが来る。

Turn 3
■デッドエンド
 Hand 0
 Monster 0
 Magic・Trap 4(《禁止令》/《一族の結束》/《強欲なカケラ》/セット)
 Life 7000
□リード
 Hand 4
 Monster 1(《クリッター》)
 Magic・Trap 0
 Life 8000

「ドロー! 《強欲なカケラ》に強欲カウンターを1つ載せる。リード・ホッパー。Team BURSTのリーダーを務め、私が経営するカードショップ:ヤタロックに勤務する22歳。Team BURSTを押し上げるには至らず、Team Earthboundに挑んでは破れ、中央十傑:デオシュタインに力の差を思い知らされ、平店員の勤め一つとして果たすことのできぬ、まさしく惨めな敗北者。デッキケースが泣いているぞ」
「挑発か」
「事実だ。大事な時に1回勝てればいい。その為に機械仕掛けの悪魔と、《デビル・フランケン》と契約を交わした。5000のライフを捧げた。その結果が、何も得られぬゴミクズだ」
「ゴミクズ……店長……」
 反論の為何か言おうとしたリードが思わず口をつぐむ。層を成した気迫が矢のようにばらけてリードの全身に突き刺さった。迸るオーラを大気に混ぜて、丸太の如き腕を突き立てる。
「死は贄を残し! 贄は命を育む! 勝者と敗者こそが決闘の最小単位! 屍の上に生を成す、それが闘いというものだ。まずは! 勝負の掟というものを教えてやる!」
 龍。骨に怨嗟が纏わり付いたかのような四肢。巨大な木の葉の如き翼。緑を基調としてはいるものの、生命賛歌を逆に否定するほど業の深い緑。その龍、悲劇を纏いて絶望を散らす。



Badend Queen Dragon Favorite Attack

 起 傷 転 血 (トラジェディ・ストリーム)!



デッドエンド:7000LP
リード:6300LP

バッド・エンド・クイーン・ドラゴン( 効果モンスター)
星6/闇属性/ドラゴン族/攻1900→2700/守2600
このカードは通常召喚できない。自分フィールド上の永続魔法カードが3枚以上の場合に特殊召喚できる。このカードの攻撃によって相手ライフに戦闘ダメージを与えた時、相手は手札を1枚選んで墓地へ送り、自分はデッキからカードを1枚ドローする。また、このカードがフィールド上から墓地へ送られていた場合、自分のスタンバイフェイズ時に、自分フィールド上に表側表示で存在する永続魔法カード1枚を墓地へ送る事で、このカードを墓地から特殊召喚する。


「想定が甘いぞリード。甘えた "あわよくば" を狩る、挨拶代わりのバッドエンドをとくと知れ」
(永続魔法が3枚並んだ時点でチラ付いてはいたが、バッドエンドに繋がるとは限らなかった。《ドレインシールド》も手元にあったんだ。《クリッター》で一発殴って、キルルートを増やすのは……)
「《バッド・エンド・クイーン・ドラゴン》の効果発動! 勝者を潤し敗者を毟る!」
「ちっ、ならこっちは《クリッター》の効果発動。デッキから《キラー・トマト》を引っ張ってから、《バッド・エンド・クイーン・ドラゴン》の処理を行う。墓地に送るのは《素早いモモンガ》」
「デッキから1枚を入荷! マジック・トラップを1枚セットしてターンエンド」

Set Card 禁止令 一族の結束 強欲なカケラ Set Card
        バッド・エンド・クイーン・ドラゴン

 崖の上にカードショップが展開していた。屋台骨となる中心部には永続魔法3枚を、両サイドにはセットカード2枚を置くことで対比を効かせたレイアウト。世界の広大さを強調した上で、来店者の眼を釘付けにする目玉商品。布陣の後押しを受け、威圧感を増した龍が訪れる者達を魅了する。
(布陣……か) リードは己の頬を叩き、発破をかける。 (ならば崩す。崩せば勝てる)
「ドロー。《闇の誘惑》。2枚引いて《ファントム・オブ・カオス》を除外」
(圧迫面接……掠り傷でも即座に2枚差。《一族の結束》で攻撃力も十分。その上、一度正規の手続きを経て特殊召喚された《バッド・エンド・クイーン・ドラゴン》は、場に永続魔法がある限り何度でも復活出来る。……考えろ。いかに店長が相手でも、突破口は……)
 モンスターを1体、マジック・トラップを2枚、都合3枚のセット。
 集中力を高めたリードが目を見開き、黒い瞳を剥き出しにした。
「こんなところじゃ終われねえ。あんたはここで倒す」

                     ―― 遊園地 ――

「断る」 パルム・アフィニスの第一声は、それはそれはそっけないものだった。
「組んだところで何の得もないよ。リードと違ってチーム作りで駆け回ったこともない。ラウと違って人に何かを教えた経験もない。テイルと違って要領も悪い。ぼくではきみを勝たせられない」
「違う」 ミィは腹の底から絞り出すように言った。 「違う」
「何が違うの」
「わたしは勝たせて欲しいんじゃない。勝ちたいんです!」
「……」 「勝ちたいんです。あっち側に、あっち側にいってみたくて」
「前から気になってたんだけど、なんできみはTeam BURSTに入ったの」
「誰もいなかったから。友達になれそうだった娘に 『一緒に木の上から身を投げよ』 って言ったら5秒くらいでいなくなっちゃって。1人でTV観てたら決闘盤が欲しくなって。買ってもらって。投げ込んで。わたしの周りに決闘してる子が全然いなくて。初めてのデュエ友だったテロくんもいなくなっちゃって。寂しくて、惨めで、みっともなくて、そんな自分が嫌いで。教室の隅っこ、昼休みの間中、給食を食べきれないまま残される為に生きてるような、そんな自分が嫌で嫌でしょうがなくて」
「きみもリードの 『世界を広げたい』 って気持ちに惹き付けられたの?」
「このチームに入ったおかげで色々なところで決闘できました。地縛館、大学、カードショップ、夜の決闘、地下決闘。一杯やって一杯負けてわかったんです。本物の決闘者は自分の世界を持ってる。自分の世界をぶつけ合ってる。わたしもそうありたいから。勝ちたいから……」
 パルムは口角と眉間に皺を寄せた。軽く息を吐き、ぼそっと呟くように言う。
「……勝ちたい勝ちたいって。ぼくらが勝つ為には何が必要だと思ってる?」
「え?」 「答えて」 「え〜っと……作戦会議?」
「100点満点中30点」 「あ……。ごめんなさい」
「決闘を戦争に見立てれば、何よりも必要なのは戦力。1本の竹槍を持った1人の兵士で10万の軍勢を打ち破ることはできない。でもきみにはポテンシャルがある。 『異常な量の投げ込みと打ち込みで染みついた悪い癖。それさえ矯正できれば』 ラウはそういうことを言いながら基礎を叩き込んだ。今なら投げ込みと打ち込みが活きる。倉庫に貯めてあるカード・ユニットは全部試していい」
「え?」 ミィは言葉の意味を受け入れるのに多少の時間を要した。 「それって……」
「廃品回収やらなんやらで集めたものを手癖で整備しただけだから。要はゴミの山だけど、きみが得意とするマジック・トラップも何百枚かはある。今から何をすればいいか。もうわかるよね」
「わたしは、わたしのデッキを組まないといけない」
「ビンゴ。作戦会議をしたいのは山々だけど、闘う為の武器がなければナンセンス。剣でも槍でも銃でもピコピコハンマーでも魔法の杖でも、兎に角何かを持たなければ選択肢なんて生まれようがないから。きみはきみだけのデッキを組まなければいけない。ぼくがそうしたように」
「え〜っと、それってもしかして……わたしとタッグを組んでもらえるっていう……」
「うちの当面の目標は次の大規模大会。今回の形式は知っての通りタッグデュエル。今が5月27日。大会が8月1日から。残り2ヶ月。参加資格の心配は要らない。テイルがダァーヴィットに勝ったのと、ラウがレザールに勝ったのと、後はなんでか知らないけどBelialKillerがアホみたいにポイント持ってたから。出るだけならどうにでもなる。きみの仕事はそれまでにデッキを完成させること」
 ミィは歯を噛みしめながらこくこくと頷いた。1人で特訓を初めて半年。Team BURSTに入って4ヶ月。食いついて、食らいついて、食い下がった。これから先は、
「やります。デッキを組みます!」 「そうでなければ闘えない」
 食い千切る為の戦い。
 小さな中学生3年生の切なる願いを聞き届け、小さな高校生1年生は自分の腕をじっと眺めた。 
(あんたの意思、呼応した娘がここにいる。戻って来いリード。あんたはまだ、始まっていない)

                    ―― 臨終の崖 ――

Turn 5
■デッドエンド
 Hand 0
 Monster 1(《バッド・エンド・クイーン・ドラゴン》)
 Magic・Trap 5(セット/《禁止令》/《一族の結束》/《強欲なカケラ》/セット)
 Life 7000
□リード
 Hand 2
 Monster 1(セット)
 Magic・Trap 2(セット/セット)
 Life 6300

「ドロー。《強欲なカケラ》に2つ目の強欲カウンターを載せる。効果発動。墓地に送って2枚を入荷。永続魔法:《カードトレーダー》を発動。スタンバイフェイズのドローを強化する」
 《強欲なカケラ》の穴を埋めるかのように《カードトレーダー》が発現。バトルフェイズ。 「やれ!」 抜札の化身とも言うべき非業龍:《バッド・エンド・クイーン・ドラゴン》がブレスを放つ。
「そいつを待ってた。喰らってろ!」
 《闇の誘惑》で引き当てた解決札を裏返す。掌を紫色に光らせ、必殺の間合いから放つ1枚。通常罠:《邪神の大災害》。 「全てのマジック・トラップをぶっ壊……」 「それがどうしたッッッ!」 大災害をぼやに収め、第2の龍、防犯代わりの《スターダスト・ドラゴン》が飛翔する。

邪神の大災害(通常罠)
相手モンスターの攻撃宣言時に発動できる。フィールド上の魔法・罠カードを全て破壊する。


スターライト・ロード(通常罠)
自分フィールド上のカードを2枚以上破壊する効果が発動した時に発動できる。その効果を無効にし破壊する。その後、「スターダスト・ドラゴン」1体をエクストラデッキから特殊召喚できる。


(くそったれ。案の定、スタロを張っていたか)
「《スターライト・ロード》をまるで予見しなかったわけでもあるまい。あわよくば通るかもしれない。あわよくば《魔宮の賄賂》で1枚引かせてもらえるかもしれない。その甘えた思考回路が博打と称した甘えに走らせる。故にいつまでも確固とした実力を持てぬ。……攻撃続行。トラジェディ・ストリーム!」
「破壊された《キラー・トマト》Aの効果発動。《キラー・トマト》Bをリクルート」
「ならば! 《スターダスト・ドラゴン》で《キラー・トマト》Bを攻撃」
「ハナから二段構えだ! 《ガード・ブロック》を発動。ダメージをゼロにして1枚ドロー。更に! 《キラー・トマト》Bの効果発動。デッキから、《デビル・フランケン》を特殊召喚」
「ライフを確保しつつ《デビル・フランケン》を喚ぶか。しかし! 効果破壊を防ぐ《スターダスト・ドラゴン》と、復活能力を持つ《バッド・エンド・クイーン・ドラゴン》。何を持って突破する」
(そこまで見越した布陣かい。高打点、対空防御と永続再生。こっちにしてみりゃ厄介極まる布陣)
「質量共に充実すればコアラの一撃は通らんと知っている筈だ。そして! 【 全 展 開 決 闘(フル・エキスパンション・デュエル) 】続行! メインフェイズ2、マジック・トラップを1枚セット。ターンエンド」

Set Card 禁止令 一族の結束 カードトレーダー Set Card
         バッド・エンド・クイーン・ドラゴン
           スターダスト・ドラゴン

「おれのターン、ドロー……《デビル・フランケン》を守備表示。効果発動!」
 腰を落とし、左足を大きく踏み出したリードは、渾身の力を込めてディスク・スローを行う。 「店長だろうが何だろうが遠慮はしねえ。喰らってろ!」 天空から降り注いだのはコアラという名の質量兵器。コアラの精髄を極めた膂力で対空砲火(シューティング・ソニック)を軽々弾き、《スターダスト・ドラゴン》の顎を一撃で砕く。OZONEを揺らす激しい衝撃……が、デッドエンドは揺らがなかった。
「それで終わりか」
「なわけねえだろ」 メインフェイズ2。リードが防波堤を積み上げる。
「おれの決闘はここからだ! 《サイバー・ヴァリー》を通常召喚して効果発動。こいつと《デビル・フランケン》を除外して2枚引く。これでバッドエンドの的は消えた。マジック・トラップを2枚セット。あんたはバッドエンドを立てる為に無理をした。永続魔法は奇襲性と柔軟性に欠ける。《大嵐》の類もそっちからは使えない。布陣には布陣。こっちにはこういう闘い方も……」

             マスター・オブ・OZ
Set Card  Set Card  ------  ------  ------

「甘ったれが!」 殺意を込めた一喝。砂が一斉に舞い上がる。
「プレイングとは戦術。戦術とは戦略があってこそ意義を持つ。我らが戦略とはデッキ。デッキこそ戦略の集大成。戦略亡きところで戦術が輝く筈もない。既に死に体のデッキ、自らトドメを刺す愚行!」
(デッドエンドの闘気が更に上がっている。これ以上があるってのか)
 揺れる大気に軋む大地。デッドエンドが、足を一歩前に出す。
「融合。個性と個性が混じり合うことで成立する芸術。血液や弾薬を供給するに留まるシンクロやエクシーズに対し、素材と成体の間に強固な連続性を持つ。血統に縛られるが故に不自由である一方、血統と共に生きるが故に矜恃を重んじる。渾然一体を成し遂げた融合召喚(フュージョン・サモン)。しかるに貴様は、《デビル・フランケン》との契約で過程を飛ばし、結果のみを掴もうとした」
「悪いかよ。これがおれの決闘だ。これしかなかったんだ。このカードの何が悪い」
「札に罪無し! 人に罪有り! 未だに現実が見えぬか。情勢を変えると息巻きながら情勢に流され、己の初志を見失う。その醜悪さは目に余るというもの。リード、あまり決闘を舐めるな」

Turn 7
■デッドエンド
 Hand 1
 Monster 1(《バッド・エンド・クイーン・ドラゴン》)
 Magic・Trap 5(セット/《禁止令》/《一族の結束》/《カードトレーダー》/セット)
 Life 6100
□リード
 Hand 3
 Monster 1(《マスター・オブ・OZ》)
 Magic・Trap 2(セット/セット)
 Life 1300

「ドロー!」 殲圧の重戦車がカードを引いた。リードとデッドエンドは、互いに戦況を分析する。
(来るとすればシンクロ。廃棄代わりの《スクラップ・ドラゴン》が来るなら好都合。無理に動きたいなら動けばいい。動かないなら動かないで、解決札を引くまでの時間を……)
「《サンダー・ブレイク》は速攻の為に使ってしまった。2体分の生贄となる《ミンゲイドラゴン》は、場に《バッド・エンド・クイーン・ドラゴン》がある限り蘇生不可。束の間の膠着状態と言える……」

Set Card 禁止令 一族の結束 カードトレーダー Set Card
         バッド・エンド・クイーン・ドラゴン
                 VS
                     マスター・オブ・OZ
Set Card  Set Card  ------  ------  ------

「などと! 本当にそう思っているのなら! 哀れと言う他はない!」
 パルチザン・デッドエンドが全身の気を昂ぶらせ、全闘気を両手に集中する。リードは戦慄した。両手。パルチザン・デッドエンド程の巨漢が、両手を使わなければならないという殲圧的事実。呪文。それも、一握りの者にしか使えぬと言われる超高等呪文。己の身体と、《一族の結束》によって強化された《バッド・エンド・クイーン・ドラゴン》を贄として、死に至る病を発現させる。
「リバース・カード・オープン!」



Duel Orb Liberation

Deck Devastation Evil Virus



「魔デッキ!? 嘘だろ!?」
《魔のデッキ破壊ウィルス》発現。ハンド・フィールド・ドロー……攻撃力1500以下を全て破壊する」
 超高等呪文《魔のデッキ破壊ウィルス》。攻撃力2000以上の闇属性を贄として捧げることで、3巡に渡って弱き者を駆逐する魔の一札。《サイコ・コマンダー》が、《終末の騎士》が、リードの手の中で息絶えていく。ひとたび感染すれば、独力除染の道は ―― ない。
(腕が張り裂け血が出てる。無理矢理な開放に無理矢理な制御。ダァーヴィット・アンソニーの二の舞じゃないか。身体に鞭打ってまで、なんでここまで……)
「見るべきは我が腕に非ず! フィールド上をとくと見よ!」

Sold Out 禁止令 一族の結束 カードトレーダー Set Card
                         
                 VS
                     マスター・オブ・OZ
Set Card  Set Card  ------  ------  ------

「店長のフィールドからモンスターが消えた……」
「スタンバイフェイズ続行! 墓地にドラゴン族が存在しないことと、フィールド上にモンスターが存在しないことを条件に、2体分の生贄として! 《ミンゲイドラゴン》が浮上する!」

ミンゲイドラゴン(効果モンスター)
星2/地属性/ドラゴン族/攻 400/守 200
ドラゴン族モンスターをアドバンス召喚する場合、このモンスター1体で2体分のリリースとする事ができる。自分のスタンバイフェイズ時にこのカードが墓地に存在し、自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、このカードを自分フィールド上に表側攻撃表示で特殊召喚する事ができる。この効果は自分の墓地にドラゴン族以外のモンスターが存在する場合には発動できない。この効果で特殊召喚されたこのカードは、フィールド上から離れた場合ゲームから除外される。


(不味い。《煉獄の落とし穴》ではアドバンス召喚を止められない。タカを括っていた。《バッド・エンド・クイーン・ドラゴン》がある以上、《ミンゲイドラゴン》が復活することはないと)
「《バッド・エンド・クイーン・ドラゴン》の効果発動。《禁止令》を墓地に送り復活。……何度墓地へ送られようと、永続魔法を喰らうことで蘇り、常に変わらぬ営業を実現する。。リードよ!」



それで闘ってるつもりかっ ! 

 虚 心 決 壊 (クリーン・マリシャス・ストリーム)!



 《ミンゲイドラゴン》を2体分の生贄としてリリース、手札から送り出した第3の龍こそ、懲罰代わりの《クリアー・バイス・ドラゴン》。水晶の中から現れた鏡面龍は《マスター・オブ・OZ》の2倍以上の体躯 ―― 攻撃力9200 ―― を持って襲いかかり、鎧袖一触、リードの身体を跳ね飛ばす。

Sold Out Sold Out 一族の結束 カードトレーダー Sold Out
         バッド・エンド・クイーン・ドラゴン
           クリアー・バイス・ドラゴン
                 VS
                                
Set Card  Set Card  ------  ------  ------

「元より、一撃必殺を狙った習得と構成。過不足のない防御など望める筈もない」
 迸るデュエルオーラと共に、殲圧の重戦車がリードの全てを押し潰す。
「デッキとは同士! デッキとは同胞! 共に歩み、共に笑い、共に泣き、共に高め合う言語学的生命賛歌! 翰林(かんりん)燃え尽きるところに大樹育たず! 鏡に映りし己が枯れ葉をとくとみよ!」

クリアー・バイス・ドラゴン(効果モンスター)
星8/闇属性/ドラゴン族/攻 ?→9200→0/守 0
このカードが相手モンスターに攻撃する場合、ダメージ計算時のみこのカードの攻撃力は攻撃対象モンスターの攻撃力の倍になる。このカードが相手のカードの効果によって破壊される場合、代わりに自分の手札を1枚捨てる事ができる。


デッドエンド:6100LP
リード:3000LP

「なぜだ、なぜなんだ。なぜこんなことを!」
 生き延びるのが精一杯……否、生き延びたことが屈辱であった。時制を越えた感情が渦を巻きリードの脳を揺らしている。デッドエンドは攻撃と同時に発動していた。通常罠:《ヒロイック・ギフト》。瀕死の決闘者を全快させる本末転倒を体現した1枚。激しい動悸に襲われたリードの記憶回路に、トゥリスミーラ・デオシュタインの、ボルト仕掛けの悪夢が蘇る。

ヒロイック・ギフト(通常罠)
相手のライフポイントが2000以下の場合に発動できる。相手のライフポイントを8000にして自分のデッキからカードを2枚ドローする。「ヒロイック・ギフト」は1ターンに1枚しか発動できない。


「割引サービス? スタンプカードなんざ集めてねえぞ!」
「 『衝突事故で負けた』 そんな言い訳の余地は残さん」
(曲がりなりにも、殺す為に使ったデオシュタインとは違う。おれを生かす為に使いやがった)
「《デビル・フランケン》に頼り過ぎた結果がこれだ。デオシュタインは異端の感性から初見で全て見切ったが、デオシュタインならずとも、西で決闘を続ければ続けるほど手の内は周知されていく。ミツル・アマギリでなくとも、トゥリスミーラ・デオシュタインでなくとも、この程度は容易い」
「最適化すればするほど見切りやすいと言いたいのか。おれの技などとうの昔に見切っていると。……おれにはこれしかなかったんだ。こいつに特化することでおれは……」
「軽いとは思わないか」  「軽い?」
「《マスター・オブ・OZ》の直撃とほぼ同等の衝撃波を受けたことになる。にも関わらず! 貴様を襲った衝撃波はそう殲圧的なものではない。その現実を如何に受け止める」
 リードの顔が強ばる。結ばれたまま動かない口元。デッドエンドは尚も続けた。
「決闘盤に決闘を挿し込み、フィールドに放たれる衝撃波。即ちクオリティ・オブ・デュエル。鏡面龍が生み出す衝撃波、その重さは被写体の重さに依存する。精々この程度ということだ。修練の足りていない者が相手ならば、巨躯におののき倒れるであろう。しかし、所詮はこの程度!」
「 『この程度』 !? 今日まで磨きに磨き上げてきた、おれの必殺技を 『所詮この程度』 だと!」
「己の弱腰を省みろ。デオシュタインと闘った時よりも更に軽くなっているだろうな。デオシュタインは貴様の "あわよくば" さえも、全てを引き出し受け入れきった。どうした。負け犬の目をしているぞ」 「くっ……」 「断言する! 貴様の4200は軽い! 故に、こうも容易くしっぺ返しを喰らうのだ!」
「おれの4200が軽い……。こいつはおれのライフを、5000を吸ってでてきたんだ! おれはこいつ1枚の為に特化した。他の全てを削ぎ落としてこいつ1枚の為に……」
「ならばその5000が軽いのだ! 今の貴様の5000には、《ファイヤー・ボール》1発分程度の価値しかない! 安い5000で呼ばれた安い4200など、如何ほどの価値があろうか!」

【決闘価値変動説】
 決闘の価値は一定ではない。そう唱えたのは決闘経済学者ノーマッド・クレインである。1枚の紙幣に込められた信用の多寡、それが紙幣の価値を決定するのは今時中学生でも知っている。紙幣の価値が経済情勢によって変動するように、決闘者が引いた札(カード)、ひいては決闘者の命(ライフ)に至るまで、その価値は決闘情勢によって変動する。敢えて断言しよう。人の命の価値は平等ではない。安い命には安い値しか付かない。安いライフには安いデュエルしか宿らない。必然である。

「《野性解放》を指定したのは恐れからではない。エンドフェイズに自壊されては、甘ったれに現実を突きつける機会が失われるからだ。更に追撃。《バッド・エンド・クイーン・ドラゴン》でダイレクトアタック」
「《リミット・リバース》。《素早いモモンガ》を攻撃表示で特殊召喚」
「そのまま攻撃を続行。トラジェディ・ストリィィィム!」

デッドエンド:6100LP
リード:1300LP

「《素早いモモンガ》を破壊したことで《バッド・エンド・クイーン・ドラゴン》の効果発動!」
「《素早いモモンガ》Aの効果発動。1000ライフを回復、《素早いモモンガ》:B&Cを裏向きで特殊召喚。《バッド・エンド・クイーン・ドラゴン》の効果処理、手札の《野性解放》を墓地に送る」
「デッキから1枚を入荷、まだまだぁっ! メインフェイズ2、《光の護封剣》を発動」
 豪腕一振り、光の剣が暴き出す。短所も、急所も、泣き所も、セットさえも。《素早いモモンガ》の姿を天下に晒し、店内への武力干渉をも禁止したデッドエンド。入荷した2枚を更に陳列。
「ターンエンド」 殲圧する。ヤタロックの店長は、エンド宣言時にこそ殲圧する。

Set Card 光の護封剣 一族の結束 カードトレーダー Set Card
          バッド・エンド・クイーン・ドラゴン
             クリアー・バイス・ドラゴン

(一流のカードショップはショーケースに空きを作らない。これが歴戦の店長。勝てる気が、しねえ)
 決闘の質は違えど、膝を沈ませるほどの恐怖を感じたことでリードは、頭の倉庫に仕舞い込んだはずの映像を垣間見てしまう。敗北の記憶。地縛神に打ち抜かれた記憶。三者三様に踏み潰された記憶。脅えていた。リードは濡れた子犬のように脅えていた。駄目だ。守るしかない。《クリアー・バイス・ドラゴン》は無抵抗な人間を苦手とする。《素早いモモンガ》を防波堤にしておけば防げる。そうだ。そうしよう。しまった。引くのを忘れていた。引いた。《ガード・ブロック》。これなら……違う。これじゃない。本当に欲しいのはこれじゃない。他に何か要る。何が? 状況を打開できるモンスター。駄目だ。《魔のデッキ破壊ウィルス》がある。引いた端から落とされる。《魔のデッキ破壊ウィルス》さえ……本当にそうか。《ダーク・バースト》や《死者蘇生》で網を抜け、それで何とかなるだろうか。なりはしない。束の間の勝利をもたらした《デビル・フランケン》に依存する余り、それ以外の技は何もない。ない札は引けない。もう一度《デビル・フランケン》を? 駄目だ。ライフが残り2300しかない。セットカウンターからのライフ回復? 読まれている。今更通じるわけがない。通じたところでこれ以上何がある? 何もない。22歳。バイト。学歴無し。何もない。下克上を狙っていた筈なのに、気が付いたら本当に何もない。地位はおろか、一握りの矜持すら ――
「せめてもの情けだ。我が全力を持って葬ろう」

Turn 9
■デッドエンド
 Hand 1
 Monster 2(《クリアー・バイス・ドラゴン》/《バッド・エンド・クイーン・ドラゴン》)
 Magic・Trap 5(セット/《光の護封剣》/《一族の結束》/《カードトレーダー》/セット)
 Life 6100
□リード
 Hand 0
 Monster 2(《素早いモモンガ》/《素早いモモンガ》)
 Magic・Trap 2(セット/セット)
 Life 2300

「ドロー!」 デッドエンドはデッキから《死者蘇生》を引き抜くと、永続魔法:《カードトレーダー》を起動。手札の《カイザーコロシアム》をデッキに戻してシャッフル。ラストドローに赴く。
「決闘の計は最終抜札にあり! 決闘とは、生と死の断面解析学! 恥じることなき魂燃える決闘なら、切り裂いた断面に活路が映る! 乾坤一擲!」



臨終抜札(デッドエンドロー) !



「でたっ! 店長のデッドエンドロー!」 「暴引族100人を更生させたと言われるあの伝説の!」
 幻聴。崖際さえもカードショップに変える臨終抜札。デッドエンドが店仕舞いに向けて動き出す。
「《バッド・エンド・クイーン・ドラゴン》をリリース、《マグナ・スラッシュドラゴン》をアドバンス召喚」
 地層が真っ二つに割れ、鋭い刃を持ったエメラルドグリーンの龍が浮上する。レベル6。攻撃力2400。極めて標準的なステータスであるが、その真価は永続魔法を喰らうことで発揮される。《カードトレーダー》を墓地に送って効果発動。清掃代わりのマグナスラッシュが一刀両断。《煉獄の落とし穴》を破壊する。翠玉龍(すいぎょくりゅう)の効果に回数制限は無い。一度通ればもう逃げ場無し。《一族の結束》を墓地に送って効果再動。《ガード・ブロック》までも破壊。丸腰を晒すリード。デッドエンドが猛る。
「我が決闘を前にした半端な防御は火に油を注ぐと知るがいい。油塗れの小枝の如き、何本束ねようが刹那の速さで燃え上がる。……マジック・トラップゾーンの両端よりマジック・カードを発動! 《おろかな埋葬》! 《死者蘇生》! 我がデッキから《ドレッド・ドラゴン》を墓地に送り、我が墓地から《ドレッド・ドラゴン》を特殊召喚。ふんぞり返った王者を倒したいと言ったか。リード・ホッパー!」
「来るな……」 来る 「来るな」 デッドエンドが 「来るんじゃない」 現実が来る 「来るな!」
「壁に縋るか。実像(エース)無きところに虚龍(クリアバイス)の躍動無し、刃向かわなければ斬られることも無し、引き籠もれば押し入られることも無し……笑止千万! 向かわずして掴める世界がどこにある! 決闘とは! 相手の息の根を止めるまで続くもの! 盾を構えるならば打ち払い、穴に籠もるなら掴み出す。貴様は私を舐めた! 西部五店長:パルチザン・デッドエンドのデッキ構築を舐めた!」

 【ドラゴン族】 ――
 伝説の古代呪文《未来融合−フューチャー・フュージョン》の逸話を紐解けば自明であるように、豪放磊落(ごうほうらいらく)を誇るドラゴン族と、公明正大を掲げる永続魔法の結びつきは古い。威圧感溢れるドラゴン族を盛りつける皿には、フル・エキスパンション・デュエルこそがふさわしいという結論。 殲圧』 店長:パルチザン・デッドエンドが、店意を持って送り出す往年の決闘。その名も――

 【 死 炎 龍(デッド・エン・ドラゴンズ) 】である。

「カードショップとは即ち! 決闘者の生と死を見届けるフィールド! レベル8:《クリアー・バイス・ドラゴン》に、レベル2:《ドレッド・ドラゴン》でチューニング。燃え盛る(ほのお)の担い手よ! マグマの中より荒ぶりて! 今こそ目覚めよ同調召喚(シンクロ・サモン)!」



Trident Dragion Favorite Attack

Hyper Flame Dragion



 攻撃力3000。出禁代わりのドラギオンが吠える。《マグナ・スラッシュドラゴン》と《光の護封剣》を喰らうことで、内に眠れる炎を滾らせた三つ首龍《トライデント・ドラギオン》は、憤怒の炎弾と化して店員への報いを与える。一撃三殺。藁でも燃やすかのように《素早いモモンガ》2体を消し飛ばし、灼熱の炎でリードを燃やす。残るライフは1300。進退窮まり、止めを待つばかりとなったリードは震えと共に視認した。いる。何かがいる。燃えさかる火柱の中を突き進む黒い影。龍。死を運ぶ龍。極炎の中から死を纏った龍が飛翔する。Team FlameGear前身Team DeadFlameの、エース・プレイヤーの構築が導く臨終抜札(デッドエンドロー)……その猛威が店員に迫る
 人の世の業を映し出す鏡面龍:《クリアー・バイス・ドラゴン》は "死" と "炎" の権化へと昇華していた。1つは炎の三つ首龍:《トライデント・ドラギオン》。もう1つは ――



Berserk Dead Dragon

Favorite Attack

(ソールドアウト)



 《デーモンとの駆け引き》に導かれるは、
 死の狂鬼龍:《バーサーク・デッド・ドラゴン》

デッドエンド:6100LP
リード:0LP

「店意完了。本日の営業は終了致しました。またのご来店をお待ちしております」

Sold Out Sold Out Sold Out Sold Out Sold Out
     パーフェクト・トライデント・ドラギオン
      
バーサーク・デッド・ドラゴン

トライデント・ドラギオン(シンクロ・効果モンスター)
星10/炎属性/ドラゴン族/攻3000/守2800
ドラゴン族チューナー+チューナー以外のドラゴン族モンスター1体以上:このカードはシンクロ召喚でしか特殊召喚できない。このカードがシンクロ召喚に成功した時、このカード以外の自分フィールド上のカードを2枚まで選択して破壊できる。このターン、このカードは通常の攻撃に加えて、この効果で破壊したカードの数まで1度のバトルフェイズ中に攻撃できる。


デーモンとの駆け引き(速攻魔法)
レベル8以上の自分フィールド上のモンスターが墓地へ送られたターンに発動する事ができる。自分の手札またはデッキから「バーサーク・デッド・ドラゴン」1体を特殊召喚する。

バーサーク・デッド・ドラゴン(効果モンスター)
星8/闇属性/アンデット族/攻3500/守 0
このカードは「デーモンとの駆け引き」の効果でのみ特殊召喚が可能。相手フィールド上の全てのモンスターに1回ずつ攻撃が可能。自分のターンのエンドフェイズ毎にこのカードの攻撃力は500ポイントダウンする。


――
―――
―――――

 ふと気がつくと夜が明けている。
 身体を起こそうとした。虚無感と共にゆっくりと。
 ジャック・A・ラウンドが差し入れを片手に立っている。
「おれを笑いに来たのかよ」 全てを思い出していた。

「少しは部屋を掃除したらどうだ」
「おいラウ。何しに来た。上がんな。帰れ」
「会議の結果、おまえの担当がおれに決まったんだ。練習に出ては上の空。仕事に出ては上の空。生活でも上の空ということはこの部屋をみればわかる。デオシュタインに叩きのめされて意気消沈する気持ちはわからないでもないがそう腐ることもない。あれは強過ぎる。それだけの話だ。中央はここよりも上下の差が激しい。強い奴は強い奴で、弱い奴は弱い奴で、ランクに応じて決闘を行う。数だけで言えば、中央にいるほとんどの決闘者はミツル・アマギリよりも才能がない」
「うるせえ。おまえにおれの気持ちがわかるわけねえだろ」
「それもそうだ。訂正する。さっさと起きろ。仮にも大将が1回の負けでふて腐れるな」
「ちげえよ。ふて腐れてるんじゃない。これからどうすればいいのか答えがでないだけだ」
「考えてはいると」 「知ってるだろ。頭が悪いんだ。考えてたら他のことが疎かになっちまった」
「なるほど。やる気があるとわかって安心した。やる気のないおまえなど粗大ゴミでしかない」
「サラッと言いやがって。少しはオブラートに包んで……何をやってんだてめえは。漁るな」
「突破口を探している。何かないのか」 「何でも良いけどなんで手慣れてるんだよおめえは」
「これは昔のデッキか? 【サイキック族】で構成されている。少し面子が足りないが……」
「使いこなせなかったんだよ。それでいけるならおれは今のデッキを使っていない」
「そうか。いずれにせよ一度放り込んでみないことには……」
「おい放り込むって……ぐっ……」 「悪いが眠って貰う」
「ラウ……てめえ……」 「さっさと眠れ。後がつかえてる」

「流石はデッドエンド。 "潔さ" なるよくわからんものを極めている。そうすることで1つ1つのドローを、ひいては来店者を研ぎ澄ませる為の決闘。折角依頼したんだ。なにか光明はみえたか?」
「光明どころか大惨事。お陰様で嫌というほど現実を思い知らされたよ。おれの一撃は軽いんだとさ。はは……。勝ちたかったんだ。自分が大した人間じゃないなんてハナからわかってた。それでも勝つ為に、ワンチャンスに賭ける為におれは……なんでだよ……」
「その考え方自体は間違っていない。そうおれは考えている。なんでもかんでもやればできるってわけじゃないからな。それでも 『やればできると思ってやり込まなければできないこともある』 受け売りの言葉に過ぎないが、世の中そういうこともあるらしい」
「……最初はさ。【サイキック族】の、ライフを使って色々やるデッキを目指してたんだ。おれには高度過ぎて使いこなせなかった。そんなとき巡り会ったのが《デビル・フランケン》。これならいける。おれはこいつに飛びついてデッキを一極化した。そうすると、ライフが必要になる他のサイキック族は自然と抜けていくんだ。気が付いたら《緊急テレポート》一式ぐらいしか残らなかった。勝つ為にはしょうがないって言いながら……。特化じゃない。逃避に過ぎなかったんだ。そういう闘い方なら1%の勝機があるって、そう思いたがっていただけなんだ。弱者であることを言い訳に。おれには何もなかった」
「そんなことはない」
「慰めなんてらしくねえな。気休めならいらねえぞ。おれは土俵にも上がれてねえ」
「自分を信じられないのも無理はないが、それならデオシュタインを信じろ。デオシュタインも、おまえの熱意が本物だと認めたからこそあれだけの決闘を報いたんじゃないのか。おれと初めて会った時、リード・ホッパーは心底どうしようもないぐらいにリード・ホッパーだった。あの1ヶ月ぐらいは心の底からうんざりさせられた、が、あれはおれにないものだ。自分を否定するな。自分を肯定する道を探せ。持ち味を活かすんだ。おまえたちならそれができる。昔の知り合いが言っていた。 『世界は広いが無限ではない。無限に広がる決闘という名の宇宙から、唯一つのデッキを掴むだけ』 だとさ」
「……」 「自分が何をしたいのか、自分に聞いてみろ」
「……デオシュタインともう1人、あいつの顔が浮かんだんだ。ミツル・アマギリ。もう一度あいつの前に立ちたい。あいつは西そのもの。緩んだ足下を掬ってやろうなんて考えてたら絶対に勝てない。ラウ、すまねえ。しばらくチームを引っ張れないと思うんだ。もう一度自分のデッキを見つめ直したい」
「織り込み済みだ。最低限ではあるが振り分けをしておいた」
「おまえはおれより遙かにものを知っている。おまえがいれば安心だ」
「前半は単なる安い事実だが後半は過大評価だ。安心かどうかは知らんが、店の方はおれがやる」
 尋常ではない程の作業の速さで 「今までの店員はなんだったんだ」 「もう今までの店員では満足できねえ」 とまで評された代理店員:ジャック・A・ラウンドの仕事ぶりをリードはまだ知らない。
 適当に2〜3確認すると、ラウはあっさりと去って行った。もう一度身体を大の字にする。
「世界がデッキで……デッキが世界……世界からデッキ……デッキから世界……」
 数時間後、リードは1つの結論に達する。
「なんにせよ、人間関係には恵まれた」

「店長」
 2時間後、ようやく立ち上がったリードはその足でデッドエンドの足跡を辿る。崖際にいた。一瞬躊躇ったが首を振る。深呼吸して開き直り、出来る限り堂々と話しかけた。
「《バーサーク・デッド・ドラゴン》ってアンデット族だろ。《ミンゲイドラゴン》復活しなくなるぞ」
「誰が言ったか始末書代わりのバーサークデッド。あれがデッキから飛翔する時、すべからく決闘は終わるべし。それこそが【 死 炎 龍(デッド・エン・ドラゴンズ) 】の心意気」
「ああ言えばこう言う」 「言えねば店長は名乗れん」
「無茶しやがって。過負荷(オーバーロード)。身体への負担が半端ねえだろ」
「力を経験で引きずり出すのが年寄りの決闘。君はどうする」
「……」 数秒の沈黙の後、リードは意を決して言った。
「今からでも鍛え直したいんです。もう一度デッキと向き合ってみたい。妥協なんていつでもできる。だからここにいる間は妥協しない。いっぺん死んだ気になってなんでもやる」
「そうか。ならばこの崖を駆け降りろ」
「分かりました。この崖を……ちょっと待て。マジでこれを駆け抜けろってのか、おい……」
「そういう約束だった筈だ。それに先日、既に1人がここを駆け降りていった。そいつも次の大会に出てくる。どうするリード。何か理由を付けて逃げてもいいのだぞ」
「……ったく。わかったよ。必ず戻ってきて世界中を見返してやる」
「楽しみだ」
 決闘にはデッキという名の力がいる。力を知るには重力を知ればいい。重力を知るには駆け降りればいい。簡単なことだった。リードはあらん限りの力を振り絞り、咆哮と共に崖の中へ消えていく。

〜HAPPY HAPPY DEAD END〜



【こんな決闘小説は紙面の無駄だ!】
読了有り難うございました。特殊事情による補足:ごたごたした更新で大変申し訳ありませんでした。
↓匿名でもOK/「読んだ」「面白かった」等、一言からでも、こちらには狂喜乱舞する準備が出来ております。


□前話 □表紙 □次話































































































































































































































































































































































































































































































































































































































 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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